2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ケビン・ヘイル(以下、ケビン):Airbnbについてあまり注目されていない面白いことがあります。彼らはニューヨークにて、プロの写真家と創業者が実際に人々の自宅へ行って部屋の写真を撮りますよ、それでより多くの人にあなたの部屋を利用してもらえるようにしますよ、ということをやったのです。
コンバージョンに着目した例です。Airbnbのジョンは創業当時いつも耳にヘッドセットをつけてカスタマー・サポートの電話を取り続けていました。ノンストップでです。
チャーンは多くの人が避ける話題です。Airbnbのグロースが始まったのは、彼らが人々のデマンドに応えられるようになった時、しっかりと電話で顧客対応が出来るようになった時です。
Wufooではサポート・システム向上が鍵だと思っているので、常に色々新しいことを試しています。ある時キャシー・シエラが、私達が助けを必要としている時に感じる感情と、それに対して得られるサービスやヘルプ、そして反応の間にギャップがあるという話をしていました。
しかもオンラインの場合は特に、です。なぜならオンラインではノンバーバルコミュニケーションが取りにくいからです。
彼女は、ウェブ上に表情を読み取ることが出来るシステムが誕生しない限り、私達とユーザーとの間の溝が埋まることはないと言っていました。
私達のそれに対する反応は、「私達は表情から感情を読み取るプロではないけれど、何か他に心を通わせることが出来る方法があるはずだ」でした。私達はフォームをつくるプロですので、まずはカスタマー・サポートにドロップダウンをつくりました。
「今皆さんの気分はどんな感じですか?(ハッピー、怒っている等)」と聞くのです。つくってはみたものの、誰もこのドロップダウンで回答してくれないと思っていました。やってみるからには気合いを入れてやるべきだったのかもしれませんが、まぁとにかくやってみようという感じで始めました。
しかしそれが驚くことに、75.8%の回答率となりました。ブラウザタイプのドロップダウンの回答率は78.1%。つまりこれが意味するのは、テクニカル・サポートにおいては、カスタマーの感情を理解し受け入れることが、実際の技術的問題を解決することと同じくらいに大切だということです。
面白いことにこれをやり始めた結果、カスタマー・サポートの中でカスタマーが好意的になってきました。データを見て、テキストの分析もした結果、私達はそう結論付けました。
Eメール等文字でコミュニケーションをするだけの場において、強い不快な感情を表す方法は3つしかありません。「!」マークを使う、罵り言葉を使う、そして全てを大文字でタイプすることです。
カスタマー・サポートの中で受ける、これら3つ全ての数が激減したのです。たったひとつシンプルな感情の吐き出し口をつくってあげるだけで、人々が感情的になることが少なくなり、感情的な顧客に対応しなければならない労力が減り、仕事が楽になりました。
もうひとつ素晴らしい副産物は、これによってより優れたソフトウェアをつくることができることです。更にこれは研究によって証明されています。ユーザー・インターフェイス・エンジニアであるジャレッド・スプールはユーザーと直接関わる時間とプロダクトのデザインがどれだけ優れているかは大きく比例すると理論付けました。
ただこれには欠かせないポイントがあります。「直接」関わらなければならないのです。誰かがグラフを作った報告書を読むだけではダメなのです。実際にユーザーと関わってみなければなりません。
6週間のうちに最低でも2時間はユーザーと関わる時間をつくること。さもなくばプロダクトはだんだんと悪いものになっていきます。Wufooのディベロッパーは毎週4時間から8時間をユーザーと直接やり取りすることに使っています。ユーザーとの関わりによってソフトウェアのつくり方が変わってきます。
彼はまた違った観念からもプロダクトづくりを論じています。これがそのアプリを使う為に皆さんが知っておかなければならないことの全てを表していると仮定しましょう。
こっちが知識ゼロ、こちらはプロダクトを使うのに必要な全ての知識です。この2つのラインがユーザーとの関わりを示しています。ここがユーザーの現在の知識量だとして、こちらがユーザーに持っていて欲しい知識量、目標とするポイントです。
この2つの間のギャップが知識のギャップです。この2つのラインのギャップを埋めるには2つの方法しかありません。このギャップは皆さんのつくるアプリがどれだけ直観的かを示していますよね。
つまりギャップを埋める方法はユーザーの知識量を増やすか、アプリを使う為に必要な知識量を減らすかしかありません。多くの場合、エンジニア、そのプロダクトをつくる側としては「どんどん新しい機能を増やしていこう」と思います。しかし、「新しい機能」イコールこの知識のギャップを広げよう、という意味にしかなりません。
そこで私達は違う方向に目を向けました。私達がエンジニアとしてツールをつくるのに使う時間の30%をカスタマー・サポートに回しました。しかし、カスタマーが彼ら自身で問題解決出来るように心がけました。
FAQをつくったり、ツールのお役立ち情報を上げたり、要はリンクをクリックすれば解決できるようにしました。カスタマーが抱える問題を解決するのに最も適したページへガイドできるようにしたのです。
ドキュメンテーションページはABテストを何度も繰り返し、デザインの再考を重ねました。1度のリテレーションにより、カスタマー・サポート問い合わせ数は一夜で30%も減少させることができました。つまり一夜でプロダクトに関わるすべての人々の仕事量を30%減らすことに成功したのです。
皆が常にカスタマー・サポートの仕事に関わるようになるとどうなるか? 始めに、グロースとはコンバージョンとチャーンであると言いましたね。これはWufooの最初の5年間のグロース曲線です。
面白いのは、私達は広告やマーケティングに一銭も支払っていないことです。グロースのすべてが口コミによってです。新規ユーザーとダウングレードの関係性はこうです。これらの差はほとんどないですね。忘れられがちなのは、コンバージョン率の1%の上昇とチェーンの1%の減少の間にほとんど違いはないことです。
グロースにおいてこれら2つはまったく同じ働きをします。しかし後者のほうがよりやりやすく、より安く実現することが出来ます。そしてこれを多くの人が忘れがちです。
とは言え、このグラフは私達が誇る最も素晴らしい記録ではありません。こちらが私が誇りに思うデータです。確かに私達のグロース曲線は素晴らしいです。しかしこちらのデータが私達が素晴らしい文化を持つ規模の小さな会社でありながらも、スケールすることを可能とします。それには人を喜ばせることが必要不可欠です。
ジョン・ゴットマンはなぜ人は離婚するのかについて説明しています。10年、15年も一緒にいるのに突然離婚したりするカップルがいます。データを見て彼は気が付きました、「彼らの間にはもう情熱がないのだ!」。
熱力学のようなものです。エネルギーシステムの中では、エネルギーが燃え尽きてしまうので、常に気をつけてエネルギーが絶えないようにしなければならない。
「あなたのことをいつも気にかけていますよ」と見せようとして多くの会社はブログやニュースレターをつくったりする。しかしこれらをきちんと見ている人は少なく、素晴らしい機能をつくって、それをニュースレターに載せても、それが存在することすら気が付いていないユーザーが大勢います。
そこで私達は「Wufooアラートシステム」という新しいツールをつくりました。これによって新機能をすべてタイムスタンプできるようになり、ユーザーがログインする度に今回のログインから最後のログインまでの時間を確認し、その期間につくられた新機能があればメッセージがポップアップします、「あなたが最後にログインしてからこんな新しい機能が誕生しましたよ」と。
ユーザーと会って話をすると、この機能が最も多く話題に上がります。「最後にログインした後にできた新機能のお知らせ、あれはいいね。毎月定額しか払っていないのにあなた達は毎週新しい機能をつくっているね。素晴らしい! なんだかすごく得している気分だよ!」という具合にです。
私達がやったもうひとつのことは、ユーザーの皆さんに「ありがとう」を伝えることです。これは私達が謙遜と穏当を重んじる文化を浸透させるためです。
毎週金曜日に集まって、ユーザーに手書きでお礼状を書きます。これをするのにあまり良い顔をしないメンバーもいることも知っていますが、手書きでユーザーにありがとうの気持ちを伝えるという習慣をつくることで、共に素晴らしいプロダクトづくりを目指す連帯感ある素晴らしいチームが生まれたと思います。
このようなことをすることで、会社のミッションはなんなのか、なぜこの仕事をしているかを1人1人が確認することに繋がります。別に特別なカードではありません。シンプルです。
初期のWufooの文化が今に生きていると思います。クリス、ロン、そして私はユーザーにクリスマスの時期になにか感謝の気持ちを示したいね、と話していました。
クリスが言いました。
「数年前に母から、クリスマスプレゼントとして親戚全員にありがとうの気持ちを示す、サンキューカードを送るように言われてね。あまり乗り気ではなかったんだけどやったんだ。翌年の親戚からのプレゼントは素晴らしいものが続々届いたよ」
(会場笑)
「だからさ、これはビジネスの場でも使えるんじゃないかな。やってみようよ」
(会場笑)
クリスマスに手書きのカードをすべてのユーザーに送るという試みを初めて実施した翌年、ユーザーの数は物凄く多くなっていました。
でもまだ当時は3人の共同創業者しかいません。3人で全員にカードを書けるかな……。どうしようか……と思っていた時に『ネット・プロモーター経営』という本を読みました。そこには「最も利益をもたらしてくれるユーザーにフォーカスすること」と書かれていました。
そうだ、彼らにだけカードを送れば良いじゃないか、という話になり、最もお金を使ってくれているある一部のカスタマーにだけ手書きのカードを送りました。
2年目の1月、ずっと他に浮気をせずに長いことプロダクトを使ってくれているカスタマーの1人からこんなメールが届きました、「去年もらったクリスマスカードがあったよね。とっても嬉しかった。あれが今年は届いていないんだけど……ただ、楽しみにしていたから、まだ届いていないってことを知らせたかったんだ。僕のことを忘れているわけではないっていうのはもちろんわかっているんだけど……」。
(会場笑)
僕らは皆「やばい!」と思いました(笑)。1度やってしまったら次を期待される。どうしようかと考えて出た答えは、1年に1度だけカードを送ることをやめて、毎週サンキュー・カードをユーザーに書く時間をつくるようにしました。全員に送ることは出来ないかもしれませんが、それを目指して書き続けることが大切なことです。
※続きは近日公開!
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