2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
第717回 『どこで付加価値を発揮すべきか?』(全1記事)
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加藤想氏:今日は仕事に取り組む中で、どこで付加価値を発揮すべきかを考えていきます。前職の通信会社のサービス戦略部門にいた時に、上司から「あなたの付加価値は何ですか?」と問われて以来、個人的にはかなり意識しているテーマです。
課題を解決するためのステップを大きく3つに分けると、「どこに問題があるか」。そして「それは『なぜ』なのか」。その上で、「解決策を考えて実行する」。この3ステップになります。では、このうちどのステップで付加価値を発揮すべきか、順に考えていきます。
一番最初のステップ、「どこに問題があるか」についてです。この問題の切り分け自体を間違えると、それ以降どれだけ考えてもうまくいきません。ここで気をつけるポイントは「このデータが間違っていないか」「前提が異なっていないか」をしっかり見抜くことです。
例えばコンビニ業界を例にとると、A支店の売上が去年より上がった場合、そのデータだけでA支店がすばらしいと判断してはいけません。たまたま今年は、近くで人が集まるような大きなイベントがたくさん開催されただけかもしれません。他の要因がないかも考えるべきです。
こう聞くと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、抜け落ちることが多いです。以前ベストセラーになった『NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘』という本でも、「どこがおかしいか、随時正確な情報を可視化できることのほうが、立派な戦略を立てるよりも大事」とありました。すべての出発点となるので、ここは神経を尖らせる必要があります。
次に「その問題はなぜ発生したか」についてです。数字的に悪い部分の発生原因について考えるわけですが、これはめちゃくちゃ難しいと思います。その理由は、「なぜ」に正解はなくて、あくまでも仮説なので、かなりの想像力が必要だからだと思います。
そして、仮に筋の良さそうな仮説が出せたとしても、それが正しいかは情報収集が難しいので、なかなか太鼓判を押せません。
情報を新たに取りにいくか、もしくは何か施策をやってみて効果があったので、後乗せで「たぶんその仮説は正しかったんだろう」とやっとわかる。そんな曖昧なものじゃないかと思います。だからこそ「なぜ」というのを、絞りにくかったりします。
ではここで、仮に「なぜ」がわかったとして、次の最後のステップの「解決策を考える」というフェーズにいきたいと思います。「なぜ」を解消するための方法を幅広く検討して、必要な評価項目を決めて比較するステップになります。
では、あらためてこの3つのステップの中で付加価値が最も高いのはどこでしょうか。個人的には、2つ目のステップ「『なぜ』を考えること」だと思います。この便利な時代に、解決策は溢れています。例えば「顧客との接点を広げたいなぁ」と思って「集客 ツール」とGoogle検索をすると、いろんなサービスが出てきます。
この解決策の部分で、画期的な付加価値の高いアイデアを考えるのは、なかなか難しいと思います。
そしてこれは、最初のステップ「どこに問題があるのか」についても言えると思います。すぐに欲しいデータを出せる、そんな便利なツールが技術の進化によって可能になってきています。SalesforceやTableauなどのツールがこれに当たるかと思います。
テクノベート時代は、この技術の進化によって「どこに問題があるのか」、そして「解決策」についてはすでに十二分にサービスがあります。なので、「データをどう解釈するか」が競合との差別化につながって、それがそのまま自分の付加価値につながるんだと個人的には思います。
では、「なぜ」を考えるための想像力を身につけるためには、どうすべきでしょうか。今日は3つご紹介します。
1つ目は「日常で出会わないものを意識的にインプットする」です。普通に生活していると、家族や会社の人、たまに地元の友人など似たような価値観の人とばかり接すると思います。そこで、あえてそこから離れることで、自分の価値観が固まらないようにします。
私は、NHKの『ドキュメント72時間』という番組が好きで、以前から見ています。24時間営業の焼き肉屋さんや近所の釣り堀、無料の動物園など、特徴のある場所で72時間カメラを回して、そこに来る人にインタビューをするという番組です。
ふだん接していない人が何を感じているのかのヒントになるので、ご興味があればご覧いただけるとうれしいです。
2つ目は意識的な対話です。私は業務の中で、お客さん、つまりグロービスに来る学生の方とよく接します。自分が好きだからというのもあるんですが、必ずクラスが始まる前は早めに教室に行って、こちらからいろんな学生の方に話しかけたりします。
時にはクラス後の懇親会にもお邪魔させてもらっています。そこから聞いた内容から、あれこれいろんなことを想像します。実は先週お話しした「社会人向けおすすめの勉強」についての内容も、この学生との会話からヒントを得たものになります。「社会人 勉強」でGoogle検索をすると、トップに私が書いた記事が出てきますので、よければのぞいてみてください。
お客さんと接する機会が少ない方でも、例えば美容室の方と、なるべく会話をしてみる。こんなことは散髪に行けば誰でもできるかと思います。美容室におけるコロナの影響なんかも知れて、とてもおもしろかったりします。
最後、3つ目は「自分に聞く」です。自分だったら本当に買うのかを徹底的に考えます。特に自分がターゲットになりうる場合は有効かと思います。自分がターゲットではない場合、先ほどの、お客さんと接することを通して、自分の中にもう一人人格を作る必要があります。
以前『プロフェッショナル 仕事の流儀』でグロービスの卒業生である山岡(朝子)さんというシニア雑誌の編集長の方が出ていました。ご自身は若い中で(シニア向けの雑誌を作りにあたり)、顧客に寄り添うために「自分の中にシニアのAさんが存在している」という話をしていました。
ここまで付加価値についてお話をしてきましたが、この付加価値は悪用することもできます。例えば、社員の仲良しのメンバーで徒党を組んで、上司から言われたことを絶対に聞かない。こんなふうに反発することもできます。
もしくは自分しかわからないようなデータベースを作って、ブラックボックス化してしまって自分の付加価値を上げる。こういうパターンは短期的に見ると有効かもしれませんが、変化の激しい時代において、そんなことをしている暇はありません。
長期的には組織全体が停滞してしまう危険性もあります。ぜひ自分の付加価値を発揮して組織全体が上を向く行動をとってもらえればと思います。今日の話はここまでとします。また明日の放送もお楽しみに。
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