ヘルプデスク向けのユースケース

山下鎮寛氏:ここまで非常に長い間、前段を話したんですが、ここからいよいよユースケースの紹介というところで、今回は実際にアルプが利用している、もしくは検証をした、すぐに試せるChatGPTのユースケースを紹介します。

APIを組み込んでしっかりやるという部分についても非常に有意義なユースケースはあるんですが、時間的になかなか説明が難しかったり、技術的な内容も多分に含まれるので、ある程度簡単に試せるユースケースをお持ちしました。

まず1つ目です。対象業務としては、ヘルプデスクの方々を想定しています。最初に利用しているサービスの管理について尋ねるというところで、プロンプトの例としては、「SalesforceでRevenue Churn Rateを集計したいんですが、どのような対応を行えばよろしいでしょうか。追加が必要なカスタムフィールドの一覧、レポート作成のステップを教えてください」と入力をすると(します)。(すると)Salesforceの中で、今までの契約や商談のデータを使ってRevenue Churn Rateを集計する方法を教えてくれます。

これはもちろんSalesforceに限った話ではなくて、Salesforce以外にも「Workday」とか「Office」など、公式がドキュメントをがっつり公開しているサービスだったり、あとはWindows、macOSというようなOSレベルの内容に関しては、非常に正しい情報を返してくれる傾向があることが検証していてわかりました。

特にエンタープライズ企業の情報システム部の方だったり、コーポレートITの方々がヘルプデスクの部門も持っているケースは多くあるかなと思っています。

こういった相談とか質問は非常に多く行われていて、それ用のマニュアルとかConfluenceとかを用意するのって、非常にコストが高いかなと思っています。

セキュリティポリシーを決めた上で社内向けのGPTなどを用意すれば、そういった学習をさせることもなく、すでに多くのサービスの利用方法について回答できるようになります。

社内向けのヘルプデスクもそうなんですが、社外向けにいろいろなマニュアルがある中で、チャットボットを作ろうと。OpenAIのAPIを使って自社のマニュアルを学習させてチャットボットを作ったり、サービスの利用の方法を確認するようなサービスも非常に簡単にできるようになりました。

これが1つ目のユースケースです。この右上の星が導入難易度だったり利用難易度みたいなところになっていますが、こちらは星1つ。非常に簡単に使える要件になっています。

BPR・プロジェクト担当者向けのユースケース

2つ目のユースケースですが、「Google Workspace」の作業を効率化するために、GASを書いてもらうというところで非常に便利に活用できるようになっています。こちらの対象の業務例は、BPR(Business Process Re-engineering)やプロジェクト(担当者)の方々を想定しています。

このプロンプトの例ですが、ちょっと長いので簡単に説明します。大量の営業資料があった時に、営業の方々は「あのスライドのあの部分とあの資料のあの部分をくっつけて資料を作る」ということを日々けっこうやっているかなと思います。

それらを「Googleスプレッドシート」でチェックボックスを入れたら、自動的に「Googleスライド」で出力できる。「このブロックとこのブロックとこのブロックをチェックボックスに入れるだけで、新しいGoogleスライドを出せる」というようなことをやってみたいなとオーダーしてみました。

「これをGASで作成したいんだけど、どうすればいいですか?」と書くと、コードをすべて出してくれる。コードの入力方法だったり、スプレッドシートではどういうふうに管理すればいいのかも教えてくれるようになっています。

今、すごくスペシフィックなユースケースについて説明したんですが、基本的にGoogle Workspace、例えばGoogleスライド、Googleドキュメント、Googleスプレッドシートといったところは、ほとんどがGASで作業を効率化することができるようになっています。

ふだんGoogleスライドを使ってたくさんやっている作業や、スプレッドシートを使ってやっている作業は自動化できないのかを、ぜひChatGPTに尋ねてみるといいんじゃないかなと思っています。

特徴的なのは、プロンプトに事前に要件を書いているんですが、この後に「やはりこんな機能が欲しかったよな」と追加で思った時に、「こんな機能を追加してもう1度書いてくれますか?」とやると、それらを考慮したコードを何度でも新しく書いてくれたりするので、それも非常に便利だなと思っています。

経理向けのユースケース

次は、(スライドに)「システム化されていない作業をChatGPTに依頼する」と書きました。こちらの対象業務例としては、経理の方々の入金消込の部分と書きました。

(スライドの)右側に出している例は、「請求者名と請求した金額の一覧と、以下の入金履歴をひもづけてください。記入順とは関係なく、関連するものをひもづけてください」と(いうものです)。

実際に入金、全銀データから取ってきたようなCSVの(中の)カタカナ(の名前に加えて)普通口座、何々、金額いくら、日付いつ、というようなデータをひもづける。最後に「表形式で出力してください」とプロンプトで指定をしています。

そうすると、名前がカタカナと漢字でブレがあったり、実際にここで書いている例でいうと、飯田次郎さんを「普通口座イイダ」と短くしているんですが、それでもすべてマッピングをしてくれます。

かつ、入金手数料を勝手に引いた金額だけを入金されるケースも多くあるかと思うんですが、そういった部分も自動で判別をする。(スライドを示して)ちょっと文字が小さくて見えづらいかもしれないんですが、「ただし、鈴木太郎の請求額と入金額には差額があります」と。これを自動的に出してくれます。

これはどう使うのがいいかというと、API経由、もしくはAzure OpenAI Serviceのセキュリティが担保された環境下において、例えば先ほどのGASと組み合わせて、「Googleドライブ」に入金データと請求データのCSVを置く。それらを自動で読み取って、マッチングした最終的なアウトプットをGoogleのスプレッドシートに出すことができる。

入金があったか、ちゃんと行われているかどうかと、ひもづけ作業を、今まで手でやっている会社さん、もしくは入金消込専用のSaaSがあるような一部の領域でやっていたケースが多くあると思います。そういった作業がまだシステム化されていなかったり、システム化してもお金を払っているような作業を、ChatGPTを使うとすべてできるようになってしまう。

我々はここに出しているデータ以外でも検証しているんですが、精度が非常に高くて。漢字とカタカナだったり、アルファベットとカタカナというようなところでマッピングをしたり。金額にズレがあったり、一部入金しかなかったりとか、分割で入金されているようなケースに関してもひもづけてくれるというような、非常に効果が高い内容になっていました。

ここではいったん入金消込の例を書いているんですが、それ以外にも、ふだんやっている中でシステム化されていない作業で、やはりマッピングが難しい、カタカナと漢字でマッピングできない、DX化できないというようなケースに関しても、ChatGPTにとっては意外と簡単というようなケースも多くあるので、そういったケースをどんどん洗い出していって、「それはChatGPTでできるのか」とやっていくのがいいかなと思っています。

管理会計・コーポレートIT向けのユースケース

次は星2つで書いているんですが、社内のデータを自在に集計/分析するというところです。こちらの対象業務は管理会計だったり、財務会計側の部分を依頼されたコーポレートITになっています。

こちらはただChatGPTだけを使うのではなくて、「LangChain」というAIのライブラリで読み込んだりする必要があります。 今までSQLを書いていたようなことをChatGPTに自然言語で依頼すると、その質問をSQLに変換して自動で実行してくれるという内容になっています。

この例としては「今、一番請求額が多い顧客は? 金額も併せて教えて」というようなかたちでやると、請求のデータテーブルを読み込んでいって、会社名とか合計金額を出してくれるという例になっています。

それ以外にも、ちょっと複雑な傾向、請求の明細の中で請求項目が多いものを上から順に教えてもらったり、重複する請求先法人名を1つにまとめるようなこともできます。

例えば高度な分析。「利用データなどを組み合わせて、解約リスクの高い顧客の抽出をしてくれ」というものに関しても、もちろん事前にFine Tuningを行ったりPrompt Engineeringである程度事前条件は指定する必要はあるんですが(できます)。今までBIツールを使ってやっていたデータの事前の集計だったり分析を、自然言語で行えるようになった。

これで何が良くなるかというと、今までエンジニアの方々ががんばってSQLを書いて出されていた部分を、ビジネス職の方だったり経営企画の方が自然言語でできる。環境だけ用意しておいてあげれば、あとは自然言語でトライアンドエラーしながら出せるようになるというところが、非常にインパクトが大きい内容かなと思っています。

最初に「ChatGPTは計算が苦手ですよ」という話をしましたが、計算式が解けるところまで、SQLのクエリを書くところまでが(ChatGPTの)メインになり、実際の計算自体はクエリが行います。これもChatGPTの弱点を補って担保できるような、すごくいい内容かなと思っています。

次が、これはコーポレートITの方々や我々が相対するような方々でよくある(ものな)んですが、「業務システムをリプレイスしましょう」とか「新しく導入しましょう」「スクラッチで作りましょう」となった時に、それらの要件をChatGPTと一緒に作ることができます。これはDXの方々だったり、BPRの方々が業務システムを導入されるような業務の際に使えるかなと思っています。

例えばプロンプトの例としては、「あなたは物流企業のエンタープライズ企業の情報システム部に所属しています。あなたの会社では販売管理システムを新しく導入することになりました。今までの業務を洗い出して要件定義書を作る必要があるのですが、参考にするために要件定義書を表形式で販売管理システムの要件定義書を作成してください……」。

(スライドを見て)ちょっと誤字がありますね。誤字があっても、ちゃんとChatGPTは出してくれました。

「表の列は、大項目/中項目/小項目/ユースケース/ユースケース詳細/必要度としてください」というところで出すと、ズラッと。スクリーンショットを貼り切れなかったんですが、かなり幅広いページのレベルで出してくれます。

与件をあまり記入していなかったのですが、例えば物流企業の中でも、「実際にセンサーを使ってやってみる」とか、「ドライバーのこの条件も管理したいです」というような与件を加えることによって、より精度の高い要件一覧を作成することが可能です。

「じゃあもうこれからRFPを作らなくていいか」というと、そういうわけではもちろんありません。しかし、最初の作業、洗い出してやる作業がすごく一気にまとめてできる。

与件を書くだけであれば、1時間ほどである程度ざっと終わらせることができるというところで、今まで非常にコストがかかっていた、こういった要件定義書を作ることやRFP(Request For Proposal)を作る作業が、非常に高速で行えるようになりました。

実際に私が今プロフェッショナルサービスで提供している企業さまで、システムのリプレイスを考えている会社さまもいたりして。ユースケースの抽出を行う際にこれを使ったんですが、非常に好評でした。

「ChatGPTを使っていますよ」とは説明はしていないんですが、「非常に網羅的でわかりやすくていいです」と言ってもらえるようなクオリティでできています。

ビジネスIT・コーポレートエンジニアリング向けのユースケース

最後のユースケースとして、ここはビジネスITだったりコーポレートエンジニアリングと呼ばれる領域としての対象業務例ですが、新しいサービスのビジネスITとして提供しているサービスの機能であったり、社内システムをChatGPTと「GitHub Copilot」と言われるサービスを駆使して開発するところになっています。

(スライドを示して)これは何をしているかというと、最初に「こんな機能を作りたいですよ」と。「アップロードしたPDFファイルを読み取って、OpenAIのAPIで内容を要約をするアプリケーションを作りたいですよ」というところをChatGPTに対して投げます。「そのために画面に用意するべき機能というのは何がありますか? 教えてください」というふうに(聞いたあと、)ChatGPTから回答をもらって、機能の案をもらうんですね。

GitHubが「GitHub Copilot」と言われる、コードをLLMで生成してくれるサービスを今出しているんですが、そこに機能の案を貼るんです。コメント欄として貼ります。

これは動画があるので動画を見てもらえればと思います。

(動画再生開始)

こんなかたちでコメントとしてそれを貼り付けておいて、それに対してエンターキーを押していくと、「こんなコードがいいんじゃないですか」というのを自動で出してくれるんですね。

問題がなければそのままOKをしていくと、どんどん機能ごとにコードが生成されていく。こんな感じですね。

(動画再生終了)

今回は非常にシンプルなサービスを作ったんですが、こんな感じで登録をしていくと、もうそれだけでアプリケーションが1個生成されるというところが、かなりインパクトが大きい使い方かなと思っています。

ChatGPTをちゃんと活用できるかによって今後の生産性は大きく分かれる

ということで、今まで、要件定義にすごく時間をかけて作っていたものだったり、社外システムを新しく入れるとなった場合には、いろいろヒアリングをして、どういう要素が必要なのかとやっていたと思います。

これからは細かい要件定義とかユーザーの行動は見るべき内容ではあるんですが、それも全部、いったんChatGPTとGitHub Copilotでモックを作りながら、それを見て(分析や提案などを)やっていくことで、ユーザー側もヒアリングされる時の理解がすごく高まる。非常に便利にモックアップを作りながらも、すぐに要件を確認することができる。

これは、エンジニアとして非常に重要なものになってくる。今後、これをちゃんと活用できるかどうかによって、生産性が大きく分かれてしまうということを相野谷(相野谷直樹氏)と話していたところです。

コーポレートIT領域のその他のユースケース

本日触れたユースケースは、あくまでもChatGPTにおける活用可能性のごく一部となっていて、コーポレートIT領域については(紹介した以外の)ユースケースは非常に多いかなと思っています。

(スライドを示して)これは中野さん(中野仁氏)が作った図で、業務システムの全体像(になります)。基幹系、基盤系、情報系。フロントオフィス、バックオフィスそれぞれが、どんなアプリケーションとか内容を持っているのかというところなんですが。

ざっと洗い出しただけでも、基幹系では、例えばサポート用のコンテンツのマニュアルの自動作成をするとか、人事評価の集計と分析を行う、ジョブディスクリプションを書いてもらう、財務レポートを生成してもらう、契約書のデータをOCRで読み込んで自動でテキストにして管理してもらうとか(の作業があります)。

あと基盤系でいうと、プロセス管理のツールとコミュニケーションツールを連携させたり、そもそもデータウェアハウスを構築すること自体を簡易化できないかとか。

あと情報系のツールでいうと、社内コンテンツというところも、今まで作っていたドキュメントだったり、「Word」ファイルとかを自動生成したり、FP&Aの簡易化を行うこともできる。

あともう1つキーになるのが横断系と呼ばれる領域だと思っていて、ChatGPTだったりLLMが各システムの情報閲覧とか実行のインターフェイスになるんじゃないだろうかと我々は考えています。

今後はデジタルツールとChatGPTでコミュニケーションが取れるようになる

これもマイクロソフトの方々がざっと出している、GPTで描かれる未来というところなんですが、我々はまだ(この中の)Phase 0とか1にいると思っています。

高度な文書作成だったり情報の集約・出力を今やっているところではあるんですが、この後何が起こるかというと、プログラム言語と自然言語の実用レベルの変換が行えるようになるということが我々の検証で明らかになっているので。

今後、デジタルツールとChatGPTでコミュニケーションを取れるようになる。今までは操作方法を覚えて、そのデジタルツールの使い方に沿ってちゃんとやらなければいけなかったんですが、デジタルツールがAPIを出していれば、自然言語で各サービスに対して指示をすることができる。

かつ、それらのツールがAPIにつながっている状態になってくると、動的なタスク、(例えば)「このツールでこういうことをして、次はこういうことをして、別のツールでこうやってやって、最終的には会計ツールに対して仕訳を登録しよう」ということが、ほかのサービスの使い方を理解しなくても、ChatGPTのインターフェイスやLLMのインターフェイスの中で、自然な言語で入力するだけですべてやってくれるようになるというところまで行けてしまうんじゃないかなと感じています。

実際に一部のサービスの細かいAPIを少し試していく中で、もうそれができているというのが正直なところです。

後ほど我々が考えてできているような事例についても動画で見せられればと思っています。

(次回に続く)