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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
常識を超えた取り組みが効率に繋がる。パプアニューギニア海産、未来食堂が語る、これからの新しい働き方(全10記事)
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小林せかい氏(以下、小林):それでははじめさせていただきます。今日、武藤さんが京都のお土産を持ってきてくださいました。
工場が大阪にありまして、大阪からわざわざこのイベントのために来てくださってるんですよ。なのでまず、武藤さんを拍手で迎えましょう。武藤さん、ようこそ。
(会場拍手)
小林:ありがとうございます。告知では「初の顔合わせ」と書いていたんですけど、本当に初顔合わせです。
武藤北斗氏(以下、武藤):そうですね。本当に最初だったので、イメージ的に、ちょっとこわかったんですよね。こわいというか……「怒られないかな?」っていうのが、1番の心配事だったんですけど。でもいい笑顔で、ありがとうございます。
小林:あらためて、自己紹介をさせていただきます。それでは武藤さんから。
武藤:はい。パプアニューギニア海産という、エビの会社をやっています。
私は2代目で、父がまだ現役で社長をやっているんですが、もう30年、パプアニューギニアのエビ一筋でやっています。
もともとは、現地の人たちを支える……というと言い方がちょっと偉そうな感じはするんですが、対等なかたちで日本で販売していく。そのなかで、オーガニックであることや無添加であるっていうことを考えて販売しています。
東日本大震災があったときは石巻にいたんです。そこで会社が流されて、大事な人が亡くなったり生き残ったりというなかで、いろいろと働き方を真剣に考えるようになりました。
それを4年前にはじめて、いつの間にか本まで出して、こうやって話をさせてもらえるようになってますが、本当に自分が正しいと思うことを、ただコツコツとやっているだけです。今日は2時間、どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
小林:ちなみに武藤さんの『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』を読んだよっていう方は、どれぐらいいらっしゃいますか?
武藤さんのことを知っている、聞いたことがある方はテレビを通してですかね? けっこう知ってる方が読んでくださっているんですね。でも、まずはなぜ武藤さんがここにいるのか、みたいな。フリースケジュールなどについて話しておいたほうが楽しいかもしれないですね。
武藤:そうですね。僕はこのエビの工場をやってるわけですが、社員が僕を入れて2名。パート従業員が、今は17名です。要するに、その17名がメインでやっている工場で、好きな日に出勤してください、好きな日に休んでください、と。そして、休む場合は一切連絡がいりません。そういうことをはじめたのが、4年前です。
それまでは普通に、何曜日に来て何時から何時まで働いてくださいっていうかたちだったんですが、やり方を変えて。もうぜんぶ自由。朝起きて来たければ来ればいいし、起きて行きたくなければ来なくていいし。
ただ、それをやったら、逆に効率が上がりました。「縛る」かたちが生産性を生むと言われていた今までの食品工場のなかで、逆に自由にすることで生産性が上がったということが、僕も驚きでした。そして、社会のなかで働いてる人たちの驚きにもなって。
そうした「フリースケジュール」というものを、もう4年やっています。
小林:フリースケジュールのお話をすると、よく聞かれる質問があるんですよね?
武藤:そうですね。基本的に、「好きな日に来ていいよ」っていうと、みんなパッと来ないって考えるんですよ。だけどそれは完全な間違いで。それ自体が、もう固定概念に縛られている。来るんですよ。僕が話をする際は、「自由だけど従業員は来ますよ」っていうところを前提に、話を聞いてくださいとお願いしています。
これは時給だからっていうところがあります。社員ではなくてパートさんなので、1時間あたりいくらっていう給料をもらっている。その人たちには、必要なお金、1か月のお金があって。だから就職した。その人に対して来いと言う必要は、まったくなかったんだということが僕の気付きです。
小林:そのフリースケジュールが注目されて、この間テレビに出られていましたよね。
武藤:そうですね。もう1個すごく注目されているのが、嫌いな仕事はやってはいけないっていうこと。最近はどちらかというと、そっちが注目されてるんです。いろんなことに立ち向かってがんばっていくことで人間は成長していく。そういうイメージがやっぱり、すごく強いと思うんですけど。
僕は、会社のなかで嫌いなことまで立ち向かう必要はないんじゃないかと思います。人生のなかで、自分が生活するなかで大変なことっていっぱいあると思うんですよ。そっちをがんばればいいんじゃないか。会社でエビを剥くことに立ち向かう必要があるのかと。
小林:エビに立ち向かう必要はないって、断言されてますよね、本のなかでも。
武藤:そうですね。日に日にその思いは募るんです。今は自信を持って、そのほうが私生活も豊かになるし、逆に好きな仕事が生きてくると思ってます。
小林:ちなみに、その「嫌いなことはしなくていい」というところにも、よくある質問はあるんですか?
武藤:「みんな好きなことばっかりやって、ちゃんとまわるの?」「どっちかに偏るんじゃないの?」っていう言われ方をするんですけど、これも偏らないですね。人間はロボットじゃないですから、好きなことと嫌いなことはすごく分かれる。
今はないですけど、「もし全員が嫌いな作業が出てきたらどうするの?」って聞かれるんですが、そのときは単純に、みんなで平等にやればいいんじゃないですかと。重要なのは、嫌いなことをやらないっていうことよりも、自分で選択できるということ。そのうえでみんなで相談して、どう対処していくかを考えることが重要なので、そういう話をしてます。
小林:すごい、自己紹介がいつの間にかけっこう(笑)。
武藤:僕のばっか話してる(笑)。
小林:でも、けっこう話さないとやっぱり「なんでエビ工場?」って不思議がられたり。
武藤:そうですね。「なんで突然そんなことやりだしたの?」とか。僕はその前は、逆にガチガチの考え方だったんですよ。
小林:監視カメラとかをつける……監視っていうか。
武藤:はい、監視カメラです。監視カメラをつけて。そうすれば様子は見えるんですが、要するに信用してないんですよね。どこかでさぼるんじゃないかと。それをプレッシャーにすることによって、みんなが一生懸命働くっていう考え方でした。
今思うと気持ち悪いですけど、そういう考え方ではありました。気持ち悪いですか? その考え方。
小林:いやあ、どっちも当たり前だなって感じます。
武藤:そうですよね。カメラをつけるっていうこと自体は、今は別にそんなに不思議なことではないのかな、とは思うんですけど。まあ両方、極端ですよね。
小林:それでは。私は未来食堂の小林と申しまして。こんにちは。未来食堂を知ってるよっていう方は、どのくらい……。
(会場挙手)
武藤:すっごい!
小林:でもここ江戸だから(笑)。
武藤:これは喋る必要もないくらい……うそうそ、喋ってください(笑)。
小林:逆に未来食堂をまったく知らないけど、ちょっと来ちゃった人は?
(会場挙手)
本当ですか? やっぱりいらっしゃるんですね。あんまり説明に時間を割いていてもそんなにおもしろくないと思うので、未来食堂のダイジェストをお話しさせていただきます。
定食屋なんです。東京の神保町ってところにある定食屋で、12席だけです。武藤さんの工場とけっこう似てるところがありまして。従業員がいないんですね。私が個人経営者として経営しています。私が店主です。
でも、店員さんがいないんです。店員さんっていうのはいないけども人が手伝ってる。どういうことかというと、50分手伝うと1食無料という「まかない」っていう仕組みがあって。その仕組みにエントリーした方が、お店を手伝ってくれてるんです。
なので今日は誰もいないかもしれないし、明日は4、5人いるかもしれない。それが、ふたを開けないとわからない。フリースケジュールに加えて、フリーマンというか、誰が来るのか来ないのかっていうのもぜんぜんわからない。だって面接とかしようがないですからね。
そういう仕組みがあって、けっこうおもしろがられてるお店です。ほかにもいろいろあるんですけど、だいたいそこら辺をわかっていただければ。
武藤:僕は1年ぐらい前に小林さんのことを知って、「ただめし」や「まかない」が繋がってるのがおもしろいなって思ったんです。1個1個っていうより。それらがうまい具合にまわって、1日1つの定食じゃないですか。
うまいことまわってる原因はなんだろうな、と思って。1個ずつ足されていってる感じが、すごく心地よかった。それが、僕の第一印象でした。
小林:どうしてご存知だったんですか?
武藤:いやあ、覚えてないんですよ、なんだったのか。たぶんネットだとは思うんですけど。あと、僕の書籍の発売された日が小林さんの本とすごく近かったんですよ。
小林:ああ、そうですね。
武藤:2日ぐらいしか違わなくて……。
小林:うん。
武藤:隣に置いてくれてるお店が、すごく多かったんです。
小林:なるほど。
武藤:だから、あっと思って。じっくり本を読んで。テレビやネットもいいんですけどやっぱり本を読むことでグッと中身がわかってくるので。なんか本の宣伝みたいになっちゃいますけど(笑)。本を読んで、本当にすごいなと思いましたね。
小林:テレビだと、その全体の絡みがちょっと見えづらかったですか?
武藤:やっぱりテレビの持っていきたい方向があるじゃないですか。その方向と小林さんが本来言いたい方向が一緒だったらいいんですけど。僕は本を読んだときに、もっと深いなって、思いました。
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