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スペシャルトーク(全5記事)

QAに遠慮するチームでは、効果の高いプロダクトは作りづらい うまくいくチームになるため必要な「学びの時間」と「雰囲気作りの時間」

株式会社レッドジャーニー・アジャイルコーチの中村洋氏とフリー株式会社・QAマネージャーの湯本剛氏が、freeeの開発を軸に、エンジニアとQAの関わり方について話しました。全5回。前回はこちらから。

うまくやっているチームはみんなでユーザーを見に行く

てらら氏(以下、てらら):最後が「freeeの伸びしろ」をテーマに話をしてもらえればと思います。

中村洋氏(以下、中村):難しい。

てらら:では、洋さんからお願いします。

中村:そうですね。伸びしろというとちょっと上からになるんですけど。(私が)見ているチームは、うまくやれるところもけっこう増えてきていると感じています。でも、やはりまだまだ「エンジニアさん」とか、「QAさん」とか、冒頭で話したような遠慮とか、「自分が言っていいんだろうか」とかはけっこうあると思っています。

そのために、一人ひとりのエンジニアリングを伸ばすための学びの時間を取るのも必要だし、途中で言ったような、チーム雰囲気を作るために時間を使うとか、お互いのことを知るようなこともけっこう必要かなと思っています。

QAの人は、先ほども湯本さんが言ったように、バグをゼロにするということに情熱を出す人がいて、それはそれでいいんですけど、プロダクトやユーザーのことをもっと知ればもっといいのになと思っています。うまくやっているチームは、みんなで一緒にユーザーのところに見に行っているんですね。

例えば、プロダクトマネージャーとかプロダクトオーナーだけが行っているとか、プロダクトデザイナーだけが行っているとかじゃなくて、みんなで見に行って「あ、こういうふうにしているんや」みたいなことをけっこうやっていると思います。

なので、そのあたりが伸びしろかなと思ったりもするし、チームといった時に、QAの人だけが外れているようなことが無くなっていくと、もっといい安定したチームが増えていくんとちゃうかなと感じています。

湯本剛氏(以下、湯本):だから、例えばユーザーテストでデザイナーとPMだけじゃなくて、QAの人もシャドウでいいから行かせてもらうとかね。

中村:そうそう。実際にうまくやっているところのスプリントレビューは、一応そのプロダクトマネージャー、プロダクトオーナー、あとはプロダクトデザイナーが進行しているんですね。お客さんにオンラインで入ってきてもらって、「あなたには〇〇という状況があります」「それでこういう仕分けを起こしてほしいです」と言ってシナリオを渡して、「じゃあやってみてください!」と言って、新しい機能をテストしてもらうわけですね。

いわゆるYouTubeの実況動画のように、頭に浮かんだことをしゃべるのを見てもらっています。その時はチーム全員、エンジニアだけじゃなくてQAもみんな入って、カメラはオフにしていますが眺めて、「あ、ここは気づかへんのか」とか「こういうことを思うんやな」みたいなことをやります。

そのあとで「このプロダクトを次にどう進化させるとユーザーにとってわかりやすいんやろうね」とか「使ってくれるんやろうね」という話をみんなでやっていますね。

湯本:一応、経理の人が使うプロダクトなので、freeeの経理部の人に使ってもらって、(使いづらければ)「使いづらい」と正直に言ってもらっています。けっこうボロクソに言われたりしていますね。

中村:いいですね。

湯本:だけどそういうのも大事ですよね。

中村:そういうところがたぶん伸びしろだなと思っています。先ほども言ったように、「自分はテストをするだけだから」とか、別の役割の人が「最初から巻き込むのはもったいないから」と言うと、たぶん一見効率的には見えるけど、効果の高いプロダクトは作りづらいんちゃうかなとは私は信じているんですね。そのあたりが伸びしろかなと思いますね。

てらら:なるほど。 ゆもつよさんがそれをやっていく? みんなでやっていく?

湯本:俺?

(一同笑)

中村:ゆもつよさんにやってほしいんですけどね(笑)。あとは若手の方にね。

湯本:そう。若い人がやってほしい。今日来ているQAエンジニアの若い人にやってもらいたい。

とにかく「自分で考える」ことが大事

てらら:そういう意味だと、ゆもつよさんからQAエンジニアに向けて、あらためて「こういうQAエンジニアというかエンジニアを目指してほしい」みたいな話はありますか?

湯本:同じことを言っている老人みたいになっちゃって。

(一同笑)

だいたい一緒になっちゃうんですけど(笑)。とにかく自分で考えるということですよね。自分で考えて、考えるためにはちゃんと知らないといけないので、ユーザーのことを知るとか、チームのことを知ることは必要だし、考えて自分がどうあるべきか。

特に品質のところが自分の専門なら、「このレベルのものをお客さんのところに出していいのか悪いのか」という自分なりの意見(を言えるようになる)。「自分なりの」といってもあまり“俺俺”じゃまずいので、ハッピーの重篤度をちゃんと……。ハッピーはバグのことですね。

中村:もう(説明しなくても)いいと思いますけどね(笑)。

湯本:ハッピーの重篤度をプロダクトごとに全部定義して、あまり独りよがりにならないようにしています。そういうのを基にチームに対して(意見を)言えるようになってほしいです。

「違う意見が出てきて良かった」と思えるような関係を作る

中村:ちょっとごめんなさい、いいですか?

てらら:大丈夫ですよ!

中村:今日の“アジャイルQA”は、“アジャイルQA”という1つの名称の話でもあるし、ある意味エンジニアとQAと一緒にやっていくという話なんです。先ほども言ったように「違うよね」という前提を持っていない人がけっこういて、違った意見に対して「なんでそうじゃないの?」という聞き方をする人がわりといるんですよね。

「だって専門性が違うんだから(意見が)違って当たり前やん」という話です。違って当たり前だし、違っているからこそ変な片方の視点で終わらないという話があります。だから違うことを責めるような言い方をしないで、むしろ違う意見が出てきて良かったと思えるような関係が作れると良いなと思います。それはQAだけじゃなくてみんなですけど。

湯本:そうですね。言うほうも、「なぜそうなのか」というところを真摯な気持ちでちゃんとしゃべらなきゃいけないし、そういうことに対して聞いてくれるようなチームを作っていくということ。これはQAだけじゃなくて全部そうです。エンジニア同士とかでも十分言えることかなと思いますよね。

中村:そうですよね。そういうことを言いたかったです。

てらら:ありがとうございます。いい話でした。

バグの重篤度もみんなで決めると良い

てらら:もう少し時間がありますが、他に何か話したいことはありますか?(笑) (バグの)重篤度の話はしましたっけ? ゆもつよさんのこだわりがある。

湯本:ゆもつよさんこわだりの重篤(笑)。重篤度をちゃんと定義しましょうということを全社的に、それこそ標準化じゃないですが、やっています。標準化は間違えるとすごく良くないんだけど、それを合わせないといけないところを合わせるというのはめちゃくちゃ実は重要なことで、(そういう意味での)標準化は良いと僕は思っているんですね。

そこを間違えちゃいけないんだけど、特にバグの重篤度、ハッピー……。バグと、ハッピーとどちらで言ったほうがいいかわからなくなっちゃった(笑)。

中村:「バグ」でいいんじゃないですか?(笑)

湯本:バグの重篤度を今は決めています。何が本当にやばいのか、何がやばくないのかを決めるのは当たり前なんですが、それをプロダクトごとにやってほしいというのもまたポイントです。

中村:そうですね。

湯本:アプリというか、「freee会計」というプロダクトの中でも、ワークフローをやっているところとか、会計帳簿を作るところはぜんぜん違うんですよね。だからそれぞれの重篤度が必要で、基盤だったら基盤の重篤度とか、カードだったらカードの重篤度みたいな話でやっていくのが大事です。

それもQAがリードするというか、品質のことだから「そういうのをやろうよ」と言ってリードするのがいいけれど、みんなで決めることがまたすごく重要です。

みんなで決めることによって、エンジニアもプロダクトマネージャーもデザイナーも、みんなどういうものがやばいのかという目線合わせができるんですよね。なのでそういうことを推してやっています。

中村:なるほど。いいですね。結局「バグの数が何件か」とか「バグ率がどうか」というのはデータとしてはいいけれど、結果としてユーザーがどんなふうに困るのかとか、どれぐらいの人が何ができなくなるのかをちゃんと解像度をあげていかないと、「何でも直す」というほうになっていって、いけないと思います。

プロダクトも進化していく上で、やばいポイントが変わると思うんです。そんなに頻繁には変わらないですよ? そんなに頻繁には変わらないけど、プロダクトの状態によって、前はここやったけどそれでもやばい体験が届けられて、結果的にここが死んでもっとやばいことになるんやったら、こちら側に力をかけるみたいな。そういう観点も必要かなと思ったりしますね。

湯本:そうですね。データを取らないのは良くないと思いますが、そのデータの数字だけで判断するのも良くなくて。その中身まで入っていかなきゃ実際は何もわからないというのはあります。それをわかりやすくというか、みんなで共通の目線にするのが重篤度でやっています。

中村:いいですね。

湯本:これも2020年ぐらいに1回、重篤度の定義をやったんですけど、3年も経つと……。

中村:変わりますもんね。

湯本:プロダクトも変わるし、人も変わるし、いろいろ変わって、なんなら「知りません」という人もどんどん増えてきちゃって、「またやらなきゃ」ということでやっています。

中村:なるほど。そんな感じですか?

てらら:ありがとうございます。ということでお別れの時間となってしまいました。次回以降もここばなを企画しているので、ぜひご期待ください。

最後にライブ配信がおもしろかったと思う方は、ぜひチャンネル登録とグッドボタンをお願いします。それでは今回の配信は終了です。ありがとうございました! まったねー!

(会場拍手)

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