
2025.03.04
「見送り失注」の7割は、2年以に再検討の可能性あり 継続的な接点作りとアポ獲得につながるメールの極意
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小林佑樹氏(以下、小林):そんなかたちでクラウドファンディングを始めていったんですけれども。ファッション業界の中にクラウドファンディングを持っていくにあたって、その当初と今で、認識の変化があったのかなぁと考えているんです。そこのあたりはなにか肌で感じることってあったりしますか? 遠峰さん、なにかありますか?
遠峰正之氏(以下、遠峰):そうですね。今佐藤さんがすごくいいことを言ったので、あまり言うことがないんですが(笑)。
小林:(笑)。
遠峰:僕が入ったのが2016年7月からです。たぶん、佐藤さんが昔からやられているので、変化に対してはすごく敏感とは思うんですけども。
一言でいえば、未だに敬遠されるというか。「ブランドイメージを損なうんじゃないか」など、そもそも「資金集め」を公にすることに対して抵抗感を持っている方は、正直まだまだいらっしゃると実感しているところです。
ただその中にも、弊社としてもクラウドファンディングを始めて、その言葉が徐々に浸透してきて「なにか一緒におもしろいことをやりましょうよ」とお声がけいただくことも実際にあります。お取り組みを始めてから、それを見たほかのブランド関係者の方が「うちもこういうことをやりたいんですけど」と言ってくれることもあるので。
今はまさに過渡期というか。これからどんどん浸透していく兆しが出てきているのかなと、実際に感じているところではあるので、ここ1〜2年がクラウドファンディングがファッション業界に浸透するかどうかの勝負になるかもしれません。
小林:まだまだ敬遠されているブランドさんには、遠峰さんはどうやってクラウドファンディングの魅力を説明するんですか?
遠峰:言い方として気をつけているのが、資金調達の文脈だけで伝えないこと。例えば、僕がよく言っているのは「コミュニティづくり」なんです。
クラウドファンディングの特徴として、エンドユーザーと言いますか、お店を介せず、直接自分の洋服を買ってくれる方だったり、自分の本を買ってくれる方とつながったり。または、プラットフォーム上で直接コミュニケーションをとれるので、エンゲージメントというか、結びつきの強いユーザーと最初に出会う場としてすごく効果的なんですね。
ビジネス的な目線でいうと、プラットフォームに出ることでPR効果もあるんですけれど。あとは、大きな企業さんに対しては「テストマーケとして使ってください」とお伝えしていますね。
簡単にいうと、受注販売みたいな考え方でクラウドファンディングはできるので、サンプルができた時点でモノを世に出して、実際に(支援が)集まった分だけ受注生産みたいに販売すると、コストとしても、リスクヘッジが可能なんです。
そういった「ビジネス的な面でお役に立てるんじゃないでしょうか」というようなことを話すと、「あぁ、じゃあこういったことは一緒にできるかもしれないですね」みたいなアイデアが向こうから出てきたり、コミュニケーションが始まったりするので。
「資金集め」というダイレクトな言い方はあまりしないようにしてる、というのは気をつけています。
小林:文脈を変えているということですね。佐藤さんいかがですか?
佐藤貞行氏(以下、佐藤):私たちがやっているクラウドファンディング「BOOSTER(ブースター)」はですね、CAMPFIREさんを先生に……(笑)。
小林:(笑)。
佐藤:CAMPFIREさんを先生にしているような感じなんです。規模もかなりスモールですし。もともと、ビジネスというより業界貢献みたいな文脈で始めさせていただいた経緯があります。スモールなので……私の肌感覚でどこまで正しいかを話すかは、ちょっとあるんですけれど。
2011年に、今で言う投資型のクラウドファンディングをやったとき。ベンチャー界隈の言葉でいうとスタートアップですね。ファッションデザイナーでブランドを立ち上げたい方や、海外にいながら日本で本格的にブランド展開をリスタートされる方を選出させていただいたり、候補になる方を口説きにいくわけですよね。
パルコでは、当然ながら私だけでなく、もっとファッション業界につながっている人間はたくさん社内にいます。そういう人間にも紹介してもらって、パルコと仲のいいデザイナーさんに声をかけてみたんです。だいたい8:2で否定されました。
否定された理由は、遠峰さんがおっしゃったとおりです(笑)。5年前の当時でも、「助けてもらっている感がある」「ブランドのイメージを毀損する」といったご意見が非常に多かったですね。
それでも、残りの2割には「こういったやり方で、ファッション業界だけの殻に閉じこもらないで、いろんな業界の方、生活者と混ざり合って新しいクリエイションを起こしていくんだ」と、すごく熱烈に肯定的な方もいらっしゃいました。ファッション業界の人や、スマイルズの遠山(正道)さんにも共感していただいたり、ご協力くださったんですけど。
2010年から準備していて、2011年にローンチ。その4年後である2014年12月に、投資型から購買型にシフトチェンジしたんです。その準備をする時に、前回と同じように、パルコが仲のいいデザイナーさんに話をしにいくわけですね。
そのとき、前回は感覚値として8:2で否定が多かったのが、7:3まではいかないんですけど、6:4くらいでポジティブに受け止めてくださるクリエイターの方がすごく増えていたんです。
当時から遠山さんもおっしゃっていたのですが、僕らとしては、ファッション業界は、もっと窓を開いて、カーテンも開けて、どんどん新しい風を業界に入れるようなカタチで、生活者と一緒にブランディングを考えたり、アイテムを考えたり、プロモーション策を考えたりしていくことを提案しました。
極論を言うと、2010年が「俺たちはプロなんだから、素人と一緒には恥ずかしくてできないよ」だったとすると、2014年にはそれがぜんぜん恥ずかしいことではなく「むしろ、かっこいいじゃん」「いろんな人たちと混ざり合っておもしろい、新しいクリエイティブをやろう」と感じていただける方が、増えたのかなぁという感じはします。
小林:魅力に気づいてもらえたという感じなんですかね?
佐藤:そうですね。それはやっぱり、CAMPFIREさんをはじめとして、先人というか、クラウドファンディング業界を先行されたプラットフォーマーさんのご尽力なんじゃないかと。
もう1つは、もっとオープンに……。時代的にもよくベンチャーさん界隈ではオープン・イノベーションというのがバズワードになっていますけれど、そういった空気感が熟成されているんじゃないかなと、なんとなく思います。
小林:話がずれるんですけど、事前打ち合わせの時から佐藤さんはCAMPFIREさんをよく参考にしていて、先生ともおっしゃってたんですけど。佐藤さんにとってどのあたりで「CAMPFIREがいいな」と思っているんですか?
佐藤:大先輩なのであれなんですけど。考え方がすごく似ているなというのはあります。なにかというと、CAMPFIREさんは、大企業などのテストマーケ、著名なタレントさんのプロジェクトもやっているんですけど、ベースは個人や小規模な組織の方々のスケールアウトなど、初めの一歩を応援しているところがあります。
パルコのインキュベート精神みたいな、そんなものをスピリットとしてすごく感じるので。目指している方向が近いし、規模も大きくやっていらっしゃいますし、そういったところが非常に(いいなと思っている)。
小林:遠峰さんは、狙いとおりですか?
遠峰:いや、なんか、恐縮です(笑)。ありがとうございます。
小林:ははは(笑)。なるほど、ありがとうございます。
次のテーマなんですけど、認識の変化があって、いろんなクライアントさんとかが参加してくださっているんですけれども。どうしても大きなプロジェクトさんが注目されがちなんですが、でも今おっしゃられたみたいに、個人が主役になるというのがクラウドファンディングの一番魅力的なとこであるわけじゃないですか。
では、実際に「こんなおもしろいクラウドファンディング、個人でやってがんばってるクラウドファンディングもあるよ」というのを、いくつか紹介していただきたいんです。そこは遠峰さん、いかがでしょうか?
遠峰:弊社の場合、ファッション関係で比較的小さいというか、個人でやられている案件ですと、自分でWebメディアを作られている女性がいらっしゃいました。その方がパリコレのタイミングで、現地へ取材に行きたいと。それで出資をうちで募っていただいて。個人でも20万強を集めた案件だったんです。
あとは、実は全部の案件をプラットフォーム上にオープンにしてるわけじゃないんですけれども、本当に個人で使っていただく方も多くて。その辺りは、まさに佐藤さんにおっしゃっていただいた通りです。例えば、「iPhoneを壊してそれを直したいです」とか。それには7万円とか集まったりしてたんです。
または「嫁に寿司をおごりたいからみんな応援してください」みたいな、そういうライトなものも実はあったりしていて。たまに炎上しちゃったりするんですけど(笑)。
(会場笑)
遠峰:弊社代表の家入(一真)が、基本的にはさっき佐藤さんがおっしゃったとおり、「誰もが声を上げられる世界に」「資金調達の民主化」とよく言っているんですけれども。
これまで一部の人や組織にしか与えられなかったものを、インターネットを通じて、一般の人にも気軽に使えるものにしようということなんですが、本当に個人の想いが詰まったプロジェクトも色々ありますし、良くも悪くも多種多様なプロジェクトが日々アップされているので。
「こんなことやってもいいのかなぁ」みたいに思わないでいただけると、ありがたいなと思います。
小林:けっこうおもしろいので。巫女さんのやつありましたよね?
遠峰:巫女もありましたね。
小林:巫女さんも、あれは個人で始めているんですね?
遠峰:巫女は、あれはうちの事業の1つで、「妄想コレクション」「モーコレ」というタイトルをつけてやってるものです。一般の方から「こんな商品があったらいいよね」をネット上で募っていまして、その中からうちの責任者が「これだったら商品化したらおもしろそうだよね」を実際に形にしていく事業をやっているんです。
あれも当初は、僕らもぜんぜん想像はしていなかったんですけれども。結局、200万円ぐらい集まって、実際に今度、商品がうちのオフィスに200着ぐらい来るんですけれども……。
小林:巫女さんが(笑)。
遠峰:そうですね(笑)。なので、打ち合わせ室が全部潰れるみたいなのはあるんですけど。気軽にうちに問い合わせしていただければ、もしかしたら、自分のやりたいことは実現できるということがあります。お気軽にお問い合わせいただけると、おもしろいこともできるんじゃないのかなとは思います。
小林:佐藤さん、いかがですか?
佐藤:はい。個人というか、大企業ではない方でいうと。第2部に、実際にプロジェクトをご経験されたかたちでご登壇いただく「成遂寺」というものがあります。バンタン(デザイン研究所)さんをご卒業されたあと、ワークする場所がないというか、コミュニティが必要だということで、ものすごく情熱を持って、ほぼ個人の方の集合体みたいなかたちで実行された方が実際に登壇されるんです。もうその方に……。
小林:ははは(笑)。
佐藤:もう1つは、buntさんというブランドさんで、ほぼ1人でされているプロジェクトで。地方の工場や綿などの素材を使われていて、ストーリーを重視したブランディングや商品開発されているブランドさんだったんですけれど。
パルコのクラウドファンドって、規模はあまり広げず、そんなに案件数はやらない代わりに、1つの特色として、パルコという商業施設、リアルなチャネルを持っているプラットフォーマーというのがあるんです。
よく言われることなんですけれど、クラウドファンディングって、別にWebでお金を集めてそれで終わりじゃなくて、実はお金を集めた後が本当のスタートだったりします。
もしくは、ファンディングしている間も、当然Webのマーケティングが大事なんですけれど、より広くクラウドファンディングというサービス自体を日本に広める意味では、パルコというリアルなチャネルを掛け合わせて、取り入れてやってくのは1つあるのかなと思っています。
個人に近いブランドさんのプロジェクトでも、クラウドファンディングと同じ時期に、例えば渋谷パルコの、ポップアップショップスペースみたいなところでリアルな販路を提供しました。ポップアップショップをやりながら、ファンディングもする。
クラウドファンディングを終わられた後もしっかり2週間くらいポップアップショップの機会をご提供する。そういった、規模にとらわれず、リアルなチャネルでサポートする。クラウドファンディングでは、そういうことをかなり意識するようにはしています。
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