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自走するゲスト/保守と革新、権威と権力/希望とは何か(全6記事)

“不確実性”を受け入れて生じるメリットもある クラシコム青木氏の経営観を変えた出来事

ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が、毎月さまざまなゲストを迎えて「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。今回は株式会社クラシコムの代表取締役・青木耕平氏がゲストとして登場。青木氏の経営観が変化したきっかけと、その結果生じた影響について語りました。

青木氏と倉貫氏が似ている部分

仲山進也氏(以下、仲山):さっきの楽屋の時も、倉貫さんがオーナー経営者であり、かつクラシコムの執行取締役って「けっこう珍しいパターンだよね」みたいな話が出てましたもんね。

青木耕平氏(以下、青木):あんまり聞いたことないですよね。オーナー経営者で、かつ上場企業の執行取締役やってます、みたいなのって。

倉貫義人氏(以下、倉貫):まずオーナー経営者になった人が普通にどこかの役員になるって、サラリーマンをもう1回やるみたいみたいなことになるから、普通やりたがらない(笑)。

(一同笑)

青木:普通やりたがらないよね。そういうのもすごくあるし、オーナー企業っていっても「フリーランスに近いかたちでやってます」とかだったらあるかもしれないけど、まあまあ人抱えて手広くやっていて、別の上場企業の執行取締役をやるって、やはりなかなか。もともとの会社の経営の仕方が倉貫さんっぽくないと、ちょっとムズいかなって。

倉貫:まあそうですね。

青木:僕と倉貫さんはちょっと似ているところがあって、自分のオーナー企業の経営の仕方というか距離感。会社との距離感とか触り方がけっこう似ているぶん、いろいろ大変なところはあると思うんだけど、とはいえ倉貫さんのやり方だったらたぶんできるだろうなっていう感覚もあった。

仲山:確かに。さっきのOSの話で言うと、クラシコムとソニックガーデンは、僕も含めて同じOSだけど、でも流派がそこでもいろいろ分かれているから……。

青木:うん、うん。でもOSが一緒っていうのはすごくあったかもね。

仲山:マイノリティ。

青木:そう。OSが一緒だからマイノリティだけど、経営の仕方がどこかちょっと似ているというか。

経営の仕方において「OS」の乗り入れがあった

倉貫:マイノリティなので普通の人が入ってくると「なんか違うよね」ってなりやすいから、クラシコムにしてもソニックガーデンにしても、入ってもらう前に一緒に仕事をするとか、あとはお客さんとして付き合う期間がある程度あって、みたいな。世界観をわかってくれている人で、みたいなのは共通してますもんね。

青木:そうですね。倉貫さんの経営にすごく影響を受けているのもあると思うのよ、僕が。それこそ今日の仲山さんと倉貫さんって、今まで出会ってきた人の中で、僕の経営のやり方にすごい影響を与えた2人だなって、今話しながら思った。

OSにパッチを当てられたみたいな感じ。大軸で似てるけど、みんなそれぞれ開発してるOSだからさ。たぶん最初から合っていたというよりも、影響を受けて互換性ができちゃったみたいな感じ。

倉貫:そうですね、取り込んできてる感じは。

青木:だから2016年、2017年ぐらいに仲山さんがやっているチームビルディングプログラム(TBP)に僕が参加して、あそこで僕の経営観ってけっこう分岐したなっていう感じ。

倉貫:TBPでアップデートされた感じはありますよね。

青木:あれはけっこうOSの乗り入れがあったな、みたいな(笑)。自分があんまり好きじゃなかった世界観だと思うのよ、ナチュラルに言えば。何が好きじゃなかったかというと、別にチームが好きじゃないとかじゃなくて、要は「不確実性を不確実なまま受け入れる」ことがあんまり好きじゃなかった。

仲山:全部コントロールしたいっていう。

青木:全部ちゃんと理解してやりきりたいというか、把握しきりたいっていうタイプだったのを、もうちょっといろんな見方とかいろんな人が実際にいて、だからありがたいこともいっぱいあるんだなって。今まで不確実要素ってネガティブにしかとらえていなかったんだけど。

仲山:「全部排除しなければ」みたいな感じでしたよね。

青木:だけど不確実だからこそ、自分が想像しないような良いことも起きたりするってことじゃないですか。こっちはみんな真四角のやつでちゃんと組み立てようと思っているから、凸凹があると嫌だな、とか思っちゃってたけど。

けっこうこっちが困った時にぜんぜん期待してない誰かから助けられたりとか、気づかされたりすることがあるんだな、みたいなことで。あそこでやはり、人っていうことだけじゃなくて、世界が何を自分に差し出してくるんだろうって思うようになったのはすごくある。

「こうしたい、こうしよう」じゃなくて「何を気づかせてくれるのかな」みたいな。あとはそれに沿って手探っていけばどっか行けるかも、みたいな感覚の最初のとっかかりがあれだったと今は思う。

しっくりくるまでイエス・ノーを決めない倉貫氏

青木:当時は苦しかったというか、「よくわかんないな」っていう感じと「この気持ちよさは何だろう」みたいな感じで、わかってなかったけど。

仲山:全部自分でやったり考えたりしなくても、委ねる気持ちよさみたいなやつね。

青木:そうそう。それの本当のとっかかりが、あそこにあったなっていう気がする。あとやはり倉貫さんとやってきて思うのは、ずっと訂正し続けるのよ、倉貫さんって。

倉貫:訂正?

青木:例えばさ、自分で「今こういうふうにやってます」っていうのがあるとするじゃん。やり方として。もうたぶん6~7年ぐらい一緒にやってるんだけど、やり方としてはずっと変化してるわけ。

仲山:ああ、わかるわかる(笑)。

倉貫:(笑)。

青木:だから最初に言ってたことと今言ってることって……今「言ってる」ことじゃないんだよな。最初にやってたことと、今やってることはぜんぜん違うのよ。なんだけど、一貫はしてるのね。

その訂正し続けて一貫できるっていう感覚って、すごく僕の中では……今の僕はすっかりそういう人間なんだけど、最初からそうだったかなって思うと、そうでもないのよ。

仲山:なるほど。

青木:わりと「こうあるべし」みたいな。だからやっぱりそれは、影響受けてる部分がすごくあるなと思うよね。「本当に訂正するよな」っていう(笑)。

仲山:僕もザッソウラジオが始まる前に倉貫さんと隔週ぐらいで、ザッソウタイムでZoomでしゃべっていたので、その感じはめっちゃわかるんですけど。2週間空いてると「もうあのやり方変えて、こういうこと始めた」みたいなネタが毎回必ずあるっていう(笑)。けっこうデカいこともあったりする。

倉貫:(笑)。

青木:そうなのよ(笑)。なんだけど、じゃあすごくアグレッシブにいろんなことを試して、手数が多い印象かというとそうでもないのね。逆にしっくりこないとけっこう話を決めないし、進めないんだよ。

だからなんていうか、そこの緩急のおもしろさがすごくあって。例えば僕とかだったら、決めなきゃいけない流れになったら「早く決めなきゃな」って感覚もすごくあったわけ。でもけっこう倉貫さん、自分的に本当にしっくりこないと、イエス・ノーをはっきり言わないんだよね。

仲山:ストレングスファインダーの「慎重さ」っぽい振る舞いですね。

倉貫:慎重さが出ている(笑)。

青木:そうそう。だからそのバランスがおもしろくて。「慎重に決めてても変わるんだな」っていう感覚もあるじゃん。

倉貫:そうですね、慎重なのにけっこう変えますからね。

「一貫性」を「同一性」と勘違いしていた

青木:変える。だからこのバランスって、僕に両方の無理を強いなくなってて。つまり「決めなきゃ」っていう無理というか、自分的にもハードルがあるけど決めなきゃっていう無理と、反対側に「変えてはいけない」みたいな、自分の言っていることの一貫性を同一性と勘違いしていた部分というか。

そういうのはすごく、影響を受けてガラっと変わった自分というよりも、最初からそうかのように最近は振る舞ってるけど「俺、最初はそうじゃなかったよな」みたいな(笑)。そんな感じかな。

倉貫:そうなんだ。僕はでも、TBP以前の青木さんをあんまり知らないからアレなんですよね。たぶん僕が会った時はTBPをやった直後ぐらいだった気がするんですよ。

青木:そうだよね、紀元後にお会いしてますから(笑)。

仲山:2人とも自分から「こういうことを成し遂げるとか」と言って勝手にスタートし始めるんじゃなくて、変化に応じて「こんなお題出てきたな」みたいな感じで、じゃあどうチューニングを変えていこうかな、みたいな。

で、倉貫さんはこう変えたとして……それこそけっこう大きかったのって、新卒採用するかっていう話。

倉貫:あんなリモートワークって言ってたのに、もう今は若い子たちは出社どころか、一緒にご飯作って一緒に暮らしてますからね。

青木:(笑)。

仲山:そうそう。「ソニックガーデンは人事評価したくないので、給料も一律なので」って言って、パズルのピースで言うと「同じサイズの人だけ入れます」みたいにやってたのを全部、変える時はいろんなリスクをだいぶ想定しつつ。その話題のザッソウタイム、けっこう長くいっぱいしゃべったなっていう記憶があります。

倉貫:しゃべりましたね。

仲山:ありましたよね。

「保守」という言葉が嫌いだった

青木:僕もけっこうその過程で一緒に時間を過ごしていたので。だから執行取締役として一緒に経営していきたいなって思ったのは、そこに対する信頼感がすごくありますよね。「ちゃんと訂正する」みたいな。

仲山:訂正と呼ぶか修正と呼ぶか。

青木:修正というかチューニングというか。要するに同じ外部環境と内部環境の時だったら、別にずっと同一のやり方でもいいんだけど、やはり状況が変わったら当然いろんなことが変化するから。だけどあんなに言っていたことを変えられるって、すごいなって思う。

倉貫:でもそれ、青木さんのよく言う「保守」みたいな感じの気持ちがありますよ。いわゆる守ってレガシーを大事にするとかではなく、大事にするために変えなきゃいけないっていうのが本来の保守だから。

僕も青木さんから話を聞くまでは、保守って言葉はあんまり好きじゃなかったんですよ。「あいつら保守的だな」みたいな言葉を使うから、ネガティブに思っていたんだけど、保守していくこと自体が保守主義なんだなっていうのはアップデートされましたね。

青木:これさ、第2回は急にその話をしたくなっちゃった。

倉貫:保守の話?

青木:保守・革新の話。ちょっと自分の中で気づきがあったので、その話を仲山さんと倉貫さんとしたらおもしろいかもと思うので。第2回、ちょっとその話をしましょうか。

仲山:そうしましょう。

倉貫:しましょうか。もうさすがにザッソウラジオに慣れすぎて、だいたいこの時間で次に持っていくのもゲスト自らやっていただける(笑)。

(一同笑)

仲山:自走するゲスト(笑)。

倉貫:進行までしていただきまして……(笑)。

青木:いやいや。もう準レギュなんで、だいたいね(笑)。

倉貫:ということで、第1回は青木さんと僕らの関係性の話からさせていただきました。第2回、保守と革新の話を……するかな? というのをお楽しみにしてください。ではまた来週。

Podcastはこちらから
「青木耕平さんとザッソウ第1回 自走するゲスト」

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