
2025.03.19
急成長するドバイ不動産市場の今 投資のチャンスと注意点を専門家が解説
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司会者:では、次の「今後の社会で『優しいロボット』に期待されることとは?」というテーマに移ります。冒頭のもイベント概要のところでも話しましたが、今後さらなる需要拡大が見込まれるロボットの研究開発に関わる上で、お二人が思う「優しいロボット」に何が期待されているか、どのようなロボットが社会で求められるようになるかについて考えをうかがいます。大澤さん、いかがですか?
大澤正彦氏(以下、大澤):一般向けのトークイベントにあるまじき、ディープな話を始めるかもしれません(笑)。
司会者:ぜひお願いします(笑)。
大澤:初めて話すので、わかりにくかったら聞いてください。技術はどんどん加速していきます。人間は今までやらなければいけなかったことが、どんどんやらなくても済むようになり、1日24時間という時間を効率的に、経済合理性のあるかたちで使えるようになっていますよね。いろいろなことが技術によって代替できたり、加速したりスケールアップしている中で、人との関わりは技術では解決できないと思うんです。
もちろんメールができたり、移動が早くなったから会えたりするけど、例えば1時間子どもと遊んで愛情を育むことを、30分に短縮できる技術なんてないわけです。人との関わりってやはり時間がかかるものだし、1対1の関わりは一人ひとりが向き合っていること。経済という意味で言えば、1人は1人にしか価値を与えられないから、画期的な技術で生活を豊かにするのと比べると、弱さが出てしまいます。
今の社会を見ても、人と向き合う仕事をしている人たちの中で、けっこう苦しい状況に置かれている人は少なくないと思うんです。介護士や保育士の方の話をよく耳にします。だから、僕はある見方ができると思います。技術が進展すればするほど、人に向き合うことが押しつけられる仕事になってしまうのではないか。そうなってしまったら嫌だなと危険を感じているんです。
そんな中で、未来に向けていち早く技術を進展させ、早い段階で人と人の関わり合いが義務化されたり押しつけられたりせず、スケールアップしていくような発明が必要だ、それってドラえもんじゃないか?と思ったんです。
ドラえもんはテクノロジーとして生まれているわけじゃないですか。のび太という1人にとことん向き合ってくれて、のび太は愛を受けて前に進む力をもらって、1人の人間として成長して未来に向かっていく。だから、優しいロボットに期待することが何かはすごく大事で、技術進展によって不幸になる人全員を救うキーだと思うんです。
娯楽やオプションや、「なんとなくいいらしい」みたいな、エンターテインメントという範囲で語られる場合が多いと思いますが、逆に労働力という観点が注目される場合もあると思うんです。でも僕はそうじゃなくて、技術が進展しても人が不幸にならない未来に方向づけるための重要なポイントなんじゃないかと最近は思っていて。そういう部分を、どうすればいち早く世の中に届けられるかを考えながらやっています。
いとうまい子氏(以下、いとう):なかなか深いというか、難しい。
大澤:そうなんです(笑)。
いとう:大澤先生が思う具体的なドラえもん像はあるんですか?
大澤:“ドラえもん研究者大澤”としての思いと、“ドラえもんファン大澤”としての思いがあります。今の質問に対する研究者大澤の答えは「ありません」です。ドラえもんは世界中にファンがいて、いろいろな人がそれぞれの思いでドラえもんを愛しています。
だから、ドラえもんをつくっている人が「ドラえもんはこうだ」って言いきっちゃうと、「私のドラえもんはそうじゃないのに」と思う人がいるかもしれない。僕は研究者として、そういうことはやりたくない。常にフラットに、みんなが納得できるドラえもん開発を推進し続けられるかを考えています。
一方、大澤個人としては、「ドラえもんのどういうところが好き?」と聞かれたら、やはりのび太くんと関わっているドラえもんが好きです。いつも、のび太との関係性にドラえもんの魅力を感じていることに気づいています。だから、人と関わる部分からドラえもんを見ることが多いし、そういう部分をうまく作れたらいいなと思っています。
いとう:私はドラえもんを本気でつくるという大澤先生を初めて知ったとき、お腹のポケットから「どこでもドア~」って出してくれるロボットを作りたいのかなと思ったんですが、そうではなく、もっと心がふれ合う部分でのドラえもんということなんですね。
大澤:そうですね。でも、「ではなく」というわけではないんです。僕1人でドラえもんをつくっているつもりはなくて、みんなでつくっている中で、ポケットから「どこでもドア~」を担当する仲間もいます。僕はたまたま、心の部分や関わりの部分を担当しているだけです。みんなの手でつくったすべてのドラえもんは、あらゆる要素がドラえもんとして認められるロボットになってほしいし、僕はその心の担当という感じですね。
いとう:すごいですね。そうなると、いろいろな担当の人を全部統括して何でも出てくる、さらに心のふれあいができるドラえもんですね。
大澤:僕もそうだと思っています。みんなが大好きなドラえもんだからこそ、もはや1人も取り残さずにみんなでつくっていきたい。だから、70億人、80億人でつくるドラえもんが僕らの究極理想像です。
いとう:若い世代ならではで、すばらしいですね。“若い世代”と言ってはいけませんが、本当に若い世代ならではだと思います。私くらいの世代だと、独り占めみたいに誰よりもお金を儲けようという人がわんさかいるので、すごくいいお話ですね。
私はがっつり技術を開発できる人間ではありません。今はAIベンチャーのエクサウィザーズさんとロボットを開発していますが、大学院ではバイオ、細胞を培養して、そこに試薬をふりかけて、その細胞がどういう働きをするかという実験を日々行っています。つまり、日々まったく違うことをやりながらロボットもやっているんです。
ロボット開発でとにかく難しいと思うのは、操作です。介護施設にしても、人ができるいろいろな介護の手順すべてが、1つのロボットでは全然できません。
「よいしょ」と体を起こすロボットの次は移動させるロボット、そこからお風呂に入れるロボットと、すべて違うロボットで、一つひとつ手間がかかるところがあります。さらに、それを動かす人が必要ならメンテナンスも必要で、全然人に優しくないと思っているんです。
だから、声をかければ(人が)望むように動けるロボットが開発されれば、私たちの暮らしの中に自然に溶け込んで、ロボットだと意識しなくても住みやすい、いい暮らしができる。それが優しいロボットだと思っています。
でも大澤先生の話を聞いていたら、やはりこれからの時代はそこにたどり着くのかなと。心がだんだんすり減って、どうしても日々に満足できない人が増えてきているような気がするんです。やはり、ドラえもんのように、心の友になってくれるようなロボットが必要かもしれないと思いました。
大澤:光栄です。
司会者:今の社会に存在するロボットプロダクトで、注目されているものはありますか?
大澤:全部注目しています(笑)。
司会者:特に自身の考えに近いという意味で、何かあればぜひお聞きしたいです。
大澤:やはり「LOVOT」が出てきたときは感動しました。僕らもミニドラの構想をしていたので、研究の最前線でこうすべきだよね、ああすべきだよねと議論していたものが、実体として出てきたなと、すごく感動しました。
新しいロボットプロダクトが出るたびに注目しますが、今の時代はロボットがビジネスとして成立することが、課題としてあると思うんです。ロボットだからこそできる独特の機能は、ロボットの体を作るためのコストに鑑みるとと大きくない。ロボット作りはなかなかコストパフォーマンスが合わなくて、ビジネスとして成立しにくいところがあると思うんです。
ビジネスとして成立すればどんどん投資されて開発されて、勢いづいてロボットが成長すると思いますが、その波に乗り切れないのがなかなか難しいところです。「Pepper」が出てきたときもすごく感動したし、期待したし、そのおかげで発展していくと思ったけれど、最近生産停止というニュースを聞いて「ああ、そっか」と悔しい思いをしました。
ロボットが世の中に出ると、「これだったらいけるかな」「どこまでいけるんだろう」と、いつも注目しています。
司会者:いとうさんは何かありますか?
いとう:私も大澤先生と同じように、新しく出たロボットに興味が湧けばどんどん追いかけます。ただ、大澤先生が言ったように、Pepperしかり、途中でなんとなく終わってしまうことがある。しかし、それをもとに次なるフェーズを開発して引き継がれるものもあると思いますが、みんながやりたいと思っているところには、なかなかたどり着けないのが現状だと思います。
最近よく外国で、二足歩行しながら、殴られても蹴飛ばされても全然倒れずに、どんどん進んでいけるようなロボットが作られているのを見ます。それを見ると、資金が豊富にあってどんどん開発すればここまでたどり着けるとも思いますが、それらが私たちの生活の中に組み込まれるようになったとしたら、それは“知らぬ間に”ということです。
ただ、私が思うところにたどり着いているロボットは、今のところほとんどありません。新しいものが出ると毎回「おっ!」と思いますけどね。
(次回に続く)
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