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著者と語る朝渋『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』著者・天野彬さん(全6記事)

渡辺直美や小藪一豊が駆使する「メタレベル」のハッシュタグ 日本独自のInstagramの使い方とは

渋谷・道玄坂のBook Lab Tokyoで毎週開催されている、会員制朝活コミュニティ「朝渋」。2017年12月13日に開催された恒例企画の「著者と語る朝渋」では、『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』の著者として、電通メディアイノベーションラボの天野彬氏が登場。モデレーターの中村氏らと若者のSNS事情を読み解きます。(写真撮影:矢野拓実氏)

ハッシュタグの3つの分類

天野彬氏(以下、天野):そんなタグる……ハッシュタグの話で、(スライドを指して)これは細かいので今日はあんまりあれですけれども。

中村朝紗子氏(以下、中村):すごくおもしろかったです。

天野:本の中ではなるべくワクワク説明しているんですが、Instagramの中でどんなハッシュタグがあるんだみたいなのを僕なりに分類したものです。3つ覚えていただくといいかなと思うのは、「オブジェクトレベル」「メタレベル」「クリシェ」というものがありますと。

シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~

「オブジェクトレベル」というのは、オブジェクト、対象で、例えばパンケーキが写っている写真にパンケーキに関するハッシュタグをつけることです。写ってるものの説明。

中村:そのもの。

天野:そうですね。例えば景色だったら、なにが写っているものなのかとか。

それに対して「メタレベル」というのは、写っているものとは関係ない自分自身の感情みたいなものです。思いとか。渡辺直美さんなんかはこのメタレベルのハッシュタグが非常にうまい。写真に対してのつっこみなんですよね。

中村:ああ、小藪(一豊)さんとかもそうですよね。そこで会話してますよね。1人でね。

天野:まさにおっしゃるとおりで、それがうまいし、ビジュアルを使ってコミュニケーションしてるということの表れでもあると思うんです。

中村:じゃあオブジェクトレベルが単語であるのに対して、ちょっと文章っぽいという感じで合ってますか。

天野:そうです。そうなりますね。そういう形式が、僕は日本のInstagramの使い方の特性の1つだと思っています。

中村:海外では……?

天野:海外のハッシュタグの分類みたいなリサーチを見ると、メタフレーズみたいな言い方でそういうのをしてるところもあるにはあるんですけど、実例見るとあんまりおもしろくないというか。日本のつっこみ文化みたいな、自分の写真につっこむことで1個の作品として完成するみたいなのはあんまりなくて。そこはすごいおもしろいです。

中村:へえ、おもしろいですね。

天野:最後「クリシェ」は常套句という意味で、写っているものに関係なく、Instagram上でよく使われるハッシュタグ、例えば「#写真好きな人とつながりたい」みたいな。

中村:つながりたい系の。

天野:的なものとか。

中村:「#フォロー」「#相互フォロー」とか。

天野:そうですね。「#follow2follow」みたいなものとか、写ってる内容とも自分の思いとも関係なく、それをつけることによって流入されたり、同じハッシュを持ってる人とつながるための一種のサインですよね。そういうものがある。

Instagramをうまく使っている人はこれをいいバランスで使っているというか、それがすごいあるなという気がしています。

レベルとバランスのタグ付け

中村:でもこれってさっきのタグるみたいな話に落とし込むと、メタレベルでタグるってことはあんまりないじゃないですか。「#悲しい」というハッシュタグで検索して悲しい人のところを見ようとかってあんまりないですよね。

天野:けっこうレアですね。

中村:レアですよね。やっぱり検索窓という意味でのオブジェクトレベルが多いんですか?

天野:うん、まぁ。

中村:それはやっぱり流入を増やすためのタグづけってけっこう悩みとしてある。

天野:という意味ではオブジェクトとか、あとはクリシェみたいなものとか、そのあたりですかね。

中村:でも、ファンになっていくという意味では、メタレベルみたいな個人的な性格とかその人らしさが出たところで愛着が湧きますよね。

天野:まさにそうですね。渡辺直美さんの支持はやっぱりそういう強さが関係していると思います。

中村:アカウントによっても違うと思うんですけど、どれくらいのレベルがいいとされているんですか?

天野:レベルですか?

中村:あ、レベルじゃないな。バランスですね。

天野:そうですね、目的にもよるんですけど、Instagramを友達とのコミュニケーションを中心に使っている人はこのへんがこっち寄りで、とくにこのへんが強く、メタに寄ったりとかもするし。

中村:メタレベル寄り。

天野:より拡散させたいとかプロモーションに使いたいとなってくると、このへんとかこのへんが増えてくるかなとかありますかね。

中村:私も、今デパートのInstagramアカウントを運用する中で、このオブジェクトレベルでのハッシュタグの付け方すごいいろいろ検証してるんですけど。

広いものだと流入が多そうだからって「#コーデ」とかってやっちゃうと、最初はバーンって伸びるんですけど流れるスピードも早いのですごい止まりがち。本当によっぽど個性的な投稿じゃないと伸びなくて。「#ニットワンピ」とか、ある程度限定したフレーズにしてあげないと伸びないなと。

検索する側の気持ちとしても「#コーデ」というザクッとしたのってたぶん見なくて、なにか悩んでたり知りたいと思ったときに検索をするので。「#リップ」だけじゃやっぱり反応がなくて、「#モテリップで〇〇」とか「#赤リップ」とか。そのへんの検証がすごいやってて楽しいんですよね。

天野:そういう、広く一般的なものとより具体的なものを。

中村:掛け合わせて。

天野:バランスを検証しながらやられるってことですよね。

「タグる」文化はユーザー発生的

中村:あと「#女子力向上委員会」とか「#きょコ」というハッシュタグが出てきてて。

天野:きょこ? きょこですか?

中村:今日のコーデ、きょコ。「#きのコ」とかも出てきてて。昨日のコーデ。「なんじゃそりゃ?」みたいな感じですけど(笑)。

天野:略す文化ありますよね。

中村:そうなんですよね。独自に出てくるのはどっちかというとその私的言い回しみたいなところとかですか?

天野:そうですね。そういう一般的に使われているものを自分なりに言い換えるものとかがあって。なので、けっこうハッシュタグのリサーチも難しいんですよね。自分流にどんどん言い換えられていったりとか、バーっと増殖していくという。

中村:そうですね。でも、さっきのニコニコ動画のカルチャーとはやっぱり自分で作っていくもの、非常に自然発生にできたり、そのあたりとか。

天野:まさにそうですね。ハッシュタグも別にルールってないわけですよね。誰かが決めたルールというよりはユーザーが自発的に作って広げていくもので、僕はそれがすばらしいと思っているんです。

優劣の話でなく差の話でいうと、「ググる」というのはやっぱりアルゴリズムが決まっていて、誰がそのワードで検索しても同じ結果が出る。

中村:確かに確かに。

天野:「タグる」というのはもっとユーザー発生的、ボトム的。みんなでタグをつけていくし、タグの中でどの情報に出会うかはその人次第みたいなところがあるし、さっきも言ったように、ルールが決められていないので自分たちでその枠組みを作っていける。

だからハッシュタグも、たぶんすごい数生まれているんですよね。全部で何種類あるか数えたことはないですけど。そういうところがおもしろい文化だと思っています。

つけたくなるタグ、見たくなるタグ

中村:なるほど。タグは見てるとキリがないと思うんですけど、新しいタグとかタグの使い方とか、どういうアカウントを見てリサーチされているんですか?

天野:そうですね、でも、やっぱり有名な人から広まっていく節もあるから、インフルエンサーっぽい人がどういうのを使ってるのかは見るようにはしていますね。

中村:ふだんチェックしてるアカウントとかあるんですか?

天野:ふだんチェックしてるアカウントですか。基本はInstagramのフォロワー数のランキングが高い人を見るようにしています。

中村:なるほど。渡辺直美さんとか、(水原)希子ちゃんとか。

天野:そうそう。そういうところから広まっていくものもあると思うし、個別に見ていくのも大事だと思います。逆にどういうのを見ているとか。

中村:でも、私は友達の投稿が多いかもしれないですね。

逆に最近悩むのは、企業のPRとかでイベント名+なにかハッシュタグを考えたいというのってすごく多いなと思って。よくフォトブースとかを制作するんですけど、それにどういうタグをつけるかという相談をめちゃくちゃ受けるんですよ。

あまりにも商品名バーンでも嫌らしいし、例えば沖縄旅行だったら「#行こうよ沖縄」とか、ちょっと文章っぽくするのが今流行ってるのかなと思って。動詞化してるハッシュタグ、それはもしかしたらメタレベルになるのかもしれないんですけど。そのあたりは正解ってないじゃないですか。つけたくなって見たくなるタグのバランスってすごい難しいなと思って。

天野:おもしろいですね。動詞化しているみたいな話とか、やっぱりそういうトレンドもあるんでしょうね。

中村:そこに参加したくなる、「#行こうよ沖縄」だったら「じゃあ沖縄行こうかな」だし、「#早起き楽しい」みたいなタグで……オブジェクティブだと自分の事にしづらいけど、メタレベルに……オブジェクト×メタレベルとか、この真ん中の種類のタグを最近PRでは使うかなと思ってて。

天野:おもしろいですね。なるほど。その話もらっていいですか?

(会場笑)

中村:どうぞ(笑)。

天野:この中間が大事なんですよって(笑)。そうかもしれませんね。なるほど。

そうですね、今後も、ハッシュタグもフォローできるようになったりとか、Instagramの機能もどんどん増えていくし。今日喋ったのは現時点でのスケッチみたいな感じで、これは細かいのでぜひ書籍で見ていただければと思いますが。

中村:そうですね。本に細かく書いてありますよね。

天野:こんなことをやっていきたいなと。

中村:ちら見せでしたね(笑)。

天野:はい。細かいのでね。

SNSをうまく活用するWARBY PARKER社

天野:これはケーススタディみたいな感じで紹介している話なんですけれども、「WARBY PARKER」という海外の眼鏡ブランドがありますね。海外のビジネス雑誌で2015年に一番イノベーティブだった企業だと認定された会社です。本当にスタートアップなんですけど、この年AppleとかGoogleとかFacebookよりもよかったねと評価されたところです。

いろんなことをやっているんですけど、僕がこの話に引きつけて言っているのは、施策がおもしろいなと思ってて。「Home Try-On」といって、眼鏡を買おうと思っている人のところに直接送っちゃう。実店舗よりECに力をすごい入れているんですよね。これでどの眼鏡をつけたら似合うかなというのを、ユーザーがこの写真見たりこう……。

中村:あ、全部違う眼鏡つけてるんですね。

天野:そうなんです。例えばハッシュタグでシェアしたり友達に送ったりして、そこでコミュニケーションが発生するわけです。友達に推奨してもらうと買わざるをえないみたいなところもあるし、そういう仕組みもうまいと思います。

中村:先、送っちゃうという。

天野:そうそう。

中村:これはレンタルですか?

天野:レンタルですね。だから買うもの以外は返すんですけど。

中村:でも確かに、女子会でみんなで(眼鏡を)かけるとか、家族でとか、やりようがいろいろ浮かびますもんね。送られた側にも。

天野:まさに。そういう意味でこれもユーザーがシェアしたくなるような気持ちを上手く使った事例だと思います。

例えば眼鏡を売るといったときに、どう接客するかとか、そこでどう買ってもらう気持ちを作るかということは一番大事なんですけど、売り場だけが顧客との接点を築く場じゃないんだと。なおかつ、それを逆にうまくやることで今のオンラインに馴染んだ世代向けのブランドを構築したというところが評価ポイントなんですよね。

中村:眼鏡というところも絶妙ですね。服だったらできないじゃないですか。サイズとか。

天野:そうですね。確かにね。

中村:食べ物だったら送れないし、小物というのがいいですね。男女問わずできるし。

天野:こういう事例を見ると、ユーザーのコミュニケーションの場に入ることがSNS活用のエッセンスじゃないかと思いますし、ハッシュタグというものをうまく使った、それもけっこう早い、2年前ぐらいからこういうことをずっとやってるのが成功の秘訣かなと思います。

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