
2025.04.02
働く人が増えても、日本の「人手不足」問題は解決しない “労働力=人手”という捉え方の盲点
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部下の力を最大限に引き出す育成をするためには、どのような関わりをすればよいのか。褒める・叱るではない「行動承認マネジメント」のノウハウを、株式会社シンプルプランの丸茂喜泰氏が解説します。本記事では、部下の“当たり前の行動”に目を向けることの重要性や、やる気を引き出すマネジメントのポイントについて語っています。
丸茂喜泰氏:みなさんも考えてみていただきたいんですが、(スライドに)円があると思います。円グラフでもいいし、合計100パーセントのパーセントでも構いませんので、社員さん、部下の方を1名想像してください。
今部下がいないって方は、自分の前の職場で後輩だった人間とか、アルバイト時代の後輩でもなんでもけっこうです。誰か1人、自分が教える立場にいた時の人を想像してください。今まで1人もいないという方は、最悪上司の方1人でもけっこうです。
想像した社員さんのうち「すばらしい、よくやった」と、会社に好影響を与えた行動で、1日の中で褒めたくなるような行動はどれくらいの割合があったか、もしくはあるか。1日だとわかりにくいなら、1ヶ月でもけっこうです。1ヶ月の長い期間の中で、どれくらいの褒めたい行動があるか、ちょっと考えてみていただきたいんです。
逆に会社に迷惑をかけてしまう、「何やってんだ」って叱りたくなるような行動は、どれくらいの割合があるか。褒めるでも叱るでもない行動、特にどっちでもないっていう行動も何パーセントあるのかのも、考えてみていただけるといいんじゃないかな思います。
「1日」という考えでもいいですし、「1週間」「1ヶ月」でもかまいません。その中で、「すばらしいね、よくやってるね」と自分から見て褒めたくなる行動と、「何やってんだ」と厳しく叱らなきゃいけない行動、それ以外の普通の行動の割合がどんなふうになるか、考えてみていただけますでしょうか。
今日は一方的に私が話しているんですが、実際の研修等で実施させていただく際には、基本的にはやり取りをしながら進める形式で行っております。
今、みなさんは1名の方を想像していただいて記入いただいたと思うんですが、実際に私が書いた時にどんな感じだったかといいますと、正直褒めたくなるような行動はゼロだったんです。
不適切と思われる、叱りたい行動というとほぼ思いつかなかったんですが、「褒めたい行動はないけど、なんかいつも腹が立ってる自分もいるしな」ということで5パーセントぐらい入れました。ただ、ほとんど95パーセントが「その他の行動」でした。
みなさんはいかがでしたでしょうか? ほとんどが「叱りたい行動」の方が、中にはいらっしゃいましたでしょうか。もしくは、ほとんどが褒めたくなる行動という方もいらっしゃったかもしれません。
適切な行動と不適切な行動って、実は1日の中でそれほど多くないという方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。私は少なくとも、適切・不適切の合計が5パーセントですから、ほとんどがそれ以外の行動でした。私がおうかがいした会社さんは、「当たり前の行動=適切な行動」という見方をしていました。
この会社での適切な行動というのは、出勤してくれること、ゴミ拾ってくれること、呼んだら返事してくれること、サービス業なので「いらっしゃいませ」って言ってくれること、あいさつしてくれること、コピーを取ってくれること、時間を意識して提出物出してくれること、鍵開けてくれること、電気つけてくれること……。
もう全部が適切な行動であり、この会社では「ありがとう、おかげで助かったよ」と言ってあげる行動だととらえてやられていたんです。
私はそれを聞いた瞬間に「お給料を払ってるので、『出勤してくれてありがとう』ってちょっと言いにくいんですけど……」と言ったら、「だから丸茂さんは支配してるって言うんですよ」と怒られたんですが、みなさんはいかがでしょうか。
ここで重要なのは、「うちの会社では、適切な行動と普通の行動を『適切な行動』としてとらえています。そして、お互いの良い面を200個言えますよ」って言われたんですよ。
「だから丸茂さん、5分間時間をとるので、その社員さんの適切な行動、ここで言う当たり前と思えることも適切として考えるならば、どれくらい書けるか書いてみてください」と言われたんです。5分でいいからって言われて、実際に書いてみました。
せっかくなのでみなさんも、もしよろしければ想像した社員さんの適切な行動や褒めたいと思える行動、普通の行動もイコール適切ととらえるならば、どんな具体的な行動があるのかを書いてみていただけますでしょうか。では、いきます。よーい、スタート。
日常の行動の中で相手を見て、その1人の方を見て適切さを考えていただく、アウトプットの時間です。人にもよりますが、10個は超えてこないと寂しいと思いますので、ちょっとがんばって考えてみていただけますでしょうか。ぜひ1つでも多くアウトプットしてみていただければと思います。
……では時間となりましたので、いったん終了していただければと思います。どうでしょう、みなさんいくつぐらい書けましたでしょうか? 本当に少ない時には1桁という方がたまにいらっしゃいます。一番多い時は3分間で30個以上、40個ぐらい書ける方もいらっしゃいます。みなさんはいくつ書けましたでしょうか。
「実際にいくつ書けるか書いてみてください」と私は言われたんですが、実はその時にもう1つ言われてました。「丸茂さん。忘れちゃいけないのは『書いた数しか声をかけられない』ってことなんですよ」と言われたんです。
その人の良い面はそこしか見えてないので、その程度しか声をかけられないんですからねって言われたんです。実際に私が5分で書けたのが、16個だったんです。ということは、私はそもそも「彼の良い面を見る」という見方すらできてないことに気づいたんです。
書けた数しか良い面として声をかけられないってことは、そもそも良い面を見られていない。もっと言うならば、上司は部下を観察することが大事だと思っています。
観察とは何かというと、小学校の頃に朝顔の観察日記をやられた方がいらっしゃると思います。あれは、成長の変化を日記としてつけてるわけですよね、そういうふうに考えると、部下の変化を見られてない上司が、実は世の中には多いのではないかと思ってます。
部下の変化が見られなければ、そもそも良い面に声をかけることすら難しいと思っています。適切な行動に注目することで、信念や気持ちが変わってきます。気持ちが変わったら、行動が変わります。結果、不適切な行動が減るというふうに、この考え方ではしております。
あらためて整理をさせていただきますと、ポイントとなるのは2点です。1点目、そもそも人って不適切な行動に注目しがちなんです。特に「日本は」という表現でよいのかもしれませんが、日本って問題指摘型の教育を小さい頃から受けてるんですよね。「何がダメか」という、ダメ出しの教育を受けてるんです。
「不適切な行動に注目しても不適切な行動は減らない」という話がここに書いてありますが、冒頭で私がその方に「問題指摘型の教育は限界が来ている」と言われた話をしました。
もう1つ言われたのが、「丸茂さん、遅刻に指摘をしていったら世の中から遅刻ってなくなりました? 指摘していったらどんどん職場環境が良くなって、みんなが辞めない良い会社になっています? 我々は問題指摘型の教育で育ってきてますが、実際にその限界がきてるのではないかと考えてるんです」という話だったんです。
みなさんに「自分の部屋の中で気づいたことを書いてみてください」と言ったのを覚えてますでしょうか。これが当たってるかどうかわからないんですが、それぞれ気づいた内容をもう一度見てほしいんです。
その内容の中に、「自分の部屋の中のこういう面が良い」という良い面が書かれてるのか、ただ「物がある」という事実が書いてあるだけなのか。もしくは「電気が暗い」「部屋が汚い」という問題点が書いてあるか、いかがでしょうか。
この取り組みをすると、自分の部屋の中の問題点や気になる点に目がいく方がけっこう多いんです。要するに、我々は常日頃、問題指摘型の教育を受けてきた背景から、問題点を見る視点になってるんです。
実際に私がお客さんのところで研修で行って、その結果フォローアップ研修を実施した際に、こんな話がありました。
「部下から提出物を出してもらって、『チェックお願いします』と言われた時に気づいたんです。今まで私は『わかった』と資料を見ながら、『こことここに問題があるから直してね』と返していた。でも逆を言うなら『こことここ』という問題点以外は適切な内容だってことに気づいたんです」。
「だからチェックの際に『こことここ、いいね。これいいね』という話をした上で、『こことここだけ直したら』という表現に変えたら、部下の目の輝きやその後のアクションが変わってきました」という話がありました。まさにこれこそが、問題指摘型から良い面を見る目への変化だと思ってます。
あらためて、自分のものの見方を少し考え直してみてはいかがでしょうか。人の行動は適切な行動に溢れています。当たり前の適切な行動に対して、いかに声をかけるかがリーダーには必要ではないでしょうか。
リーダーの役割は部下育成です。部下に自分でやる気を持たせて取り組んでもらうためにも、いかに部下の良い面、伸び代を見てあげるか。そして気持ちが育っていく過程の中で、問題点はきちんと指摘してあげる。
そうすれば、きちんと本人の中にも気持ちが育った中での指摘ですから、行動の変革を自らやろうという動きに変わってくると信じております。
もし今、たくさんの(良い面を)内容を書けている方は、その内容を見ながら、あらためて自分の部下に対して、1日5個でも、10個でも良い面を見て声をかけようという意識をする。意識的行動ですね。
また、あまり書けなかった方は、部下の良い面を見ていく。そもそも部下は成果を出したいと思ってますから、そう思って接していく努力をされてみてはいかがでしょうか。あくまで「気持ちを育てる」という観点においての考え方になります。
まとめてまいりますが、問題・不適切な行動に上司の目がいくと何が起こるのかは、想像つくのではないでしょうか。「何度も言ってるのに!」「まただ!」「こんなこともできないの?」という怒りの感情が生まれてきます。
このマイナスの怒りの感情を伴ったスタンスで、部下の方や従業員と対応したら、実際はどうなると思いますでしょうか。
人間関係において、怒りを伴ったままでいると、相手との関係性が遠のくことはあっても、近づくことはすごく難しいです。結果的に適切な気持ちが育ちにくく、相手の行動は根本的に変わらない。
「人間関係において近づくことは難しい」と言いました。じゃあ人間関係がなんで必要なのかといったら、仕事の土台だからですよね。崩れている土台の上に高いものが建つはずがございません。
怒られてるのか・怒られてないのかが基準になり、物事の行動を起こすように相手が変わってきますよということを、押さえていただければなと思います。省みることは、自分自身の行動ではないかなと思っております。
上司の顔色を見て仕事するようになりますから、「私には能力がある」「上司は仲間だ、自分をお手伝いしてくれる支援者だ」という相手の適切な気持ちを育てることが非常に難しくなってきます。いかに適切な行動に注目して信頼し合える関係を作れるかがすごく重要だと、とらえていただければと思います。
「ここまで管理職はやらなきゃいけないの?」って思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、部下育成は管理職の役割です。そして、もし今の内容が目新しかったりとか、今までなかなか取り組めてない内容だとするならば、私はこれこそが時代の変化だと思っております。
これから起こるであろう先の問題といいますか、我々日本における課題は、きっと親の介護における離職者、もしくは働き方の変革ではないかと思っております。そういう状況の中でも、「うちの会社で勤務形態が変わっても働きたい」と思うような人材を、今からいかに育てていけるかが重要だと思っています。
今の若手社員が不足することは、少なくとも私が研修をし始めた7年前から、もうずっと言われていた内容で、それは人口動態を見ればわかるはずです。
経営者や人事担当者の方であっても、先を見据えた経営を考える中で、今起こってる出来事もそうですが、少し先を見据えて、自分たちの組織の作り方をあらためて考えてみていただけると幸いです。
弊社はそういうお手伝いもしています。もちろん、いきなり「研修どうですか?」というスタンスはとっておりませんので、今日のお話を聞く中で、一度情報交換だけでもご関心いただける企業さまがいらっしゃったら、ぜひ一度お問い合わせいただけますと幸いです。
以上で私のセミナーは終了させていただきます。本日はありがとうございました。
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