2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中嶋汰朗氏(以下、中嶋):逆に臣さん、リンクトインもスタートアップなわけで、(リード・)ホフマンの精神みたいなものも今あるのかなと。そういう中で、今の価値観や採用におけるやり方がスタートアップでも生かせるところがあれば、ぜひ伺いたいです。個人的にもすごく興味があるので。
村上臣氏(以下、村上):リンクトインの今のやり方は、リード・ホフマンというよりはその後に社長を長らく務めた、ジェフ・ウィナーかなと。最近チェアマンになりましたけれども、彼が10年半ぐらいCEOでやっていた時のやり方が、我々のカルチャーになっています。
彼はビジョン・ミッション・カルチャー・バリューに、並々ならぬこだわりを持った男なんですね。なので、我々の採用の仕方はもうカルチャーフィットが本当に大事で。採用の現場でも最後に候補者の方を選ぶ時に、カルチャーフィットがどうかをあらゆる側面で何人も使って見ています。
逆に言うと、カルチャーが合わなそうな人は採用しない。そのほうがお互いに幸せだろうということなんですよね。やっぱり合わない人が入ってもパフォーマンスが出にくいと。それは事実としてある。
今回のタイトルが「採用のベストプラクティス」ですけれども、お互いが気持ちよく働けて結果を出して利益につながると。そういうフェアでWin-Winの関係が、組織と個人の望ましい関係じゃないかなと。
そうするためにどうするか逆算をしていって、採用のところでもきっちり見ていくところが、我々では徹底されていますね。
中嶋:すごく初歩的な質問ですけど「カルチャーを見る」ってどう見るんですかね。疑問に思う人、けっこういると思うんですよ。どうですか?(笑)。
島田由香氏(以下、島田):これは非常に定性的な話も含むので……。
中嶋:そういう話をどんどんしていくのが、ここの価値だと思います。
村上:我々も非常に悩んでます。
中嶋:やっぱ難しいんですね。
村上:ただ、いろんな人で見るというのが基本ですよね。働く周りのチームとか、ちょっと離れた人とか、いろんな側面からインタビューをする。僕自身もたぶん4ヶ月ぐらい毎週ビデオ会議して、2回本社にも行っているんですよ。
中嶋:臣さんが入る時の話ですか?(笑)。
村上:はい、僕が採用される時に、20人ぐらいと面接して話して(笑)。でも入ってみたら、僕が日常的に関わる人全員と会っていたんですよ。
でも入社時にはもう会話や挨拶が終わっているので、本当に話が早いんですよ。最初の3日ぐらいでもう周りは知っている人だらけで「面接の時に話したね。あの時の議題は良かったね」みたいなところからスタートして。「じゃあ今日から何しようか」ということなんですよね。
中嶋:「合格・不合格」というよりかは、一緒に仕事をする方々との「合う・合わない」があらかじめ組まれているというところですね。
村上:そうですね。それで誰か1人が違うと言ったら、基本的にはなしですね。
中嶋:なるほど。それは何人ぐらいいるんですか?
村上:ポジションによって違いますけれども、僕の場合だと20人弱。
中嶋:(笑)。20人中1人がNG出したら、NO。
村上:カントリーマネージャー自体が、重いロールだったと思うんですけど。
中嶋:すごいな。まぁ、そうですよね。
村上:通常で言っても、5~6人ぐらいは必ず面接に関わります。
中嶋:なるほど。我々だと面接が3回以上だと「多い」と思いますし、早いところだと本当2回とか。本来必要な見極めのところに、なかなか時間と労力をかけられていない方も多いと思う中で。志水さんや奈緒子さんにもぜひお聞きしていきたいポイントです。先に奈緒子さん、カルチャーフィットの部分をどう見ていますか?
佐俣奈緒子氏(以下、佐俣):カルチャーフィットは臣さんがおっしゃられたように、説明するのがすごく難しくて。何を見たらフィットしているのかは、チェックリストがあればいいという話でもないので。
中嶋:そうですよね。難しいですよね。
佐俣:私たちも気をつけているのは、おっしゃられていたように多様な目で見ていかないと見えないものがあって。自分のチームに採用権限があると考えると、やっぱり早く人が欲しいんですよね。
中嶋:間違いないですよね。
佐俣:ただ、早く人が欲しくてスキルセットの部分だけ見ていても、長期で活躍いただけるかと言うとそうじゃないと思っていて。やっぱりそこは近いチームですとか、上下横を含めて見ていかないと見えてこない部分があるので。目を増やすというのは1つあるかなと思います。
あと今この環境の中で、オフィスで働くよりかはオンラインで働くかたちになっているので。面談自体もオンラインになると、どうしても見えないものが増えてきていると思っています。
なので、なるべく面接というかたちじゃない会話も含めて、短くてもいいので人との時間を増やしていくようにはしていますね。
中嶋:なるほど。1個難しいと思ったのが、カルチャーというものを定義すればするほど、近い人しか集まらなくなるという。僕自身がそういう感覚になったことがあって。
志水さんはさっき「雑草」というワードを出してらっしゃいましたけれど、わりと近いタイプが集まりがちになりませんか?
志水雄一郎氏(以下、志水):おそらくミッション・ビジョン・バリューが「大事だよ」と言われてみんな作ると思うんですよね。それを作ったら、その体現者が面談者になるはずなんですよ。そうすると、自分の価値観に合う人を探しに行って、同族化するんだと思うんですよね。
ここで重要なのは、たぶん創造性や複雑性が生まれなくなる。おそらくその振れ幅を、誰が新たなタイプの人材を採りにいくのかですよね。そういう部署を作るのか、ファンクションを作るのかということに挑戦しない限りは、オーガニックグロースはできそうなんですけど。TenXみたいな突然のストーリー作りはできなさそうな気はしますよね。
だから重要なのは、社内にそういう人がいるか、社外で相談に乗ってもらえるパートナーを置くかがすごく大事だと思っています。経営者の採用とかも関わってくると思うんですけど、私は社外の取締役にその価値観を持っている人をアサインして、進化をどう目指すかについて会話していく仕組みを作ったほうがいいと思います。
中嶋:カルチャーが合う・合わないの話で言うと、レイヤーに関係なくそういったところまで見られているということですよね、村上さん。
村上:はい。その前提において、ビジョンからカルチャーまでちゃんと明文化されているかも大事だと思います。定義されていないと合うかも見られないので。
中嶋:フェーズによってメッセージ性が変わっていったりする中で、常に社内で1つのメッセージ性を作っていこうと。ある意味、そこに対して経営陣が一様に決めるよりは、コンセンサスがしっかり取れるかたちで作っているんですか?
村上:あとは、日々そのカルチャーやバリューを維持する仕組みが、グローバルで用意されている感じですね。リンクトインだと毎月InDayというのがありまして。この日はグローバルで自分たちのためにInvestする時間を作る。
基本的には日常業務から離れて、グローバルでテーマが決まっています。例えば来月だと我々は「リレーションシップ」というテーマでグローバルでやるんですけれども、それについて地域でCulture担当のCulture Championというのがいます。
いろんなイベントを含めて一緒に遊びに行ったりもしますし、要はそのカルチャーについて考えて深めるというような公式のイベントが毎月あります。そのCulture Championは本社に年1回呼ばれて、社長から1泊2日でCulture Campを受ける。
中嶋:徹底的に(笑)。
村上:そう。いろんな昔の話などをしながら、リンクトインカルチャーはこういうのだと。こういうのが良い悪いみたいなことをやって、具体的な例としてインストールされて、また全国に散らばっていくと。
中嶋:そういう意味だと、スタートアップの合宿的なことをやっているんですね。
村上:そう。それを1万6,000人ぐらいの会社でもまだやっているんですよ。
中嶋:これはやらない理由が我々にとってないですよね。
村上:だからそれを仕組み化すればできるということですよ。
中嶋:島田さん、逆にユニリーバのカルチャーがどういうものか簡単にお聞きしたいです。カルチャーを浸透させたり、合う・合わないをどう見ていくのかも一緒にお伺いできれば。
島田:ユニリーバのカルチャーとしてと言うのであれば、少し表現の仕方が変わるんですれど「Be yourself」という、すごく大切にしているバリューがあります。それが体現されている場がカルチャーだと言えると思います。
仕事のアサインの仕方やプレゼンテーションの仕方、服装、発言の仕方とか、基本的に「あなたがあなたである」ことを一番大切にする。これって1つのカルチャーだと思うんですね。
もう1つは、それぞれがこの場を形容詞で表現する時にパッパッパと出てくる3つぐらいの言葉。これがある意味カルチャーなんですよ。
例えば私がユニリーバを表現するなら「明るい・楽しい・優しい」なんですよ。これは入社した時から変わらないんです。
中嶋:ほぉ!
島田:私13年目になるんですが、これが変わらないんですね。3つ全部が良さそうに聞こえるんですけど、もっともっと伸ばさないとビジネスとして勝てないと思っているのが「優しい」です。優しいだけじゃビジネスに勝てないので。
中嶋:そりゃそうですよね。
島田:じゃあ、どうやって強化していくのか。例えば仕事の仕方とか、トレーニングだったり、コミュニケーションだったり。私はこれを13年間、すごく頭に置いてやっていますね。
中嶋:逆に、毎年のように人がたくさん入ってくる中で、ユニリーバのカルチャーに合うかはどう見ていますか。
島田:これこそが採用と言われるプロセスの中ですごく大切なところで、みなさんが共通しておっしゃっているところだと思うんですけれども。
似たような人が欲しいわけじゃないので全部が一緒じゃなくてもぜんぜんいいんですが、コンプライアンスに対しての考え方とか、integrityだったり、絶対にここだけは外さないという部分はあって。
あと、私たちのユニリーバが何のために存在しているかのPurposeはすごく大事にしています。それはよりよい社会を作るためで、持続可能なすべての人が豊かである社会を作る。これをユニリーバが存在している最大の目的に置いています。
これについては大きな川の中にいて、同じ流れに乗っていてほしいんですよね。生き方は違っていてもかまわないけれど「この川の中にいるんだ」という人が入らないと。「ちょっと外れたいです」とか「逆流したいです」という人は、やっぱり合わないです。でも、みんなが同じように泳がなくてもよくて。そこは違っていてもかまわないと思います。
中嶋:それがさっきの多様性につながってくるところですよね。よくわかりました。
中嶋:スタートアップでも、ミッション・ビジョン・バリューをまず決めようと言うのは、誰もがやっていると思うんですね。大きな違いは、それを決めた後に採用にまでしっかり見ていくことができるかどうか。
お話を聞いている限り、リンクトインさんもユニリーバさんも、ビジョンやバリューが大事といった部分は同じでした。今度はもう一回heyに話を戻したいんですけれども。ビジョンやミッションを見ていくと言っても、スタートアップだと「ファンクションとしてここに人が足りない」「早く採らないとやばい」「事業も伸ばさなきゃいけない」「いつまでに何人必要だ」という会話が当然されていると思います。
志水さんもいろんな企業さんがいらっしゃる中で「今からすぐ欲しい」という相談もたくさんあると思います。その中で「本当にいい人を見極めないといけない、でも採らなくちゃいけない」という葛藤を感じていると思います。
構えているだけでも人は来ないし、選りすぐりの人を選べるプールがあるわけでもない。こういった中で、佐俣さんはどうしていますか。
佐俣:そうですね。ただ結局、ゴールは採ることじゃなくて、採ったうえで活躍いただいて、結果を出していただくこと。だとすると、その人のスキルセットの話じゃなくて、カルチャーとして合う・合わないはあるので、パフォーマンスが最大限発揮されない方を採ったとしても、結局は長期で生かされないと思っています。なので、きちんと見極めたほうがいいと思っているのが1点。
私も立ち上げ期に人がいないことがすべてを止めてしまうので、けっこう悩んだことがあって。ちょうどリンクトインのリード・ホフマンさんが日本に来た時に、採ったほうがいいのか待ったほうがいいのかを直接聞いたんですよ。
中嶋:そんなことがあったの(笑)。アライアンス……。
佐俣:いや、本を執筆されて日本に来られた時にちょうどお会いする機会があって、真面目にこれを相談したことがあって。その時に「絶対待ったほうがいい」って言われたんですよ。
中嶋:なるほど。
佐俣:その教えを今も心に留めています。なので無理して採らない。結局採ったとしても、一時の満足でしかなく、自分たちがやりたいのは長期で大きいものを作りたいわけなので。足りないからといって、無理やりな活動で埋めないことはけっこう意識していますね。
中嶋:起業家のみなさまはもし迷われているのであれば、この判断軸を持ってやっていただけるといいかと思います。
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