
2025.04.02
働く人が増えても、日本の「人手不足」問題は解決しない “労働力=人手”という捉え方の盲点
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山田太郎氏(以下、山田):さて、次はですね、国連女子差別撤廃委員会からの勧告が出ましたんで、これについては荻野さんを中心に、ぜひいろいろコメントをいただきたいというふうに思っています。
まず、どういうコメントが出ているのかということを、少し整理したいと思っているんですけれども、女子差別撤廃委員会については前回少しやったんですが、今回書きようが変わってきました。
ステレオタイプな有害慣行がある。権勢的な態度、要は男性を中心とした封建的な構造っていうのかな、そんな態度とステレオタイプがメディアや教科書なんかに強く依存していて、そういうステレオタイプが女性に対する性的暴力の根本的原因になっているんだ。漫画、アニメが女性に対する性的暴力を促進していると。
こういうふうにですね、女子差別撤廃委員会は決めつけてるんですよね。びっくりしちゃったんですけど、まずステレオタイプな有害慣行っていうふうに言っているんですけど、実際に勧告が出たものを見てどうでした?
荻野幸太郎氏(以下、荻野):まず、認識としてそういうふうに書いてあるわけですよ。ただ、この認識っていうのは勧告とセットで、だからそういうものを、そこだけを、そこだけをと言ったらいいのかな、そういうものがあるからそういうものを規制しましょうっていう話になっているんです。
ですが、むしろ順序がたぶん逆で、なんかわかんないけど良くない、やばいものがあるなと。日本のアニメや漫画やゲームについて、先にそういう結論がまずあって、じゃあどういうかたちの規制であれば筋が通るかというところに、やっぱり順序が逆転しているっていうのは、今までの経緯からみなさんもわかっていると思うんですね。
ころころころころ理由が変わってるから。6年前は児童ポルノと絡めて規制しようって言ってた。今回は児童ポルノとは絡めてないと。そういう形なんですよね。
山田:急に、突然ステレオタイプな日本の男性社会っていうの? で、文脈としては、全体にそういうトーンが女子差別のなかにはあって、だから例の皇室典範の話も出てきたんだよね。
つまり、男性直系の天皇陛下を選ぶのは女性差別なんだ、っていうすさまじいのが出て。それはかなり言われたんで、引っ込めちゃったけど。言うんだったら引っ込めんなよって言いたいんだけど。
荻野:で、そうなってきたときに、規制する理由でそういうものをつけられちゃったと。じゃあ、本当にそうなのかなというと、やっぱり日本の漫画の実情、あるいは日本の漫画とかアニメの実際のところをわかってる人たちからしてみると、じゃあ、ほかのメディアでいろんな表現物がありますと。
荻野:そういうものに比べて、漫画っていうのがどうなのかなっていうと、おそらくたぶん、日本の女性がフェアに戦えてる、あるいは自分たちの表現を自由に勝ち取ってきた分野のはずなんですよね、漫画って。
そういう意味では、どうして漫画とかアニメがそういう形で特別に規制が必要なものとして、あるいはステレオタイプなものの根本原因になっているとして選ばれて、そういうふうにやり玉にあげられてしまっているのか、というところだと思うんですよね。
そういう問題を評論的に議論するのは、それはそれでけっこうなんですけど、じゃあ法規制の枠組みのなかでそういうものが必要になってるという認識を、そこに当てはめちゃうっていうのはいかがなものか。
たぶん事実の認識として、おそらく私たちが知っている日本社会、あるいは私たち知っている漫画やアニメの現実とは、ちょっとかけ離れたものになってしまっているのかな、という気はしますよね。
山田:じゃあ、あともう1個、重ねて続けてですね、例の人権委員会です。もうこの番組では有名な、私というか我々が有名にしてしまったと言っても過言ではない、ブーア=ブキッキオさんですね。また、ブーア=ブキッキオさんが暴れてます。
なんて言ってるかっていうと、これも前回の番組では話しましたが、バーチャルな子供を性的搾取する表現の主要製造国だと、決めつけている。まあ、すごいよね。バーチャルな子供たちを性的搾取する表現、漫画、アニメ、ゲームを指すんだけど、その主要製造国であると。
それからですね、報告のなかでは漫画、アニメ、ゲームを通じて児童に対する性虐待を許容するような内容が示されることで、社会の許容度が上昇するんだと。
つまり、漫画、アニメ、ゲームのなかで性的虐待をするようなシーンがあると、それでもって、いいんだということを認めてるような社会になっちゃって、実は社会の許容度がそれで上昇しているんだと。
つまり、漫画、アニメ、ゲームが性虐待の根本原因である、というかのごとく言っているんで、だったら小説とかどうなんだよと。だって小説だって書けば、同じ理屈でもってね、画像になってないだけであって。
しかも、小説のほうが想像力がもっと湧いちゃったりするから、そういう意味で社会的許容度を高めっちゃってるんじゃないかと思うんだけど。これは明らかに、漫画、アニメ、ゲームに対する差別というかですね。
それともう1つは、これもそうなんです。強力で儲かるビジネスのために、子供の権利が犠牲にされてはならないっていう。すごいね、これ。強力で儲かるビジネス。そういつもりで同人の人たちなんかも描いてるんですかねっていうのは、さっき荻野さんともちょっとお話をしたんですけれども。まあ、こういうことを言ってるわけですね。
山田:もう1つ、結局、結論としては、ブーア=ブキッキオさん、あるいは人権委員会はなんていうふうな話になってるかっていうと、児童の性的表現のあらゆる部分の製造、頒布、提供、販売、アクセス、閲覧、所有を犯罪化すること。つまり、法律を作りなさいっていう勧告なんですよ、それを取り締まる。
いや、すごいですよ、これは。どうですか?
荻野:これ、すごいですよね。だからもう、法律自体を犯罪化してしまいなさいと。表現の自由に、確かに抵触する部分もあるのかもしれないねと。芸術とかあるよねと。そういうのは裁判所で無罪を取ったらいいんじゃないのと。
山田:そうそう! すごいんだよ!
荻野:法律自体では違法にしちゃって、守る価値が表現の自由であったら、裁判所が判断すればいいじゃない、っていう書き方なんですよ。
山田:すごい書き方なんですよね。だから、僕は逆なんだよね、僕らの表現の自由に対する考え方は。よく言われれるんですよ、「山田さん、表現の自由、表現の自由って、何を言ってもいいと思っているのか?」といったことを。
特にヘイトスピーチの話ってのはいろいろとそういう議論されるんだけど、表現は自由だけど、言ったら責任はあるんだよ。言ったことに対して、相手が不愉快だったり傷つけば、当然なにかで罰せられたり、名誉棄損っていうのもあるかもしれないし、要はなにかで保証しないといけなくなるかもしれない、それだけ影響があれば。
でも、言うことに関しては、何がいけないか、いいかっていうことについては、内心の問題もあるから、そこから罰してしまったら怖くてなにもしゃべれないよねと。でも、ブーア=ブキッキオさん、ならびに人権委員会の考え方は、そっちなんだよね。
まずは全部、悪であると。悪で罰せられるから、裁判で勝ちを取って無罪にしろと。こういう論拠。すごい社会ですよ、これは。
荻野:それをやったら、萎縮効果でたぶんなにも書けなくなる。で、ブキッキオさん、日本に来てたときは、本当にごくごく一部の本当にひどいエクストリームなものだけ禁止するんだってこと言ってたんだけど。
山田:変わっちゃったんだよ。
荻野:この勧告では全部、普通の、……普通というか、今まで我々が考えてきた実在児童の虐待記録物である児童ポルノと、同じほぼ要件で犯罪化しろ、という勧告になってしまっています。
そうなると、まさにあれですよね、『風と木の詩』をどうこういう勧告から守っていくのかっていう議論に、もう一度なってくるというところだと思うんですね。
山田:どうですか? 昼間さん。
昼間たかし(以下、昼間):いや、このブキッキオさんっていう人、オランダ人なんですけど、オランダ人からどう思われてるんですかね。最近、気になって。
荻野:オランダ人って考えるよりも、ブキッキオさんはEU官僚っていうふうに考えたほうがいいと思う。ヨーロッパでの国内法の法律のエキスパートでいくと、やっぱりそういった国際条約をそのまま適用するとおかしいので、限定解釈ですよね。
実際の表現の自由とのバランスを取って、まあ、無罪にしていこうとか、あんまり法律がいきすぎないように。例えば、要件をリアリスティックなイメージに限るとか、そういうかたちでいろいろ工夫するんだけども。
ブキッキオさんはやっぱりEU指令を出す側の、……というかEU官僚としてやってきた人なので、そのあたりはこういうものでやりなさいという。
たぶんEUのなかでも、ヨーロッパのなかでも、その国々の主要な法律家から見ると、ちょっとやっぱり毛色の違う世界で戦ってきたタイプの人だと。
山田:この人はけっこうあれなんだよね、EUのなかでもなんだっけ、なんかの事務局長やってて偉かったんでしょ。
荻野:まあ、欧州評議会の事務次長をやっているので、事務方のトップですね。事務総長は政治家なので。
山田:なるほど。
昼間:そもそもこの人ってバカだと思われてるんじゃないかなと、最近思ってて(笑)。
山田:いやいや、でも、これは欧州型の価値観であるのは事実だよね。だから、前も言ったんだけれども、人権っていう話をしてたのに、文化とか風習とかいう社会秩序に踏み込んじゃったんですよ。
その部分に関しては、僕も何度もこの番組で言ってますが、各国で積み上げるべき内容だったり問題だったりするんだけど、まず女子差別撤廃委員会のほうが、要は女性との関係において、やっぱり国ごとによって女性の開放度合いだったり価値観、考え方が違うし、今の日本がとくにそこで遅れているのかと。
もちろんね、議員の数が少ないとかなんとかっていう表層的な数字は言われるもののね、ただこれは荻野さんとも話したんだけれども、漫画の世界においては女性を解放した。つまり、出版の世界では男が中心の社会だったけれども、漫画は非常に女性の作家も多いし。
荻野:勝ち取ってきたんですよね。
山田:勝ち取ってきた。女性漫画なんかも、いわゆるジャンルとしてはものすごく強い。もっと言っちゃうと、そういう個性的なものを描く漫画家さんは、女性が多かったりもすると。自由だってことなんですよ。
そういうふうに思うんですが、そういうその日本の深い文化や風習に関することを理解せずに、欧州的な発想、まあEU的秩序を日本に押しつけようとしているところは、僕は政治家っちゅうか、なんちゅうかな、こういう人たちはもっと気をつけなければならんと思います。
荻野:ヨーロッパと日本の文化的な違いっていう以上に、ヨーロッパのなかでも、たぶんEUとそれぞれの国との間の対立ってあるじゃないですか。
同じことがEU官僚として生きてきたブキッキオさんが、国連の立場で日本に来たときに、国の上にある国際機関と、別に国際機関を国の上においてるつもりはない国との間の問題っていうのも、やっぱリそこで法秩序の問題のなかで起こってくると、そういう部分もありますね。
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