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経営者的子育てとの向き合い方(全4記事)

時間や手間をかけることが“愛情”ではない 共働きの経営者夫婦が実践する、子育てのストレスを抱え込まない工夫

「次世代の、起爆剤に。」をミッションに掲げるIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。2021年は、オンラインとオフラインのハイブリッドで開催されました。本セッションでは、「経営者的子育てとの向き合い方」をテーマに、ANRI佐俣アンリ氏、グッドパッチ土屋尚史氏、SHE福田恵里氏、モデレーターにYOUTRUST岩崎由夏氏が登壇。働く時間やお金の使い方が、子どもが生まれてからどのように変化したのか語りました。

子どもが生まれてからの時間の使い方の変化

岩崎由夏氏(以下、岩崎):じゃあ、次のテーマに移りますかね。やっぱり(子どもが生まれた)ビフォーアフターで、時間の使い方や価値観、生活の仕方も変わってるかなぁと思います。まったく変わってないという人はいないと思うんですけど。

その辺で大きく変わったこと、逆に変わらなくて「思ってたほど心配しなくてよかったよ」ということがあれば伺いたいなと思ってるんですけれども、土屋さんいかがですか? 

土屋尚史氏(以下、土屋):これは子どもが生まれてからの話ですか? 

岩崎:そうですね。土屋さんの場合は育てながら起業したので……。変わったこととか、逆に変わらなかったこととか。

土屋:2015年に「家族のいる起業家の働き方」というブログに、子どもが生まれてからの時間の使い方を書いていて。当時はまだ、起業家で子どもを育てながらやっている家がなかったので、個人的にはすごく……。

当然、同世代の起業家がめちゃくちゃ働いているわけですよ。24時間365日、事業のことだけを考えていて働いているところに対して、僕はやっぱりそういう時間の使い方ができなくて。

確かに、子どもが生まれてサンフランシスコに連れていったりとか、すごく無茶苦茶な面もあるんですけれども。その後日本に帰ってきて起業してからは、やっぱり子育てとの両立をしなきゃいけなかったので、あまり夜遅くまでオフィスに残ることができなかったんですね。

サンフランシスコについてくるぐらいなので、奥さんは理解があるほうなんですけれども、やっぱり当時は奥さんも若くて23〜24歳で子どもを産んでいるので不安だったんです。

若いときは睡眠時間を削る働き方しかできなかった

土屋:一応起業してからは、20時以降は会社には残らずに、だいたい20時ぐらいに帰ってきて。一緒にご飯を作ったりお風呂に入れたりだとか、子どもの寝かしつけをしています。家族が全員寝静まった0時か1時ぐらいから3時4時まで、自分の溜まった仕事をするというやり方を……。

福田恵里氏(以下、福田):3時、4時……!? 

土屋:当時、若かった時ですね。28歳から33歳ぐらいまでは、そういう働き方をしていました。なので僕の場合は、単純に睡眠時間を削ったという、あんまりよろしくはないやり方をやっていて(笑)。

今日もサイバーエージェントさんの記事で、「睡眠時間を削るな」みたいな記事があったんですけど、余裕で僕は削っていました。ただ当時はまだ若かったので、そういうやり方しかできなかったというのはありますね。でも、子どもが大きくなってくるとやっぱり変わります。

福田:ちなみに、どれぐらいから変わってくるんですか? 

土屋:やっぱり小学校入ってからは……。

福田:あと6~7年かぁ……(笑)。

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):これはちょっとまだまだだ。

岩崎:まだまだだね。

土屋:まだまだちょっと長いかなと思うんですが、人によるというか、助けてくれる周りの環境にもよるんですけれども。うちの場合はアンリさんと一緒で、僕の実家が長野で嫁さんは大阪なので、助けてくれる人がいなくて。嫁さんはシッターさんもNGというタイプで(笑)。

これも人によると思うんですけれども、ベビーシッターがNGなタイプの奥さんでして、全部を1人で抱え込むので、支えるのは僕しかいないですよね。僕しかいないというか、2人で一緒に子育てをするんですけれども。

なのでやっと小学校に入ったくらいに、上の子がある程度手離れしてきて。ただ、下の子がまだ小さかったので、どのみちけっこう辛いのが続いていたのは正直なところですね。

岩崎:なるほど。あと5~6年は大変なんだなと思いましたね。

福田:そうだねぇ。絶望(笑)。

(一同笑)

「2人目問題」は、新規事業を作ることと似ている?

佐俣:でもそれで楽になってくると思うと、次(の子)が生まれたりするから。

福田:そうですよね。

土屋:そうなんですよね。

佐俣:リセットなんですよね? 

土屋:そうなんですよ。

岩崎:それ、ちょっと聞きたいんですよね。どこまで聞けるかわからないんですけど、私と恵里ちゃんはさっき、「“2人目問題”あるよね」という話をしていて。1人目を産んで「ふぅ……」となって、1年ぐらい経ったんですけど。

やっぱり兄妹をつくってあげたい気持ちがありつつ、変数が倍になるとちょっと話が変わってくるんじゃないかなと思っていて。1人とはまたちょっと別世界に入るんじゃないかなという不安があるんですよ。

土屋:奈緒子さんおかしいですよ、マジで(笑)。本当にすごいっすよ(笑)。

佐俣:まぁねぇ……。奈緒子さんはちょっと参考にならないテンションも……。

土屋:(笑)。確かに。

佐俣:でも結局、スタートアップみたいなもんなので。“新規事業を作る”ぐらいの感じじゃないですかね? 

(一同笑)

佐俣:でも、やらなきゃいけないじゃないですか。

岩崎:いやぁ、でも。“新規事業を作る”かぁ。

佐俣:あとは夫婦の体力の問題もあるので、もう行くなら一気に行っちゃったほうがいいという考え方もあるなと。

僕らも、そんなにすごく若くして育児をスタートしたわけじゃないので。1人目が30歳とかなので、時間が経ってるともう「体力的にしんどいぞ」みたいな。今はまだ一応、午前2時半起きで生きていられる年齢だからいいけど、45歳とかになったらたぶん普通に……もう無理(笑)。

岩崎:無理ですねぇ。

子どものための「ここだけシンガポールシステム」

岩崎:さっき、土屋さんはあんまりシッターさんには頼らないという話がありましたけど、アンリさんのところはさすがに頼らないと無理ですよね? 

佐俣:はい。元気にシッターさんに頼ってます。僕らが育児ですごくよかったのは、前職の時にシンガポールで投資とかをしてたので、「シンガポールの家庭のモデルでいこう」と決めてたんですよ。もう、日本の中ではまったく生活モデルが合う人がいないので。シンガポールの感覚で、共働きで子どもの人数だけシッターさんを雇えて……。

岩崎:え、そうなんだ。

佐俣:基本的に「夫婦は働いてください」「飯は外食も当然です」みたいな、シンガポールのパッケージングの生活スタイルを踏襲しようと。我々はここだけシンガポールという。

岩崎:(笑)。「ここだけシンガポールシステム」。

佐俣:なので僕らは、長男が2ヶ月の時から6年以上、ずっと同じシッターさんにフルでお願いしている。

岩崎:それ、めっちゃ安心ですね。

佐俣:そうです。だから僕らよりも(シッターさんのほうが)一緒にいる可能性もあるし、いろんな考え方だと思うんですよね。

すごく大事にしたのは、僕ら夫婦が疲れた顔で子どもに向き合うよりは、シッターさんも僕らも含めて、全員が愛のあるかたちで子どもに接したほうが絶対にいいと思って。僕らがヘトヘトで、ストレスがたまった状態を見せるのがいいとも思えない。

「かける時間イコール愛情」ではない

岩崎:あれだよね。恵里ちゃんも「家事代行」とカレンダーに書いてたけど。

福田:そう。本当にアンリさんの話に心底共感するんですけど、私も「かける時間イコール愛情」じゃないなと思っていて。時間をかけなくても密度の高い愛を注ぐことって、ぜんぜんできると思っています。

時間や手間をかけるという手段の部分に固執しすぎて、子育てでストレスを溜めて、それを子どもにぶつけたくないので。自分の金銭的余裕の中でやれる範囲はアウトソースで解決したいですね。ちょっとアンリさんみたいにはできないですけど(笑)。

佐俣:でもうちも当時、まだまだぜんぜん給与がない時だったから。一般的な共働きの家庭に「これをしろ」とはまったく思わないですけど、福田さんも岩崎も夫婦で起業家をやってるんだったら、どちらかの給料は全部(子育てに)使うぐらいの覚悟でいてもいいのかもしれないと思ってる。

岩崎:あぁ~。

佐俣:僕らは結局、サラリーで戦っていくというのもあるけど、エクイティという外部からの期待を背負ってやってるし、資本コストが15〜25パーセントなんだから。だったら、どっちかの給料を全部シッター代や子どもに使うと決めてしまった瞬間に、予算制約線が飛ぶんですよ。シッター代が積算していって、「だいたい東京ベースで時給が2,000~2,500円、これが1日3時間で4時間で……」と計算していると精神的にも負荷になりやすいので。

岩崎:確かに。

佐俣:「最大で片方の給料は全部使う」と決めたほうが気が楽になると思う。

岩崎:ちょっと気が楽になりますね。私も家事代行やシッターさんとかにたまにお願いするんですけど、「あぁ、これで1万5,000円か」みたいな気持ちに意味もなく考えちゃうんです。

佐俣:でも、みなさんが調達しているお金の基本的な資本コストは15〜25パーセントで、掛け算した時にかかっているあなたの期待のコストの時給っていくらでしたっけ、と計算すると、ぜんぜん安いんですよね。

岩崎:確かになぁ。

佐俣:これはもう割り切りだと思っています。もちろん、すべての家庭で使ったほうがいいのかというとぜんぜんそうじゃないと思うし、いろんな考え方があると思うんですけど。僕らは基本的に資本コストが高いものの期待を背負って、時間が貴重になるはずだったら、これ(お金)で決めたほうが楽。やっぱり罪悪感が溜まっていっちゃうんですよね。

岩崎:わかる。

経営者は株主に「役員報酬上げて」と言った方がいい

福田:でも、経営者的にそういうマインドでいさせてもらっても、株主の理解もセットでないと、その意思決定が難しいかなと思うんですけど……。

佐俣:役報(役員報酬)上げちゃってますけどね。投資先とかには「役報上げて」と言う。

福田:なるほど。

岩崎:プライベートで使うお金は別にね。

佐俣:単純に自分の体感値として、ステージにもよりますけど、例えば役報を月10万円とか上げてもらって「全部シッター代とかに使ってもらったほうが、パフォーマンスが上がるんだから」というのを決めちゃったほうがいいと思う。

岩崎:わかる(笑)。さっきアンリさんと立ち話してた時に、投資先じゃないんですけど「役報上げたほうがいいよ」と言われて(笑)。

福田:投資先じゃないのに(笑)。

岩崎:そう。まだ受けてないですけど。

福田:いやぁ、でもこういう株主の方がいてくださると非常に(うれしい)。

岩崎:そうですね。ここ、株主ですからね。

福田:うれしいですね。うちも家事代行やベビーシッターさんを初期から使いまくってたので。それでアウトソースして、捻出した時間を全部子どもにストレスなく愛情を注ぐことに充てる感じです。

岩崎:そうだよねぇ。

福田:やってましたね。

岩崎:恵里ちゃんの(Instagramの)ストーリーを見てると、ベチョベチョに溺愛してるもん(笑)。

福田:(笑)。そうだね、けっこう溺愛してますね。

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