スタートはラクロス部のキャプテンだった
――本日はよろしくお願いします。この企画では「プレイヤーからリーダーへの転換ポイントは?」ということで、曽山さんご自身がリーダーになるまでの経緯などをうかがいたいと思っています。
さっそくですが、曽山さんは新卒で伊勢丹に入社されたと聞きました。そこでEコマース立ち上げなどに関わっていたとのことですが、当時からチームを率いるような立ち位置になることが多かったのでしょうか?
曽山哲人氏(以下、曽山):そうですね、まず僕自身のファクトを申し上げると、昔から目立ちたがり屋だったんですよね。
――目立ちたがり屋ですか。
曽山:はい、どちらかというと(笑)。そもそもリーダータイプだった、というよりも、目立ちたがり屋だったのでしょうね。だから学生時代、生徒会で副会長をやったりしていましたね。高校時代にはストリートダンスで、当時日本テレビの番組内企画だった「ダンス甲子園」に出場して全国3位にもなったりして。
新しいものと目立つものが好き。好奇心旺盛なんでしょうね、すごくポジティブに言うと。
いわゆるリーダーシップ経験でいうと、大学時代のラクロス部でキャプテンになったことがスタートだったように思います。日本学生ラクロス連盟というさまざまな大学のラクロス部が集まる団体があって、部活のキャプテンと同時に連盟の広報委員もやっていました。
日本学生ラクロス連盟は130校くらいの大学から選出された幹部メンバーでチームを作って、広報活動としてチラシを配ったり、雑誌社を回ったりしました。
――学生の部活といえど、メンバーをまとめるのは大変そうです。
曽山:そうですね、大変でしたね。あと、血液型や性格診断とか、自分の性格を診断できるものがあるじゃないですか。
――ありますね。「O型=おおらか」みたいなものですよね?
曽山:それです(笑)。僕、そういった性格診断系テストをやるとほぼ確実に「完璧主義」って出るんですよ。ストイックというか、神経質なんでしょうね(笑)。
さらにいうと、自分にも厳しくありたいと思うタイプです。ラクロス部でキャプテンをしていたときも、ほかのメンバーより絶対に早くグラウンドに入るようにしていました。当時は横浜に住んでいたんですが、朝6時か6時半には東京・四谷のグランドに必ずいるという。
――横浜から四谷って、けっこう距離がある気がするのですが……。
曽山:朝4時半には家を出ていましたね、それも週3回(笑)。でも、いい結果は出せなかった。チームの難しさを感じていましたね。辞める部員をどう引き止めるか、どうやって部員を増やすのか、どうやってみんなのモチベーションを上げるのか。より強いチームを作るにはどうすればいいのか。すごく考えていました。
試合から外され、学んだのは「勘違いの責任感」
――具体的に、そういった問題をどう解決していったんですか?
曽山:結論を言うと、解決できなかったですね。なんというか、僕は僕自身のテンションを高く保つことを苦に感じるタイプではありませんでした。だから、チームの雰囲気は決して悪くなかった。
では、なにが課題だったのか。象徴的なのが、僕がキャプテンとして持っていた「人事権」でした。いわゆる「誰を試合に出す・出さない」を決めるものですね。これは、自分の中ではすごく大きな壁でした。
僕が人事権を持っているということは、ほかのメンバーの判断が反映されない。でも実際には、試合ではキャプテンの意思とはまったく別の判断が必要とされることがよくあります。試合中、ほかのメンバーが「こういう状況だから、あいつを出そう」といった瞬時の判断ができないのは良くない。
そこで、キャプテンとは別の「戦略遂行責任者」というポジションを作りました。チームの戦略をずっと考える人ですね。それを僕の同期にお願いして、試合の人事権も彼と副キャプテンに任せました。
あれは、たしか夏にあったリーグ戦でした。ずっと負けが続いていて、その時、僕はレギュラーのゴールキーパーとして出場していたんですけど、試合の人事権を任せていた彼らが「曽山をレギュラーから外す」という選択をしたんです。
――それは、なんというか。
曽山:すごくショックでしたね。本当にショックでどうしようもなかったんですけど、結果的にその試合は勝ったんです。人事の妙で、成果は変わるんです。
戦略遂行責任者から試合後に言われたのは「曽山をキャプテンとして認めていないわけじゃない。勝つために誰をレギュラーにすればいいかを判断した結果だ」でした。その言葉にすごく救われました。
僕が外れた後半戦のほうが、いい試合ができていました。自分が出ない状況になって初めて「あ、なるほどな」って思ったんです。そこで学んだ教訓は「勘違いの責任感」でした。
「偽善的責任感」でチームは歪む
――勘違いの責任感?
曽山:はい。当時の僕は「自分がキャプテンとして、ゴールキーパーをレギュラーでがんばってやることが勝利につながるはずだ」「なぜなら、自分が(ほかのメンバーに)模範を見せなければならないからだ」と思っていたんです。
でもこれ、勘違いなんですよね。僕はこれを「偽善的責任感」と呼んでいます。