
2025.03.04
「見送り失注」の7割は、2年以に再検討の可能性あり 継続的な接点作りとアポ獲得につながるメールの極意
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小林佑樹氏(以下、小林):そういった規模のプロジェクトって、大きいものであれば、遠峰さんとか佐藤さんが実際に声かけて営業しに行くのがあると思うんですけども。小さいプロジェクトも、けっこう声かけにいったりするんですか?
遠峰正之氏(以下、遠峰):そうですね、声をかけることもあります。ただ、大きいものを狙って小さくなることは、正直あります。ですが、基本的には今はそんなに社内の人数も多くないので、問い合わせ対応で手一杯というありがたい状況だと思っています。
小林:けっこうWebページから来られるんですか?
遠峰:そうですね。数値でいうと、本当に家入(一真)が戻る直前と直後の5ヶ月で案件数を比較すると、彼が戻ってから約20倍ぐらいに増えたんですね。流通金額でいえば、1月あたりの支援額も4倍になったり。ちょっとまだ正直バタバタして、問い合わせ数に対して、会社の成長が追いついてないのが現状ではあるかもしれないです。その部分は人を増やしたりしつつ、急ピッチで体制を整えているところです。
小林:佐藤さん、いかがですか? 声かけたりしますか?
佐藤貞行氏(以下、佐藤):しますね。ただ、クラウドファンディングチームだけが声をかけにいくというわけではありません。
パルコという会社はもともと、規模の大きい方とはもちろんご一緒にビジネスをさせていただくんですけれど、規模の小さいというか、アーリーステージ、スタートアップのファッションブランドさんといち早く仲良くなって、一緒にお仕事させていただく。「一緒に、頭も体も汗かいてやりましょうね、がんばりましょうね」が、いわゆるインキュベーションという発想なんです。それが好きで、パルコという会社に入ってくる人間だらけなんですね。
僕、一時期は人事で採用とかもやってたんですけど、だいたいそういうことをやりたいという男女がたくさん来てくださる。そういった人間が社員になっている。パルコは国内に18店舗あり、札幌から福岡、熊本、松本や広島など、地方の都市に出店させていただいています。そこには、そういったインキュベートが好きな正社員が、要はオンサイトで働くんです。転勤で、少なくとも2〜3年くらいその土地に住んで、働きます。
そうすると、社員がその街々で「こんなおもしろい人がいますよ」と、仲良くなる。仲良くなったおもしろい人、ビジネスとしてなかなかご一緒できないけれど、クラウドファンディングならいけるんじゃないか。社員から、いろんなエリアから提案がきたりするんです。
オープンエントリーも当然たくさんお声がけいただくんですけど、私たちもまだそんなにクラウドファンディング専任チームの人数がいるわけではないですし。夢を持って一生懸命に情熱をかたむけてやっていらっしゃる方にフルサポートできないと、逆に申しわけない。ちょっと真面目な企業イメージというか、影響もあったりするので。
今は、オープンエントリーをたくさんいただいているんですけれど。手の回る範囲でしっかりサポートできる案件に絞ってやらせていただいている感じですね。
小林:ありがとうございます。そういった感じのプロジェクトはたくさんあるんですけども、どうしてもクラウドファンディングという名前を聞くと、資金集めが一番のメインイメージになっていると思うんですけど。
本当に遠峰さんもおっしゃられていたとおり、資金集めだけじゃなくて、意外といろんな企業がいろんな使い方をクラウドファンディングでしているのをご紹介いただければなぁと思ったんです。遠峰さん、ご紹介していただいても大丈夫ですか?
遠峰:先ほど申し伝えたとおりにはなるんですけれども、うちが実は「All or Nothing(オールオアナッシング)」と、「All in(オールイン)」という2つのファンディング方式を持ってまして。前者が、目標金額に達しなかったらファンディングされない方法、後者は、逆に目標金額に達しなくてもその分が入ってくる方法です。
例えば、100万円の目標で50万円が集まった場合。その50万円が全額、プロジェクトオーナーさんと呼んでるんですけども、なにかやりたい方のところに入っていくやり方をよくとっているんです。
今ですと、2:8で、多くの方がAll inという方式でやっている。うちとして、その審査基準は、その支援金が集まらなくてもそのプロジェクトができるか否かで判断しているんです。どちらかというと、本当にこれがなきゃ、この金額がなきゃプロジェクトできないんですという方ではなくて、本当にPRの一環として使う方が最近は増えてきた印象をすごく受けています。
それは1つ、日本の中でのクラウドファンディングも徐々に浸透してきてるんだなぁと感じる数字というか、現実なんだろうなと思っていますね。
小林:具体的なブランドさんの話はできたりしますか?
遠峰:そうですね、例えばプレでうちがANREALAGEさんというブランドが弊社を使ってくれたというか、クラウドファンディングに踏み切ってくれた理由が2つありました。1つは、本当に彼らが日常的に行っている「スポンサー集め」という方法の中の新しいチャネルとして、利用して試してみたかったというのが1つ。
あとは、実際にこれまで直接のエンドユーザーとつながる機会がそれほど多くなかったらしいので、そのリアクションを純粋に見てみたかった、試してみたいという気持ちがANREALAGEさんでもあった。そこで、実際に実施に至って……というような感じです。
それも資金集めというよりも、本当に新しい試みの1つといったかたちでとらえられて実施してくれた感じはありました。
小林:佐藤さん、いかがですか?
佐藤:はい。そうですね、資金集めに大きく影響しているかもしれないんですけど、海外の方に「クラウドファンディングやってるよ」「クラウドファンディングで成功したよ」というのが、けっこういいレピュテーションになる。
例えば、海外のファッション系のベンチャー企業さんが日本に初上陸をされる時なんかに、目的はテストマーケというわけなんですけれども、クラウドファンディングを使って日本に初上陸するのはけっこう自然というんでしょうか。スッと理解できるというか、なにかご縁があってそういうお話をさせていただけると、「いいよね」と。しかも、売り場も一緒にあるんだよねとか。
もう1つは、逆に日本の、志が高かったり、才能があったり、情熱があったりするデザイナーさんが海外に出られる時。当然、ファンディングは資金調達の意味合いもあるんですが、これを使ってある程度のまとまったお金ができる。
例えばニューヨークでトレードショーに出る場合。ニューヨークでインスタレーションやってますとかというと、けっこう現地のファッションプレスの方とかメディアの方の受けが良くなります。
名前は言えないんですけど、あるブランドさんが、まさに弊社のクラウドファンディングでニューヨークのトレードショーに行かれたんですね。もともと実力あるブランドさんなんで、もう100パーセント、ブランドさんのお力の賜物なんですけど。
ニューヨークのショーだったんだけど、イタリア『Vogue』編集長の目に止まって話した時に、「今度、時間ないけどミラノにも来てくれよ」みたいな話になったんです。当然、ニューヨークの場で「ミラノに来てくれ」と言われても、業界のみなさんなんでよくわかると思うんですけど(笑)。めちゃうちゃタイトなスピードなんですね。ものすごいがんばって間に合わせて、ミラノに行ったんですよ。
そうしたら、ミラノでなにが起こったかというと、今度はフォルクスワーゲンさんの偉い方の目に止まって。最終的にはコンペだったんですけど、日本のフォルクスワーゲンさんの、ディーラーの女性の制服がすべてそのブランドさんになったんです。
これもう100パーセント、そのブランドさんの努力やエネルギー、そもそもの部分のスキル、ブランディングの賜物なんですけど。初めの1歩のちょっとしたきっかけでクラウドファンディングを入れるというのが、欧米ではいい方に向かう。少なくともアメリカでは、ちょっといい感じになるというんですか(笑)。
小林:けっこうもう、普通に認識としてあるんですか?
佐藤:うーん、しょっちゅう(アメリカへ)行っている人間じゃないのでわからないんですけど(笑)。なんかそういう感じは受けます。
小林:ありがとうございます。ではお時間もあれなので最後のテーマに行きたいんですけども。最後は、CAMPFIREさんとBOOSTERさんが最終的に目指す、今見えている新しいファッションの世界というのがどういうものかをお2人にお話ししていただければなと思っています。遠峰さんいかがでしょう?
遠峰:うちが目指す新しいファッションの世界。大げさなのかもしれないんですけど、僕らが常日頃からいっているのが、「ファッションの民主化をやりましょう」です。
それはどういうことかというと、本当に欲しい人、(服を)買いたい人が、作り手と直接つながるような世の中になれば、もっと洋服としておもしろいものが出てくるんじゃないかと思っているんです。
あと、作り手と買い手、欲しい人が一緒にブランドを作っていくような、成長していくような場所になればいいなというのは、僕らが1つやっていきたいかたちではあります。
今後のうちのファッション事業の1つの発展として、クラウドファンディングはどうしてもなにかやりたいタイミングで、「じゃあ、一緒にやろうかな」という感じのものだったと思うんです。それを、もう少し時間軸の長いお付き合いをさせていただき、ブランドに寄り添い、その成長をサポートさせていただくかたちの事業を考えています。クラウドファンディングの新しいかたちとしてご提案していきたいなと思っています。
そうすることで、プラットフォーマーである僕らを通じて、ブランドさんが成長していって、どんどん大きくなっていくような形を作りたいと思っているような感じですね。
小林:佐藤さんはいかがでしょうか?
佐藤:はい。2つあります。1つは、突拍子もない服作りをされるブランドさんがもっと増えるファッション関連業界になるとおもしろいなぁなんて思っていて。クラウドファンディングは、それができる仕組みだと思うんですよね。
普通は賛否両論が起きそうだなぁと思ったとき、ビジネスとして考えちゃうと「成り行かないなぁ」なんて思うんです。クリエイターさんにとって、これは当たり前なんですけど、ビジネスですし。だから、マーケティングとか、いろいろ考えて抑制しながらものを作ってらっしゃるんですけど。
クラウドファンディング、もしAll or Nothingでいくとしたら、もうこの時代、レピュテーションリスク(風評リスク)は、僕はないと思ってるんです。でも、そう感じる方もいらっしゃっるかもしれませんが。お金のリスクは少なくともあまりないはずなので、本当に心の底から作り手の方が「自分はこういうのが作りたいんだ」にチャレンジできる。それは、売れ筋に同質化しない、ひょっとしたら他にどこにもないものにつながる。
そういうファッション関連業界になると面白いな、と。今は、POSとかもうデータ管理されちゃうので。例えば、12月1日の気温は何度で、天候はこれぐらいで、みたいな。どんな服を作れば売れるか。だいたいどこのブランドさんも大企業だとデータ予測して、基本的にそれをいかに早く作って、デリバリーして、店頭で販売員さんラックにかけて売るか。これが勝負になっちゃうんですけど。
お客様からすると、いいこともあるんですけど、一方、トレンドとか売れ筋の商品に同質化しちゃう。
それはそれで尊いですけど、パルコとしてはそれだけじゃなくて、もっと多様性というんですかね、同質化しない、突拍子もないというのも含めた、いろんなブランドさん、ものづくりをされる方がもっと出てくるといいなぁと思っているんです。
もう1つは、長くなっちゃって申しわけないですけど、生活者の方と一緒にものづくりしていくファッション業界、ユーザーイノベーションがなんかいいなぁと思っていて。
クラウドファンディングを始めた当初、スマイルズの遠山さんがすごく素敵な言葉を教えてくださいました。「日本が誇れるもの。私たち一人ひとりができること。そのとても素敵な2つのことが、ここに実現するわけです。一人ひとりの意思という水で、見たことのない花が咲きますように」と。そんなメッセージをくださったんです。
そういった世界観と言いますか、そういうものができるような、今よりさらに素敵なファッション業界にしていきたいなとは思います。
小林:そうしたらBOOSTERのホームページとかは、コンシューマーが載っているカタログみたいなかたちになっていく?
佐藤:本当はそういうふうにしていきたいんですけどね。そうなれるようにがんばっていきたいと思います。
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