2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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永山翔太氏:仕組みについて。最初に量子コンピューターについて話します。(スライドを指して)ここに量子コンピューター、3量子ビットあります。3量子ビットあるので、解のパターン候補は8パターンあります。最初は8個全部、1/8の確率が割り振られていますが、なにかしらの操作を行っていくと、問題の解の部分の確率が集まり、「最後、解はなんだろう」と測定してみると、実際に解が出てきます。
この操作が量子アルゴリズムで、この速さが、計算速度を決める。これが、今のコンピューターよりだいぶ速いのではないかということから、量子コンピューターが期待されているわけです。
先ほども言いましたが、用途は超多項式的加速から多項式的加速まで、いろいろあります。
量子コンピューターの何が不思議か。今のコンピューターは0か1かはっきりしていますが、量子コンピューターの場合は0か1だけではなく、0と1が半々、かなり0っぽいが1っぽさもある状態も許されています。
(スライドを指して)数学的に言うと、0が出る確率にアルファ。このアルファの2乗が0が出てくる確率です。1はベータの2乗を1が出てくる確率として扱うので、確率といってもかなり成分っぽいです。よく「青っぽい、赤っぽい」という言い方をしますが、量子コンピューターの計算を進める上でステートはあまり確率としては扱わず、「成分がどのくらいある」という扱いのほうが理解しやすいです。
では、2量子ビットならどうなるか。2量子ビットだと00から11まで4パターンあり、普通に考えると確率25パーセントずつです。右の量子と左の量子がそれぞれ確率を持っていて、1/2で0と1、1/2で0と1と考えられます。
量子の場合は不思議なことに、こっちが0ならこっちも0、こっちが1ならこっちも1。右のサイコロで0が出たら、なぜか左のサイコロも絶対に0が出る。普通、サイコロの確率は独立ですが、連携してしまうという不思議な現象が起こります。これは分解できません。
左の現象と右の現象について分解して記述できないので、これを“エンタングルメント”または“量子もつれ”と言います。
この量子もつれがあるので、1つの解の候補だけ確率を上げる操作ができ、量子コンピューティングができるわけです。
量子もつれは量子コンピューターにとってすごく大切な現象で、量子インターネットにとってもすごく大切です。量子インターネットは、End-to-Endでエンタングルメントを遠く離れた2地点の間で作るのが基本です。そして、作ったエンタングルメントを使って、量子テレポーテーションという手法を取ります。これについては、少しずつ説明します。
(スライドを指して)今、「量子さん」が出てきました。この2つの量子さんがエンタングルメントしていると、こっちの最高が0ならこっちも絶対0で、こっちが最高1ならこっちも絶対1が出るという、不思議な運命の赤い糸です。
このエンタングルメントをEnd-to-Endで作ってやるために、ひたすら今のインターネットががんばってしばかれている。それが量子インターネットの実情なので、今のインターネットも、かなりいろいろな技術開発が必要になってきます。
量子インターネット、テレポーテーションとは何か。エンタングルメントの片割れと実際に送りたい量子で量子的なパリティ測定を行うと、その測定結果を今のインターネットで運んでフィードバックする。送りたかった量子が片割れのほうに出てくるという現象が、量子テレポーテーションです。
それをやる理由の1つは、光子ロスです。ファイバー自体も物質なので、光ファイバーの中に情報をエンコードした光子を通すと、ファイバー自体に光子が吸収されてしまう可能性があります。吸収されてしまうと、途中の中継ノードではもちろん増幅できません。だって、届いていませんから。つまり、大切なデータを失ってしまう恐れがあります。
さらに厄介なのが、量子複製不可能定理という量子力学由来の性質です。量子状態はコピーできないのでバックアップを取れない。つまり、バックアップを取って送ってパケロスしたら再送してやるという発想が、量子インターネットではできません。失ったデータは復帰できない。
ではどうするか。このロッシーなチャンネル、インターネットみたいなロスするかもしれない怖いところには、何度でも作り直せるエンタングルメントを作ってやる。
そこに集中させて、このあとにローカルで送りたい量子と量子もつれの片割れをパリティ測定して、インターネット側で観測データを送って、量子テレポーテーションしてやろうという発想です。そうすれば、本当に送りたい大切なデータは、ロッシーなところを通さなくて済みます。
量子インターネットの基本方針。どうやってEnd-to-Endでエンタングルメントを作るか。
また光子のロスの話です。光子のロスは一定距離ごとに一定の割合でどんどん吸収されていくので、指数的に到達していく光子数は減っていってしまうんです。
そのため、距離が長くなればなるほど指数的に到達する個数下がっていき、hop by hopにしたところで、1/10届く。次のhopでまた1/10になるので、1/100になる。その結果、すごい勢いで通信パフォーマンスが下がっていきます。
ではどうすればいいのか。End-to-Endでエンタングルメントを作りたいのですが、よく考えてみる、とエンタングルメントはただの相関関係です。
0なら0、1なら1なので、各リンクでエンタングルメント作ったあとにパリティ測定してやれば、End-to-Endで相関関係をつなぐことができるのではないかという発想です。
各リンクで量子もつれを作ってつなげると、1/10、1/10、1/10。各リンク1/10になりますが、できたものをあとからつなげば、吸収されて到達するものは1/10残ります。全距離を、1/10×1/10、1/10×1/10とすると1/1000なので、こちらのほうがよほどたくさん届くわけです。
その後、インターネットで測定結果を伝送するわけですが、よく考えると、各リンクで作った量子もつれをつないでいるので、store & forwardネットワークでなくてもOKということになります。
各リンクで作っておいた量子相関のパリティを見たいだけなので、量子インターネットは今のインターネットアーキテクチャとはだいぶ違う仕組みで動いていくことになります。おもしろいですよね。
量子インターネットはエンタングルメントを作る。量子的にはそれだけですが、裏側では、今のインターネットでエラー管理やルーティング管理、リンク管理など、先ほどのパリティの伝送をずっとやっています。インターネット側での技術開発が必要です。
研究紹介をします。インターネット技術者が取り組むべき研究開発についても、だんだん理解してもらえるようになると思います。Physical Layerは、いろいろなタイプの素子が研究されています。超伝導量子回路や量子コンピューターが有名です。
イオントラップは量子コンピューターのほうでも有名ですが、量子インターネットの素子としても検討されています。それは、アプリケーションにも関係してきます。超伝導やイオントラップは量子計算と相性がよく、ダイヤモンドや原子トラップはセンシングと相性がいいです。
光子って、実は到達確認するのも大変です。「よーし、光子来るのをカメラ持って待ってよ」。入ってきた。ピコーンて上がるのはいいですが、それが測定になって情報を持つ光子が失われるので、隣接ノード間で光子を送って届ける。その確認が大変です。
でもそういう仕組みも研究されていて、Delftはけっこうダイヤモンド部分の研究が進んでいます。量子中継機を目指した実験では、長距離の伝送の実験を早くから始めていたり、通信上のエラー検知の実験を行ったりしています。
量子信号中継の成功をさせたのもDelftです。彼らの素子は、最初の原理実証にはよかったということだと思います。ただ、最終的にどの素子のパフォーマンスがよくて、実際の量子インターネットになっていくかは、まだまだこれから分かっていくところです。
日本でも、別の仕組みのダイヤモンド量子メモリの実験が行われています。ほかに、全光のPoC(Proof of Concept)、このPoCの実験は阪大、理論はNTTで行っています。
Link Layerです。先ほどロバストなプロトコルがないと言いましたが、Delftが行った研究がSIGCOMMで発表されています。
Internet Layerは、ここからだいぶ馴染みが深くなったと思います。つまり、量子ASを作ろうという話です。
そのほか、量子ネットワークのためのQuantumダイクストラを作ろう。このような、リンクコストを量子に変えるという提案があります。
ほかに、Recursiveアーキテクチャ、ネットワークアーキテクチャなどの提案です。
さらに、Pathセットアップ、コネクションセットアップしようというもの。先ほど言った量子インターネットの仕組みはだいぶ複雑なので、ステート管理がメチャクチャ大変ですが、最初にコネクションを作って、それぞれのノードがどう動くべきかはエンドノードで決めて配布してやろうという提案です。
昔、量子ルータアーキテクチャは違うネットワーク同士で、違うエラー訂正符号を使ってやるための提案を僕がしました。
ほかに、量子インターネットへの攻撃のまとめ論文は、量子インターネットのセキュリティのCIAを考えるというものです。先日パブリッシュされたので紹介しておきます。
まとめです。最初にメルカリの狙いについて話しました。量子インターネットの利用目的、研究開発の進捗、さらに世界の大規模プロジェクトと各国の強み。どれもすべて各々の強みでやっています。学会、IRTF(Internet Research Steering Group)、やはり強いです。僕も参加しています。
さらに、量子コンピューターの仕組みの話のあと、量子インターネットの仕組み、今の研究紹介、インターネットの技術者が貢献できる取り組みについて紹介しました。発表は以上です。
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