2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
【手放すTALK LIVE#41】「識学 vs 手放す経営 〜管理型マネジメントと、管理しないマネジメント 対照的なマネジメント論を学ぼう〜」 ゲスト: 識学 代表取締役社長 安藤広大さん(全5記事)
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管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、最新刊『とにかく仕組み化』を含む著書3部作が117万部を超えた株式会社識学の安藤広大社長がゲスト出演。社会システムデザイナーで「手放す経営」を実践する武井浩三氏を相手に、識学の出会いや成長の仕組みについて語りました。
坂東孝浩氏(以下、坂東):それでは続いて安藤さんから、識学についてお話しいただいてもいいですか?
安藤広大氏(以下、安藤):安藤です、よろしくお願いします。今の武井さんの速度感に合わせないといけないですね(笑)。
識学という考え方は僕が考えたものではなく、別の人間が作ったものなんですけど、2013年にその識学というロジックに出会いました。それまでも会社でマネジメントをしていましたので、この理論はすごいなと思って。
世の中のみなさんは大きな勘違いをしてマネジメントされているんじゃないか。潜在的なニーズがすごくあるなと思って、2013年に独立しました。1年半ぐらい個人でやっていたんですけど、今の日本の社会に足りない部分があると確信しましたので、2015年に今の会社を作りました。
最近導入企業が4,000社を超え、だいたい月に60〜70社ぐらい新規のお客さまにご契約いただいています。
識学はよく組織論と言われるんですけど、組織論ではなく、人間の「意識構造」に関する学問、ロジックです。意識構造は僕らが作った言葉ですけど、「人が物事を認識して行動に移るまでの間」。この領域のことを意識構造と定義しています。
人は物事を正しく認識できれば正しい行動がとれるんですけど、認識を誤ると行動も誤ってしまうと。認識の誤りのことを日本語では「誤解」「錯覚」と言いますが、要は人がどのように誤解や錯覚を起こし、そしてどうすれば誤解や錯覚を起こさないのかを体系化したものが識学です。
組織運営のコンサルにこれをどう活かしているかと言うと、簡単に言うと「組織から誤解や錯覚を取り除くことで、組織のパフォーマンスを引き上げていく」ということをやっています。
誤解や錯覚には大きく2種類あります。1つ目が「相互に発生する誤解や錯覚」です。4人が同じ会社にいるとします。同じ会社にいますが、当然みなさん別々の人生を歩んでいるので、別々の常識や別々のルールを持って集まっている。
そうすると同じ事象を見たり、同じ言葉を聞いた時に、当然認識にずれが生じます。これが1つ目の「相互に発生する誤解や錯覚」です。会社経営で言いますと、「お客さまのために」という言葉の定義1つをとっても、人によって認識にずれが生じると。
ここが今日の一番のテーマになってくると思うんですけど、このずれが生じた時にどうするのか。ずれた状態でお互いの良かれと思うことをやると、当然衝突が生まれたりする。衝突を生まないためにどうしたらいいのかと言うと、双方でルールの答え合わせをして、ルールを合わせる。要は認識を合わせる作業が生まれてくる。
では、この共通のルールを誰が決めるのか? 組織には役職が存在し、役職には役割があり、そして役割には責任が附帯されている。なので責任を取れる立場にいる人間が、責任に基づいて共通のルールを決定するという権限を行使することで、相互に発生する誤解や錯覚が生じなくなる。
なんでピラミッド型で運営するのか。物事はどっちが正しいかがわからないシーンがたくさんあるわけなので、組織においては責任者が責任に基づいて決定していくことで決まっていくと。ピラミッドでなければ頂点がいくつも生まれますので、結果的に多くの話し合いをすることになり、スピードが遅くなる。こういうのが発生しないようにピラミッドで運営していきましょう、と言っています。
もう1つは、今日のテーマとは違うかもしれないんですけど、「事実の仕組みに対する誤解や錯覚」です。「正しい順番」が事実です。世の中は事実どおりに集約されていきますので、事実を勘違いした人間がいる会社は弱くなっていきます。
正しい順番は、会社がお客さまにサービス提供できて、対価をもらうことができて、そして従業員が給料を獲得できる。これが正しい順番だし、事実だと思うんです。間違った順番は、従業員がサービスや対価に関係なく、いついかなる時でも給料を獲得できるという勘違い。
こういう勘違いが起きると、その会社は給与不足になりますので永続が難しくなる。こういう勘違いを生み出すような運営をしないようにしましょう、ということです。
昨今は、まず給与を働く人たちに与えるという勘違いばかりか、がんばる理由も会社に用意してほしいと。会社は給与とがんばる理由も用意してくれ、自分はがんばるかどうかを決められる存在であるという勘違いが生まれている。
その勘違いを生み出してるのは何か。「会社や上司の一番の仕事は部下のモチベーションを上げることです」とか「エンゲージメントを高めないと社員はがんばってくれません」みたいな風潮です。これが結果的にこういう勘違いを生み出しているので、識学では「モチベーションを上げる」とか「エンゲージメントを高める」という言葉に関しては、全面的に否定しています。
じゃあモチベーションやエンゲージメントをどう定義しているかと言うと、モチベーションとは「働く社員のみなさんが成長を実感した先に、自動的に発生するもの」と定義しています。エンゲージメントは「会社の成長の中に自らの貢献を確認できた時に、自動的に高まるもの」と定義をしています。なので、そのために何かをする必要はまったくないと言っています。
識学では、この大きく2種類の誤解や錯覚を組織から取り除くということをやっています。
安藤:今日のテーマとちょっと関連しそうな仕組みを何個か持ってきたんですけど。
坂東:ありがとうございます。
安藤:僕らはリーダーを、「部下を成長させ、組織の成果を最大化させる人」と定義しています。
まずルールに関する誤解。「ルールを決めると自由がなくなる」とか「ルールをなくしたほうが活躍できる」とか「ルールを守る人と守らない人が出て不満が出る」とか、だから「最初からルールは不要」という勘違いが世の中に多くあると思うんですけど、ルールは「正しく使えばマネジメントが楽になります」ということです。
先ほど言ったように、相互に発生する誤解や錯覚が生じると、「空気の読み合い」や「人間関係の悪化」「仕事以外のことに気を取られ集中力が低下する」といったことが起こります。
僕らは、ルールを決めるとは「どのエリアを自由に動いていいのかを決めること」と考えていますので、無駄なコミュニケーションが減ったり、人間関係に気を使わなくてよくなる。要はルール上の関係ですので、人間関係で仕事をする必要がなくなり、仕事に集中できるということです。ルールを決めることで働く人のパフォーマンスを向上できるので、ルールは重要だよと言っています。
そのルールの決め方ですが、ルールは「上から順番に決まっていく」と言っています。
組織の上下は何で決まるのか。上位者のほうが仕事ができるわけでも、人間的に優れているわけでもなく、上位者のほうが組織の機能上大きな責任を負っているから、上から順番にルールを決めていくということです。上位者が、下の人たちがどのルールで、どの責任範囲で仕事をするかを明確に決めていきます。
逆に、下の人たちは与えられた責任を果たす上で、上の人が決定したルールでは現場で不具合や問題が起きそうだということであれば、その事実情報を上げる権限を持っています。識学は「上意下達で下の人は何も考えなくなるんじゃないか」という勘違いをよくされますが、そんなことはありません。
責任の範囲だけが明確に決まっているので、上司の指示に対して現場で上司の気づいていないことが起きているのであれば、提案や情報提供のできる機能を持っているということを、初めににお伝えしたいと思います。
もう1つのポイントは、識学が管理すべきだと言っているのは「結果」です。基本的にプロセスには介入しないと言っています。プロセスを管理したり評価すると、「プロセスのアピール」がうまくなってくるということです。
さらにプロセスを管理すると、部下が自分で考えなくなる。上司がプロセスに入ると、うまくいかないと部下が止まるようになるんですね。止まると上司が動かしてくれるので指示待ちになる。そして、上司に言われたとおり、プロセスどおりにやった結果うまくいかなかったら「上司の言うとおりやったので自分のせいじゃない」となってしまう。
上司がすべてのプロセスを管理しないといけないということになると、マネジメントコストが肥大化し、時間ばかり取られる。部下の成長は止まるし、上司だけが忙しくなるということになる。
僕らが明確に求めるのは結果だけです。もちろんルールの範囲内ではありますけど、プロセスには一定の自由を与えて、一人ひとりが考える環境をいかに作るかということを言っています。このあたりも少し勘違いがあるポイントかなと思っています。評価も同様です。評価もプロセスではなく、結果で評価します。理由は一緒ですね。
最後に、なぜ僕らがこれをやっているのかということですが、人を成長させるためにやっています。成長とは「できなかったことができるようになる」ことです。
では、できなかったことができるようになるためにはどうしたらいいのか。初めに「何ができていないかを正しく認識する」ことです。何ができてないかを認識するためには、上司と部下の間で100点満点がどういう状態かの認識がちゃんと合っていることが必要になります。
成長の仕組みとは、求める結果が明確で、結果が出たあとに不足が明確になり、その不足に向き合うことで、人は成長するということです。プロセスで管理をすると不足が明確にならないため、結果で管理をする必要があるということです。
不足の明確化と次の行動変化をやっていくことで人は成長し、そこをサポートするのが上司の重要な仕事であるということですね。できなかったことを示すのが上司の仕事で、できるようになることが部下の仕事であると。このサイクルを回していくということです。ざくっと以上です。
坂東:ありがとうございます。めちゃくちゃわかりやすい。話し方からしてすごく対照的だったなと思うんですけど(笑)。
(一同笑)
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