2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:それでは、トークセッションに入りたいと思います。先ほどお話しいただきました飯島さま、手老さま、弊社の大坂に加えて、トークセッションではもう1人入りますので、名前を紹介させていただければと思います。(壇上)左端におります、小佐野と申します。簡単に略歴をご紹介させていただきます。
小佐野は、2003年に長野県の地方紙『信濃毎日新聞』を発行する信濃毎日新聞社に入社しました。事件・事故や行政などの取材、政治部等を経験しまして、2013年に独立。ライターとして、国内の鉄道計画や海外の鉄道事業をテーマに取材・執筆活動をしてきました。2015年11月から東洋経済新報社の記者として活動しております。それでは、大坂記者よろしくお願いします。
大坂直樹氏(以下、大坂):では、これからトークセッションということで始めたいと思います。そのとっかかりとして、同僚の小佐野に……。僕はさっき、かなり経営多角化のこと、ホテルとかオフィスとかでかい話ばっかりしてましたけど、鉄道会社はけっこうこまめに小さい多角化もやってますので、そんな状況を。時間の関係で5分しかないんですけど、超駆け足で解説してもらいます。お願いします。
小佐野景寿氏(以下、小佐野):記者の小佐野と申します。よろしくお願いいたします。では5分ということで、リニアモーターカー並みの疾走感でやっていきたいと思います(笑)。
まずはこちら、鉄道は人を引きつけるコンテンツということで、「鉄道とのコラボが生む話題性」というタイトルをつけさせていただきました。鉄道への関心というのが近年非常に高まっているところがございまして、こちらのセミナーでも鉄道をテーマにするのが今回初めてということなんですけれど、手老さんと飯島さんもテレビ番組に関わられたりしてらっしゃいます。
要するにそれがどういうことかと言いますと、一般の人の鉄道への関心が非常に高まっていることを示していると思います。先ほど紹介にあったんですけど、私も以前は新聞社にいまして、2003年の入社当時に鉄道のネタをやろうとすると「そんなものマニアしか読まないだろう」と言われていたんです。それが退社直前になりますと、上司から「もうすぐ○○系がなくなるらしいじゃないか。あれは記事にしないのか?」と言われたり。
そういう感じで、鉄道というものへの関心が一般に高まっている。そちらとこういったコラボレーションをしたり、あとは鉄道自体のイベントの可能性が、一般への訴求力があるということで拡大してきてるんじゃないかと思います。
では、さっそく次にいきまして、こちらの写真はJR九州の豪華列車とか、あとはJR東日本の豪華列車です。まもなく、来年登場ですね。あと、こちらのピンク色のものは、先ほど手老さんが紹介された、きゃりーぱみゅぱみゅさんとのコラボの電車です。こういったかたちのものがあります。
次にいかせていただきます。まず、鉄道のイベントの集客力がどれくらいすごいかということで、6月22日に私が取材しました、大阪の京阪電鉄(京阪電気鉄道)の「中之島駅ホーム酒場」というイベントを紹介させていただきます。中之島駅というのは、京阪電鉄中之島線という……、本線から少し枝のように出ている路線があるんですが、こちらの終点になります。
そこのホームと停め置いた電車内を会場にして4日間、居酒屋さんのようにしてしまおうというイベントです。写真をご覧いただくとわかるんですけど、私は初日の夕方、始まってからすぐ取材にうかがったんですけれど、ものすごく盛況になりました。中之島駅の1日の乗車人員は平均5832人なんですけども、係の方に聞きましたら、こちらの酒場が5時にオープンして6時の時点ですでに500人を超えているという。
もう、入場制限をするくらいになりまして。1時間で500人を超えているということは、酒場が始まって1時間で1日の乗車人員の10分の1くらいが来ていると。こちらをオンラインで記事化させていただいたんですけど、なんと1日でFacebookの「いいね!」が2万(件)つきました。これだけ反響が大きかったかということに、取材したほうとしても驚いています。
(Facebookで「いいね!」を押した)2万人と言いますと、中之島線の1日の利用者が平均3万何千人ということだそうなので、それに近いくらいの効果があるということです。最近ですと、こちらはかなりインパクトのあるイベントだったのかなと思います。やっぱり、一般の方にすごくウケたというところが大きいのかなと思います。
次にいかせていただきます。そういった一般の方への訴求力を生かしてというところで、キャラクターとのコラボがあります。今回出させていただくのは静岡県の大井川鐵道。蒸気機関車の運転で有名なところですけれど、こちらが絵本・アニメで有名な『きかんしゃトーマス』とのコラボレーションで、2014年から実際に大井川鐵道の蒸気機関車をトーマスにして運行しようというのをやっております。
今年で3年目なんですけど、これが大人気になっています。外国人観光客にかなり人気があって、近くに富士山静岡空港という空港があるので、あちらからインバウンドでけっこう来るそうなんです。こちらは先日決算が出たんですけども、2期連続黒字ということでかなり反響はあると。
2期連続黒字というのは、(大井川鐵道は)経営再建に入ってますので、債権放棄を受けたりということもあるんですけど、ただ、このトーマスとのコラボで非常に大きな成果を発揮しているということです。もちろん、鉄道側にもメリットはあるんですけれど、『トーマス』というコンテンツ自体の力も、実際に機関車が走ることでかなり高まったのではないかと思います。
では、そういったコラボの関係で、次にいかせていただきます。これは「ラッピングでコラボ」ということで、真っ黒な列車と、あとは車掌さんと運転手さんですかね? ライトセーバーを持ってノリノリな感じなんですけど。これは南海電鉄(南海電気鉄道)の「(特急)ラピート」という、関西空港に行く電車がございまして、こちらを真っ黒に塗装して『スター・ウォーズ』の映画とのコラボレーションを去年行ったものです。
『スター・ウォーズ』(コラボ列車)は(乗車率などの)データがないんですけども……。この1年前に、非常に有名なアニメ『機動戦士ガンダム』とのコラボレーションでラピート号を真っ赤に塗装したことがございました。これは、ガンダムに登場するシャア(・アズナブル)というキャラクターの(シンボルでもある)赤をイメージして塗られたということです。
こちらを赤く塗ったところ、グリーン車にあたる「スーパーシート」の乗車率がなんと10パーセントから70パーセントに上がったんだそうです。一般の車両も、(乗車率が)50パーセントから65パーセントに上がった。先ほどの大坂が書いた記事を見たら、書いてありました。
(会場笑)
私は取材に行けなかったので、留守番をしていたんですけれど、車両自体、列車自体、南海電鉄にも注目が集まると同時に、コンテンツへの注目も集まる。ブランドイメージを広めることにも、非常に役立っているのではないかと思います。
次にいかせていただきます。「ラッピングでコラボ2」ということで、こちらもまたアニメタイアップの話なんですけれど、去年運行されまして、まだ走っています。山陽新幹線の500系というスマートな車両があります。
こちらが『新世紀エヴァンゲリオン』という、20年前に非常に話題を集め、今でも反響の大きいアニメとコラボしました。これは、実際にはラッピングじゃなくて塗装だということなんですけれど、こういうものが登場しました。これもかなりの反響を集めたということです。
こちらも含めまして、ラッピングや塗装を変えるというのは、キャラクターや『エヴァンゲリオン』のようなアニメのコンテンツのコラボレーションを鉄道と行うことによって、鉄道自体の注目も非常に高まるのと同時に、コンテンツ自体の力も非常に増すのかなと。それ自体の価値の向上にも繋がるんじゃないかなと感じています。
こちらで最後になるんですけれど、こんなコラボレーションもございました。(西武鉄道の手老氏・京浜急行電鉄の飯島氏が)ちょうどいい位置に座っていただいたなと思うんですけれど(笑)。
(会場笑)
左側が黄色い電車で向こうが赤い電車なんですが、これは西武鉄道のコラボレーションで、赤い電車は京浜急行をイメージした塗装です。こういった感じで、鉄道会社同士のコラボというのも、非常に話題を呼んでいます。
今回は、車両のラッピングを主に紹介させていただきました。鉄道という日常的な、逆に言うとこれまでそんなにこういったかたちで注目を集めることがなかったものと、既存のアニメや映画といったいろんなコンテンツがこうやって合体することによって、非常に話題性を高めることができる。その象徴ということで、これまで何点か紹介させていただきました。
今は鉄道自体が注目を集めるようになっております。こちらに集まっているみなさまには各界のリーダーの方がいらっしゃると思いますので、鉄道とのコラボというのもお考えになってはいかがでしょうか。という感じで、ここで大坂に戻させていただきます。
大坂:すごくピッタリな写真を集めてきましたね!(笑)。
(会場笑)
僕も今見て、ビックリしました(笑)。鉄道雑誌だったら「この列車は○○系なの?」とか、たぶんそういう質問になるんでしょうけど、やはり経済誌ですので、こういうラッピング列車とか先ほどのイベントなんかの費用対効果、要するに「いくらお金がかかって、いくら儲かるんだ?」ということを、僕としては知りたい。
それからもう1つ、先ほど飯島さんも「三浦海岸の定住人口を増やさなきゃいけない」というようなお話をされてましたけれど、こういう鉄道ファンが喜びそうなことをやることで定住人口は増えるんですか、と。そういうところもぜひ、お二方にそれぞれ聞きたいと思います。
飯島学氏(以下、飯島):ありがとうございます。京浜急行電鉄の飯島でございます。まさにこの、電車を塗るということにどういう効果があるかというお話をしますと、非常にベタな話ですが、西武の沿線の方に「京急というものはなんですか?」と聞くと、「京浜東北線だ」という方が多いはずです(注:京浜東北線はJR東日本による運行)。
(会場笑)
「乗り物ですか?」みたいな感じですね。そのくらい我々の会社というのは、本当に地域密着であるがゆえに、ほかの路線では名前を知られていないです。はたして、ここからどう(名前を)売っていくか。
やり方は2通り。1つはマスメディアに訴えて、もしくはマス媒体を使って広告を出すという方法です。ちなみに西武さんはけっこう朝のニュース番組とか情報番組にバスンと広告を出されて、CMも打たれていますが、(我々は)そう大きくない会社なので、そうそうCMを打つお金がないんです。
「京急という乗り物が、羽田空港に繋がっているのだ」ということを、強制的に日常的に生活しているなかで知っていただく方法は、一度はなんらかの方法で乗っていただく方法であると。そういう意味合いを含めて、(ラッピング列車などのコラボレーションは)広告価値としてはものすごく高いものであろうと思っています。
反面、西武さんの広告が乗った電車が当社で走っております。これを逆手に取って、当社は「(京急)イエローハッピートレイン」と名前をつけて、「黄色い電車を見たら幸せになれますよ、幸せの黄色い電車ですよ」と。見てなにがあるかとかは気持ち次第なんですが、子供が喜んでいる姿を見て、お父さん・お母さんがうれしい。これだけで幸せだと思います。
それと共に、その電車はシーズンになれば西武さんの芝桜が広告で入り、そして(西武鉄道で行ける)秩父の広告が入り、その電車に乗って(遊びに行って)帰ったら、次の日の朝には『ZIP!』でCMが流れると。そして、また出かけたくなるという。
これは非常に大きな意味合いがあって、生活に近いところにこういう広告をラッピングできるということは、非常に価値が高いと考えています。費用効果というのもあるんですが、一言だけ言わせていただくと、ラッピングという作業は想像以上にお金がかかるものだという認識だと思います。ただ、実はこれにもいろいろやり方があって。
どうやったら費用をかけないで効果的なラッピング広告ができるかというのは、やはり営業広告に長けている代理店であったり、広告の仕掛人は媒体をよく知ってるので、テクニカルなところはあるんだなと感じるところです。では、手老さんに。
手老善氏(以下、手老):今の飯島さんの内容の補足になるかもしれませんけれど、実は私どもの主力路線である池袋線、これがいろんな意味で境目を表しています。それはなにかと言うと、「空港アクセスの境目」ということです。(羽田までの)空港アクセスと申しますと、まさに京浜急行さん。そして私の前職になりますけれども、JR東日本グループの東京モノレールさんがいます。
例えば、池袋線のお客さまが空港に行こうとした時に、どちらを選ぶか。池袋から乗り換えるという単位で考えると、料金・時間共にちょうど微妙なラインなんですね。山手線を外回りで行って浜松町で(東京モノレールに)乗り換えるのか、もしくは山手線内回りに乗って品川で京浜急行さんに乗り換えるのか。
そういった意味で、非常にキーになる境目のところであるので、この電車も池袋線で走ってるんですけども、走る場所によって価値が異なるというのが、1つ言えるのかなと思います。
あとは、手前味噌なんですけども、私ども西武鉄道は黄色い電車が主力ではございますが、今はだんだんコーポレートカラーである青と緑のものに変えてきて、電車もステンレスやアルミ製のものに青基調の色が乗っかっております。だんだん黄色い電車は減ってるんですけれど、やはり西武鉄道と聞いた時に黄色というイメージを持たれる方が非常に多いということもあります。
「黄色」というイメージを持っていること、みなさまの頭の中に「黄色=西武」というのがあること自体が価値だろうということで、先ほどの(他社の路線を走る)直通電車は我が社では6000系という1型式しかないんですけれども、基本的にグレーに青色のところをわざと逆に黄色くしました。
例えば、直通の東横線とか、そういったところに黄色い電車を走らせようという企画を行いました。これはTwitter等を見ていると「大学時代に江古田に住んでいて、今はこっちに住んでるんだけど、久しぶりに黄色い電車を見たな」とか、そういった想起に繋がるということです。単純に1つの色ではあるんですけども、「色」と「鉄道」というものの密接さは、非常に大きな力を持つんじゃないかというところがございます。
あとは、先ほどラッピングの話がありましたが、この赤い電車は塗装ということになっております。弊社では4年周期で、全般検査という非常に大掛かりな検査を行うんですが、その時に(元の色が)黄色でも(さらに)また黄色に塗り直してるんですね。実は、それを変えるだけで赤色になっちゃうと。
あと、弊社ではピンク色の電車(「SEIBU KPP TRAIN」)が出たり、「L-train」という(埼玉西武)ライオンズカラーの紺色の電車が出たり。あとは、「緑色が出ると(5色そろって)ゴレンジャーができるかな」とか思ってるんですが(笑)。そういったように、黄色という価値が結びついているものもあるし。塗装しなくちゃいけないから、逆にいろんな色が出ることで日常のなかで価値を持つ。そういうところがあるのかなと思います。
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