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10年後、君に仕事はあるのか?~未来を拓くための「情報収集力」~(全7記事)

藤原和博氏「リーダーこそバカを言え!」 時代が求める“納得解”へ導くブレスト法

学校の先生たちが社会とつながる場を提供し、新しい視点を届けることを目的とした「先生の学校」が1周年イベントを開催しました。テーマは「Think Day~未来の私を考える日~」。セッション2で行われた「10年後、君に仕事はあるのか?~未来を拓くための「情報収集力」~」では、リクルートで数々の新規事業を手がけた後、東京都初の民間人校長にもなったという異色のキャリアを持つ藤原和博氏。子どもたちはもちろん、教師を含めた大人たちに必要となる「情報収集力」について解説しました。

この10年間で最大の社会変化はなにか?

藤原和博氏(以下、藤原):では、一応全編を通じて、ここからはアクティブラーニング型でいきますので、よろしくお願いしますね。

まず、最初に質問。「この10年で最大の社会変化はなにか?」です。これを3~5人の組みになって、ブレストである種の答えを出してもらいます。正解はないと思ってください。どんな答えを言ってもいいのですが。

これ、実は僕が一条高校の校長として、去年も今年も入学式で1年生とその保護者に投げかけた問題です。

まぁ、みなさんも先生ですから、校長になったりして式辞などもやっぱりやると思うのですが、本当にくれぐれもしょうもないお説教はしないほうがいいですよ。誰も覚えていませんから。

僕はつくばの教員研修センターで校長や教頭などを対象に、この7年間で2,000~3,000人に講義をやっていますよね。たまにおもしろいから、校長先生方にこうした質問をするときがあるのですよ。

「自分が小学校、中学校、高校のとき、昔を振り返ってもらって、入学式、卒業式、始業式、終業式のいわゆる式辞というやつで、1つでも覚えていることがある人?」と、こういったように手を挙げさせますよね。そうすると、200人集まっていても3人も手が挙がらないのですよ。

3人が挙がるのもすごいなと思うんだよ。本当にその方がなにを覚えていて、本当にそれを身につけているのどうか、僕としてはもっと深く聞きたいところですがそこまではやりません。いじめになっちゃうからね。

とにかく、そんなもんですよ。校長先生でさえもそうなのだから。生徒が覚えているわけがない。それよりもやっぱりウケを狙ったほうが絶対いいし、世の中と学校で習うことの間にそのときどきのブリッジをかけたほうが絶対にいいと思います。

例えば、LINEが上場するときは、もちろん僕はその話をしました。だって、彼らが使っているのだから。「それがどれぐらいで、いくらになると思うか」まで聞いて。そんなのわかるわけがないですよね。だけどそうすれば、ちょっと新聞を覗いてみようかなといった気になるかもしれないし、親にそういうことを聞くかもしれない。まあ、そういうことなのです。

それで「この10年で最大の社会変化はなにか?」と、これを問いかけますよね。そうすると、もちろん15歳の高校1年生にとっては、ちょっと知識のある方だったら高齢化や少子化といったことを答えがちだと思いますが。

でも本当をいうと、彼らにとって一番の関心は、15歳である彼らが25歳になることだと思いますよ。もう考えられないというか、想像を絶するでしょう。だって、結婚しているかもしれないしね。どんな仕事に就くかも。もう、不安と期待がいっぱいですよね。

不安のほうが強いかもしれませんね。今の子はセルフエスティーム(自分を愛する気持ち)のレベルが低いから。そういうことなのですよ。みなさんには、本当にこれね、世界を揺るがすような10年での最大の変化はなにかということを考えてもらいます。

【ブレストのコツ:1】どんな意見もリスペクト

ブレストで考えてもらうのですが、ブレインストーミングをみなさんもやったことがあると思いますが、正しいやり方でやっていない人も多いので、ここでちょっと覚えておいてもらいたいのが、2つコツがあります。

1つは、みなさんもたぶん知っていることです。ほかの人から出た案は、どんなバカな案であろうと絶対に潰さないこと。ほかの人から出るすべての意見はリスペクトです。嫌いな人から出ようと、どんな人から出てもね。

要するに、嫌いな人だろうと、いけ好かない人だろうと、そういったカルチャーの違う人から出てくる意見というのは自分の脳を刺激します。これが非常にいいのです。

仲の良い者同士でブレストをやるのがいいかというと、絶対に違います。わかりますよね? 親友同士でブレストなんかやったって、いい案なんか出ませんよ。だって同じモードでやっちゃうから。

ですから、違う人同士が集まって、嫌いなやつであればあるほど、その意見に拍手ですね。これがイチ。

【ブレストのコツ:2】最初はわざと意見を外す

もう1つあります。これがすごく大事なもの。たぶん、学校の中でも塾でもあまりこうしたことはやっていないと思います。最初の1、2周に、わざとバカなことを言う。わざと外すということ。要するに、最初にまともな意見を言ったり、正解を言ったり、当てようとしないということなのです。

なぜかというと、今、みなさんが僕の話を聞いていて、例えばメモをしている人は間違いなく正解主義モード。こっちね。情報処理モードなのですね。1、2、3といった感じで要点を書いているわけです。この頭ではいい案は絶対に出ません。保証してもいいです。

要するに、正解を当てようとする頭では、正解のない問題への答えは出てきません。わかります? これは正解がない問題なので、それに対して仮説を生み出さなければならないわけです。

昨日スズカン(鈴木寛氏)がおもしろいことを言っていたのですが、「これからの社会は、正解を当てなさいという問題ではなくて、板挟み問題」という言い方をしていましたね。AとBとの事情が違っているのだけど、これが板挟みになっちゃって、「こっちを取るとこっちが取れない」といった問題を解決しなければならない。

だってさ今、学校で起きていることもそうじゃないですか。いじめの問題1つとっても、正解なんかはないじゃないですか。こっちを立てるとこっちが立たないといったものばかりじゃない。板挟み問題と想定外問題が成熟社会特有の問題なのですね。

リーダーこそバカを言え

そうした問題に対処するためには、正解を当てようとしちゃダメなので、とにかくわざとバカなこと、くだらないこと、まぁそうだな、起こりそうもないこと。もうぜんぜんウケ狙いでもいいです。笑っちゃったほうがいいです。笑っちゃって気を緩めると脳がスッとつながるので。

みなさんの中で、リーダーの方も多いと思いますが、リーダーであればあるほど一番最初の仕切りで「じゃあ、ちょっとブレストしてみよう」「いいアイデアを出そうね」と言ったときに、最初にとにかく正解っぽい、正しそうな意見を絶対に言わないほうがいいです。リーダーであればあるほど、外したほうがいい。わかります?

ただでさえ先生という職業は、その下の者、例えば生徒からすると正解の束のように見られているわけです。そうじゃない? だって、みなさんは正解を教えるから。正解の束、これを外さなきゃいけない。

だから学校で、教室で生徒たちの案をいっぱい出させようとしたら、そういう意味では逆に、正解の束である先生がバカみたいなことを言ったと笑われちゃって、「それだったら俺も言おうかな」みたいな。最初に正解っぽい答えが先生やリーダーから出ちゃったらさ、もう言わないよ。若いやつだったら。嫌だもん。だってそこで変に外して評価下げるの。わかるでしょ?

そのようなことから、今日はみなさんは先生と名のつく方なので、5年も10年も先生をやればやるほど、自分の正解主義モードを外すということが下手になっちゃう。でも、外さないとクリエイティブには絶対になれないし、自分の人生や、あるいは子育てなどを正解主義でやっていたら本当につまんない人生になっちゃいますから。

だから、このモードを外す。思いっきりバカなことから言うということをやってみて。チャレンジです、これは。自分の本当に生真面目な性格に対するチャレンジだと思って。いい? 

時代が求めているのは「納得解」

では、3~5人です。別に横の4人じゃなくて縦に向いてもいいし、3~5人ね。3~5人。ということで、10年、この10年ですよ。最大の社会変化はなにか。いってみましょうか。3、2,1,はいどうぞ。

(ブレストタイム)

そこまでにして、その位置のままでいいや。その位置のまま、ちょっとこっちが見えるように向いてくれればいいです。これをおそらく、今日は7回ぐらいやるので。

今のブレストでなにか言うじゃない。言ったときに仲間の人たちが「ああ」みたいな感じで、納得感の高いアイデアを言った人がいると思うのですよ。わかる? 自分が言ったことに「ああ、そうよね」「それは気づかなかった」といったように。これが納得解というやつです。正解の当てっこではないんだよね。

納得解というのは、自分が納得し、かつ関わる他者を納得させられる解で、今かなり脚光を浴びつつあるワードです。僕は20年前から言っている言葉なのですが。今度、つくばの小学校の教育研究で丸ごと1冊『納得解とはなにか?』という冊子ができて、20名ぐらいの教育の研究者がそれを徹底的に突き詰めるといったことが行われるようです。

要するに、情報処理力を使って正解を早く正確に当てる。その前に正解を出さなければなりませんよね。でも成熟社会で、先ほどから言っている板挟み問題や想定外の問題には納得できる解が必要なのですよ。それを縦横無尽に、頭をやわらかくしてどのぐらい紡げるか。このことを情報編集力というわけです。わかりますね。これがキーワードです。

いずれにしても、この納得解がいっぱいいろいろあったと思いますが、少子化や高齢化というのは日本特有ですよね。全世界を巻き込んではいません。

11億人もの国民をID管理するインド

この間、僕は3泊5日でインドに行ってきました。なぜかというと、インドは今すごいことをやっているのです。僕は本当に信じられなかったので確かめに行ったのですが、虹彩認証と指紋の認証によって、11億人もの国民のIDを取っちゃったのですね。

これによってなにが起こるかというと、もうそのIDにその人のクレジットの情報が紐づけされちゃっているのですよ。だから例えば、僕が不動産会社に「5,000万のマンションを買いたいから3,000万円の借金をしたいんだけど」と来るじゃないですか。

その人が僕にiPadを向けます。目のようなマークがあって、そこでカシャッと写真を撮るじゃない。それで彼がOKすれば、もうたちどころに、この人が過去にどういう借金をしてどういう返し方をしてきているかが全部出ちゃうの。だからもうその場で、要するにこの人はいくらクレジットができるのかというのが出てしまう。

なぜこうしたシステムになったかというと、まぁこれを話すと長くなってしまうのですが。要するに、インドはやっぱり、社会主義をとっていた時代にすごく組織が腐っちゃって、間で全部マージンを抜いちゃうというか。

例えば、100万円の補助金を予算として国がとったとしても、もう現場に落ちるときには1万円や1,000円になっているような。間で官僚が全部抜くような社会なのですよ。

だから、「直接ユーザーに届けないとダメだ」ということになった。どんな貧乏な人でも、スマホさえ持っていれば、IDさえ持っていればそこに入金されるというのですね。入金、もしくはお金じゃない通貨でそこに振り込めば、福祉サービスが100万円分使えるじゃないですか。

そうしたことから、国としては必死の思いで、しかも高額紙幣を刷らないという無茶苦茶なこともやって大混乱もしたのですが、まぁ正しいのですよね。そこで、不動産業でおもしろいことをやろうとする会社の社長に投資しようかどうかというので、ちょっと行ってきました。あとでその話も出したいのですが。

それはともかく、インドでは11億~13億人の平均年齢が27歳なのです。日本は何歳だと思います? 平均年齢。ちょっと口々に言ってみて。これぐらい、みたいな。はい、どうぞ。

(参加者らの声を聞きながら)……うん、47歳です。47歳。要するに、20歳も開きがあるのですね。そうすると、インドに高齢化問題はまだありませんよね。

最大の変化は「スマホで50億人の脳が繋がったこと」

というわけで、世界中を巻き込むという意味では、これはもう有識者の意見がはっきりとしています。なにかというと、最大の社会変化は、世界の50億人が10年以内にスマホでつながるということです。

携帯でつながるのであれば「この五反田からアフリカに電話をかけられるじゃん」で終わっちゃいます。スマホでつながるとは、動画でつながるということです。つまり、ほとんど50億人の脳が擬似的につながるような状態になっていくわけです。

それがおそらく、2050年ぐらいまでに100億人までつながると言われています。100億人の脳細胞がつながったときになにが起こるのかということはまだ誰もわかっていないのですよ。人類が次の段階へ進むとも言われているのです。

これはもう数10年前に書かれた『Global Brain』という本で予言されています。要するに人間の脳がそれだけつながった状態になっちゃうわけ。

The Global Brain: Your Roadmap for Innovating Faster and Smarter in a Networked World

昔だと、脳をつなげるというと電極を刺し込んで線をつなげるような。そんな必要はないじゃないですか。わかります? もう動画でつながっちゃうとそういった状態になっちゃうわけです。

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