2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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浅生鴨氏(以下、浅生):それでは第2セッションということで、『マスクと体重計と医療の、やさしい入り口はどこですか?』というタイトルでございます。
これは何かと言いますと、ご紹介しますね。先ほどのセッションの引き続きこちらにいらっしゃるのが、ほむほむ先生こと堀向先生でございます。そして、SNSの達人のお2人に来ていただきました。左側、一番奥にいらっしゃるのがシャープさんですね。
シャープ株式会社 公式アカウントの中の人(以下、シャープ):こんにちは。
浅生:シャープさんのTwitterのアカウントの中の人ですね。
シャープ:はい、そうです。よろしくお願いします。
浅生:そのお隣にいらっしゃるのが、タニタくんですね。正式名称はタニタくん?
株式会社タニタ 公式アカウントの中の人(以下、タニタ):はい、ありがとうございます(笑)。
浅生:タニタくんにお越しいただいております。
タニタ:お願いします。
浅生:お2人はふだんからSNSを使っていろいろと企業活動に勤しんでいらっしゃるんですけれども、そのあたりで医療チームのほむほむ先生から聞きたいことがいっぱいあるんじゃないかなと思っていますので、深掘りしていければいいなと思っています。
浅生:オープニングトークのドクター4人の「やさしい医療」に対する想いとかコミュニケーションエラーに関するお話は、お2人は聞いていらっしゃいましたか?
シャープ:はい。断片的に聞いていました(笑)。
浅生:断片で(笑)。何か感想とかございます?
シャープ:お医者さんと僕らの仕事が同じとは決して言えないと思うんですけど。僕ら2人は基本的には、自社製品を広い意味で宣伝する仕事で、普通に宣伝をやってても、こっちの言い分は聞いてもらえない時代になっているというところは、たぶん僕らにとって一番危機感があるところです。
つまり、「広告したって誰も聞いてくれない」「伝わらない」ということはずっと感じてやってきました。そういう意味では、お医者さんの言っていることが患者さんに間違って伝わるとか、聞いてもらえないとか、こちらのことをあまり信用してもらえない状況というのは、広告とかPRといった仕事と共通していると思います。
浅生:それはタニタさんも同じような感じですか?
タニタ:そうですね。このお話はだいぶ前にいただいていて、準備もいろいろあったと思いますし、「やさしい医療」という名前の由来などももともと聞いていて、共感できるなと考えていました。やっぱり見ている方たちもすごく共感されていたので、とてもいいイベントになっていると思っておりました。
浅生:先生、いかがですか? 扱ってらっしゃる情報は違うにしても、伝わらないもどかしさという意味では、同じようなもどかしさがあるというふうにおっしゃってますけれども。
堀向健太氏(以下、堀向):お二人のSNSやTwitterを拝見していると、短くて瞬発力がある言葉で伝えようとされているところがまずあるんじゃないかなぁと思っています。もう1つは、お堅い企業の公式のはずなのに個人の人間を出している感じだと思っています。
実は僕、ある学会のSNSの中の人の一人になっています。そして、最後のTwitterの送信ボタンを押しているんですけど、その文面を決めるのにいろんな先生方の話を聞いて、ツイートする言葉をかたちにして、それから送信という感じになっています。
それは医療情報である以上、仕方がない部分もあるかなとは思っていますが、どちらかと言うとすごく堅い話しかできません。一方で、例えば日本循環器学会などでは、先生方の人間性を出した発信をして大きく変わろうとしています。
瞬発力がある情報をどういうふうに相手に伝えるのか。もう1つは、人間性をどこまで公式に出してもいいのか。今日はその2つをお聞きしたいなと思って持ってきたんですけど、どうでしょうか?
シャープ:僕自身はテレビコマーシャルなどを作る仕事が長かったんです。いわゆる大きな広告というのはいろんな人が協力しあっていろんな技術やアイデアが盛り込まれて、それでいて広告主側ではいろんな人の承認を通過してようやく世の中に出すんですけど。
僕がそのとき仕事に感じていたジレンマは、はじめのアイデアや企画段階のキャッチコピーにしろ、美術的なアイデアにしろ、広告主側、つまり僕が所属する会社側ですけど、そこにいる多くの人に承認してもらう過程で修正や校正を繰り返し、しょうもなくなっていくということを僕は繰り返ししてきました。
つまり正確性を期すあまり、あるいは組織内で「出してよし」という許可をもらうためにいろんな人の目を通っていくと、発信するメッセージが、やっぱりどんどん丸くなっていく。
丸くなるということは、誰が言っても一緒の言葉になっていくんですよね。間違いもないし正しいんだけれども、どんどん言葉に体温がなくなっていく。僕はそういう仕事をずっと繰り返してきたわけで。
その反動でSNSを始めるにあたって、僕は多くの人の目を通さないというやり方を交換条件にして始めたところがあります。そのやり方にはいいこともあれば悪いこともあるというのは十分理解したうえで、最初からずっとやっています。
堀向:最初からそういうことを考えて?
シャープ:はい。やれと言われたときに、「いろんな人の目をくぐらないまま、タイムリーにフレッシュに発信できるのであれば僕がやります」ということで始めたので。まあ確信犯であることは確かなんですけど。
少なくとも僕は、誰もが言えるような言葉とか、体温がない言葉は伝わらないんだから、伝えるためにはある程度リスクを引き受けて、誰かの体温を感じさせる言葉のまま出せるのであれば、SNSでも通用するはずと思ったのがきっかけですね。
堀向:SNSのアカウントで大きくなっている方って、タニタさんもそうですし、あとキングジムさんなどもそうだと思うんですけど。あれって本当に自由なんでしょうか?(笑)。自由に発信されている感じでしょうか?
シャープ:バーッと書いて、パッと押すという意味では自由ですけど。じゃあバーッと書いているときに、それが僕自身かというと僕はそうではなくて。僕も一応、企業アカウントを運営する職業に従事する人間として書いています。現実の僕は、Twitter上のシャープさんより、もっとろくでもない人間なわけで。
そういう意味では自分を出しているかというとそうではないです。僕は自分を半分くらい偽装しながら、「社員として働いている自分として、ツイッター上でどうあったほうがいいか」ということを念頭に置いて、言葉を出していっている感じですね。
堀向:なるほど。
シャープ:(タニタ氏に向かって)それはでも、似てるんじゃない?
タニタ:うん、そうですね。
浅生:体温を伝えるというあたりは?
タニタ:私たちのアカウントは、たぶん2011年くらいにスタートしていると思うのですが、当時はとにかく先人の方がいらして。浅生鴨さん(注:元NHK広報の公式ツイッターアカウント@NHK_PR 1の中の人)もそうなんですけど、当時どうやって工夫していくかというところをすごく模索していた人たちが今けっこうやっているなと思ってはいます。
そこでどういったことをお伝えしていくと、私たちでいうエンドユーザーさんや顧客の方々に興味を持ってもらえるかなというところが、おそらくこちらからパーソナルな人となりを知ってもらうことによって(距離が近づくというか)……。
普通、企業のアカウントってちょっと抵抗があると思うんですよね。そういうところがまず取っ払われて、歩み寄れるところが、結果的に今みたいに自由に発信しているところのもとになっているのかなと思います。
あとは何だろうな。一発パワーのある投稿というものも、結局話を聞いてもらうとか印象を与えるためには、最初はある程度そういったことをやっていたの時期もあったと思います。それに慣れてきていて習慣化されているので、あまり時間をかけずに投稿できるというスキルも身についているのかなという気はします。
堀向:タニタさんも……すみません、司会を無視してごめんなさい(笑)。
浅生:いえいえ、どうぞどうぞ。大丈夫ですよ。
堀向:タニタさんは一番最初に、シャープさんみたいに「自分の自由にさせてください」と言われたのか、それとも「自由にやりなさい」と言われたのでしょうか? キングジムさんは、「自由にやりなさい」という感じで言われたというふうに本で読んだんですけど。
タニタ:私の場合はどちらかと言うと、フリーで使えるツールですので「これを利用しない手はないな」というふうに私自身が思って、とりあえず「やります」と宣言して自分でやり始めたという感じです。私は広報部門でもないので、またぜんぜん違う……。
堀向:あ、そうなんですか。
タニタ:営業だったんですよ、私。
シャープ:タニタさんは勝手に始めてた派ですね。
タニタ:そうですね。勝手に始めてた。
堀向:勝手に始めて、タニタという名前を使われたということですか?
タニタ:そうです、そうです。
堀向:ほ~!
タニタ:当時はまだそんなに社内的にSNSを活用するという方向性がなかったので、なんとなく一番SNSに触れていた人間だったんですよね。一応「こういったことをやってみたい」というところは社長や上司に軽く伝えてはいたんですけど。
「じゃあ、とりあえずやってみれば」というかたちでほぼ放置されていて。「大丈夫か?」と言われたのが、たぶん5年くらいしてからですね。「いや、もともとやってます!」って(笑)。5年くらいして初めて気付かれるくらいのフェーズがあったということなんですけど。自分の意思でやり始めたというのが、ちょっと違うところかもしれないですね。
堀向:開始したのは同じ時期ですか?
タニタ:そうですよね?
シャープ:たぶん(タニタ氏を指しながら)ちょっとだけ早くて。僕は「やれ」と言われて始めるときにタニタさんのアカウントを見た覚えがあるので。
堀向:あ~なるほど。
タニタ:ほぼ同期みたいな。
シャープ:なんか「体重計に乗れ」とか言ってたよね。
タニタ:言ってた(笑)。ちょっとそのへん思い切って。
堀向:ふだんから交流はあるんですか?
タニタ:はい。
シャープ:ありますよ。
堀向:リアルとして?
タニタ:この前もオンライン飲み会しましたよね。
シャープ:あ、でも先にTwitterでしゃべりだしたというところがあります。
堀向:僕らと一緒ですよね。大塚やけいゆう先生や市原先生と。
タニタ:そうですね。
堀向:ごめんなさい。勝手に進めちゃいました。
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