2024.10.10
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麻生太郎がタンス預金と相続税の関係について語る(全1記事)
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安住淳氏(以下、安住):高齢者のかたには大変申し訳ないんだけども、金融資産を見ると、70代の方が我が国全体の金融資産の25%を持っている。60代の方が32%で、足すと57%ですよ。1400兆円近くある金融資産の6割は、60代以上の方が持っていると。今日こうしてこの委員会を見てもですね、委員に並んでるみんなの財産を足しても麻生大臣には敵わない可能性がありますね。
(議場笑)
安住:まあ麻生大臣の場合、他の高齢者と違って大変なご資産を持ってらっしゃるんだと思いますけれども。
そこで、資産課税というのはこれまで、ある種タブーな議論というか、死んだ時の税をどうするかっていうのは、そう熱心に議論してきた経緯はないんだけれども、高齢化社会のなかではそうもいかないと。私が大臣のときに、ここはみんなで考えようって話をして、検討を始めた時だったんです。
税収全体から見ても、相続税は全体の1.8%、資産課税全体で見ても、固定資産税とかを入れても17.5%なんですね。だから多分ここは、60代の方々が圧倒的に金融資産を持っていると。
これをどうしていくかって話なんだけれども、ひとつ25年度の税制改正から、教育資金のことでお孫さんと子どもさんに贈与をしたら、1500万円まで非課税ですよと。で、信託銀行に預かってもらえば、そこで出金のチェックをしましょうということでしたね。
これに関する統計の数字を昨日、主税局に行って教えてもらいました。役所じゃなくて信託協会かなにかが作ったもののようですが、契約件数が3000件だったものが、5万4000件に跳ね上がってるんですね。これを使っている方がこれだけ増えたと。
やはり、知恵と工夫を国がちゃんとやれば、こういう眠ったお金っていうのは、まあ失礼ですが大変苦労されて稼いで金融資産を持っておられる65歳以上の方が、社会にこのお金を、自分のお孫さんも含めてお使いになったりするということのヒントはここに、この数字にあると思うんですよ。もう本当に右肩上がりですから。
と同時に、やっぱり相続・贈与のあり方というのは、これから見直すべき一つの重要な鍵だと思いますけれども、大臣はどのように思いますか?
麻生太郎氏(以下、麻生):これ(教育資金の非課税措置)は役所のなかではけっこう問題でした。これを押し通すのは、交際費課税のときも面倒くさかったですが、こっちのほうもかなり面倒くさかったという記憶があります。
今は更に増えまして、(信託銀行の契約件数は)6万5000件までになりました。額も4000億円を超えるほどになっておるんですが……。(相続に関して多いケースは)老老資産相続なんですよね。
90歳が65歳の人に遺産を相続したって何に使うんだって、またそれを貯めてじーっとしておく、っていうのが貯まりに貯まって、個人金融資産1600兆円と呼ばれるほど膨れ上がってるんです。
これが、嫁にはやりたくないけど孫にはやりたいとか、いろんな個人感情を含めまして……いろいろなご家庭がおありですから。
で、孫にやるとなれば信託銀行に預けてっていうことになりますんで、こういったことをやりますと、その孫が使うかは別として、そこは間違いなく消費に回りますから、消費に回れば必ずGDPに出てきますんで、そういった形のほうが私は宜しいと思ってます。
これは知恵の出し方なんだと思いますんで、この額を増やせとか、もっといろんなやり方があるんじゃないかとか、実に様々なご意見が最近は出るようになってきていると思います。
私どもとしては、タンス預金だけでもウン十兆と言われておりますんで、また聖徳太子(初代千円札)のまま返ってこないお札が何十兆円ありますんで、そのようにタンスに寝ているのを含めまして、そういったものを外に回るようにしていく知恵を、我々どもも出していかねばと思っております。
安住:これ(教育資金の非課税措置)、実は平成27年の12月31日までの時限でやってるんですよ。この先はやっぱり、大臣は延長したほうがいいというお考えですか?
麻生:これは安住先生、私どもはこういうのを他のものに移し替えても構わんとは思ってるんですが、まず私どもはこれを景気対策の一環としてやっております。
消費増税等々での落ち込みを考えてこれをやらせてもらって頂いておりますんで、今カネを使ってもらう、というためには「時限だ」と言わない限りはなかなか使って頂けないかな、という意識は正直なところありました。
しかし、今年いっぱいで消費増税の形が見えてきますんで、その上で改めて考えさせていただきたいと存じます。
安住:私はね、これは続けたほうがいいと思います。銀行に眠ってるくらいだったら、お年寄りのおじいちゃんやおばあちゃんがお孫さんに使ってもらえるようになれば、それは息子さんたちは楽ですよ。
1500万円あればですね、地方で働いてたって、東京の私立に無理しなくてももしかしたら行けるぐらいの仕送りにはなりますからね。そういう意味では、こういうことが大事だと思います。
安住:もう一つ哲学として、これはもしかしたら麻生大臣と違うかもしれないんだけれども、お金持ちの子供さんがお金持ちのままであり続けるのがいいのか、それとも一代で作った人の財産は子供とは関係ないと、社会に還してもらって、またその世代で成功した者が富を得ると。大臣はどちらの社会がいいと思いますか?
麻生:私は基本的には「保守」というのが存立の基盤、基ですから、……まあ自民党がそう言ってるそうなんですけれども。少なくとも、親が税金を払って残ったカネを死んだら寄越せっちゅう話ですから、相続税ってのは。
脱税したカネでもなんでもなく、税金を払っていたのに死んだら国が残りを取り上げるっていう。相続税を払う人の立場から言ったら、「なんの権利があってやるんだねそんなこと、二重課税も甚だしいじゃないか」と、お腹の中では一人の例外もなくそう思ってると私は思います。
したがって、始めのうちにいろんな形で、相続税というものではなくて、別の形でいただくものはいただかれたほうが……先にですよ? 今言ったような間接税とか、さっきいった子どもへの教育資金とか、そういった形でやっといたほうがよほど良いんであって。
今アングロ・サクソンはすごくて、今度カナダも相続税を無税にしますんで、そうするとこういうのがずーっと出てくると、これはきっと日本から国籍を移す人がいっぱいでますよ。そういったような形になってくるのは、私どもとしてはいかがなものかと思いますんで、相続税はきちんとした形でやっていかなきゃならない。取るだけ取っちゃおうという発想は、私にはありません。
安住:そこは私と違いますね。私は、昔でいえば氏族だったり子爵・男爵の子どもではなくて、私の父親の大学時代の卒業証書を見ましたら「平民」と書いてありましたから、多分平民なんですね。
私は、社会というのは貧しい、厳しい環境で育った人にも成功のチャンスがあるべきだと思うし、官僚の皆さんなんかは比較的豊かな家ではないけれども、東京帝国大学を出て、ちゃんと成功を評価されていると。
そういった機能が無くなっていくと社会っていうのは硬直化していくし、生まれた家が立派だったら人格関係なく豊かな生活できるのかよといったら、それは私は違うと思うんですね。
かといって、共産主義……と言ったら怒られますが、全部寄越せって言ってるわけじゃなくて。
ここがやっぱり考え方の違いで、多分大臣は、父や祖父の財産を自分が継承することは、当然のこと、家柄だと思ってらっしゃると思うんですが、私はある意味で社会に一度還元していただいて、その富はその世代で頑張った人が受け継ぐように並列的にしたほうが、「チャンスのある社会」にとってはいいんじゃないかと思うんですよ。
そういうことからいうと、相続税のあり方というのを抜本的に見直して……。例えば都内の土地だって、70坪を超えたのとそれ以下では相続対象が違うんですよ。細かいことはもしかしたらご存じないかもしれないけれども。
私はそういった意味で、持つものと持たざるものをどういうふうに同じ競争のスタートラインに乗せるのかということは、民主主義にとって非常に重要なことで、高齢化社会になったとき、終戦後のように若い世代が溢れかえってみんな0から頑張るぞ! っていう時代でなくなった時に、この事が政治家にとって非常に重要なテーマだと思って質問したんです。
もしかしたら他の問題ではかなり麻生大臣と似たところもあるんだけれども、この問題だけはちょっと相容れないんじゃないかと思って聞いたんですね。いかがですか?
麻生:そりゃ思想・信条が全く一緒だったら民主党じゃなくて自民党におられると思いますんで、全然違うんだと思いますが(笑)。
基本的には、それぞれの地域において何百年も何代も続いた家柄ってのがありますが、そういった家ってのはもう住みたくなくても古い家にずっと住み続けなくてはならんし、新しいのを建て替えるわけにもいかず、古い家をリフォームして直さなくてはならん。
長男として生まれると、その家のいろんな物を背負っていかなきゃいかん。そういった責任というものも被せられるということがひとつ。
それから教育の面でいえば、やっぱり出来が悪けりゃ「何代目」ってのは長く続かないんですよ。親の教育が悪けりゃ長くは続きませんよ。何代も続いてる家なんてそうないんだから。私の周りを見ててもどんどん無くなりましたよ。
そういったことを見てますんで、私はけっこうこの社会は、いいとこに生まれたにしても、教育や競争がけっこう激しいとこだなと思います。そういった意味では、私がどこかの委員会で答弁したように「(日本は)最も社会主義が成功した国なんだ。社会主義って言ってないだけで、やってることはそうなんじゃないの」と。
いずれに致しましても、守っていかねばならぬものを守り続けていくというのが、保守にとっては極めて大事なことなんだと、私はそう思います。
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