2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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辻広志氏(以下、辻):KDDIの辻です。本日最後のセッションで、残り僅かということでがんばっていきたいと思います。今回のオペレーター(Cloud Native Telecom Operator Meetup 2022)は発表してからディスカッションをするパターンが多かったかと思いますが、私はいきなりパネルディスカッションで(はじめて)、50分みんなでしゃべる会にしたいなと思ったので。
私がディスカッションペーパーというかたちでスライドを作っていますが、適宜スライドを送りながらざっくばらんに議論ができればと思います。
(スライドを示して)本日どういう話をするかです。もちろんアブスト(アブストラクト)に書いてあることをまとめているだけにはなるのですが、今日のテーマでもあるクラウドネイティブ、まあクラウドネイティブに限らないとは思いますが、もはや通信のネットワークの中でOpen Sorce Software……。ごめんなさい、1個(スライドを)戻します。
この中で“OSS”と出てくるのですが、これは特に断りがなければ“Operation Support System”ではなく、“Open Sorce Software”の意味で使います。中にはOSSのOSSみたいな話が出てくるかもしれませんが。ここにいる方はみんな大丈夫だと思いますが、一応文脈の共通認識合わせということでサッとやりました。
そういったところで「OSSが使われないところはもはやないのかなぁ」というところです。「これはもう明日から使えません」と(なると)何が起こってしまう(かという)と、たぶんとんでもないことが起こるということで。
Linuxが中心になるとは思いますが、そういった周辺のエコシステム全体を見たうえで、今後、僕たちがOSSとどう付き合っていくべきなのだろうかと日々私自身も自問自答するところがあって、ぜひ今日はみなさんと議論ができればなと。MNO(Mobile Network Operator)の3社の方々にも参加いただき、時には会場からも手を挙げてもらってもぜんぜんかまわないと思いますが、みなさんと議論したいなと思っています。
辻:自己紹介というか、登壇者の紹介です。まずモデレーターは私、KDDIの辻と申します。NFV(Network Function Virtualization)の仮想化基盤の担当をかれこれ5〜6年ぐらいやっています。もはやNFVはそんなに新しい技術ではなくなっている感もありますが、やはりまだまだやることがいっぱいある気もしていて、日々がんばっていくぞとやっております。
(スライドを示して)続いて自己紹介をということで、書いている左から順番に、津留崎さんからお願いします。
津留崎彩氏(以下、津留崎):はい。NTTドコモの津留崎です。私は1年半ぐらい前に今の部署に移動してきて、NFVと、今はメインでvRAN(virtual Radio Access Network)の基盤の導入を検討しています。その前はちょっとMEC(Multi-access Edge Computing)をどちらかというと売ったり企画したりするような担当を実施してきました。よろしくお願いします。
辻:よろしくお願いします。では渡邊さん、お願いします。
渡邊大記氏(以下、渡邊):はい。ソフトバンクの渡邊です。もともと大学でインターネット関係の研究をしていましたが、今年度から所属が今の部門になり、その中ではfree5GCを中心にOSSの5Gコアの検証や開発をしています。なので商用や運用の話はあまり詳しくありません。よろしくお願いします。
辻:よろしくお願いします。小杉さん、お願いします。
小杉正昭氏(以下、小杉):はい。楽天モバイルの小杉と申します。先ほど(別セッションで)登壇した小池(小池悠一氏)さんと一緒に楽天モバイルのクラウド基盤を見ています。今は主に設計や評価のところ(を担当しているの)ですが、これまでは構築の自動化やオペレーションの自動化を見てきました。今日はよろしくお願いします。
辻:よろしくお願いします。それではこの4名でいったんは(ディスカッション)したいと思います。
辻:(スライドを示して)本日のアジェンダというか、「こんなことを話したいな」と思って一応ネタを4つほど用意してきました。時間も押しているのでアレかもしれませんが、10分ずつぐらいで話ができればなと思っています。
(スライドを)読み上げると、インフラのOSSということで、OpenStackとかKubernetesとかの話しができたらというのが1つ目です。
2つ目が、クラウドネイティブなネットワークファンクションで、CNF(Cloud-native Network Function)が最近トレンドというかたちで各社さん提供していますが。その中でOSSがけっこう使われているイメージなので、そのあたりの話をしたいなというのが2つ目です。
3つ目が先ほどのfree5GCなどの話ですね。5GコアそのものをOSSでやっていこうという取り組みもあるので、そのあたりの話をしたいなと。
最後の4つ目は総括的な感じで、オペレーターとOSSはどう付き合っていく? みたいな話ができればなと思っています。
辻:ではさっそくインフラのところです。(スライドを示して)これは私の主観というか、そういうイメージで描いているので、ちょっと正確性が欠ける点はご容赦ください。私が会社に入ったのが2014年ぐらいなので、それ以前のことは想像や聞いた話です。
昔はやはり専用機でやっていて。オープン化の流れはずっとあって、商用のsolarisやHP-UXといったUNIXサーバーが入ってきました。そしてオープン化がもう1歩進むと、「やはりLinuxだ」となり、「最初のLinuxはそのままではキャリアでは使えない」と言ってキャリアグレードLinuxが登場して。x86サーバーもそのままでは使えないということで、「Advanced TCAだ」と(言われて)。いわゆるキャリアグレードが叫ばれてLinuxに入っていきました。
そのあとLinuxもやはり成長していって、x86サーバーもけっこう成長してきました。それが過ぎ去っていくと、普通のx86サーバーに普通のLinux、Red Hatさんなどが入ってきて提供されるようになりました。
このあたりから仮想化ということで、OpenStackやVMwareが入ってきて。Linuxが普通に動いて、今はKubernetesとかでコンテナがさらに提供されてと、こんな感じの変遷を辿ってきたのかなと思っています。異論がある方がいれば指摘してほしいのですが。
私も一応オペレーションをやっている人間なのでそういう感覚で書いていますが、商用のUNIXで、化石みたいなやつがまだ生存してはいます。あとは専用機とかも。(スライドを示して)このあたりのものはほぼいなくなってはきています。
ただキャリアグレードLinuxとかaTCAとかも一部は残りつつ、大部分が普通のLinuxのサーバーで。それがベアメタ(ベアメタル)なのか、コンテナ、VMなのかはわかりませんが、大多数がそのあたり(汎用ハードウェアの汎用的なLinux OS)で動いてるなという感覚が私としてはあります。さらに5Gなど新しいものがコンテナ化されている感じのイメージかなと思っています。
Open Sorceをこうやって使ってきた歴史の中で、やはりインフラの部分は最初からそこが必要ということで、インフラの領域のOSSはキャリアの中でもけっこう歴史が長い領域かなと思っています。
辻:OSSを使っていて、最近はKubernetesやOpenStackの仮想化の話が入ってきていて。きっとみなさん苦労しているんじゃないかなと思って、これを関谷先生(関谷勇司氏)に倣ってクイズにしてみました。
(スライドを示して)1つ目ですね。やはりヒトで大変だよね、「ヒトの問題が一番苦労しています」と、(そう)言う人は言いますが、どうでしょうか。(挙手している人を見て)3人。
はい、次。じゃあモノ。「なんかモノがよくない」と言う人もいる。(挙手している人を見て)なるほど。複数回答するのも確かに手ですね、
最後。「カネの問題だ」ということもあるということですね。
正解は、個人的にはやはりヒトだと私は思っています。やはりヒトの問題はかなり大きいのではないかと思いました。
逆に今ドコモさんが手を挙げなかったので、そこを聞いてみたいなと今思いました。どうでしょうか。
津留崎:ヒトに困っているのは別にOSSに関係なく、常に技術全般で困っているので。OSSでヒトに困っていると言われると、ドコモはそんなにOSSをコントリビューションとかまでしているわけでは正直ないので、ちょっと違うのかなと思いました。
辻:なるほど。ありがとうございます。確かにそうですね。慢性的にヒトがいないのは、もちろん私も(それは)あるよなと思います。
(スライドを示して)私がヒトと書いたのは、ここにちょっと挙げたのですが、私はヒトに関わる問題をけっこういつも感じています。VNF(Virtual Network Function)/CNFの有識者、有識者というかVNF側、CNF側、そういうネットワークファンクション側に仮想化のことを知っている人・理解がある人が少ないです。これはけっこう課題だなと。実は一番(の)課題だなと私は思ってしまいます。
2つ目は、運用をやっていくと、トラブルシューティングできる人がいない。けどやはりOSSでOpenStackやKubernetesとか(をやると)なってくると、複雑化というか、かなり専門性の高い知識を求められるところで。なかなかここを支えるような組織論や人材育成の話がけっこう(これから)くるのかなと私は思ったりしています。ちなみに小杉さんなんかはもう全部に手を挙げていましたが。
小杉:はい(笑)。
辻:何かありますか。別にこれに関わらずでもかまわないです。
小杉:そうですね。この業界はみなさん(各社さん)そうだと思うのですが、ヒトは常にいません。「私できるよ」という方が今日いたら、ちょっとこの後個別にお話ししたいぐらいです。
やはり運用やトラブルシューティングや設計、我々が扱うネットワークが大きいので、例えば設計しようと言った時に、私は基盤屋でプラットフォームを見ているわけですが、そこだけを知っていればいいというわけではなくて。先ほど辻さんがお話されたように、我々もアプリケーションを知らなければいけないし、ネットワークも知っていないといけません。
システム全体の振る舞いをある程度把握したうえで、どう我々が機能を提供すべきかというところをやらないといけません。というと、ものすごく広い領域を学ばなければいけない。時間がかかるというのがあります。
ただ今日のOpen Sourceというところで見てみると、やはり技術がオープンになったことによって、若手が学びやすい。やる気とノートパソコンがあればどこからでも学べる状況になったので、要件と機能要件の部分はすごく習熟が早くなったなと感じています。
あと非機能というと、やはりキャリア特有の可用性やパフォーマンスは会社に入ってからじゃないとできないので、そういったところをシニアのエンジニアがフォローしつつ、技術を継承していっているような現状はありますね。
辻:ありがとうございます。そうですよね。私(として)も共感しかないコメントが今出て、もう付け加えることはないなと思いました。ありがとうございます。ちなみに津留崎さんは1年前にvRANにジョインしたという話でしたが、先ほど小杉さんが言っていたみたいに、「Open Sorceだったから助かったな」みたいなことは実感としてありますか。
津留崎:そうですね。やはり今までのOpenStackやKubernetes以前のテレコムは、入ってみないと学べない状況だったと思います。しかし、Kubernetesに関してはかなり巷にも情報が集まっているし、みなさんもこういった場でセッションでけっこう発表しているのを見ると、かなり勉強になるなというのはありますね。
辻:なるほど。ありがとうございます。Open Sorceであることの良さも、やはり(ある)反面で、そういうところで難しい課題ではあるけれども人材育成(の課題が)出ているというところです。確かに私も自分自身も振り返って、Open Sorceだったからけっこう学べたなとすごく思えました。ありがとうございます。
ちなみに渡邊さんは、大学にいた、アカデミックにいたというところで、人材育成のような話は、大学の中で(の)変化はなにかありましたか?
渡邊:モバイルキャリアの話はぜんぜん関係なくなってしまいますが。
辻:ぜんぜん関係なくていいと思います。「Open Sorceだから」みたいなところでなにかあれば。
渡邊:「やって」と言ってもそのままできる人がまず少ないので、まず自分でやってみせて「こうやるんだよ」と言って、そしてやってもらって。山本五十六じゃないですが、「やって見せて、させてみて」みたいな感じで並走してあげないと、なかなか一人ひとりで走れるようにはならないので、そういうメンターは必要なのかなとは思います。
特にモバイルはOpen Sorceがあったとしても1人で学ぶのがとても難しいと思うので。モバイル1年生なんですけれども。
辻:なるほど。わかりました。いいコメントですね。ありがとうございます。やはり人材育成が課題だと私も思っていたのですが、今日話も聞いていて、OSSだからこそやはりやりやすいところもあるというのは……。今日は台本はないですよ。聞いていて私はすごくいいなと思いました。ありがとうございます。
(次回に続く)
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