2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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小林佑樹氏(以下、小林):そろそろお時間なので、最後に今までの話を聞いた上で、お3方のお話を聞きたいのですけど。クラウドファンディングによって、将来的にアパレルの仕組みや、業界全体がどのような方向に変わっていくのかをお話しいただけますでしょうか。
有働幸司氏(以下、有働):先ほどの話と重複するんですけど、ファッションの世界だとファッションシステムがあります。ショーがあって、プレゼンテーションがあって、その後展示会があって、受注をいただいて生産をする……という流れの中、クラウドファンディングを利用することで、どんな人でもどんな時でも、その思いだけで立ち上げられるのは本当にいいプロジェクトです。
自分も今回が初参加なので、どれくらいのリアクション、結果が見えるのか、増田さんの話を聞いてすごく思ったんです。とりあえず、いろんな人がいっぱいエントリーしたほうが、楽しいものができる。だから、楽しいクラウドファンディングになっていかなければと、ファッションに関しては思うんです。
そういうきっかけでどんどん広がっていけば、作る人、買う人、応援する人の架け橋として、プラットフォームにもなる。もっともっとファッションの中でも金額関係なくやれば、広がっていくんじゃないかなと思いますね。そういう物を壊せるような仕組みになってくればいいかな、と思います。
小林:安藤さん、いかがでしょうか?
安藤龍司氏(以下、安藤):大きいところでいうと、テクノロジーの開発、イノベーションには期待をしています。光る服や、浮く服、夢のようなものが出てくるのではないでしょうか。それらの開発資金として、クラウドファンディングが一役を担うオプションになり得るかと。
小さいところでは、チャレンジすることができない位置にいる人々の入り口になる。「自分もやってみようかな」となれる。先ほどのお話にありましたけど、10万円から20万円で、専門学校1年の子がショーやったら立派だと思うんですよね。
自分の資金で、自分で箱を借りて。そこをサポートするツールになると、埋もれている個性も、世の中に出ていくかもしれない。そこでなにか繋がって、飛躍のきっかけになり、ファッション業界自体が盛り上がっていくのかなと思います。
有働:教育にするのは、よくないですか? 今の話を聞いていて、小さい子が自分の作品をそこに出して、買ってもらったり応援してくれたりが喜びとなって、物づくりのおもしろさに繋がるのが、さらにいいなと思いました。
安藤:僕が卒業したバンタンデザイン研究所の話なんですけど、まさにその領域に踏み込んでいるようです。少額の規模から。自分の学期ごとのテーマを、クラウドファンディング使って少額でも資金を集めて、それを足しにする。通じてマーケティングを学べますよね、学生たちが。テストマーケを活用したエデュケーションも、今後は期待できると思います。
小林:今在学している方とか、卒業したばかりの方とか、挑戦の場所としてもいいと思います。増田さん、いかがでしょうか?
増田智士氏(以下、増田):クラウドファンディングでアパレルの仕組みや業界全体となると、相当規模が大きいので、正直僕は難しいと思っています。「クラウドファンディングやって上手くいきました」「1,000万円達成しました」と。
そのブランドが未来永劫続くかどうかは、クラウドファンディングのプラットフォーム自体は保証してくれないわけですよね。やっぱり自走するしかないですよね。なので、ツールの1つでしかないと僕は思っています。それは、ファッションビジネスの観点です。
ファッションビジネスより、みなさんおっしゃったような「ファッションエンターテイメントであるべきだ」と思っています。みんなが100人中100人を喜ばせることは難しく。1人でも楽しめたり、喜びを分かち合えたり、そういうものが今のファッションビジネスにはなかなかない。カルチャーが作られなくなってきている。
そういうエンターテイメント性やカルチャーを、クラウドファンディングが担っていく。ファッションって本来、着て楽しいもの、作って楽しいものだと思うんです。ビジネスじゃない観点での繁栄を期待したいですね。
小林:ありがとうございます。テーマとしては以上となります。お3方に質問したい方がいましたら。
質問者1:今回は貴重なお話、ありがとうございました。私は群馬県で養蚕をやっている農家なんですけども。昔は養蚕とか綿とか、それが農村を支えていたというか、農村に緑を形成されてたと思うのですけども。クラウドファンディングによって、徐々に自然繊維とか天然繊維とか、有働さんの亀田島とか、そういうかたちで伝統織りなどが見直されている。熱い印象を受けるんです。
自然繊維や伝統織りに対する、お3方のお考えや思いとか、「今後こういう活用してきいたい」など、言える範囲でうかがいたいです。反対に「あまり興味ない」という意見もあると思うんですけど、そのあたりをお聞かせいただければと思います。
有働:世界的に注目されていると思うんですよ、オーガニックなもの。ただ、リアルにアパレル業界にいると、100パーセント作ると相当高級なもの、かつ国内でそれをやろうと思うと難しいです。特に綿なんて、1枚作るのに相当な場所が必要だったりします。
純国産って、けっこう難しい。そんな中、国内で作れるたころも利用しつつ、海外のものも利用して、うまくミックスするようなやり方がいいと思う。ただ、その哲学というか、そのものに対する姿勢は、これからますます広がるんじゃないかという気はしますね。
安藤:僕も学生時代はビジネス学科で、デザイン学科と一緒に有志プロジェクトをやっていたんです。伝統織物とか伝統工芸など、若手ファッションデザイナーが生地を使ってアレンジして作る企画にも携わっていました。
「伝統を残していこう」というプロジェクトはいっぱいあります。地方創生じゃないですけれど、社会貢献的な取り組みは今後も増えていくでしょうし、ファッション業界も向き合っていくことだと思っています。
共感する人は多いだろうとも感じています。クラウドファンディングという視点で言えば、声が届けば、「それを残したい」「自分も着てみたい」「いつもより高くてもその服を着てみたい」という人は手を挙げると思っています。可能性を非常に感じます。PRのお仕事があればお請けしますので、ぜひ(笑)。
増田:僕は伝統工芸も好きで、転々と工場を回ったりしているんですね。どんどん疲弊しているのは、目の当たりにしてます。一方で、変化は重要な要素だなとも思っています。時代は流れています。頑なにやり続けるのも大事ですけど、柔軟にやらないといけない。1つヒントになったのは、Knotの時計です。
今まで伝統工芸、例えばCOOL JAPANといってお箸を世界に持っていっても、それを使う文化がないところで啓蒙しても難しいですよね。お椀も使わない文化なのに、「お椀です、どうぞ!」って難しい。でも、時計の一部に伝統工芸があったら。世界共通で使える。
そこで、京都の組紐とうまくコラボレーションした。作るの、本当に大変だったんですけど。なんとか18ミリという幅に、文化として今まであった組紐を作ることができた。いい意味での変化です。頑なに「組紐だけを市場に広げよう」じゃなくて、「この技術をどううまく変化させるか」という発想の転換が大事になってくると思います。
小林:それこそ養蚕でクラウドファンディングできればいいと思います。ほかにいらっしゃれば。
質問者2:貴重なお話をありがとうございました。同じく東京モード学園出身で先月行われた東京コレクションで、トップバッターで参加させていただきました。僕も東京コレクションの時にクラウドファンディングをやりました。
大した金額ではないですけど、成功しました。でも、9割以上が知り合いで、知り合いでない人には支援いただけなかったんです。知り合いでない人に支援いただくためにはどうやっていったらいいか、おうかがいしたいです。
小林:増田さん、いかがですか?
増田:僕が思っている大事な要素は、先ほどみなさんおっしゃられていましたけど、「信念」「その人の思い」だったりするんですよね。まず、自分が本当にやりたいかどうか。「なんとなく今トレンドだからやりました」では誰も共感してくれない。軸となる信念が必要です。
僕らはどちらかというと、信念というよりアンチテーゼで主張していました。心底「これがやりたい」は、なかなかないんですよ。それが見つかった人は、人生が楽しいだろうなと思っているんですけど。
この世の中では「ここが大嫌いだ」という負のオーラのほうが圧倒的に強い。社会運動も負のオーラから出てますよね。それで時代が変わってきていた。僕も「今のワイシャツが大嫌いだ」と。……すみません、ワイシャツ業者さんいたら申しわけないですが。着せられている感、義務的感、格好良くない。これを変えたい。
「これが最上だ」を一般の人に着てもらいたい、というアンチテーゼが明確にあったんです。そのために自己を投じてやったために、共感してくれた人がいたのかなと思っています。
小林:情熱があるとして、知らない人に対して、それをどうやって外に出しているんですか?
増田:アンチテーゼ、負のオーラって伝わりやすくてですね。「XXは嫌いだ!」って言ったら「お前何様だよ」という話になってしまうんですが。裏側では、そういうものを持っていて、そのために「僕らこうあるべきだ」を提示する。そうやって生まれてきたものは、メディアも取り上げてもらいやすいですし、みんなにシェアしてもらいやすいんですね。
同じシャツでも、新しいものに見えるんですよ。なにか違うし、格好いい。後は、それが盛り上がっている雰囲気作りが大事です。どんどん賑やかに、イケてる空気感を作る。メディアさんの力も借りつつ、自分たちを発信、あるいはプレスリリースとかもやってきました。
安藤:自分の作品を自信を持っていて、その実現のためにお金が欲しいと思ってやっていると思うんです。「ここがすごいんだよ」は見ればわかるし、それ以上のことはないと思いますが、一方で自分事化してもらうのがポイントなんです。「業界的が気になる話なのか、新たな気付きなのか、潜在的イシューなのか」など付加価値に繋がる部分を意識する。
その意識ってどうアウトプットされるかというと、「この企画を成功させることでなにがどう変わるのか。デリバーしたいものはなにか」デザインやコンセプトの手前にある背景を見せていく。それを自分でどうやって伝えるかの戦略と、他人から見た印象もセルフブランディングしなくてはいけません。
有働:先ほど言われた「ショーをやりたい」でいうと、ショーをやるだけではやっぱり持続しない。1回ポッキリで終わっちゃう。そうすると、ブランドとしての価値が……。持続して長くやっていくことでファンもついて、「その人のショーらしいね」を作っていくのが大切だと思うので。
それであれば、ファッションビジネスになるんですけど、自分の作った服を置いてもらうお店に、服に対する思いを直接話す。そのお店が共感してくれたら、そこに置いてもらう。最初は難しいかもしれないですけど、成功すればお客さんと対面でつながっていく。
そこでさらにSNS、ネット上で広げていくほうがいい。洋服は、もちろんビジュアルも大切なのですけども、袖を通すものです。まずは対面販売を大切にするほうが、僕は重要かと思いますね。
小林:ありがとうございます。後は1人ぐらい質問できるんですが、誰かいらっしゃいますでしょうか? 大丈夫ですか?
そうしましたら、本日はこれにて第1部、第2部は終了になります。第2部にご登壇いただいた方々に、もう一度大きな拍手をお願いします。
(会場拍手)
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