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10年後、君に仕事はあるのか?~未来を拓くための「情報収集力」~(全7記事)

“10年以内になくなる仕事”から見えてくるものは? 藤原和博氏が語る「ロボットより人間」の条件

学校の先生たちが社会とつながる場を提供し、新しい視点を届けることを目的とした「先生の学校」が1周年イベントを開催しました。テーマは「Think Day~未来の私を考える日~」。セッション2で行われた「10年後、君に仕事はあるのか?~未来を拓くための「情報収集力」~」では、リクルートで数々の新規事業を手がけた後、東京都初の民間人校長にもなったという異色のキャリアを持つ藤原和博氏。子どもたちはもちろん、教師を含めた大人たちに必要となる「情報収集力」について解説しました。

1分動画で世界の約10億人とつながったピコ太郎

藤原和博氏(以下、藤原):(世界の50億人が10年以内にスマホでつながるという)このイメージがつかみにくい人は、たった1つの例を挙げれば、そういう社会でなにが起こるかすぐわかります。

これはなにかというと、みなさんが最近目撃したある事件ですよ。なにかというと、Apple-Penのおじさんですよ。わかります? Pineapple-Penのおじさんです。

あのおじさん、1分間の動画をYouTubeにぶち込んで……。もちろんこれはなにげなくやったんじゃないですよ。ものすごく計算されているのです。

AppleとPineappleというのが、日本人が英語で言うとすごくおかしいというのは昔から知られていたことなの。吉本でもすごくそれは英語の中で一番利用されていたランゲージなの。それをうまく使っているということだから、すごく計算されているのですが。

それはともかく、最初はそんなに日本では話題にならなかったのですよ。それがおもしろいことに、1分だったのがよかったというのもあるのですが、ジャスティン・ビーバーが「いいね!」と言った途端に1億人が見ちゃった。結局、その年のうちに紅白歌合戦じゃないですか。

こんなこと、ありえる? なかったのですよ。どんなにテレビが多チャンネル化しても。どんなに衛星放送ができても。要するに、スマホの動画で今、約10億人がつながっていますよね。その状態であれが起こっているのだから、50億人がつながったときにどうなるか。

つまり、歌の世界だけじゃないと思いますね。ダンスでもそうだと思いますし、もしかしたら俳句や和歌、そんなものも出てくるかもしれません。

あらゆるパフォーマンスで、ここにいる人たちでさえも一瞬にして世界のスターになっちゃって、紅白歌合戦かどうかはわからないよね。でも、いろんなものがあると思いますよ。本当に。

家電も車も「ロボットくん」

そうした、つまり天才の発見というのが格段に高くなり、しかも天才の定義も変わってくるようになる。ああなるとね。わかります?

3歳の赤ちゃんだって、あの現象の中に巻き込まれる可能性があるわけですよ。「超かわいい」というだけで。一瞬にしてスターになっちゃって、グラビアアイドルになっちゃうような。わかります?

そうしたことから、あるいはInstagramのブームもそれを少し加速させるのだろうと思いますし、世界はそっちを向かっていっているわけです。これは非常に大きいですよね。しかも、そのネットワークにAI武装したロボットがつながるというところがミソなのですよ。

みなさんはよく、今の小学生や中学生は将来、ロボットと共生する世代だ、ということをよく言うのですが、それは違いますよね。もうすでに始まっているわけです。みなさんが持っているスマホはもう完全に“通信くん”という名のロボットですよ。違います?

2020年前後に、たぶんもうしゃべっただけでいろんなことをやってくれるようになるでしょう。今はちょっと認識が甘かったりしますが、これは絶対にそうなるし。

東京オリンピックのときには、おばちゃんでも、何語で話しかけられてもここに日本語が出るくらいの、これは絶対。日本のメーカーが徹底的に今やっていますから、それはすごく細かいものが出てくると思います。ですから、まあこれは“通訳くん”というロボットですよね。

それからどうですか。ちょっと聞いてみようかな。家で“お掃除くん”。お掃除ロボットを使っている人はどれぐらいいる?

(会場挙手)

見てくださいよ。もうおそらく5パーセントはいっているのですよね。ということは、7パーセントを超えるとブワーッと一定の普及率を超えて、だいたい13人に1人というような感じでそうなる。自分の知り合いで絶対1人は使っているやつがいるということになるのですよ。

それが良いということになると、もうあっという間に15パーセントぐらいになり、それを超えるともう臨界点に達するわけです。グワッと。あとはもうコストの問題だけですよね。

たぶん、もうあと数年もしない間に、あのお掃除ロボット、ルンバやルーロは目を持つでしょうね。カメラ搭載。外から家の中の様子を見ることができるという。そうしたロボットはもう今いますが、ルンバがそうなると思います。

ロボットくんたちに手足がつくと……?

さらに、手かなにかがついて収納するところがついたら……。犬を飼っている人はよくわかると思いますが、犬を飼っていると2泊などで旅行に行けないじゃないですか。餌をやらなきゃなんないから。それをたぶん自動的にやってくれるような感じ。

つまり、そこまでいけば“留守番くん”というロボットになりますよね。そうでしょ? 例えば餌出して、「お手、お座り、よし!」みたいな。

(会場笑)

いや、昔だと「オテ。オスワリ。ヨシ」みたいな電子音。でも、もうそうじゃありませんから。おそらく5年もしないうちに、完全に飼い主の声で擬似的にやってくれるという。それぐらいのことは、もう基礎技術としては全部できているのだから。あとはコストだけの問題です。

冷蔵庫も“冷蔵くん”だし、洗濯機も“洗濯くん”じゃない? もうロボットですよね。今、すごいじゃないですか。あの学生服でさえも、夜中に入れておいたら朝ピシッとしてアイロンをかける必要もないというね。

そうした状態に今なっちゃっているわけだし、冷蔵庫なんて今、バーコードを読み込んで賞味期限切れを教えてくれるじゃないですか。もうすぐ、賞味期限切れを勝手に廃棄して勝手に注文するような、余計なことまでやる冷蔵庫が出てきそうな感じがありますよね。

ロボット社会は未来の物語ではない

そんなわけで、これをブレストするのは非常に楽しいのではないかと思いますが。もう1つだけ言うと、自動車はもう完全にあれ、“移動くん”という名のロボットですよね。乗り込むタイプのロボットですから、もうガンダムに近いわけです。

ちょっと聞きたいのですが、昨日も聞いていたのだけどね、ここ2年ぐらいの、一番新しいものが一番そうなのですが、わりと新しいプリウスに乗っている人はどのぐらいいる? いない? あ、みんな、車に関心がないのか。

プリウスを正面から見ていただければ、いかにガンダムかがわかりますよ。完全に顔がガンダムだもん。要するに、そういう世代のやつらがデザイナーをやっているということもあるのですが、車というのはロボットだということはもう結論づいたということ。

一番表明していなかったトヨタでもついに、2020年代に絶対やると言っていますから。高速道路での自動運転と渋滞時の追尾、それから車庫入れ。とくに女性が非常に不得意な縦列駐車など。それはもう今だってベンツの中型のやつでボタン1発ですからね。

だんだんそうなっていくでしょう。そうするとあれ、ガソリンで走っている必要もないし、そんなエンジン馬力で競争するみたいなものは、団塊世代で昔、スピード狂になりそこねた親父だけだと思うので。

(会場笑)

今の若い子は車なんかにぜんぜん興味がないもんね。うちの息子たち……3人子どもがいてが、全員免許を取りにいきましたが、1人も乗っていません、ぜんぜん。車の話なんてまったく興味ありません。

もう“移動くん“という名のロボットになっちゃいますから、そういう意味ではもう電気で十分じゃないですか。電気自動車にいくでしょうね。だからイーロン・マスクの勝ちという感じではないでしょうか。

そうしたロボット社会は、別に小学生・中学生・高校生が大人になったらというような未来の話ではないということね。もう始まっているわけですから。

10年以内になくなる仕事はなにか?

そうすると、そのロボットたちが、人間が50億人つながるネットワークにつながってきてなにをやるかといえば、当然、仕事を奪っていきますよね。処理仕事はどんどん奪われるでしょう。

ではみなさん、このチームでどんな仕事がなくなるか。これは例えば、オックスフォード大学と野村総合研究所の調査、あるいはハーバード大学の調査などいろいろあるのですが、それは一応置いておいて、みなさんがどう思うか。

僕はこのセッションの最後に「であれば、教員はどうなんだ?」と。なくなる仕事なのか、なくなりにくい仕事なのか。それを最後にもう一度議論してもらいます。最後にね。

でも、それはちょっと取っておいて。とにかくこの場では時事放談会で、「これなくなる」「あれなくなる」と、相手がなんの仕事をしているかなんて思わないで。「万が一それを言っちゃたら失礼じゃないか」といった気遣いはなし。

(会場笑)

学校の先生だと、保護者とはそういった会話はできないと思っているでしょう。でも、いいじゃない、もう別に。とにかく「これはなくなる」と大げさに言ってください。

「芸人はどうなると思う?」に対するキンコン西野氏の回答

昨日、キングコングの西野(亮廣)」くんと高校生向けに2回目のライブをやっていたのです。1回目のときに僕、高校生にこの授業をやって、西野くんに「芸人はどうなると思う?」と聞いたのですよ。これにすっごくおもしろい答えをしていました。芸人というのはどうなるかと。

「じゃあロボット芸人が出てきてもっとおもしろいことを言われたらどうするの?」というような質問だったのですが、「いや、そうじゃなくて、藤原さんね。ある時間があって、その時間を楽しみたいというときに、要するに芸人に楽しませてもらうというのはたぶん優先順位が下がるから、いなくなるんじゃないですか」と言っていましたね。わかります?

ある時間を楽しみたいときに、もっとおもしろいことがいっぱい出ちゃう。だから「自分でも芸人の芸を見ているよりは、彼女とLINEをしているほうが楽しい」などと言っちゃって。そうした時間がもっと増えちゃうから。

だから、必ずしも芸人がロボットに置き換わるという意味ではなくて、時間全体の中で芸人に取れる時間がなくなってくるということを言っていたので、頭の良いやつだなと思いました。本当に。

そこまでは考えなくてもいいので、1分ぐらいです。1分半ぐらいでワーッと、なくなる仕事は「こんなの、こんなの」と言ってみて。

一応、僕がいつも例として言っているのは、駅の改札の仕事ですよね。ここにいる人はたぶん、駅の改札がまだ手切りだったとき、ハサミでチョキチョキ、あのスピードを競っていたとき。もうなんか苛立った兄ちゃんがカチャカチャ言わせながらうるさいときがあったじゃないですか。あれを知っていますよね、みなさんね。知ってるでしょ? ちょっと手を挙げ見て。

(会場挙手)

そうそうそう。実はあれ、高校生というのはけっこう微妙で、中学生は知りませんからね。小中学生に「改札の仕事が一番典型だ」と言っても「はぁ?」といった感じですから。最初からいないんだから。

改札の仕事、あれがどうなったかというと、いなくなりましたよね。改札のお兄ちゃんね。あれが全国各地、もっと別のところでガンガン起こると思います。この10年間。ではなにが先になくなるか、ちょっとやってもらいましょう。いきましょう。3、2、1、どうぞ。

(ブレストタイム)

“車掌さん”は生き残れる?

そこまででかなり頭の体操ができて、頭がやわらかくなっていると思うのですよ。ちょっと1つ議論してもらいたいことがあるの。先ほど鉄道の話をしたじゃないですか。改札の切符切りがなくなりましたよね、と。

次はね、実はオックスフォードの調査でも、ハーバードの調査でも、かなり一番先になくなると言われている仕事の中に、レールの上を走る列車の運転手、これが出てくるわけ。それはそうですよね。今だってゆりかもめ、あのモノレールなんかもう運転手はいませんからね。だからいないと。

それでね、「ほかの駅員はどうなのよ?」をおもしろいから議論してもらいたいのですが、僕がみなさんに投げかけたいのは車掌なのですよ。車掌さん、これはけっこう微妙です。どう思います?

できたら本当は2人で組んでディベートしてもらいたいのですが。片方が絶対なくなる派で、もう片方はなくならない派で意見を戦わせるような。それをちょっとシミュレーションでこのグループでやってみてください。

これを徹底的に議論していく中でわかることは、要するに残る仕事はどういった特性を持っているかということなのよ。つまり、2つ目のなくなりにくい仕事というものの要素や雰囲気が、これを議論すると出てくるわけです。

ちょっとやってみて。車掌の仕事、どうですか? 1分です。3、2、1、はいどうぞ。

(ブレストタイム)

たぶん、みなさんの議論の中でも出てきてはいますよね。経験した人はわかると思いますが、例えば山手線でもいいのだけど、朝の通勤のときに「気分の悪くなったお客様がいらっしゃいます」といったときの対応ね。あれこそが想定外ですよね。あるいは一部、板挟みもあるかもしれません。

僕は新幹線で京都から東京へ向かっているとき、のぞみにもう100回と乗っていても初めてでしたが、航空機のような感じで医者を募集している。なんだろうと思ったら、病名までは言いませんでしたが何号車で病気のお客様がいらっしゃって。それで結局、名古屋とかではなくて途中駅で止まりました。そこから搬送されたのだと思うのですよね。

このような対応が、果たしてロボットにできるか。センサーとなんとかで……といったことをやったときに、すっごくコストがかかりそう。つまり、人間が1人いるほうが、はっきり言いますが、コストが安いわけです。わかりますね。ここがミソだと思うのですね。

板挟み問題を解決するというのはかなり高度なようですが、想定外のことが起こったときに、すべてのケースを読んで、それにオートで対応できるような設備投資を持ったら、それがロボットであろうとなんであろうと、ものすごくコストがかかる。だったら人間1人がやったほうが安い。

巨大な自動販売機「コンビニ」が人間を雇うわけ

みなさんわかると思うのですが、コンビニというのは、業態自体が初めから巨大な自動販売機です。要するに、本来は人間を置きたくないのですよね。やむをえず人間を雇っている。

では、人間はなんの仕事をするかというとね。スーパーなどでバイトをしたことがある人はわかると思いますが、あの商品というのは同じ商品が売れた場合に、前からこうやってお客さんが取っていくので、あとの商品、要するに同じ商品が奥になっちゃうわけですよ。

でも、奥になるとなんだか古そうな気がしちゃう。古くはないのだけど、お客さんは前のものから取りたいのですよ。それを前だしという仕事があるわけですね。これなんかはやっぱり人がやったほうが安い。

だいたいバイトがやっていますよね。要するに、ちょっとした暇にこうやって前に出していますよね、みんな。あれをロボットにやらせようと思ったら大変でしょ。あと全部を傾けて前に出すというのだって、パンなどはそういうわけにはいかないし。

ですから、そうしたことはちょっとありそうだなということが見えてきたと思うのですよね。

これはすごくおもしろい話で。学校の先生をやっていると、とくにそうだと思いますが、小学生で鉄ちゃんのオタクは、大概は運転手に憧れて鉄道会社に入ろうとするのですよ。

でも入ってみたら、鉄道会社で運転手はとっくにいなくなっていて、車掌しかいなくなっていたというような。これって、今はちょっと笑い話ですが、こうしたことがあらゆるところで起こるのね。

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