
2025.02.26
10年前とここまで違う 落とし穴だらけの“ERP to ERP”基幹システム刷新が抱えるリスクと実情
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大熊将八氏(以下、大熊):今日は簡単に、ここまでする必要はないんですけども、「ここの数字は見たほうがいいよ」みたいなところを伝えていきたいなと思ってます。
先ほど出てきた有価証券報告書っていうのを見て分析して、まずそこから企業分析はスタートします。これ(スライド)はある企業の有価証券報告書ですけど、いきなりいろんなところに数字が並んでいて、なんのこっちゃわからないと。
まあ、かろうじて売上高とかはわかると。売上高はなんか伸びてる、みたいな。ただ、利益(の種類)もやたらあって、どれを見ていいかわかんないし、このへんのなんとか利益みたいなのもさっぱりわからない。
すっげえ難しそうでややこしそうでめんどくさそうで、たぶん「やれ」って言われたりだとか、「こうやるべきだ」と言われても、見た瞬間に「いいや」ってなると思うんですよね。なので、もうちょっと簡単にいろいろと説明していければな、と思っています。
で、いろいろな数字をあれもこれもって言うんじゃないんですけど、1つだけ、これだけは押さえておきたい数字があって、さっき「売上が伸びてます」みたいなグラフ出した時に、粉飾決算でつぶれましたという企業があったと思うんですけど、あれはとある数字がすごく悪くて倒産したんですよね。
たぶんそこだけ知っておくと、売上だけ伸びてても、「あ、ここダメなんだ」って見抜けるわけですけど。質問なんですけど、企業が倒産するのはどんな時だと思いますか?
要はお金が回らなくなった時ですね。赤字が膨らんでも、大量の負債を抱えてても、返せてるとつぶれないわけですよね。なので、企業のお金の流れっていうのを、すごい追っかける必要があるわけです。企業はまさにお金が尽きた時に倒産すると。
3種類の棒グラフがあるんですけども、これはそれぞれ、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローっていうんですね。
営業キャッシュフローってなにかっていうと、要はものを売って稼いだお金、それで手元に残るお金。基本的にはちゃんとやってたら、プラスなはずなんですよね。
次にみなさん、投資キャッシュフローっていうのがあって、それは投資してるお金、新規事業をやるだとか、新しい設備を作りたいから投資したぞっていう時に出ていくお金で、健全な姿としては、出ていくお金なのでマイナスになっているのが望ましいんです。
財務キャッシュフローっていうのは、貸し借りのお金で、銀行から借り入れたやつをちゃんと返してるかとか、より借金を増やしているのかっていうのがわかる。
この財務キャッシュフローっていうのが仮にプラスだったら、それは借入のほうが多い。借入をその年に増やしたのが多い。財務キャッシュフローがマイナスだったら、借金をちゃんと返してるほうが多いってことなんですけど。
このグラフは異様で、営業キャッシュフローっていうこの青いやつが、めっちゃマイナスじゃないですか。要は売上は上がってたけれども、お金が入ってきてない。なんでなのかっていうと、売掛金っていう売上には計上できるんだけれども、実際にはお金がまだ払われてないっていう指標が、お金がどんどん出ていっちゃってると。
なので、普通だったらそんなにプラスじゃないほうがいい財務キャッシュフローがめちゃくちゃ高いんですね。だから、売上が上がっててもとてつもない借金をして、手元にぜんぜんお金がないっていう状態なんですね。
なので、この企業、お金が回らなくなって、架空取引が発覚して、ダメになっちゃいました。
ということで、このキャッシュフロー計算書っていうのだけでも見れたら、さっきの「売上が伸びてます! これからすごいです!」って言われてるところでも、「ちょっと待って、キャッシュフローはどうだったっけ?」というふうに、ちょっと1つ、疑う視点を持てるかなというところで、すごくいいのかなと。この数字はぜひ見てもらいたいなと思います。
そのほかにも、どれだけ資産を持ってるのかとか、資産を効率的に使えてるのかとか。さっき言った借入が急に増えたりしてないかみたいな。それから、自己資本比率って言うんですけど、自分の持ってる資本のなかでどのくらい借金の比率があるのかみたいなことを表す指標なんですけど。
これら1個1個については、まさにこの本(『進め!!東大ブラック企業探偵団』)のなかで「こういう数字に注目よ」みたいな感じで紹介してるので、ぜひ読んでもらえたらいいなと。で、わからないところとかについては、こういう会でも解説します。
とにかく、直近の売上と利益だけで、将来性、安全性っていうのは見通せないんですよっていうのが、言いたいところなんですね。
さて、これで大丈夫でしょうか? なんか、もう完璧に見れますかね、企業の実体みたいなものを。バリバリこのへんのを読み解いていただいて、もうあとは、がんばってもらって大丈夫ですか?
参加者1:もうちょっと詳しく聞きたい。
大熊:もうちょっと詳しく、ありがとうございます(笑)。
とはいえ数字をゴリゴリ読むみたいなのは、ちょっとしんどいかもしれないですけど……といった時に、もっとわかりやすいのが示されていて、中期経営計画書っていうものがあるんですね。
これは、基本的に全上場企業がだいたい出しているものでして、なんなのかって言うと、主に投資家に向けて「うちの会社っていうのは、こういう方針でやっていくよ」っていうのをやってるんですね。
それでしかも、さっきの財務諸表っていうのは数字だけバーッて並んでるみたいな無味乾燥なものじゃなくて、パワポ化されているので、まだちょっと読みやすい。さっきはほんと白黒の数字だけしか並んでなかったですけど、パッと見てもちゃんとカラフルになってて「あ、この企業こういうので稼いでるんだな」とかがわかるんですね。
で、けっこう、たぶんそれを見ると「意外だな」と思うと思うんですね。僕はそういうふうに思うことが多くて、なにかって言うと、これで示されてる数字は実感と違ったりするんですね。
例えば、パナソニックって会社ってけっこう電機メーカーなのかなって思ってたけど、そこは伸ばす気なくて、住宅とか、ほかのものを伸ばすんだなということなんかは、この中期経営計画書を見るだけででパッとわかる。「へえ、そうなんだ」っていうことで。
こっちは電通という会社ですね。広告業界志望の人とかっていますか?
(参加者挙手)
大熊:おー。電通ってどういう会社だと思いますか?
参加者2:広告を売って、お金を儲けている。
大熊:そうですね、まあ、広告会社じゃないですか。日本最強というか、メディアを日本のみで牛耳ってそうな広告会社みたいな、それはちょっと言いすぎかもしれないですけど(笑)。
これを見ると、「2017年度には海外の売上構成比を55パーセント以上にする」って。要は、日本の売上よりも海外の売上を高くするって言ってて。
実際……実はさっきの有価証券報告書、これ電通なんですけど、さっきの自己資本比率っていう負債の比率、負債じゃないところの比率っていうのが、ガクッと下がってるんですけど、これはなにをしたかっていうと、海外の会社をすっごいお金出して買ったんですね。
そういうのが見えたりします。行きたい企業についてこの中期経営計画書っていうのをググッて読むと、パッとわかりやすいプレゼン資料で見れますと。
聞くにはどうすればいいかっていうと、IR、Investor Relationsというのがあって、要は株主に対して上場企業はきちんと「自分たちはどういう戦略でやってて、どういうことを目指してやっていきます」っていうのを、基本的に投資家に対して公開しないといけないっていう義務があるんです。
それ専属の広報っていうのがいるんですね。まあ、ちっちゃいところだと、経営企画の人とかが兼任してることもあるんですけど、基本的に大きな企業だと何人もその担当の、投資家からかかってくるお問い合わせ、「この数字どうなってんねん!」っていうのに対して、専門で対応する広報さんっていうのが何人もいらっしゃると。
しかも、これは本当に簡単で、例えば「電通のことをもっと知りたい」ってなったら、今は夜なんで営業時間終わってますけど、明日のお昼にでも、代表者番号っていうのをググるんですよ。「代表者番号 電通」ってググると、番号が出てくるんですね。
そこにコールして、「御社に投資を検討してる大熊です」。別に検討してるのはその場で検討すればいいので、嘘にはならないので。で、「IR担当の方に代わっていただけますか」と聞くだけで、必ず代わってくれるんですね。そこで、「嫌じゃ!」って言われることはないので。絶対代わってくれます。
(会場笑)
大熊:しかも、これ別に、説明会みたいに1人何分までしか聞けないとかじゃなくて、無制限に聞かせてもらえる。理論上、1日中その人と話しててもいいんですね。
たまに瀧本ゼミの人で、IRの人と仲良くなりすぎちゃったみたいな、1日中話してても、最初その人にうざがられてたけど、仲良くなったからなんでも話してくれるようになった、みたいな人もいるらしいんですけど。
基本的に、理論上、家でゴロンと寝ながらでも、回数無制限でいくらでも聞いていいと。で、IRっていうのは基本的に広報なので、会社の悪口は言わないものの、説明会とか、OB訪問とか、企業の新卒採用の人と会うとか、基本的に企業のほうっていうのは右も左もわからない就活生に対して、適当じゃないですけれども、都合のいいことばっかりしか言わないじゃないですか。
ただIR、株主対応する広報っていうのは、本当にちょっとでも疑わしいところがあったら、容赦なく売りを浴びせてくるような、生き馬の目を抜くような投資家への説明を毎日している人です。
どっちが厳密でちゃんとした説明か。「うちはグローバルだからがんばってるよ」みたいなホワッとしたのじゃなくて(笑)、ちゃんと「海外の売上の比率はこんぐらいなんですけど、こうやって伸ばしていきます。そのためにこういう施策を打ちます。」っていうのを話してくれる人と、いくらでも長時間話せる。
だから、基本的にわからないところはもう聞こうということですね。知ってる人に聞くのってすごい大事なことだと思ってます。
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