2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
18歳で起業したエンジニア、注文殺到の理由|さくらインターネット田中社長 #3(全1記事)
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菅澤英司氏(以下、菅澤):つよつよエンジニア社長の菅澤です。前回、田中社長の話を聞いて、僕も起業したのは22歳なのでけっこう早いほうかなと思っていたのですが、上には上がいるなということで、18歳で起業したエンジニアが27歳で上場を果たすというお話をじっくり聞きたいなと思います。今日もみなさん楽しみにしてください。よろしくお願いします。
本日のゲストのさくらインターネット株式会社社長の田中邦裕社長にお話を聞いていきます。よろしくお願いします。
田中邦裕氏(以下、田中):よろしくお願いします。
菅澤:18歳のエンジニアで、起業というかまずはバイトだったんですね。
田中:そうですね。起業して自分で屋号を持って、さくらインターネットに入っていたのですが、そのサーバーの置き場を自分のバイトとバーターしたという感じですね。
菅澤:そこで高専(高等専門学校)を卒業する前にバイトをしていた。
田中:そうです。バイトしつつ、個人事業としてさくらインターネットをやっていました。
菅澤:バイトを始めたのは何歳ですか?
田中:バイトはまさしくその18歳。18歳の時に自分のサーバーの置き場に困って、自分で起業しようと思いました。
菅澤:みんなに貸していたら、サーバーが足りなくなったということですか?
田中:学校にもともと置いていたサーバーなんですが、学校のトラックがすごく伸びてきちゃってですね。そのサーバーを撤去しないといけなくなりました。
菅澤:みんなに貸してたら、すごくアクセスが伸びてしまって、撤去しなさいと怒られたんですね。
田中:そういうことなんですよ。持続可能なかたちにしないといけないから、タダでサーバーを置かせてくれるところないかなみたいな。サーバーを置かせてもらえればアルバイトしますという、バーターですね。
菅澤:とはいえ、3年生からバイトをしているじゃないですか。そこから事業をやってみようとよく思いましたね。
田中:そうですね。アルバイトと起業が同時に始まっているんですよね。だから、自分のサーバーを置いてもらう代わりに、そこでアルバイトする。そこで月7万円バイト料をもらいながら、さくらインターネットの収益でサーバー増設をする、という感じですね。
菅澤:そのサーバーを有料で貸し出したんですね。
田中:そうです、そうです。それがさくらインターネットの創業ですね。
菅澤:個人事業主として、サービスはさくらインターネットで始めたんですね。
田中:そうです。さくらインターネットという屋号で始めたのが18歳の頃で、その時にサーバーの置き場に困って、地元のプロバイダーさんにタダで貸してもらう、そういうストーリーです。
菅澤:いくらで貸していたんですか?
田中:最初から月1,000円ですね。
菅澤:月1,000円は安いですよね。
田中:当時ホームページのオプションは、プロバイダーさんで1万円とか2万円でした。それで5MBというのが多かったのですが、うちは確か1,000円で月30MBぐらい使えました。
菅澤:つまり、安いし、いっぱい使える。お得感がすごかった。
田中:そうです。
菅澤:いきなり注文が来たんですか?
田中:来ましたね。口コミがやっぱり大きかった。うちを使ったサイトさんは、普通のプロバイダーを使うよりもいっぱい画像が置けるので、カラフルなわけですよね。安定もしていると。おまけに掲示板とか、そういうCGIも使えるので、いろいろな機能も使える。それで、どこのサーバー使っているの? みたいなことにやっぱりなったんですよね。すでに使ってるお客様が、次のお客様を紹介という感じでしたね。
菅澤:簡単に言うと天才ということですか?
田中:どうでしょう(笑)
菅澤:使いやすく、申し込んだらすぐに使えるようになって、サーバーの一部分の領域が使えて、自分のホームページが持てるということですね。
田中:はい、そうです。
菅澤:何かを真似したんですか?
田中:いろいろなところを真似はしましたが、ホームページ専門のプロバイダーはあったんですよね。ただ、プロバイダーをやりながらホームページもやっている、そういう感じでした。私たちは本当にサーバーだけのサービスでした。
菅澤:選択と集中ですね。
田中:そうですね。プロバイダーを最初はやろうかと思ったんですよね。プロバイダーは、すごくおもしろいなと考えたんですけども。
時系列としては、自分のサーバーを自分のネットの回線でつなぎたい。そのためにはプロバイダー屋をやりながら、サーバーも置けばいいんじゃないかという、いわゆる普通のプロバイダーのサービスを考えていたのですが、プロバイダーをやるには投資が必要なので、それならすでにプロバイダーをやっている地元のプロバイダーにサーバーだけ置かせてもらう、サーバーだけのサービスにしようと思って、さくらインターネットを「sakura.ne.jp」というドメインで始めたのが最初ですね。
菅澤:最初にこれはいけるぞ、これはすごいなと思ったのはいつでした?
田中:とにかくどんどん入金があってですね。それこそ学生だから、何万円もそんなに見ないし、何十万なんてそうそう見ないし、何百万なんか絶対触れることがないじゃないですか。でも封のついた100万円が来るわけですよ。あれは本当にびっくりしました。
それこそ半年後に300ユーザーぐらいになっていたのかな。1万円で年払いする人もいたので、それだけで300万円とかドンとなったりするじゃないですか。
ただ、当然地元のプロバイダーだと回線が細くて、やっぱりアクセスが自由にいかなくなっちゃったんですよね。お客様から「遅い遅い」という話になったので、仕方がなく、翌年の1997年に、データセンターを借りたんですよ。舞鶴にはデータセンターが当然ないので、日本高速通信テレベースのデータ通信を借りて、そこにサーバーを設置しました。なので、その頃には月々50万、100万かかるようになっちゃっていたんですよね。
菅澤:サーバー代だけで50万かかったんですね。
田中:月に300万、400万入ってくるけれども、100万、200万のお金を支出していました。
菅澤:いきなり必死の状態ですね。
田中:そうですね。サーバーが落ちたらデータセンターまでメンテナンスに行かないといけなかったし、大変でしたね。
菅澤:人を雇ったんですか?
田中:いや、雇っていないです。1人でやってましたね。
菅澤:どれぐらいまで1人でやっていたんですか?
田中:1年ぐらい、サポートまで全部1人でやっていました。
菅澤:大変。
田中:高専を早めに辞めていた後輩がいたので、1997年12月に「手伝わへんか?」言うて。ただ給料も払えへんから、「しゃあないから株あげるわ」って。
菅澤:売り上げがあったら、給料払えるんじゃないですか?
田中:それがですね、100万、200万支出があるんですが、その2、300万は年間一括なので、その翌月からは収入がないわけなんですよ。だから自転車操業ですよね。年払いでいただいたお金で毎月毎月凌いでいくわけですから、毎月毎月、まあそれは大変でしたね。
菅澤:成長させたいから投資が先になるんですね。サーバーを先に買わないといけないから。
田中:そうなんです。キャッシュフロー的には年間払いだから、すごくいいんですよね。
菅澤:結局はカツカツまでサーバーを買って、お金も使ってとやっていたから、お金があんまりなかった。
田中:そうです。おまけにサーバーを買ったとしても、回線代は翌月以降もずっとかかるから、毎月取り続けないとコケるという話なんですよね。1996年ぐらいから、すごくインターネットが広がっていたので。
菅澤:そこからのペースはどうですか?
田中:そこからすごい勢いで伸びましたよ。
菅澤:今振り返って、成功要因はなんですか。
田中:圧倒的に安くて大容量でしたよね。これにはカラクリがあって、PCサーバーを使っていたんですよね。PCサーバーはパソコンをサーバーにするのですが、当時は高級なサーバーを使っていたじゃないですか。
菅澤:昔のサーバーは高かったんですよね。
田中:はい。PCサーバーでオープンソースであると、1台10万円ぐらい。圧倒的に安くて、大容量なんですよ。ただ、やっぱり故障はしやすいですよね。おまけにオープンソースは使っていいという意識を当時みんなが持っていなかった。
菅澤:ある種きちんとした会社だと、きちんとしたサーバーを買って、きちんとやらなきゃいけないんだけど、実は無邪気に一番いい方法はこれじゃない?ってやったら、そっちのほうが良かったというか。
田中:それが一番大きな違いで、破壊的イノベーションだったと思うんですね。セオリーどおりでやると、本当に高級なサーバーを使って、安定感が重要になります。安定感でいうと申し訳ない話でそこまで高くはなかったんですが、容量は大きいし、安いし、使いやすい。
菅澤:この辺の勝算はどれぐらいあったんですか?
田中:勝算よりも、好きだったからやっていたという感じですね。
菅澤:みんなが使う、商売になるサービスはいきなり立ち上げられないと思うのですが、何が違ったんですか?
田中:それこそ「GREE」なんかもそうだし、「mixi」なんかもそうだし、エンジニアが好きで作ってサービスを立ち上げているじゃないですか。だから、エンジニアが起業するのはそんなにおかしくないんだろうなと僕は思ったんですよね。むしろ、技術があって、サービスを立ち上げられるからやっている。
今、サーバービジネス始めるのは、品質要件、要求が厳しいのでやっぱり難しいんですよ。スマホのアプリもそうじゃないですか。10年前だとちょっとしたものでも流行ったけど、今はUI/UXを相当練り込まないとダウンロードしてもらえないですよね。だから、エンジニアが初期に起業するのはすごくアリな選択肢です。
菅澤:また時間が来てしまったので、次回は、上場するのがどうだったのかを聞きたいと思います。
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