CLOSE

スペシャルトーク(全5記事)

「不具合が出たら全部倒す」は偏った判断 “アジャイルQA”で求められる「必要性を自分で考える」こと

株式会社レッドジャーニー・アジャイルコーチの中村洋氏とフリー株式会社・QAマネージャーの湯本剛氏が、freeeの開発を軸に、エンジニアとQAの関わり方について話しました。全5回。

中村洋氏・湯本剛氏の自己紹介

てらら氏(以下、てらら):みなさんこんばんは。「中村洋とゆもつよのここだけの話」略して「ここばな」!

(会場拍手)

ありがとうございます。ということで、本日はスペシャルゲスト2名を招き、「アジャイルQAって実際どうなん?」をテーマに、フリートークをしてもらおうという趣旨の会です。

さっそくガチガチに緊張している2人の出演者に自己紹介をしてもらおうと思います。それでは、まず洋さんからお願いします。

中村洋氏(以下、中村):あらためまして中村洋と申します。レッドジャーニーという会社でアジャイルコーチをやっていて、さまざまな組織が良い感じにプロダクトを提供し続けられるチームになるように外からけっこう支援しています。今日はよろしくお願いします。

てらら:よろしくお願いします。いつもお世話になっております。では続いて、ゆもつよさんお願いします!

湯本剛氏(以下、湯本):はい。湯本剛です。みんなから「ゆもつよ」と呼ばれています。freeeに入って4年6ヶ月になります。社会人になってからテストの仕事を、ずっと一筋で三十ほにゃららです。好きなことは、仕事が終わったあとにお酒を飲むことです。以上!

てらら:はい。よろしくお願いします。そんなアジャイルのスペシャリストとQAのスペシャリストの2人のトークが気になるところですが、まずは今日のテーマの「アジャイルQAって実際どうなん?」というところです。

本イベントの開催理由

てらら:実は、ゆもつよさんから「どうしてもこれをしゃべりたい」という話をもらっていて、「じゃあやりましょうか」と言ったんですけど(笑)。ゆもつよさん的に、これを話したかった意図はどんなところにあるんですか?

湯本:えっとですね、中村洋さんとやりたかったなと思って。

中村:この場を?

湯本:この場を(笑)。「やりたかったって、何を?」という話ですが、このトークをやりたいなと思いました。なんで思ったかというと、アジャイル開発が今日のテーマなのですが、私がfreeeに入るまで、アジャイル開発という言葉は知っていたし本でも読んだことがあったんですが、実際にやってみて「あ、こういうふうにうまくいくんだ」という体感みたいなものがなかったんですよね。

だから、本当にこんなんで……。「こんなんで」という言い方は悪いですが、(アジャイル開発でうまく)いくのかと思っていたところがあります。

実際にアジャイル開発をやっているチームに入って、そのチームも良い時があれば悪い時もあるのですが、洋さんが来て、すごくチームが良くなっていく、チームが成長していく様子などを見て、「すごいな」と思ったという感動をみんなに分け与えたいと思って、今日は呼びました。

てらら:サンタさんみたい(笑)。ありがとうございます。洋さん的にはけっこう照れる感じですね。

中村:そうですね。普通に居酒屋でやっているみたいな話ですよね(笑)。

(会場笑)

freee流のアジャイルQAとは

てらら:先ほども楽屋でけっこう盛り上がっていましたが、そんな盛り上がる話を今日は聞かせてもらえればなと思います。

それではさっそくスペシャルトークに入りたいと思います。(スライドを示して)もうスライドが映っていますが、「freee流のアジャイルQAとは」というところを聞いてみたいなと思います。まずはどういったかたちでfreeeが実現しているのかを、ゆもつよさんに聞いてみようと思います。お願いします。

湯本:「freee流」といっても、freeeにもいろいろなプロダクトがあるし、そのプロダクトの中にもいっぱいチームがあるので、その1個を取って「freeeは全部これです!」となるとちょっとおこがましいんです。

なのでfreee流というほどではないですが、私が入っていたというか、一緒にやっていた「freeeカード Unlimited」というクレジットカードの開発の中でのアジャイル開発で、どういうふうにQAが入っていたかという話でいうと……。

すごく長い時代がいろいろあるので一瞬でうまくはしゃべれないんですが、要はチームの一員になるということなんですよね。言葉で言うとちょっと軽い感じになっちゃうんですが、一緒にお昼も食べてみたいなところから始まり。

要はリリースするものに対して、QAならではの「その品質でお客さんに出していいのか」という適切なポイントみたいなものを自分からちゃんと話していって、チームと一緒に考えて、適切なタイミングでちゃんと出せるように一緒にやっていくというのがアジャイルQAかなと思います。どうでしょうか(笑)?

中村:そうですね。アジャイルコーチの観点でよく言っているのは、「プロダクトは作った段階がスタートライン」というか、そこにすら立っていないと思っていて。結局、利用者というかユーザーの人が触り始めて、初めてホンマに価値があったのかがわかり、何かフィードバックが生まれ始めます。そういう点でいうと、基本的には速く届けることが大事だと思っています。

先ほどゆもつよさんが言ったように、「品質が何か」はいろいろあるのですが、不具合がまったくないことを突き詰めるのか、多少はあってもいいかもしれへんけど、速く届けてフィードバックをもらうのがいいのか。

それは別にどっちかが正解というよりも、自分たちの今のコンテキストに応じて「やる必要がある」ということをちゃんと考え続けられるようなやり方や考え方がわりとアジャイルQAだし、たぶんfreeeさんはそれをやっているのかなとは思ったりします。

湯本:そうですね。

中村:そうですね(笑)。

湯本:なので、例えばテストをして「これだけのテストケースを必ず全部やらなきゃいけない。そこまではリリースできない」じゃなくて、どういう品質のものを出したいのかを自分なりにちゃんと考えて、チームに伝えて、「だったらこのバグはもう直さなくてもいい」とQAからちゃんと言うとか。それぐらいやる。

中村:そうですね。ちなみに私はQAが専門ではないんですが、テスト消化率が何パーセントとか、不具合、ハッピー(バグ)が何件あるかみたいな話をします。

それはそれで大事なデータなのですが、それが出た時に「ユーザーの人がどれぐらい困るんやろう」とか、「ビジネス上どんなインパクトがあんのやろう」ということがないと、(不具合が)出たから絶対に倒すみたいになっていて、たぶん判断が偏ると思うんですよね。そのあたりのバランスを取れるような組織やったらいいなとは思っていますけどね。

湯本:そうですね。そういうふうに、「どういうものをお客さまに出せばいいのか」ということも、エンジニアもプロダクトマネージャーも常にみんな考えていると思うのですが、QAも同じぐらい一生懸命考えて、「自分たちはどういうものがいいと思う」とか話をちゃんとした上で一緒に仕事をするのが、アジャイルQAなんだなと思いますね。

中村:そうですね。

素早く方向転換をできることがアジリティの本質

中村:アジャイルに対してちょっと補足をしておくと、アジャイルは人によってかなりイメージが違ったりします。「(開発速度が)速いんでしょ?」とか「安いんでしょ?」とか「なんか小さく速く物を届けるんでしょ?」と、いろいろな側面があります。

私が最近アジリティの話をしている時は、「素早く方向転換をできることがアジリティの本質」とよく言っています。速く走るだけじゃなくて、速くフィードバックをもらって、その結果、自分たちが方向転換できるような技術力やチームの関係性がたぶんいるんやろうなと思ったりはしています。

湯本:リリースしたものが受け入れられるのか? ということがあるから、受け入れられれば良いけれど「実はこうじゃなかったんだ」と言われたら、素早く方向転換ができないといけないいうことですよね。

中村:そうです。

アジャイルの大事なところは「成長する」ということ

てらら:あれ? freeeの中ではわりとできているということなんですか? いろいろなポジションの人が融合して良いものを作り上げていくようなマインドとか、体制とか。

湯本:freeeカード Unlimitedにアジャイル開発のQAとして入って、今は本当にみんな成長して、すばらしい人たちになったんです。お願いしていたのは、今言ったように「自分もちゃんと考えましょう」とか、「自分の思っていることをちゃんと発言しましょう」とかです。

中村:そうですね(笑)。

湯本:要は「待ちの姿勢にならないでほしい」ということなんですよね。

中村:今思い出しましたが、ちょうどfreeeカード Unlimitedの支援をする時に、湯本さんがいるのはもともと知っていて、「QAをどんなふうにトレーニングしているんですか?」とか「どんなふうに考えているんですか?」と、湯本さんと話をしましたよね。

湯本:しました。

中村:「もっと踏み込んでほしい」みたいな話があって。自分も現場を見た時にすごく感じたのが、エンジニアを「エンジニアさん」みたいな呼び方をしていたりして、遠慮があるのも見えたし、そこまで明確じゃなかったけど、「自分たちの仕事は、来たものの品質が担保されているかどうかを見ること」みたいな印象があって。「いや、作りこむところからやったらええのに」ということをすごく感じたんですよね。

「でもそれはプロダクトマネージャーやエンジニアの仕事だから」みたいな。言葉には出さなかったですが、もったいないなと思ったことはすごく覚えています。湯本:そういうのをもっと脱皮してほしいと思ったんだけど、なかなかね。まだできていなかったところがあったということですよね。

てらら:まだここからどんどんチームとして成長していくみたいなスタイルが取れていたということなんですかね、ゆもつよさん。

湯本:だから、そのアジャイルの大事なところは成長することだと思うんですよ。アジャイルコーチの人の話を聞いたり、アジャイルコーチに入って思ったんですけが、先ほども言ったように良い時も悪い時もあるし、人も入れ替われば入れ替わった時の出だしは入れ替わる前のようにはいかないことが実際に起きるけど、要はその中でより良くなっていけばいいんですよね。「成長していけばいいんだ」という考え方がすごく重要だと思っています。

今完全にはできていないから(といって)「もう俺はダメだ」となっちゃうとダメだし、QAの人も、遠慮しちゃって「自分はできていないかもしれない」とか、「自分はちょっとわからないかもしれない」と言って遠慮しちゃうとダメで、どんどん言って成長していくのが大事かなと思います。

中村:いいこと言っていますね(笑)。

てらら:ありがとうございます。

湯本:教わった感じですけど(笑)。

てらら:お互いに照れている感じが楽しいんですが。

(一同笑)

(次回に続く)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「ノーベル賞もの」と評価する最新の生成AIとは “考える力”を初めて身につけた、博士号レベルを超えるAIの能力

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!