川原卓巳氏と木下斉氏の出会い

木下斉氏(以下、木下):ちょっと僕ばっかり話しているので、川原さん、タクミントークぜひお願いします。

川原卓巳氏(以下、川原):ありがとうございます。

木下:もう川原さんのことはみんな知っていると思いますけど。

川原:いえいえ。冒頭に言うと、僕はこの木下斉という人間を絶対に殺させないと決めているんですよ。

木下:ありがとうございます(笑)。

川原:死ぬ時は、革命が終わった時だと。こいつを狂犬として祭り上げ、僕は安全なところから革命を起こそうとしてるという。

木下:それ、俺めっちゃ殺されるやつやん(笑)! 矢面感すごいな。

川原:そうそう。死ぬとしたら先に下ろすかみたいな。まあ、冗談だけど。

25年、若い時からこれだけ現場第一線でやっていると、やっぱり強くて。要するに、まだ先が長いじゃないですか。100歳までいったとしたら、あと60年は革命のために使えるし、現場を知っている。

なおかつこんなキャラクターで、一緒に付き合ってくれる心優しい人たちと共に生きているという。この事実が日本の希望だなと、木下斉を知った時に思ったのよ。もっと終わっていると思っていた。

自己紹介すると、僕はこんまり(近藤麻理恵氏)という人のプロデューサーをやっています。経営者をやっていて、2016年からアメリカに行って、今もアメリカで経営しながら日本でも仕事をしています。

一番最初に(木下氏と)出会ったきっかけは、アメリカで事業がめちゃくちゃうまくいった時に、日本のニュースをぜんぜん聞かねえなと。僕ら以外のニュースは何もないな、という危機感でした。

もともと僕は政治家を志していたのもあるので、日本という国が超好きで。なんとかしたいなと思っているんだけど、海外にいながらはちょっと難しそうだと。

今ってどんな感じなんだろう? と思って、本を読み始めたのね。その時にキノピーの本も読ませていただいて。「この人、文書的にこんなに尖ったことを言って生きている。すげえ」と思ったのね(笑)。

木下:(笑)。文字にしちゃって大丈夫か? みたいな。

川原:文字に残すとやばいよ、みたいな。言っている分にはいいけど、本というものの大きさも僕は知っているから、「うわ、この人マジで言ってる」と思って、すぐに連絡させてもらって。

僕が日本に出張している間のホテルで、確か夜10時ぐらいにキノピーを呼び出して。初めましてなのに。

木下:そうそう。

「勝手に国家戦略会議」の狙い

川原:日本はなんで死んでいるのか、この本に書けないようなガチのクローズトークで教えてくれと。何を変えたら変わりうる可能性があるのかを、2時間半ぐらいずーっとレクチャーしてもらったのが、実は僕の今の地方創生や国の見方の土台なんですよ。なので、キノピーは僕の師匠にあたる方です。

木下:いや、それ言い過ぎでしょ!(笑)。

川原:祭り上げといたら、先に死んでくれるかなと思って(笑)。

木下:あの夜、なんか急にお腹が空いて。何の店も開いていないから地下に降りて、カップラーメンかなんかの自動販売機に行って。タクミンは金を持っている癖して、日本円のキャッシュを持っていなくて、もう……(笑)。なぜか俺が自販機のカップラーメンを買った記憶だけはある(笑)。

タクミン、ドル資産を持っているのはわかるけど、円資産も持っているだろみたいな話。「キャッシュ持ってねえんだ~」とか言った記憶は、確かにすごく残っていますね。

川原:いや、重要なのはそっちじゃないから。

木下:そっちじゃない(笑)。そっちだけ記憶に残ってる。なんで現金ないんだよ、日本円って。

川原:もっと実りある話をした(笑)。

木下:そう。でもあの時、初対面でしたけど、夜中の2~3時ぐらいまで話した記憶はありますよね。

川原:だからその時に僕の中で「うわ、この人本物だなぁ」と。何を聞いたとしてもとめどなく出てくるし、一切嘘をつかない。もしくはバグっているんだと思うんですよ。何かをうまいこと言う機能をどこかに逸脱してしまっていて、本当のことしか言えないモードなので。

それもあって僕としては信頼もしているし、この人の話をもっと多くの人に聞いてほしいなと思っている人のお一人が、木下さんです。

木下:ありがとうございます。

川原:今回のこの会の趣旨にも入ってきちゃったんですが、「勝手に国家戦略会議」をなんでやろうかと思ったかというと、僕とキノピーでしゃべるだけ、もしくはキノピーのところと僕のところで別々にしゃべるだけだと、広がりやスピードが遅いなと思っていて。

なおかつ、キノピーと僕の得意技も違うので。これを掛け合わせると、もっと効果的に早く、それを共にできる仲間たちに出会えるだろうし、本当の意味で国を動かしていける力をここから作ってみたいなと思ってやらせてもらっているので。

革命を起こすために必要なこと

川原:僕、けっこうガチめに、これは革命の会だと思っているんですね。

木下:「勝手に国家戦略会議」なのでね。でも、話を練っていったら、それに関係する人やゲストを呼んでやりたいですよね。

川原:そうそう。ここだけでしか見られないガチめなバトルとかさ。僕はテレビ・エンタメの人でもあるので、『朝まで生テレビ!』とか、そういうフレームをいろいろ考えるんですけど、あれの嘘のないバージョン。要するに、あれが嘘だって言っているんだけど(笑)。

木下:まあね、みんなポジショントークだからね(笑)。

川原:そう。バチクソ無駄な時間を使っているなと。ああいうのを見ると、だったらコピペやっとけ、と思っちゃうわけです。

木下:そうなんだよねー。

川原:でも、あれをやらないと認知が取れなかったり、選挙で勝てなかったりするから、全部必要悪みたいな状態で存在しているんだけど。

いや、お前らは前を見て舵を切るために政治家やっとんねん。選挙で勝つために生きているんだったら、死んでいるのと一緒だと僕は思っている。そういうのも含めて、この場だったら言えるし。

すごくシンプルに言うと、革命のために必要なことって、国民一人ひとり意識がある人たちがつながってしゃべることしかないんですよ。なぜなら民主主義だから、仕組み上、ちゃんと意識がある人同士がつながれば本当は変えることができる。

でも、みんな自分の保身や立場、興味がないということも含めて、そういう会話をせずに来てしまった数十年を生きているから、僕らはハンドルをまったく握れなくなってしまっている。だって、選挙に行かないんだもん。

木下:確かになぁ。

川原:ということも含めて、基本は僕とキノピーがしゃべりながらなんだけど、「自分らの生きる国をどうしていくのか」ということを、この場でみなさんにも問うていきたいし、みなさん自身が自分の考えを持ってもらう場であってほしいと思って、スタートすることにします。

一人ひとりは微力だけど、無力ではない

木下:おっしゃる通りですね。実態を作らないと、やっぱり政策とかも変わらないんですよね。今の政策になるには何らかの合理性があって、いろんなことを支える人たちがそういうふうにしているわけで。

『朝生(『朝まで生テレビ!』)』じゃないけど、「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」と言っても、最終的に「それ、誰がやるの?」って話になるんですよね。

誰もやっていないことを政策にはできないんですよね。だから僕らも、さっき言ったように地域のこととかを実証して、実際に日本の今の時間軸の地方で「できますよ」と見せないと、そうやって政策制度にはならないですよね。

だから議論をして、それはやっぱりある程度インプリですよね。実際に実装していくところまでできる人が、政策に関与していかないといけないっていう話になるんですけど、今ってその議論のための議論みたいな話になっちゃうんですよね。

議論のための議論のためには、まさにプロモーション的に、みんなそれぞれの立場でこういう話をしていくことになっちゃうんだけど、やっぱり空中戦になっちゃって。

じゃあ、その先にある実態を変化させるのって、誰が何をもって責任を持ってやるんですか? という話になると、正直な話、誰もやる気はないわけですよ。

今の少子化対策もそうだけど、「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」とみんな言うけど、じゃあ実際に誰がそれをやるのかという話が、全部抜け落ちてしまっている。

だからこの場では、よりリアルな現実として起きていることとか、やっている人の話をベースにして、その上にちゃんと政策が乗っかっていくという話に出していかないと、やっぱり国は良くならないんじゃないかなと思いますよね。

川原:そう。なので、この会の基本方針というか、ある程度決めたいなと思っているのは、「全員が国民である」ということを強く意識することなんです。

「人ごとじゃねえ、てめえの話だ」というのを、参加してる方・それを知った方に、自分の力できちんと変えられるものであると知ってほしい。一人ひとりは微力だけど、無力ではないと、僕は最近すごく思っていて。諦めたらそこで試合終了なんですよ。わかります? 

木下:本当そうだよね。

観光ビジネスをテーマにした理由

川原:でも、諦めているじゃん。正直俺も諦めているというか、いったん自分に集中すると、ある程度もう見て見ぬふりして生きていこうかなと思って、今まで生きているのよ。

木下:そうそう。まあ、みんなそうだよね。

川原:でも、変えるとしたらもう今しかねえぞと。しかも、そう思って生きている人たちと出会えるようになってきたから、ちゃんと「ああ、いけそう」と思えているのが今です。なので、そういう人たちもどんどんゲストに呼んでいきたいし。

どこまで行けるかわからないけど、国の真ん中で官僚として生きているけど、いい意味でちゃんとバグっている人もいるなぁというのを、確認できている。

そういう人たちと本音の対話をして、肩書きではなく1人の人間・日本国民として、未来をきちんと作っていける座組をここから生み出していきたいなと思っています。もう、いきなりめちゃくちゃしゃべりすぎて、残り32分しかないんだけど。

木下:マジで根本論で終わる、みたいな(笑)。

川原:すげえ大事な話だったけど。残りの32分間でしゃべりたいこととしては、第1回のテーマ「15兆円の観光ビジネスをつくるために地方からできること、やるべきこと」。

なんでこれを選んだのかというと、国というものを考えたり、地方を考えたり、営みを考える時に、今の絶対的なルールって2個しかないんですね。1つが、法治国家である、法律が絶対必要であるということ。そしてもう1つが、資本主義のルールであるということ。この2つが、大枠の2大ルールなんですよ。

そうなった時に、国を考えると、自分たちが民からコントロールできて、一番やるべきなのは「どうやって稼ぐのか」ということなの。

資本主義上でどう力をつけていくかというのが、もう絶対に逃げられないとなった時に、国と足並みを揃えたり、日本の持っている一番大きいうまみを使いながら、しっかり稼ぐことを考えると、観光は100パー外せないポイントなんです。

地方のリアルが聞ける『Re:gion Radio』

川原:このあとキノピーにも少し解説していただきますけど、ちょっとごめん。いきなりCM入れていい? みんな『Re:gion Radio』は絶対聞いたほうがいいよ。

(一同笑)

木下:それ、めっちゃ喜ぶと思うわ。「NewsPicks Re:gion」というところでね、Voicyでも配信をしているチャンネルがありまして。地方の活躍している人たちがいろいろ出てくる番組なんですけど、一応僕も……。

川原:『Re:gion Radio』。別に呉琢磨(NewsPicks Re:gion 編集長)に忖度するわけじゃないけど、めっちゃいい番組をやっているのに、プロモーションが下手すぎてぜんぜん広まらないからイライラし始めたという。

(一同笑)

木下:もう、タクミンぐらいのパワーのある人が入らないと……(笑)。広がらない。

川原:うーん。あれはいいけど、みんな見ているだけだとだめだな。『Re:gion Radio』、ぜひ聞いてください。キノピーも含めて、まさに地方のリアルを本当の人が話をしてくれている、めっちゃいいメディアです。

木下:(参加者からのコメントで)あ、もう探してくれている人たちがいる。聞いてくれている人もいる。ありがとうございます。

川原:ありがとうございます。

木下氏の1分解説のおもしろさ

川原:そこで毎回恒例になっている、キノピーの1分解説というのがあって、めちゃくちゃハードルの高い無茶ぶりを受けている。

木下:(笑)。

川原:すごくでっかいちゃんとしたテーマを、1分でまとめろと。僕はあれを聞くのが大好きで、『Re:gion Radio』を聞いている節もある(笑)。

木下:めちゃめちゃ無茶があるね。すごくでかい話から、「じゃあ1分でまとめをお願いします!」という、ダイジェストみたいなね。

川原:しかも、琢磨の淡々とした空気感で、当たり前かのように振るじゃんか。お前、本当に死んでしまえみたいな(笑)。

木下:そう。「日本の漁業の問題について、1分でお願いします」みたいな(笑)。「1分で!?」という話とかをやるんですよね(笑)。

川原:俺はネプチューンか何かなのか? みたいなね(笑)。

木下:そう。でも、連続で聞いてもらうと、なんとなく今の日本の地方で起きている課題と、それに挑んでいる人の切り口みたいなものはすごく立体的にわかるようになっている。

ちょうどファーストシーズンが終わるので、一通り全部聞いてもらうとけっこうなことがわかると思いますね。

川原:そうなんだ。それこそ俺は移動中に『Re:gion Radio』を聞いているから、娘たちも一緒に車に乗っていたりするわけ。だから『Re:gion Radio』を聞いているんですよ。

なんかね、『Re:gion Radio』のあの音(オープニングジングル)が好きらしくて。あの「トゥルトゥットゥットゥードゥドゥドゥー」ってやつ。

木下:あの音楽が。

川原:だから、娘から「『Re:gion Radio』聞きたい」という要望をもらうようになってきた。

木下:マジで!?(笑)。

川原:マジで。

木下:それ、制作している人たち絶対喜ぶわ。

川原:うちの子たちが最年少リスナーだと思う。

木下:確かに。ファーストシーズン全体で、トータルだと24時間分ぐらい音声配信のデータがあるので、おそらく移動中に聞いてもまあまあ聞き応えがあると思います。でも、すごいですよね。「ドゥドゥドゥ~」って音楽が、そんなに響いているとはつゆ知らず。

川原:うん。俺も「そこ?」と思って。しかも、だいたい1.5倍ぐらいで聞いているから、彼女たちの耳には少し早めで。

話を戻すと、木下さんはそういうことの本質をピンポイントで的を射てしゃべるプロなので、今回は「観光」というテーマについて1分でお願いします、と言いたかっただけ。

木下:(笑)。

川原:そのためのフリ(笑)。

観光ビジネスが抱える3つの問題

木下:なるほど。でも、今日は第1弾。何を話すか。実はこの間「Voicy FES」の時にも、日本の情報そのものが、アメリカとかでもぜんぜん取り上げられないという問題について話していました。

例えば観光1つとっても、日本人が思っている観光のイメージで、日本人は海外から来る人に観光のサービスをやってるわけです。外からの目として、タクミンの目から見て、それは本当に当たっていますか? みたいな話をしていて。「いや、なんか当たっていないよね」と。

今の「1分で」みたいな話で言うと、特に日本がこれからやっていく上で、観光って論点が3つあると僕は思っていて。

1点目は、観光消費単価。一人ひとりの観光客の方が、日本に来て使うお金の金額が、ぜんぜん伸びていないという問題なんですね。

コロナ前までインバウンド客の数は増えているけど、1人が使うお金は実は2015年がピークで、ピークアウトしちゃって下がっているんですよね。これを改善しなきゃいけない。つまり、より喜んでお金を落としてもらうサービスを考える力が、日本人に非常に不足しているという問題。

2点目は、インバウンド。日本へ観光に来る人たちの話があるんですが、まず日本人が海外にぜんぜん行かないんですね。我々が行くのはアウトバウンドなんですが、コロナ禍を経て、パスポートの所有率がいよいよ17パーセントになっていると。日本人の17パーセントしか、今、有効なパスポートを持ってない状態になっています。

これから外から来てもらう人を考える上でも、自分たちが行ってもいないのに、どこの国の人にどうやって来てもらうか、というイメージも広がらないよねと。

じゃあ、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカとかいろんな国々がある中で、日本はどこの国の人にどうやって来てもらうのということも、あんまりシナリオがなくて。「近くの国の人に、なんとなく適当に来てもらえればいい」みたいな感じで今までやってきて、この2点目はどうしたらいいでしょうか。

3点目は、日本が「観光立国をやります」「政府目標で6,000万人ぐらいまで観光客を増やしましょう」ということで、コロナ前の直近で、日本に来ている人がだいたい3,800万人ぐらいなんですね。だから、要はさらに倍ぐらい観光客を入れようって話をしているんですけど。

今、日本で何が起きているかというと、けっこう外資系のホテルチェーンとかが日本にいっぱいホテルを建てたりしているんですね。そうすると日本に観光客は来るけど、結局儲けるのは外資の企業になっちゃうという構造も実はでき始めている。

観光客は日本に来るけど、それだと日本としてのうまみがないから、日本国資本としてはどうやって観光産業で金をちゃんと儲けるんですか? という。施策としてそういうことをやらないと、田舎にはたくさんお客さんが来るけど、儲かるのは外資系ホテルという話になると、所得が上がらないんですよね。

もうすでに沖縄がそういう構造になっちゃっていて。このあたりを含めて、単価の問題。インバウンドの国はどこから・どうやって来てもらうかという、戦略の問題。日本の国の資本としてどう儲けるかという、この3点を話せればと思っているんですが、言っといてなんですけれども、おそらく時間的に無理です(笑)。

川原:(笑)。

お金を使いに来るインバウンドにうまく応えられないわけ

木下:でも、まずは1点目だけでも深められればすごく意味があるなと思ってはいて。観光客が日本に来て、なんでこんなにお金を使ってもらえないのか。

この30年で、日本人の脳みそが徹底的にデフレ脳になっていて、「いかに金を使わないかがサービスだ」と思っている部分がすごくあるんですよね。おもてなしイコールタダでやることみたいに、ちょっと勘違いをしているところがあって。

だけど、せっかく海外から日本に行きたいと思って、お金持ちの人とかもそうだし、お金持ちじゃなくたって、旅行に行くってことはお金を使いに行くわけですから。じゃあ日本人はそれをどうやって受け止めたらいいのかという。

まさにタクミンの目線から、海外の人は何を求めて日本に来るのか、意見をちょっと聞きたいなと思っていたんですよ。

川原:すごくシンプルに言うと、日本人が金持ちに会ったことがないのが大きな問題だと思っていて。

木下:あー、そうね。

川原:じゃあ、なんで俺が今すごくうまくやれてるかという根本で言うと、金持ちと友だちだからなんですよ。

木下:あぁ~。金持ちの友だちは、また金持ちだしね。ネットワークが違ってきますよね。

川原:そうそう。何がいいかと言うと、もちろんその人たちが直接お金を使ってくれるというのもあったりはするけど、それ以上に、そういう人が何を考え、何を求めて、何をしているのかを1次情報で知っているから、何を与えると喜ぶかがイメージできるのがめちゃくちゃ大きくて。

だから、僕のこの感覚を地方にインストールしたくて、地方旅をしまくっているんだよね。

木下:その視点は、なかなか地域側にはないよね。

川原:そうなんです。

木下:富裕層観光と言っているけど、富裕層の知り合いがいない。

川原:だって僕が思う富裕層って、生まれてこの方1度も飛行機に乗ったことがないんですよ。みんな、生まれてからずっとプライベートジェットだから。

木下:(笑)。自分の家の飛行機で移動している。

川原:そう、これが富裕層なのよ。そいつが言っていておもしろかったのが、「うわ、みんなで飛行機乗るとかすげえ楽しそうじゃん」って(笑)。

木下:(笑)。「いつもちょっと寂しいから、みんなで乗りたいわ」みたいな。

川原:そう。もちろん友だちは乗せたりするんだけど、「え? いろんな人と乗るの?」みたいな。

木下:わいわい。

川原:そうそう(笑)。「いや、違うから」って。

多数の観光客が来た際の地方の課題

木下:でも、まさに今の話からすると、日本は地方にいっぱい空港があるわけですが、そこにプライベートジェットが乗り降りをして、その人たちを陸路でちゃんと効率的に送り迎えをするサービスとかって、ぜんぜん考えていないですよね。

日本の空港って、基本は都道府県が設置主体になっていて、だいたい県の人が天下りとかで行っているから。まさに今言ったように、「子どもの頃からプライベートジェットで移動しています」なんて人は、お友だちに1人もいない人がほとんどなんです。だから、そういう発想にならないんですよね。

じゃあ、どういう発想になるかと言うと、「そういう人たちに来てもらって、何かやろう」じゃなくて、「補助金を出して、LCCにタダで来てもらおう」という発想になるんですよ。

川原:安さね。

木下:だから、安く旅行したい人を連れてきてもらうのに、さらに税金を払って来てもらおうという話になって。当たり前ですけど、それではやっぱり単価が伸びないわけですよ。ケチってケチって、「いっぱい来ました」という人たちを相手にやっているから。

今一番の問題は、地方では働く人がいないことです。だから、大量に観光客が来てもさばけないんですよね。

コロナ前も、お客さんはいっぱい来るけど、昔の大きい大型旅館とかでも部屋を全部開けられないんですよ。従業員がぜんぜんいないから、半分しか稼働できないとか、そういう状況になっていて。

たくさんの人を安く予算を出して連れてきても、ぜんぜん経済にならないことはもう明らかなのに、まだそこから転換できないんですよね。

そこはやっぱり今みたいに、逆に知っている人が何らかのかたちで、「もっとこういうふうに変えましょうね」という前提になると、変化が出てくるとは思います。

日本で出てきているのは、北海道で倶知安(クッチャン)とか比羅夫(ヒラフ)のあたり。みんながプライベートジェットで行くから、「もう飛行場を作っちゃおう」「50億円か60億円でできるの? じゃあ、みんなで金を出しあって作っちゃお!」みたいな話になっているわけですよね。

川原:そうそう。わかる。

木下:別に土地はあるわけだから、本来そういう変化が内部から出てほしいんだけど、なかなか出てこないんですよね。