2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田:それと、この問題を考えた時に、正規、非正規問題が起こる一方で、男女間の格差は縮まっているのです。
具体的に言うと、管理職は女性の率が上がっていますよね。平均というか、全体でみると格差は縮まっています。でも、感覚としては違うと思うのです。同じような条件で働いてきたのに、差がついていると。客観的な数字とリアルな感覚が、かなりかい離しているというのが実態です。
同一労働同一賃金というのはどちらかというと、結果としての公平、全体の賃金が、どう公平に結果として出されているかという問題ではなく、賃金の決め方の問題です。だからまずは格差意識に対して働きかける必要がある。そういう意味では、同一労働同一賃金は極めて重要なものだと思いますね。
ただ、先ほど申し上げたことからお分かりになりますように、結果として賃金格差が開くかどうかは、また別問題ということが言えると思います。
秋山:基本的な考え方として、同一労働同一賃金、同一価値労働同一賃金のような形にしたほうが、格差意識はおそらく解決できるだろうと。
山田:1つですね、次のページ、真ん中ですが、静態的公平と、動態的公平と書いています。途中でも言いましたが、同一価値労働同一賃金、同一労働同一賃金というのは静態的な公平なのですね。その時の賃金を評価していくこと。基本的に職務給というのはそれになじむと言われていますが。
それに今も、ポストをポイント制などで評価して、そこから賃金をつけるわけですから。これは、その人の生涯の賃金などとは別なのですね。
例えば、このたび同一価値労働同一賃金、同一労働同一賃金によって、正規、非正規の格差が是正されたとしても、いわゆる非正規の人がずっと非正規で働き続ければ……、中間的な仕事や重要な仕事はとくに日本の場合はまだ正社員にやらせようという考え方が強いので……、同一労働同一賃金を入れれば少し賃金は上がるかもしれませんが、それをやったとしても、非正規はあまり賃金が上がりませんよね。
山田: それで、ずっと非正規の立場で働き続けると、生涯賃金はやっぱり上がらないのですよ。だから単純にその時の同一労働同一賃金だけによって不公平感が無くなるかというとそうじゃない。
たとえばちょっともう1回戻していただいて、これが賃金カーブを示していますが、正社員の場合はバーッと上がって、でもこれを全体の面積で計算しますと、いくらだったかな、本に書いてありますのであとで読んでください。
(会場笑)
山田:2倍くらいあるのです。だからそういう意味では、もう1回見ていただきたいのですが、この同一労働同一賃金だけで、すべての不公平感を解消することはできないだろうと。
それと、もう1つ重要なのは、人材マネージメントの研究でもよく言われる話で、過程が公平ということが大事なんですよね。
いわゆる成果賃金を入れる時に、「しっかりコミュニケーションをとれ」とよく言われますが、実際実務的にも、事前にしっかりコミュニケーションをとって、「これはこういうことだよ」と言っておけば、ある程度は不満でも仕方がないかなということになりますが。
いきなり結果だけバーンと出すと、これは不満が出てきますよということで、過程を見えやすくするとか、プロセスをしっかり踏んでいくことによっても、格差意識は軽減されるということです。それとか、企業としての目的を共有していくとか、同じ方向を向いていくとか。
そうしたことをやるということでも、公平感はつくられるのではないかなと。疎外感というか、上から勝手に仕事が落ちてきて、やらされるような感じが強いと、やっぱり不満が出てきますから。そういった意味では同一労働同一賃金というのは、1つの重要な公平感を作る構成という意味では重要なのですが、それだけでは不十分なので、そういったものをいろいろと組み合わせていかないと、格差意識問題は改善できないという話です。
秋山:これ、不公平感が高まると、ある種社会不満みたいな、そういう世界にまで行くなと。あんまり日本でいうとリアリティーが持てませんが、そういうこともあり得るということですか?
山田:日本だとそういう意味では、まだそこまではということなのでしょうが、でもあんなにいろんな事件が起こってね。1対1に結び付けることはよくありませんが、やはり職の環境が悪かったということが引き金になっているケースがちょいちょい出てきていると思いますし。
山田: ある意味、世界で見るとまさに今その問題になっているわけですよね。もう「まさかアメリカで……」というようなことですし。
秋山:でも、そうやって考えていくと、ある種今回の同一労働同一賃金のようなものを上手に使いながら、格差意識のようなところまではある程度解消できればよいのかなといった気はいたしますが。
秋山:私からはここで最後の質問をして、みなさんにこのあと質問をしてもらいたいと思います。
ここまでやっておいて、ぶっちゃけの質問もしたいのですが。このようにいくら分析しても、これからAIが出てきて、おそらく頭脳労働、知的労働も本当にものすごく代替されていくだろうと。
特に私の仕事の近いところである弁護士さん。弁護士をやっているわけではありませんが、弁護士に近い仕事やっているのですが。企業は弁護士に大きなお金を払っておるんですね。いらっしゃったら、ごめんなさい(笑)。
でも、ほとんどは物調べというか判例調べの下作業です。それを若いやつが延々とやっていて、それでむちゃくちゃチャージされるんですよ。でも。大半がその仕事の分なんです。もうぶっちゃけて言うとね、きっと彼らが今やっている仕事は、AIが3秒でやってくれる時代がやってくるという感じになってくると。
こうした状況になってくると、きっと知的労働者、公認会計士の方もいらっしゃるかもしれませんが、不正があるかないかなんていうのは過去のバランスシート、そのほかのデータをドカッと読み込ませて「不正があるケースはどれ?」とやったら、ほとんどもうそれで傾向がバチっと出てくるから、ベテランの会計士の能力なんかほとんど代替されてしまいそうな感じです。
山田さんがこの幸せな絵を描かれて、「このへんで職務型!」とか言うてもですね、その機能がどんどん、いきなり仕事がなくなって大変とか、そんな時代がまさに到来しそうな気がしておるんですが、「そんな時に会社ってどうやって会社やっていけばいいんでしょうか?」という質問を山田さんにしたいので、その前に中村さんがどう思うか言ってください。この人はもうバリバリのリケジョですから。
中村:はい。ちょうど「Technologyと2030年の『働く』」というプロジェクトの成果をこの前お披露目したばかりなのですが、「みんなにとって公平な待遇を作る」という社会に向けては、ポジティブな話という気がしています。
この話はどこに問題意識を置くかによって結論がずいぶん違うと思うのですが、既得権者である正社員は高い賃金をもらっていて、そうではない非正規の人が不合理なまでに低いということを問題だととらえるなら、正社員サイドのところがある種守られている。
秋山:あそこ壊滅すると(笑)。
中村:壊滅的かどうかとは別に、市場原理に晒されていく中で一定の数が適正化されていく。一方で、今すでに4割いる人たちが、そういう意味でいくと、正社員が1割減れば5:5になって、ほぼ同じぐらい、同数ぐらいになっていく中で、そこのバランスを取った制度が普及しやすくなります……今日のテーマに照らし合せた場合は。
秋山:今日の話を照らし合せて考えてみれば(笑)。
中村:一方で、そういうことも含めて、正社員サイドも先ほどのリンダ・グラットンの話にもありますが、キャリアチャンジをどこかのタイミングでは余儀なくされていく時代になっていきますから、待遇が一定のところでちゃんと次のところに移れるという環境をつくっていく必要もあります。
秋山:なるほど。そう考えたら、今日にはぴったりな話ですね。そのとき社会がどうなってるかはちょっとわからないところもありますが。
中村:最近アメリカの話も論調が変わってきています。昔は75パーセントとか47パーセントもの仕事がなくなって、みんなが失業すると言われていましたが、直近でいうと、仕事がなくなるのは5パーセントぐらいと言われていますから。
弁護士さんなどは比較的ダイレクトに当たってはいるのですが、多くの人はたぶんいきなり失業するというよりは、仕事の半分がなくなったり、手取りが何割下がってといった話なので、その中でどのように自分の仕事や役割を変えていくかというところに直面するのかなと思います。
秋山:ありがとうございました。山田さん、お時間を与えておりましたので、その間に考えていただけたらと思っておりましたが、こちらいかが解釈されますか?
山田:最初はちょっと逃げの答えをします。日本はむしろウェルカムなのですよね。人口がどんどん減っていきますから。
秋山:ああ、そっか。
山田:アメリカとは違うのです。「だから、むしろどんどん進めたらどう?」というのは、これはちょっと逃げなのですが、10年ぐらいはそれで大丈夫かなと私は思っているのですが。ただ10年か、20年かはわかりませんが、いずれはやっぱりそこは追いついてくるわけで。
中村さんがおっしゃったことにも関わるのですが、衝撃的な試算をイギリスのオックスフォードかどこかの研究者の方が出された。47パーセントがなくなるとか。ただ、あれは個別のタスクだけ見ているのですね。
ところがOECDによると、仕事はいろんなタスクが組み合わされているものなので、そこの部分で計算し直すと9パーセントぐらいに減るという、そういう話なのです。
私もAIに関してはそんなに詳しくないので、聞きかじりぐらいにしかわかりませんが、基本的には既にある過去のデータをたくさん使って、たぶんこれまでより複雑なものが解けるようになるということなのでしょうが。
逆にいうと、経験のないことに対して創造力を働かせてやっていくというところはね、何をもって創造とするかなどいろいろあるでしょうが、やっぱり人間にしかできない部分というのはあると思います。
山田:あの試算にもありますが、ヒューマンな……具体的には介護士など、そういった仕事は最も代替しにくいわけですよね。
もう1ついうと、ジョブのように、アメリカ的な切り出しをやりやすいところは、簡単に代替されやすいと思いますが、日本はある意味曖昧なことをしているがゆえに、おそらく相対的には代替されにくいのではないかというところがある。
それと、これは人によって違うのですが、AIだけではなく、すでに機械というのは、いろんな機能だけで言えばどんどん人間を追い抜いていっているわけです。脳の一部もやっぱり機能としては今後AIによって代替されていくのでしょうが、これを取られていくとするよりも、うまく使うという考え方ですね。
言葉が違うかもしれませんが、AIに代替されるのではなく、AIと補完しながら仕事をやっていくやり方です。
そこはおそらくAIの作り方や仕事の全体の組み方によっていろいろ工夫はあるのだと思います。まだはっきりそれが見えていないから、逆にものすごく不安になって今そういう話になってしまっているのだと思います。もうちょっと具体的になってくれば、どうそれを使っていくのかというところが見えてきますので。
機械化によって仕事がどんどん取られてきた過去であり歴史であり、「今回こそ違うんだ」と言われていますが、でも昔から絶えず仕事を奪われてきていますし。
だから、私はそういう意味では楽観的に考えています。むしろそういった発想で仕事をデザインしていくということを考えていけば大丈夫じゃないかと。これがまだ成り立つのではないかと。むしろ日本的な、いろんな経験をして総合的な人的スキルを持ってること自体がうまくいくのではないかと。そういうふうに逃げました(笑)。
中村:私、今の山田さんのおっしゃる通りだと思っていて。先日、ワークス研究所で「Technologyと働くの未来」をやったときに、アメリカのカーネギーメロン大学のAI研究の大家であるTom Mitchell教授に来てもらったのです。
Tomと、日本はこの「テクノロジー×働く」ということにおいて何が強いのかという話をした時に、実は日本人が変化に対してめちゃくちゃ適応力があるという話をしたのです。
なぜそういう話になったかというと、結局日本では企業内でどんどん異動させられるので、ジェネラリストな人たちの、まったく違う職務やまったく違う部署に行った時の適応力の高さ、そこでパッと成果を上げていく力というのが、とても強いものじゃないですか。
そうした意味でいくと、先ほど山田さんがおっしゃっていたように、いきなり自分の仕事が1から0になるのではなく、5パーセントや10パーセントの自分の役割が違うものに変わっていくという、そういう段階的な変化がおそらく日本人が持っているもともとの職業能力にとても適性がありまして。
そこからいうと、私も楽観的というか、適応できるのではないかなという気がしています。
秋山:私はまったく違う意見なのですが、今日は司会なのでこの辺にさせていただこうと思います(笑)。
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