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『狂犬・木下』と『天才・川原』が語る「勝手に国家戦略会議」(全5記事)

地方の魅力を下げる、ボランティアガイドという「無料の暴力」 観光客も地元もWin-Winになる、これからの観光ビジネスの解

プロデューサー川原卓巳氏が主宰する、自分らしさを探究するオンラインサロン「SENSE」。同サロンが開催するイベント「勝手に国家戦略会議」に、『まちづくり幻想』の著者で、まちづくりの専門家・木下斉氏が登壇。川原氏と日本の観光ビジネスの課題と解決策を語り合いました。

海外富裕層が見る瀬戸内の魅力と課題

川原卓巳氏(以下、川原):いきなり脱線しちゃうけど、俺は生口島という広島の島生まれなんですよ。しまなみ海道があって、ある雑誌だと、世界一行きたいと言われているような観光地でもあると。

俺は、ここに水上着陸可能なプライベートジェット用の空港作りたいんです。『サンダーバード』みたいに、海がバシャーと開いて、ウィーンと上がってきて、ここにブーンと着くと、楽しいじゃん。

木下斉氏(以下、木下):あ、水上ってそういうことね。

川原:そうそう。そこから水上タクシーとかで好きな島に送客する、みたいなことができたら、めっちゃ人が来るなっていうイメージが持てていて。やらない(笑)?

木下:でも、瀬戸内って本当にみんないいと言うんですよ。海外でも都市視察とかに行くと、地域の再生をやっている会社の社長・会長って、だいたい地元のすごい金持ちの人がやっていたりして。そういう人も「日本に行った」と言うと、やっぱりだいたい瀬戸内に行っているんですよね。

アドリア海だ、カリブ海だ、エーゲ海だ、なんだかんだ世界中のいろんな海も行ったけど、瀬戸内海もすごくいいと。ただ唯一、いろんな宿とかがしょぼすぎるとみんな言っていて。

川原:そうなのよ。

木下:だから環境はいいんだけど、トータルで見るとまだ改善の余地がすごくある。今の海上空港の話であったり、そこから人が移動できるような仕組みだったり。

宿とかも、もっとちゃんとしたアーキテクトの宿を一棟貸しとかで借りられるようなものがちゃんと揃ってくると、おそらく本当に稼げる観光になるんだと思うんですよね。

タクミンに求められる役割

川原:うーん。島への恩返しも含めて、ちょっとそれをやろうかなと思って。

木下:いいですね。でも、やりたいと言っている人たち、けっこういますよね。別荘オークションに出したいという人たちが、この間も来ていましたね。

だから、みんなやっぱりやりたいというか、需要はすごく出てきているので。誰かが先陣を切ってやらなきゃいけないという意味では、出身でもあるので、タクミンがそれをやる。

日本の瀬戸内海のすばらしさ、自然や環境はいいけど、そこにサービスやファシリティがちゃんと追いついてくるところまでを、誰かが切り開いていかなきゃ。

それはさっきの話と同様で、外からじゃ困るんですよね。できれば、内発的に起こるべきなので。やっぱり本当にタクミンとかがやったほうが……。もちろん僕も、一緒になってやれるんだったらやりたいなと思うし、領域としては瀬戸内の可能性はすごく高いし。

川原:可能性があるよね~。

木下:瀬戸内は、造船所とかがほとんどだめになっていくので。

川原:わかる。

木下:瀬戸内工業地域の造船所って、めちゃめちゃいい立地にでかい造船施設を持っているでしょう? 

川原:そうなのよ。

木下:でも、あれはほとんどいらなくなるから、ほぼ除却して、そこにちゃんとした今言ったみたいなものを置き換えていく戦略がすごく必要だと思います。じゃないと、ただの廃墟が残っちゃうから。

川原:造船所を更地に戻すの、むっちゃ高いんですよ。

木下:あれは、基礎とか含めてとてつもなく金をかけて作っているから、壊すのもめっちゃ大変なんだよ。基礎はもう壊しきれないから、だいたいみんな壊さないで上物だけ建てたりね。いろいろするんだけど、やっぱりきれいにはしたほうがいいよね。

川原:試算したら、4桁億円かかるんだよね。

木下:すごい。

日本の観光ビジネスが抱える大きな問題

川原:今回の場合は、国家戦略会議でありながら、地方のプロであるキノピーとしゃべっているので、もう1つの観点として、「地方にどう送客するか」という話もすごくしたいなと思っていて。

僕の友だち、それこそお金持っているやつらに話を聞くと、日本が大好きで、日本旅行はいつでも行きたい。東京、大阪、京都、奈良ぐらいまで、抑えるポイントは抑えて行ったと言うんですね。

たぶん一番ハイエンドな宿に泊まり、一番いいものを食べ、なんだったら熊野古道5日間トレイルやっています、みたいなレベルの人がいた時に問われるのは、「これ以上日本を楽しむにはどうしたらいいの?」という情報のなさ。

木下:次のレベル、進化していくところですね。うーん。

川原:そう。だってキノピーって、仕事と言いながら地方のうまいもんを食いまくっているじゃん。

木下:いやいや(笑)! 仕事ですから。食いまくっているとは……。でも、いろんなところに行かせてもらえる仕事ではあるので、その地域のおいしいものを食べるという苦行を日々しています。

川原:マジで(笑)。

木下:仕事、という。

川原:あんまり人のことを嫉妬しないんだけど、その意味ではキノピーにはめちゃ嫉妬している。

木下:でも本当に、この仕事をやっている役得は、あらゆる地域に知り合いがいることですよね。本当に親切にしてくださる方がいるのは、すごく役得だなとは思います。

当然、そういう人は地元のいろんなものも知っているので、僕が行くと連れていってくれる。おそらく、誰か知っている人が来ると、みんなアテンドはしてくれるんです。でもね、タクミンの言っている話の、日本の大きな問題の1つは、それがサービス化されていないことなんですよ。

川原:それだわ。

木下:そう。だから外から来て、「お金払うからやってくれ」というのを受け止めてくれる人がはっきりしていないのは、かなり大きいとは思いますね。

それがはっきりすると、その人にちゃんとお金が落ちていくし、来た人もすごく満足度が上がっていく。そこはちゃんとお金を取る仕掛けがあって、地方側はそれがビジネスになるとは、まだあんまり気づききっていないところがあると思います。

さっきの知り合いみたいに、「じゃあアテンドするから」「そこでお金を払うからやってくれ」という人が、まずあまり出てきていないところだと思います。

観光客も地元もWin-Winになる観光ビジネスの「解」

川原:わかった。俺、今日の解、出たわ。

木下:解が出た!?(笑)。マジで? さすが。

川原:出た。ごめん。俺、天才すぎてちょっとはしょって解、出ちゃったわ。

木下:天才川原! 出ました! アンサー。

川原:すみません。各土地に、市区町村レベルで1,700ぐらいあるんだっけ。

木下:1,700弱ぐらい。はい。

川原:そうだよね。そこに、1人ずつ認定されたコンシェルジュを僕らが置こう。

木下:あ~。レベルをちゃんと決めてね。

川原:そう。「この人に言ったら、その地区のいいものと、その時の旬と、主要な人たちとのつながりがあって、ちゃんとサービス化できますよ」というふうに、送客元を作っちゃおう。俺らが認定しちゃうの。

木下:その情報も外にしっかり出してね。

川原:そう。それの窓口を全部受けて、ここでがっぽり中を抜いて、空港を作ったり、ちゃんと未来投資になるようなことをやる。

木下:再投資だね。

川原:今まで無料でやっていたり、ボランティアや「思い」でやっていた人たちに、きちんとお金が回るエコシステムを作れたらWin-Winだわ。海外の人も、誰に聞いたらいいかがわかりやすくなるし。はい、決定。コンシェルジュを作ります。

木下:じゃあ、これで1つ答えが出ましたね。

ボランティアガイドという「無料の暴力」

木下:でも、それはやったほうがいいなと思います。今のボランティアというのも、やっぱり本当によくないんですよね。

お金を取らないという、ビジネスにならない、よくないという側面と、やっぱり「所詮ボランティア」みたいなところもあるんですよ。レベル感も高くなかったり。

まさに今のコンシェルジュ的なことがやれる人って、ボランティアではやっていないんですよね。正直なところ、だいたいボランティアは、ちょっと暇なおじいさんとかがやるんです。

川原:「やりがい」でやっちゃう人が、資本主義から外れたところで値付けするの、マジで害悪じゃん。

木下:逆に、地方の魅力を下げている無料観光ガイドってたくさんいて。お客さんが知りたいことを教えなきゃいけないんですけど、自分が言いたいことを言っちゃうんですよね。おもしろくもなんともないの。

川原:せやねん。マジで時間を奪っているのよ。

木下:そう。だから、ボランティアガイドは、地域観光では非常にマイナスだなと思いますね。タダだから、周りも誰も文句を言えないんですよね。

「もう、おじいさん。話つまらないから」とか、怖くて誰も言えないんですよ。「俺は無料でやっているんだ!」みたいな話になるじゃないですか。無料の悪さですよね。

川原:あれは無料の暴力ですよね。

木下:そう。だからちゃんとプロとして、しっかり地域としての魅力を発信できるかを認定する。その1,700弱ぐらいの市町村のところで、例えばコンシェルジュをちょっとずつ認定していくとした時にも、やっぱり実技が重要だと思いますよね。

例えばタクミンが案内されて、「これだったら安心して俺の友だちにも紹介できるわ」というレベルであるかどうかをしっかり見て、OKというところは、自信を持って紹介できると思うんですよね。

ただ、それが名ばかりガイドみたいなのだと難しい。「いや、これはさすがにちょっと厳しいわ」という目が今はないのが、すごく問題ですね。

川原:確かに。じゃあ、僕らが基準を作ろう。それこそいろんな業界にもあるけどさ、業界基準・水準を作るところが、実はビジネス的には一番強いんですよ。認定ビジネスになるから。

木下:これは、ちゃんと作ったほうがいいなと思うよね。今はそこはないから。

川原:よし、やろう!

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