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会社の体質、これまでどおりで大丈夫? 職場に新たな風を吹き込むための「ネガティブ・ケイパビリティ」入門(全5記事)

強い組織を作るには、自己肯定だけでなく「自己否定」も必要 職場を健全に変えていくための「ネガティブ・ケイパビリティ」のすすめ

組織開発のプロ・沢渡あまね氏が上梓した『「すぐに」をやめる~ネガティブ・ケイパビリティの思考習慣~ 』。旧態依然の組織文化を見直し、職場に新たな風を吹き込むための「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念について解説。本記事では、強い組織を作るために「越境」が大切な理由について語ります。

イノベーションを掲げている組織ほど、多様な体験が不可欠

沢渡あまね氏(以下、沢渡):この本(『「すぐに」をやめる~ネガティブ・ケイパビリティの思考習慣~ 』)にも書いたのですが、「新規事業を生みなさい。イノベーションを生みなさい」って言いながら、同質性で塗り固めたりとか。地方創生を言いながらも、霞ヶ関と東京の村社会で固まっていて、一歩も外に出ないとか。

それどころか地方の人に「東京に来い」と言って、地方の人の時間を奪いまくるみたいな、ちゃんちゃら馬鹿げたことをやっている、地方創生ごっこをやっている輩がたくさんいまして。「これは、まさにあなたたちの体験資産が足りていない! あなたたちが地方に来て、地方の体験を増やしなさい!」という話だと思います。

地方などの課題解決もそうですが、新規事業やイノベーションを掲げている組織ほど、多様な体験が不可欠。一見回り道になるかもしれないが、「そんなこと意味あるの?」「それ、目先の成果につながらないよね?」みたいな野暮な話をやめて、きちんと多様な体験にも向き合う。

多様な体験を持った人をリスペクトする行動習慣、カルチャーにトランスフォーメーションしていただきたい。そのためにも、やはり越境が肝です。さまざまな人が立場を超えて新しい体験をする、相手の景色を見にいく。あるいは自分たちにない体験をしている人と対話をして、受け入れていくことが大事です。

「越境の習慣化」について。越境して、「あなた、楽しくてよかったね。へー、ほー、ふーん」で終わらせるのではなくて、自分も越境体験をする。

あるいは越境している人をきちんと組織の中で受け入れて、エンパワーする。それにより組織風土そのものが健全化し、「内向き×モーレツ」にブレーキもかけられる。さらには自社だけ、自組織だけ、自地域だけでは得られない学びや、課題解決の方法や着眼点が具現化していくと新しい価値を生み、人を感動させることができる。

もちろん売上も上がっていったり、イノベーションが起こっていったり、個も組織も健全なイノベーション体質になっていきます。そんなキーワードを散りばめたのがこの絵であり、書籍でも紹介しています。

「自己肯定」と「自己否定」の両輪を回すことが重要

沢渡:そろそろ時間なので、まとめにいきたいと思います。

傳智之氏(以下、傳):そうですね。

沢渡:良い組織、良い地域、良い自分自身、良い部署、良いプロジェクト。何でもいいと思うんですが、また違うバスの絵を出します。

自己肯定が複数になると、自組織肯定、自業界肯定。さらには、自己否定、自組織否定、自業界否定、自地域否定。何事もこの両輪だと思うんですね。

いいところもきちんと褒め合う、認め合う。なかなか褒めるのが苦手で、褒められるのが苦手な人たちもまだまだ多いジャパンだと思うんですが、いいところはきちんと褒め合う、たたえ合う。しかしながら、褒めるだけだと自己満足でまた暴走してしまいます。

妙な自己効力感で相手を傷つけるのは、イケイケスタートアップにも目立つ残念な行動です。「ここが足りていない。ここは改善しなければまずい。ここは暴走しているのではないか」と、自己肯定と自己否定の両輪を回していくのが大事。

自己肯定も自己否定も違和感がないと生まれないですね。「あれ、もしかしてこれっていいことをやっている?」「あれ、ここってもしかしたらヤバいんじゃないか?」と、違和感をみんなで一緒に振り返りながら、自己否定と自己肯定を回していける。これができる組織も個人も、間違いなく強いですね。

同質性の高い組織など、ふだん同じ景色しか見ていないと違和感は生まれ得ない。そのためにも意識的に越境をする。みなさんが周りの人と一緒に越境する、周りの人に越境してもらう。あるいは越境している人を組織の中にインクルージョンして、インクルードして対話していく、仲間に入れていく。

そのイメージがこちらです。これは、ポジティブ・ケイパビリティ一辺倒では絶対に回せない世界。みなさんもこの後、ぜひ自分なりに答えてみてください。

まずは自分の「半径5メートル以内」から変えていく

沢渡:周りが変わらないと世の中は変わりにくい。「みなさんの所属組織、地域、チーム、業界などに、ネガティブ・ケイパビリティの呼吸を小さく取り入れるためにできることはなんでしょうか?」と、周りの人たちと一緒に問いを立てて対話をしてみてください。

みなさん自身がここでもやもやと思っているだけでは変わらない。周囲に小さくでも影響、インフルエンスしてください。今日の私の最後のメッセージです。

ちなみに関連図書を4冊示しました。今回の『「すぐに」をやめる』と、ダイヤモンド社から出版した『組織の体質を現場から変える100の方法』。さらに今日お話しした『新時代を生き抜く越境思考』。

あとは、みなさんが所属している部署やチームなりが推される部署になっていく。みなさんの話を周りの人たちに心地良く聞いてもらって、一緒に変わっていこうと動機付けをするための『「推される部署」になろう』。この4冊を推奨図書として紹介します。

「モーレツ×内向き」は経営リスクということで、傳さん、伝わりましたかね(笑)?

傳:はい。もういろんな事例とともに(笑)、たぶんみなさんの心に刻み込まれたんじゃないのかなと思いますね。

沢渡:本当にこれはヤバい。マジヤバいです。ということで、流れを変えていきましょう。

私たち一人ひとりの半径5メートル以内から、ふだんの現場、仕事のシーン、コミュニケーションをちょっとずつ変えることによって、共感者が増えればそこから間違いなく組織は変わっていきます。景色が変われば組織は変わるということですね。

今日のご質問がある方や、あるいは組織として相談したい方は、通常私たちも顧問活動で手いっぱいでなかなか個別のご質問にお答えしきれないので、(2025年)2月28日に和歌山で島田由香さんと一緒にイベントがあります。

会社の経費を使っていただくか、部の予算を使っていただくか、個人で来られる方は有休消化も兼ねて、2月28日の和歌山では何でもご質問にお答えしますし、相談にも乗ります。なので、こういった「#ダム際ワーキング✕#キャリア教育ワーケーション」の場もご活用いただければと思います。

一体感が「ポジティブ同調圧力」になっていることも

沢渡:ちょうど時間になりました。傳さん、こんな感じでいかがでしょう?

傳:ありがとうございます。「続きは和歌山でというのは斬新」という声もありましたが、まさにおもしろいと思います。ひとまずありがとうございます。本当はこれでちょうど時間なところなんですが、せっかくなのでいくつかコメントを拾って共有したいと思います。

沢渡:はい。

傳:みなさんもどちらかというと共感のコメントが多いかなと思うんですが、まず1点目。質問ではないんですが、「もともと『早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け』というのは、アフリカのことわざじゃないか?」というご指摘があったんですけれども、これはたぶんそうですね。そうなんですが、日本語としてある程度日本で浸透しているから、ここに入れていらっしゃると。

沢渡:はい。日本語として定着しているものを挙げています。

傳:そうですね。岸田(文雄)前首相もこのコメントを出されたりしていました。

沢渡:おっしゃるとおりです。日本人が日本語でわかりやすいもの、というニュアンスで捉えていただければと思います。

傳:ありがとうございます。あとは、「『ネガティブ・ケイパビリティ』って長いので、ちょうどいい略語が欲しいですよね」というコメントがあったんですが、沢渡さんはよく「ネガケイ」とかっておっしゃっているんですかね?

沢渡:いや、もう「すぐにをやめる」でいいんじゃないですか(笑)?

傳:この本のタイトルの布教も兼ねて、ぜひ。

沢渡:「すぐやめ」でもいいけど。

傳:「すぐやめ」も1つありですね。あと、「一体感と同調圧力の差って難しいですよね」「一体感ってすべてポジティブ同調圧力かもしれない」というご意見もありました。

沢渡:おっしゃるとおりで、たぶん組織のコンディションや集まるメンバーによって違うと思います。

それこそネガティブ・ケイパビリティでもって考えてみましょう。答えは1つではないということです。その場において、目的を達成するためにはどういう一体感作りが良いのかという問いを立てて、トライ・アンド・エラーでいいやり方を見つけてほしいと思います。

ちなみに共創デザインという考え方も、私のnoteで発信していたり、Facebookでも発信しています。ご参照ください。

傳:ありがとうございます。

「すぐに」も大事だけど、スピード重視になりすぎるのは注意

傳:「ESGや感染症予防など、正しそうだが強いメッセージを企業が発信する時には、トーンに注意しなきゃいけない難しい時代だと考えています。その時、経営層やクリエイティブに繊細さが求められていると考えているのですが、沢渡さんのネガティブ・ケイパビリティも、このあたりの企業難題への視点も含んでいると考えてよろしいでしょうか?」というコメントが来ています。

沢渡:おっしゃるとおりです。センシティブな問題だとか、いわゆる人の感性を理解できないと結局はケガをする。さらには、人を感動させる製品、サービス、ビジネスモデルを生めますか? という話なんですね。

デザイン経営やアート思考も、少しこの(書籍の)中にも散りばめていますが、いずれも目先の成果を追う発想と相性が悪い。

デザイン経営、アート思考、デザイン思考のような考え方も、もちろんこれからの経営に求められます。ネガティブ・ケイパビリティで養い得る、さらにはデザイン思考やアート思考のようなものを取り入れることによって、ネガティブ・ケイパビリティが高まるという、相互依存の関係だと解釈してそれも発信し続けています。

傳:ありがとうございます。そうですね。今回のテーマもそうですが、冒頭で大事なこととしてお伝えしたように、「すぐに」も大事だけど、やはりそっちに偏りすぎているという。

沢渡:おっしゃるとおり。

傳:何事にも二面性がある中で、そのバランス(を取っていく)。

沢渡:偏りの補正です。

傳:そのために今回の本ではあえてメッセージを強く出して、バランスがいい、局面、局面でのいい解を求めて出していただくための、みなさんのヒントになればというかたちですよね。

沢渡:はい。ぜひみなさんで、周りと一緒に読んでください。

傳:そう。だいたい沢渡さんの本は、チームでみんなで読むことで価値をより発揮できる本が多いかなと思います。

沢渡:押しつけ合うのではなく、対話と正しい議論のためのツールです。

傳:なので、今回の本もぜひ読書会をしていただけると、我々としてもうれしいので。

沢渡:ぜひお願いします。

傳:ということで、今日はこれで終わりにしようかと思うんですが、最後に沢渡さんから一言お願いします。

沢渡:ネガティブ・ケイパビリティの呼吸も身につけていこう。ただそれだけです。

傳:ということで、みなさんもぜひ一緒にネガティブ・ケイパビリティの呼吸も身につけるための行動を、今日から踏み出していただけるとうれしいです。本日はありがとうございました。

沢渡:ありがとうございました。

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