2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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堀江慧氏:よろしくお願いします。今日は「LIPS AI バーチャルビューティーアドバイザー」、ちょっと名前が長いんですが、こいつの裏側について話そうと思います。
私は株式会社AppBrewという会社でCTOをしている堀江と申します。ソフトウェアエンジニア歴は10年ちょいぐらいで、バックエンドやインフラ、アルゴリズム周りを中心にやってきた人間です。現職ではプロダクトマネジメントもけっこうやっていて、「LIPS」というコスメや美容のプラットフォームサービスを作っている人間です。
今日はLTなので短めにLIPSの紹介と、あと作ったものの紹介、あとは作るまでの経緯と、作った時に起きた困ったこととか引っ掛かったところとか、こだわったところ。そのあたりの順で話していこうと思います。
今日ですが、GPTを使ってなにかを作ることに興味がある人が視聴者の方には多いのかなと思っているので、開発時の意思決定とか踏み抜いた罠とか、そのあたりをけっこう厚めに話せればなと思っています。
前提の弊社のサービス、LIPSというサービスですが、こちらの話をちょっとします。
LIPSはコスメや美容のプラットフォームサービスで、レビューが見れたり、商品のランキングが載っていたり、検索機能があったり推薦機能があったり、ECがあったり、プレゼントに応募することができたり。そういったものに加えて、SNSっぽい機能まで含め、コスメや美容に関するオンラインの活動をまるっと統括するような、美容・コスメのプラットフォームサービスです。
2022年に1,000万ダウンロードを超えたり、2023年の1月にiOS、Androidそれぞれのアプリのストアのライフスタイルと美容のカテゴリで無料のアプリランキング1位になったりと、この領域だと国内でけっこう大きい、最大級と言っていいんじゃないかと思うぐらいのサービスです。
今日の話ですが、LIPSの中のLIPS AI バーチャルビューティーアドバイザーという、美容やコスメに関するQ&AをしてくれるサービスをGPTで作ったという話をします。
ちょっと名前が長いんですが、「LIPS AI」と「バーチャルビューティーアドバイザー」で単語が切れていて。最近LIPSの中では「LIPS AI」というシリーズを続けて公開しています。
1つ目に作ったのが、ARを使ってバーチャルメイクをしながら似合うコスメの色がわかる機能のパーソナルカラー診断。バーチャルビューティーアドバイザーの次に作ったのが、肌質を診断してスキンケアなどの成分情報との相性を判定してくれる成分相性診断みたいな機能で、AIとかの今っぽい技術を、コスメ・美容領域の消費者のみなさまにデリバリーしていく活動をしています。
今回のバーチャルビューティーアドバイザーも含め、ナウい技術のデリバリーみたいな文脈になっていたので、「LIPS AIシリーズ」と呼んでいます。その一環として、今回はLIPS AI バーチャルビューティーアドバイザーを作った話をします。
ちょっと名前が長いので、この場は「バーチャルビューティーアドバイザー」じゃなくて「バーチャルBA」と呼びます。
(スライドを示して)バーチャルBAは、こんな感じの機能です。アプリを起動するとチャット画面が開いて、そこから質問をするとバーチャルBAからの回答が返ってきます。その際におすすめの商品であったり、LIPSの口コミであったり、続く質問の推薦であったりと、ただ文字列が返ってくるだけじゃなくて、多少リッチなデータが返ってくるような作りになっています。
これが「作ったものはこんな感じです」という話なので、ここから先はどんなふうに作ったのか、なぜ作ったのか、それまでの経緯みたいな話をします。
まず作ろうと思った経緯の話です。聞いているみなさんにも共通しているところがあるんじゃないかなと思うんですが、「なんか、GPTすごいらしいよ」みたいなことは、けっこう前から聞いていて。
僕がGPTを認知したのは2019年。Twitter(現X)で初めて見たんですが、「なんかすごそう」「なんかやばそう」「人間の仕事を代替する」みたいな、そういうことまで含めて耳にしていました。
GPT-3関係のモデルとかを触ってみたんですが、「LIPSの上だと少なくとも実用には乗せられなさそうだな」とか。でも、これまでできなかったようなもの、WebのUIが言語から生成されるとか、そういうアプリケーションがちらちら見えてきて。
2023年3月にGPT-4の論文が出て、GPT-4はもう明らかにすごい。実用性のしきい値を超えてきているということをかなり感じて、どのようにサービスに出せるか、ユーザーに価値を届けるかみたいなところを決めさえすれば、いろいろなものが一気に作れちゃう状態になったなというのが、私の個人的な感覚でした。
最近、そのあたりが盛り上がってきたなと思っています。ここからやったこととか社内で動いていたことをつらつらと話していきます。とりあえず情報をウォッチしておいて、新しく出たもの、最近だとwaitlistになっていることが多いですが、APIが公開されたり、GPT-4が出たり、あるいはOpenAIのpluginという機能がwaitlist待ちになったり。
新しいものが出たらとりあえず触ってみる、とりあえずwaitlistに入ってみるみたいなことをひたすら早めにやっていました。あと、会社用のアカウントを発行して、社内の人がハードル低く触れるようにしていました。
そんなことをやっているうちに、社内の人がSlackでGPT君としゃべれるbotを生やしてくれて、社内勉強会をやったんです。(スライドを示して)実際やった勉強会の「Notion」のスクショが右側に貼ってあるやつなんですけど、こういう勉強会をしたりをちらほらやっていました。
ほかには事例集の整理とかもやっています。GPTのリリースの時のプレスリリースとか論文とかにもちらちら書いてあったりするんですが、「このプロダクトでこういう使い方ができますよ」とか。あとは初動の頃だと、PR TIMESでリリースを出すこともけっこう流行ったので、GPTで検索して、新しいのが出たら「このサービスにこんな感じで載りました」みたいなことをまとめて、Notionで社内共有したりをやっていました。
あとは、「OpenAIのドキュメントはとりあえず一通り読んでおこうかな」とか、プロンプトエンジニアリング的な分野が生えてきたので「さすがにちょっと勉強はしておこうかな」と思って、スライドに貼ってあるドキュメントを読んだり。あとはひたすらChatGPTをたくさん触ったり……。そういうことを3月頃はけっこうしていました。
こんな感じのことを弊社ではやっていたんですが、3月の中頃にそのあたりが盛り上がっているうちに、社内のデザイナーの方がバーチャルBAのプロトタイプをポンと投げてくれて、「いいじゃん」となったので、「作ってみよう」という話になったのが、今回の開発の端的な経緯です。
このプロトタイプの時点で、ユーザーの体験的には今リリースしているものとかなり近いもので、「この中身をGPTを使ってどうやって作るんだっけ?」「ちゃんと質の高い回答ができるんだっけ?」「動くんだっけ?」「キャパシティ大丈夫なんだっけ?」みたいなところを詰めていくのが開発の上で肝になったところです。
「作ろう」となってゴール設定を置いたんですが、この時の背景としては、「AIチャットくん」などの国内最速リリース組はすでに出ていて。「GPTでやってみました」みたいなスピード重視のものももう出ていたので、やってみるだけだと、「今さらやってみただけですか」みたいな。ちょっと冷めた感じになっちゃいそうかなと思って。
LIPS AI バーチャルビューティーアドバイザーを出した段階で、役に立つとか、楽しいとか、そこをちゃんと仕上げたかというかたち。あるいはLIPSのデータを活用して、LIPSじゃないとユーザーの方に届けられないような価値を出せるようなサービス、機能に仕上げようというのは、社内の目標設定として置いていました。
(次回に続く)
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