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共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~(全10記事)

過去・現在のデータ分析から“将来を予測する”のは時代遅れ いま求められる「未来に学ぶ=バックキャスティング」の発想

創設以来、35年以上にわたって日本の組織開発をリードし、実践と研究の両面において最先端の取り組みを行ってきた、株式会社ヒューマンバリューの代表取締役社長 兼清俊光氏。同氏が登壇されたイベント「共創を生み出す組織開発~第4次産業革命における組織と個人のあり方~」の模様を公開します。

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生卵のメタファーで示す、共創における“場”の定義

斉藤知明氏(以下、斉藤):そこで次のテーマ「共創を生み出す組織開発」。

斉藤この言動を続けていった先にこういう不幸な結果が起こっていってしまうと、組織としてもよくない。じゃあ、共創、Co-Creationができる組織開発ってどうやったら進めていくことができるのだろうか? まずは兼清さんに上段から整理していただいて、お話いただければと思っております。みなさんいろいろコメントいただいてありがとうございました。では兼清さん、よろしくお願いします。

兼清俊光氏(以下、兼清):では今回のテーマでございますけど、共創を生み出す組織開発、特に今は第4次産業革命のタイミングでございますので、そこで組織と個人ってどうあるのか? というのを、ご一緒に考えていけたらと思ってます。

まず「共創とは何か?」というところです。

(スライドを指して)ここに書いてあるとおり「異なる人々、組織、立場の方々が一体となった“場”を形成して、実現したい未来や新たな価値を創造していく。1人ではなくてCo-Creationしていく」ということです。

「共存」とか「共生」という言葉もありますけど、もっとプロアクティブな言葉が共創だと思います。大事なポイントが「一体となった“場”を形成できるか?」といったところでございまして。“場”って何なのか? というとですね。それは個々の区別が消えてひとつとなったような、つながりが感じられる領域で。

一番わかりやすいメタファーで、よく生卵を使うんですけど。

兼清:器があって、「オリジナルな自己」としての黄身、「偏在的な自己」としての白身があります。何個かの生卵を1つの器に入れると、黄身は「オリジナルな自己」として残るんですけど、白身は「偏在的な自己」が「自他非分離の状態」になって、区別できなくなるという、この状態(を生み出す領域)が“場”になります。

「一体となった“場”」を形成することによってCo-Creationができるんですけど、これが「一体となった“場”になっていない組織」は、器の中にゆで卵がいっぱい入っているみたいなイメージですね。

いま起きつつある、組織と人のあり方に関する「哲学の転換」

兼清:そんな共創をどうやって実現していくか? という点ですが。まず、なぜ共創が求められているか? というところから一緒に考えていきたいと思います。組織と人のあり方に関して、哲学のトランジション、転換が起きています。

兼清:これまではカンパニーセンタードといわれていて「会社を中心に考えて、社員や人をどうコントロールするか?」というものですね。もう1つがピープルセンタードで、これは「人を中心に置いて、人の持っている可能性をどうやってアンリッシュ、解放するか? エンカレッジしていくか?」みたいな感覚になります。

その著名な例がMicrosoftです。ビル・ゲイツから移っていって、今は(サティア・)ナデラさんが経営しています。ナデラさんが『Hit Refresh』という本を書いていますけど。

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来

彼がこちらの135ページにて「我が社に新たに生まれつつある文化は『グロース・マインドセット』と表現できる」と。「社員一人ひとりが難題に立ち向かい、乗り越えようとするマインドセットを持つことによって、個々が成長し、その結果、会社も成長できるからだ」というふうに、転換した捉え方をしています。

彼はこの本の332ページに次のようなことを書いていて。「Microsoftが社員を雇うのではない」と。「人々がMicrosoftを『雇う』とも言える。10万人を超える社員のマインドセットを、雇われる側から雇う側に変える時、どんなことが可能になるだろうか」と。これがピープル・センタードというイメージかと思います。

そうするとパフォーマンスの捉え方とか組織のあり方とか、ここに書いてあるような事柄のアプローチが変わりますね。

哲学・世界観ごとに、使われる言葉は異なる

兼清:組織のあり方において、カンパニーセンタードだと「社員をどうコントロールするか?」とか「いかにビジョンを浸透させるか?」とか、いかに人を教育するかみたいなかたちになります。

これがピープルセンタードだと、組織のあり方は「信頼・創発・自己組織化の促進」とかですね。また「人を教育する」ではなくて「成長する環境を用意する」とか「エンプロイーエクスペリエンスを生み出していく」とか。こんなふうに、捉え方やアプローチが変わってきます。

さっき斉藤さんから“言葉”という話がありましたが、カンパニーセンタードの哲学・フィロソフィーの世界観で使われている組織と、ピープルセンタードの哲学・世界観で使っている言葉は、やっぱり異なりますね。

兼清:例えば今日いらっしゃるみなさんの会社の中で、もし「やる気を引き出す」と言っていたとしたら「社員は『やる気を引き出された』という“外的コントロール”を受けた」という認知になります。そうではなくて「いかに彼らの持っている経験を最大化できるか?」みたいな、こういう言葉を使っているかです。そういう違いで見えてくるのではないかと考えています。

ナデラさんじゃないんですけど、ピープルセンタードで人々の持っている可能性を解放していって、そこから「自他非分離の状態」を作って、そこから新しい価値を共創していくことが求められている理由の1つが、テクノロジーの進化だったり、いろんなものがつながる世界になっていったり。

「未来から学ぶ」のが、いまの時代のやり方

兼清:今、言われている「第4次産業革命」デジタルトランスフォーメーションという人類が経験していない領域に入り、よく使われている言葉ですけど、一言で言うと「VUCA World」(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字を取った言葉)。「不安定で」「不確実で」「複雑で」「あいまい」になってくると、未来を予測することはできず、見通しを立てることはできないと。そうすると、未来をクリエーションしていかなきゃいけない、というふうに変わってきています。

以前は「フォアキャスティング」というやり方(現在を起点として未来を予測する方法)で、基本的にはアプローチしていました。このやり方でやれていた時代はよかったんですけど、今、VUCA Worldに入って、フォアキャストできないんですね。先を見通せないから。

兼清:そうすると「バックキャスティング」に変わってきて。バックキャスティングで未来を描いて、そこから戻ってアクションを取ることで新しい行動を獲得していく。「未来から学ぶ」というように、学び方が変わってきているのが今の時代になります。

バックキャスティングはイメージでいうと「未来をありありと描いて、現実に振り戻ってきて。今、自分たちが未来に向けて取り組むことを生成してCo-Creationして、足を踏み出す」と。

「やってみてうまくいくかどうかの見通しは立っていないので、やってみてそこから学びとって、次のアクションをまた生成する」という、まさにアジャイル(素早さ)が必要になってきています。

VUCA Worldで正解がないということは、すべてはアジャイルになる必要があって。開発だけじゃなくて、組織のありようも働き方も、学習もキャリアも。今は「ボルダリングキャリア」といいますけど、キャリアも梯子型・ラダー型ではない時代に変わってきています。

ではアジャイルの本質って何か? というと「早く失敗して、早く学んで、早く成長する」。これを「どれくらい早いスピードでチャレンジできる集団になれるか?」が、Co-Creationの大事なポイントになるのではないかと思います。

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