2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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斉藤知明氏(以下、斉藤):ありがとうございます。これがまさに次のテーマの中で、この「職場の問題地図2021」についてディスカッションを深めていきたいと思っているんですけれども。
いくつかクエスチョンをご用意させていただいております。それをもとにして、沢渡さんと深掘りしていければと思っているんですけれども。1つ目が、改めて「なぜ2021年、コラボレーションが大切になってくるのか?」という問いから入らせていただきます。
さきほど「みんな二項対立が大好きだけど、二項対立じゃないよね」という話がありました。「オペレーティブな人材とクリエイティブな人材」というキーワードが、沢渡さんと事前の打ち合わせをしている中で出てきたんですよね。
この2つが共存している状態を作るために、改めてこのコラボレーションが重要なんじゃないかという話があったんですけれども。解説いただいてもよろしいでしょうか?
沢渡あまね氏(以下、沢渡):まず第一に「オペレーティブな人材・職種」「クリエイティブな人材・職種」ともに価値があります。しかしながら、基本的に働き方すべてをオペレーティブな仕事のやり方に合わせてがんじがらめにしたことによって、結果としてクリエイティブな人材が正しく活躍できない。
あるいは、本当はクリエイティブな人材なのだけれども、その人のクリエイティビティが芽を出す可能性を奪ってしまっていたというところが、我々の過去60年の大きな反省点だと思うんですね。だからこそこれからは、例えば同じ会社、同じ製造業でも「うちは製造業だから」と思考停止せずに、職種によって勝ちパターンを目指していく。
職種によって最適な働き方、最適な環境を目指していくやり方にしていかないと、結局は新しいことが起こらない。既存の問題・課題が解決しない。新しいマーケットに入っていけない。あるいは株主投資家に認めてもらえないという、負のスパイラルにしかなり得ないと思うのです。
もう1つは統制型・ピラミッド型の限界。今の世の中は複雑化していて、さらに新型コロナウィルスのような未知のわからないものも出てきていて、組織の中に答えがない時代です。過去の成功パターンが通用しない時代に、どんどんなっている。
そうなっていくと、いわゆるクリエイティブな発想で外に出て行って、他とつながることによって解決していくやり方を取り入れていかないと「ともに沈みゆく船」にしかならないと思うのです。
斉藤:ありがとうございます。このクリエイティブな人材の成功パターン、いわゆるコラボレーション。このあと“オープンさ”みたいなところもキーワードとして出てくるかと思うんですけれども。この、オペレーティブな人材とクリエイティブな人材を、同じ制度の中に閉じ込めてしまったことが不幸だった、とおっしゃっていたじゃないですか。
沢渡:はい。
斉藤:同じ制度の中に閉じめたというのは、具体的に言うと、クリエイティブな人材からすると何が不幸だったんでしょうか? なんでその制度に閉じ込められると、やりづらかったのでしょうか?
沢渡:まさに先ほどの、思考・発想・成長のサイクルで示した絵がそれかなと思っているんですけれども。結局、新しい発想とかものごとの解決って、9時~17時で同じメンバーだけが毎日オフィスで顔を合わせていて生まれるのか? という話なんです。
中には「インターネットを使わせません」みたいなところだとか、こういったZOOMのようなツールすら「いや、セキュリティが厳しくて……」という理由で、社員は檻の中に閉じ込められる。とにかく外に出て行くことを“是”としない。“井の中の蛙”に押し込めようとするようなやり方にしてしまっているものですから。これでは、外からヒントも得られなければ、解決策も得られません。
あるいは、他社に力を借りるための契約を交わそうとしても、契約のためのプロセスが重厚長大で紙とハンコベースの手続きで1ヶ月かかる、と。そんなことをしているうちにイノベーティブな会社は「もういいです。御社とは取り引きしない。その時間が、機会損失になりますから」となります。
古い「つながることを邪魔する仕事のやり方」が、成長・コラボレーションの足かせになる。これが今、リアルに起こっているのです。
斉藤:(スライドを指して)「テーマを投げ込む」の「キーワード・キーフレーズ」「観点・論点」「フレームワーク」って、まさに今の新しい“ひらめきの種”だと思うんですよね。
ひらめきの種だし、かつ、会社として先ほど「ビジネスモデルに変革を生み出すことが、社会の公器として必要である」「法人として必要であり、宿命だ」とおっしゃってましたけれども。
じゃあ「会社としてどういう方向を目指したいのか?」「今どういう現状で、どういう課題感があるのか?」この2つをちゃんと理解して、かつ、そこにキーワード、キーフレーズが入っている状態がないと、いわゆるイノベーション・ひらめきというのも生まれ得ないです。
一方でそれが、さっきの「同じ社内でも、他のフロアに行くにはセキュリティが必要で」という状態になってしまっていると、どんどん狭くなっていって。もしかしたら、オペレーションをこなすための最適な環境が生まれていたかもしれない。その環境を変えないことにはひらめきが生まれ得ない環境、もしくはそれが伝播し得ない環境になったということなんですかね?
沢渡:おっしゃるとおりですね。要は今までの日本企業におけるエンゲージメントの高め方って「同じ会社における働き方が公平であること、環境や条件が同じであること」だったのです。ところがこれからの時代は、私は“会社カット”ではなく“職種カット”で最適解を目指していくやり方のほうが、合理性があると思っています。
例えば「同じITの職種なのに、なんでウチ(当社)は製造業だからという理由で製造現場に合わせて全員出社しなければいけないのですか? リモートワークが認められないんですか?」みたいな議論も起こっているわけですよ。プロとして育ちやすい環境でないと、当然、仕事に対するエンゲージメントは上がりにくいですね。「プロがプロとして成長できる、健全な組織体」になり得ません。今一度、会社単位ではなくて、職種カットで最適な働き方や方法を認めていく、選択肢を増やしていく。組織に対するエンゲージメントはビジョンで高めて欲しい。
その会社のビジョン、ミッション、そこに共感する人が集まって「俺は製造現場でがんばる」「俺は情報システムの現場でがんばる」「俺はマーケティングの現場でがんばる」。それぞれが各々の勝ちパターンで働くやり方をしていく。
「製造現場はテレワークできないのに不公平だ」のような不公平感は、出社せざるを得ない職場は休暇の日数で差をつけるなど、処遇や手当でカバーすればよいのです。そのような、職種ごとのバランスの取り方はいくらでもあります。そういうマネジメントに変えていく必要、マネジメントにグラデーションを付けていく可能性があるのかな? なんて思っています。
斉藤:ありがとうございます。いただいた質問の中で、1つすごく気になるものがあって。あとでまとめて回答させていただく時間はあるんですけれども、これだけ先に。「製造業の位置付けが下がるということでしょうか? 製造業の改善の仕組みも、世界では強みではあると思いますが」という質問をいただいているんですけど。
沢渡:製造業がダメというつもりは、まったくないです。私も製造業出身ですから、最大の敬意を持っているんですけれども。ただ、やり方・あり方はアップデートしていかないと、せっかくのいいノウハウも、もろとも潰れてしまう、潰してしまうよねという話なんですよね。
ですから「うちは製造業だから……」ではなくて、製造業のノウハウを最大限に活かして。しかしながら働き方や環境はどんどんアップデート、オープンにしていって、他とつながって、他との掛け合わせによって製造業の強みを最大限活かせるやり方に変えていく必要があるのかな、と思っています。
斉藤:まさにコラボレーション……
沢渡:私はよく「まずデジタルワークをしてください」という話をします。テレワークのような話をすると「いや、製造現場はテレワークできない!」って思考停止されることも多いのです。
「テレワークより、まずデジタルワーク」。どういうことかというと、一般的に自由な働き方がしにくいといわれている製造現場、あとは宿泊サービスのようなサービス業の現場においても、例えばこういう話があります。
建築を生業としている会社があります。いままで現場の作業者は、現場で撮った写真を会社に戻ってパソコンにつないで取り込んで、さらにレポートを書く業務をしていました。そのためにわざわざ、現場から本社に戻っていた。
これをiPadを配って、クラウドサービス上に写真とレポートをアップして報告完了とすりょうにしたら、現場から直行・直帰できるようになった。本社に戻らなくても済むようになった。「あ、楽になったな」と。
さらにそれを受け取る本社側も、現場からリアルタイムに情報を受けて、それを加工して整理する仕事が楽になった。さらにリモートワークもできるようになった。このコロナ禍において助かった。
その結果として何が起こったかというと、現場もデジタルにすることによって楽になった。自分のプライベートの時間が増えた。無駄な残業が減った。ああ、ハッピーだ。管理部門もハッピーだ。双方がハッピーになったんですよね。
沢渡:さらにはですね。今その会社、何をやっているかというと。「ほかの建築の現場でも困っているよね?」って話で、その「現場の写真をレポートしていくという業務そのもの」を、クラウドサービス化して売ってるんですよ。
さらにそれを受けて、レポートを作るバックオフィス部門、本社の管理部門も商用サービスも一緒にやるというようなところで、新たなビジネスモデルが生まれたんですね。まさにデジタル化したことによって、そこから先のビジネスモデル変革が生まれ、現場もハッピー、管理部門もハッピーというような、そういう状況が生まれ得るという話なのです。
今、コメントがありました。「当社は建設業ですが、iPadを配って活用しています」。デジタルワーク化することによって、そこにクリエイティブなものが生まれれば、オペレーティブな人たちも、より高い仕事に移ったりもでき得るという話なのです。
斉藤:ありがとうございます。2021年にコラボレーションがなぜ大切になってくるか? どういうことが実例として起こっているのか? ということを今お話いただいたと思うんですけど。
沢渡:コメントをもう1個拾っていいですか? 良いことおっしゃってくださっていて。「営業とマーケを“一緒くた”にする製造業、それは、一緒くたにしか捉えられない製造業で、知識不足ということかもしれないですね」。おっしゃるとおり!
職種の定義も進化しているので、今までの当たり前を疑って「営業っていう発想でやってるから稼げないんじゃないかな?」「マーケティングっていう発想って必要だよね」。これ、世の中を見なければわからないんです。
まさにオープンになって、外に出て行って新たな発想を得て、それによってマーケティングできる人材を受け入れる。もちろんマーケティング人材が活躍できる余地を作っていくというような、今までの当たり前の職種、あり方を疑っていってアップデートしていかないと負けるよね? という話は、まさにそのとおりだなと思っています。ありがとうございます。すみません、戻します。
斉藤:ありがとうございます。そんな中で、今の「製造業で知識不足ということかもしれませんね」とおっしゃっていただいたのもそうなんですけど。コラボレーションの質が上がっていく企業と、それができない企業の明暗を分けるポイント。つまり「できている企業の共通点」であり「できていない企業の共通点で、取り組まないといけないこと」って何なんでしょうか?
沢渡:一言でいうと「オープンな環境を作る」「オープンな環境に身を置いているかどうか?」だと思います。私も浜松を中心とする静岡県エリアで、さまざまな企業……中小企業にも大企業にも向き合っていますけれども。
別に静岡だから云々という話ではなくて、どんどん外に出て行っている企業の人たちは、新しいことを試していて。いい人も集まるようになって、そこから利益体質に変わっている会社もあります。
一方で中に閉じこもっている人たちは「う〜ん、大丈夫かな?」っていう感じですよね。オープンになるかならないか、といったところは非常に大きいのかなと。変わり始めている企業の最大の特徴は、オープンに外に出て行っていますね。社長がまず外を知らないと、悪気なく、同じやり方で押し込めてしまいますよね。
斉藤:そういう変化に適応する、ないしオープンになっていく社長って、中小企業、大手企業、もしくはベンチャー企業とかもあると思うんですけど、どれが進んでいますか?
沢渡:最近は、はっきりいって社長だけではなくて、組織でもそうなんですけど、私はベンチャー企業や中小企業のほうが進化が早いと思っています。すごくリアルな話をすると、大企業はやっぱりガバナンス、コンプライアンスが厳しすぎるんですよね。「ZOOMは使えないんですよ」とか「オンラインファイルストレージ使えないんですよ」とか。
その結果として何が起こるかというと、私もけっこうびっくりしているんですが。20代、30代でもデジタルツールを嘘みたいに使えない人たちって、けっこういるんです。なぜなら、仕事で使う機会が与えられないから。そうしているうちに、どんどん残念な人材になっていく。外とつながって仕事ができない人材になっていく。
この格差はものすごく大きくて、むしろ中小企業のほうが気軽に、安いものも含めてデジタルツールを使って、すぐオンラインでも商談して仕事を取っていかないと、財務体質がみるみるうちに悪化しますからね。「すべて出張して対面で」なんてやっていたらダメで、そういう意味では、むしろ身軽な中小企業・スタートアップ企業のほうが、どんどん時代にキャッチアップしていく。
大企業の人たちのほうが、悪気なく古いやり方に縛られていて、オープンな仕事のやり方、デジタルを使った仕事のやり方を経験できない状態になっている、という格差は生まれつつあります。
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