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社員の85%に涙を流しながらリストラ宣告 ユナイテッド金子氏、会社再起を懸けて戦った日々

2017年12月13日に行われた「IVS 2017 Fall」のセッション「IVS DOJO」で、ユナイテッド代表取締役社長COO・金子陽三氏が登壇し「脱・オーナー社長のすゝめ」というテーマで講演を行いました。窮地に陥った会社を立て直すまでの苦労譚、再起までの道のりを当時の具体的なエピソードを交えて観衆に語りかけました。

脱オーナー社長のすすめ

金子陽三氏:ユナイテッドの社長の金子です。(当初は)「脱・創業社長のすゝめ」という話でしたが、プレゼンを作っていく中で内容が違うなと思ったので「脱・オーナー社長のすゝめ」ということでお話をしたいと思います。

まず最初に質問です。この会場にいらっしゃるみなさんで、創業者でオーナー社長の方ってどのくらいいらっしゃいますでしょうか? VCから調達してたりとかIPOされてる方もいっぱいいらっしゃると思うので。けっこう多いんじゃないかなと思ってます。

(会場挙手)

ありがとうございます。この先はあえて挙手は控えますが。創業オーナー社長の人でゼロイチが得意だと思う人? 当然ですよね。創業されてるのでたぶんみなさん、創業が得意なんじゃないかな、ゼロイチが得意なんじゃないかなと思います。

あとは、新しいビジネスに興味を持っている人? 今回のIVSも『Next Big Thing』ということで、みなさん心の中で実はこの領域やりたいと思っている人とかも多いと思います。

当然、経営って大変なので、最近やや疲れていたりとか。当然長い道のりなので、みなさんこれだけエネルギー溢れる人たちなので飽きてる人も多いんじゃないかなと思ってます。

そういうみなさんは、ぜひ社長を代わったほうがいいと思います。ぜひ交代しちゃってください。

(会場笑)

そのほうが会社が伸びるんじゃないかなと思ってます。もしくはオーナーシップを売りましょう。さっさと株売っちゃって、次に本当にやりたいことをぜひやりましょう。

みんな1度きりの人生なので、新しいこととか本当にやりたいことというのにチャレンジしていないと人生もったいないと心から思っています。

もしくは違うことがやりたくなってる社長の下で働くって、自分が社員だったらちょっと嫌だなと思ったりとか、そもそもこれだけエネルギーと能力が溢れている、みなさんがなにかにチャレンジしていない状態がもし起きているんだとしたら、もしくはもっとやりたいチャレンジがあるんだとしたら社会的にも大きな損害なんじゃないかなと思ってます。

なので、そんなみなさんはぜひユナイテッドに会社を売っていただきたいと思ってます。

(会場笑)

「金子陽三個人商店」とならないために

すみません。ちょっと調子に乗りました(笑)。謝ります。ただ、なんで僕がこういうふうに思うのかをお話させていただければと思います。簡単に僕のバックグラウンドを振り返りながらお話しますが。

僕は2002年、25歳のときに自分で会社を起業いたしました。その会社を3年間、自分の自己資本のもとで経営したのちにユナイテッドの前身のネットエイジグループに会社を売却しました。当時、僕は28歳でした。

なんで会社を売ったかと言うと、ベンチャーインキュベーションのビジネスをやっていたんですけれども。やっぱり金子陽三個人商店になっちゃうんですよね。

それで自己満足でやっていても意味がないなぁと思っていて。もっと資本力があったり、大きい会社と一緒にやったほうが、もっといいサービスがお客さんや社会に対して提供できるんじゃないかと思って会社を売る判断をしました。

2005年当時、ネットエイジグループの投資子会社のいち社員として事業とセットで入社をし、その約1年半後に会社が東証マザーズに上場しました。そのあと投資子会社の取締役に就任し、2007年からグループの取締役になるというステップを踏んでいった感じですね。

会社(の取締役)をやってみて感じたのは、楽しくて仕方がないんです。なにが楽しいかと言うと、まず1つは優秀で経験豊富な人が会社の中にいっぱいいますよね。やっぱり個人でやってるときって作れるチーム作りに限界があるんですよね。それから一気に大きな組織に入ったことによって、本当に優秀な仲間に囲まれたのが嬉しかったです。

あとは、いざ自分で会社をやってみて本当にもう1回、組織に戻れるんだろうかと思うんですけど、意外とできるんだなぁと感じました。

なにかまたやりたいなぁと思ったときに一緒に動いてくれるメンバーがいっぱいいたり、そもそも会社の銀行預金残高に対する考え方がかわります。あと何ヶ月とか、あと1年もつかどうかみたいなところから、「逆にどういう攻め方をしよう」「どういうところに投資しよう」というかたちで非常に前向きな発想になります。

結果、自分自身でやっていた事業に比べると大きなグループに入ったことによって、投資機会やビジネスチャンスもいっぱい入ってきました。

涙を流しながら大リストラを敢行

そんな僕に大きな転機が現れました。けっこうみなさんもご存知の方も多いと思うんですが……。僕がオーナーシップを失って得たものは、大きな可能性だったんじゃないかなと思っています。

そんな僕に転機が現れまして。社長に就任するという大きなイベントがありました。なんで僕が社長に就任したかと言うと、これが上場前の日から上場後の3カ年の売上と純利益のグラフです。

上場後右肩上がりに売上が伸びているように見えるんですが、実態としては保有している株式、具体的に言っちゃうと、mixiの株式を毎年毎年何十億とどんどん売って、一方で自分たちで作っている事業はけっこう大きな赤字でした。こうやって決算を作っていきました。

2008年の9月にリーマンショックが起きました。投資している、持っている資産がどんどん目減りしてしまって、残るのは赤字にした事業だけという状態で。このままだと会社が潰れてしまうということで僕は社長に就任いたしました。

僕もそれまで取締役だったのでなんとかこの会社を立て直すことで責任を果たそうと決意し、社長を引き受けたんです。その後、いろんなことがありました。2009年に大リストラをしました。従業員の85パーセントの方に辞めてもらうという、社長としてはもちろん一番やりたくないことでした。

これまで一緒に戦ってきた仲間に会社を去ってもらわなくちゃいけないということで、70人から8人くらいまで減らしているんですけれども。毎日、涙を流しながらみんなにやめてもらうお願いをしたりとか。今でも思い出すと涙が出てきます。そんなこともありました。

その後、2010年にグループ会社だったフラクタリストを経営統合し、もともと投資事業で利益を出していた状態から、しっかりモバイル広告事業で利益を出そうと取り組んでまいりました。

2012年DACによってTOBをしてもらって、グループ会社入りし、社名をモーションビートに変更して、ガラケーの広告代理事業からスマホのアドテク事業へのビジネスモデルの転換を行いました。そして同年の年末にスパイアと合併をして、ユナイテッドとして再スタートを切りました。そんなことがいろいろありました。

ずっと僕が思っていたことは、「はたして僕が社長でいいんだろうか」。もう一方で創業者が社長を続けていたらどうだったんだろうなと、ずっと思いながら立て直しに取り組んでいたかたちになります。

おかげさまでガラケーからスマホへのシフトの間、苦しんだ時期もありましたが、僕が社長に就任してからユナイテッドになり、今着実に、(スライドを指して)これは売上ですが、業績面で結果を出せたんじゃないかと思っています。

株主から罵倒されながらも会社を立て直す

結局、僕がずっと思い続けていたことは、なにがなんでも立て直す。オーナー社長ができないかもしれないような、大きな意思決定をして再び会社を輝かそうと強く思っていました。そして、オーナー社長に負けないコミットメント、会社をなんとか立て直すという強い思いで、この立て直しに取り組んできたつもりです。

これは上場後のグラフなんですけど、ちょっと飛び抜けた変な線がありますが、上場したときだいたい400億、500億くらいの時価総額でした。僕が社長に就任して、いったん20億円くらいくらいまで単価が下がりました。

そのときは毎日毎日株主さんから「金子死ね」っていう連絡をいただいたりとか、本当に苦しい時期があったんですけれども。その後業績の成長とともに株式市場でもちょっとずつ評価をしていただけるようになってきたのではないかなと思っています。

なによりも大事だなと思ったのは、こういったいろいろなことがありましたが、最終的にはユナイテッドの将来を作る信頼できる仲間が今会社に集まってくれたことが非常に大きな資産になったと思っています。

最近ユナイテッドはけっこう買収とかもしておりまして、買収を通じてこの1年くらいで新たに3社仲間に入ってくれました。みなさんご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、彼らもオーナーシップを売ってユナイテッドグループにジョインしてくれています。

彼らも成長過程にあったわけなんですけれども、それを一気に加速しようということでユナイテッドグループに入ってくれて。会社によっては、例えばユナイテッドからメンバーをガッと送り込んでいきなり社員が倍以上になって、今一気にサービスを作っている会社もありますし。

あとはある種、資金量を使って全力プロモーションをして競争に負けないユーザー獲得を行なっていたりですとか。あとはグループ化したとはいえ、いろんなリスクがあるわけなんですけれども。そういったKPIのときでも、ユナイテッド全体で支援をしてもう1回リカバリーしてきたりですとか。

そういった会社が集まってきてくれています。そのうちの何人かはユナイテッドの役員としてマネージメントにも参加してもらい、彼ら自身が上場企業の経営を今肌で感じてくれていると思っています。

社会の適材適所が進んでいってほしい

僕からしてみるとユナイテッドのほかの社員と同じく彼らはまさに欠かせない人材となり、事業になっていってくれているんじゃないかなと思ってます。

ということでこれまで僕が自分で会社を売った経験、もしくはオーナー社長じゃないかたちでの経験、そして逆に買う側からの話をさせてもらいましたが。改めて最後に『脱オーナー社長のすゝめ』ということで、いろんな選択肢があると思います。

「売ってください」とか言いましたが、もちろんオーナー社長として引き続きがんばって、日本でもそういったかたちで偉大な経営者さんいっぱいいます。もしくは社長という立場は変わるけれども、社内で新しいチャレンジをされる方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。

僕自身もそうですし、最近ユナイテッドグループ入りしてくれた経営陣も売却して、売却先で新たなチャレンジをしてくれている人もいるのではないかなと思います。

もしくは売却して例えばエンジェル投資家になったりですとか、また新たに起業して、メルカリの山田(進太郎)さんみたいに大活躍されている方もいらっしゃいます。そういう意味でいろんな人がいろんなかたちで常にチャレンジしている状態が非常に重要なんじゃないかなと思っています。

あんまり社長だから、社長でい続けなきゃいけないとかという枠組みにとらわれずに、ここにいらっしゃる本当に魅力的な能力に溢れるそういう方が次から次へとチャレンジしていくようなダイナミックな社会。

どんどん、どんどん人が動いてなにか新しいチャレンジをしていくような社会の適材適所が行われていくことが、今後の日本のインターネット業界、もしくは日本経済の成長のためにすごく重要なんじゃないかなと思っています。

まだまだ何かを成し遂げたとは自分自身でも思ってなくて、そういう意味でこういうところに立ったりするのは本当嫌いで、今回も最初お断りしているんですけど。これが言いたかったので来ました。

改めて、みなさんuniteしましょう。ぜひユナイテッドグループにお声がけいただければなと思っています。そして一緒に日本を代表するインターネット企業を作っていきましょう! ということで、僕からのメッセージは以上です。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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