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行動承認マネジメント ~褒める・叱るじゃない若手社員の育て方~(全5記事)

“仲が良すぎる会社”は1人の影響が組織全体を揺るがすことも Googleの調査結果から考える「心理的安全性」の本質

部下の力を最大限に引き出す育成をするためには、どのような関わりをすればよいのか。褒める・叱るではない「行動承認マネジメント」のノウハウを、株式会社シンプルプランの丸茂喜泰氏が解説します。本記事では、生産性の高いチームの特徴をもとに、自社でオープンなコミュニケーションを作り上げていくためのポイントを解説しました。

前回の記事はこちら

管理職が担っている3つの役割

丸茂喜泰氏:あらためて本日のゴールです。私としましては、みなさまがご自身の日頃の行動に照らし合わせた際に、「できているか?」を点検する機会にしていただければなと思って、進めていければと思っております。

では、今日のテーマである「行動承認マネジメント~褒める叱るじゃない若手社員の育て方~」をお話ししていければと思います。この話に入る前に、一応確認でございますが、今回のテーマはマネジメントです。管理職や職場のマネージャーと呼ばれるような存在の人が、部下に対して行っていくものになります。

そもそもなんで(マネジメントが)必要なのかということについて、今日ご参加のみなさんは問題ないとは思いますが、今後こういう内容をみなさんが社内で管理職の方に伝えていくにおいても、押さえていただきたいと思っている点があります。

そもそもプレイヤーではなくて管理職の役割、もしくはマネージャーの役割とは何かを押さえた上で、行動承認マネジメントの話に入ったほうがいいと思っております。

「管理職の役割って何ですか?」と言ったら、大きく3つあると考えております。1つ目は「経営者からの視点」。シンプルに言うと管理職は、自分の上には経営者がいて、自分の下にはメンバーがいる。上と下をつなぐ橋渡しの役割になってきます。

自分の上司である経営者や担当役員、もしくは部長であったり、自分の上の人間が必ずいると思います。

管理職・マネージャーの1つ目の役割は何かというと、その人の視点で相手の話を聞いて、それを自分の中で腹落ちさせて、自分の部下にわかるように伝える役割があります。すごく大変ですよね。でも、まずはこの役割があります。「上と下との橋渡しの役割」が1つ目です。

「褒める」「叱る」が目的化してしまっている上司

2つ目が「自部門のリーダーとして」という役割です。部下に目標を持たせて仕事をさせていく、PDCAサイクルを回す役割ですね。それともう1つが、その実現に向けて「部下を育成する」という役割があるんですよ。

もっとシンプルに言うと、2番は「部下に成果を出させる」という役割なんです。わかりますでしょうか。仕事において、社内からもお客さんからもみんなから喜ばれるような結果を出す。

また極論ですが、その結果を踏まえて部下本人が充実した人生を歩める。自分の部下を育成して成果を出させる。その過程やプロセスを手伝っていくのが上司の役割ですよというのが、2つ目です。

「当たり前のことをそんなに熱を入れて話すな」と思われるかもしれませんが、意外と2番がわかっていない人がいるんです。どういう人かというと、叱ることがゴールになっていたりするんですよ。

部下に成果を出させるために育成をするということではなくて、「なんで言っているのにやれないんだ」「なんでそんなにダメなんだ」「ぜんぜんできていないじゃないか」という視点でしか物を見ない。

今日(のテーマは)「褒める叱るじゃない」と言ってますが、褒めるも叱るも手段であって目的じゃないのに、なぜかそれを目的化して見ちゃう上司がいるんですよ。なぜかというと、「部下が悪いから叱らなきゃいけない」という思考なんです。

でも一番重要なのは、部下が成果を出すために足りないところを教育していくことですよね。もっと言うなら、「部下に成果を出させる」という役割が上司にあるのに部下が成果を出せないということは、上司自身のせいなわけですよ。でも、そもそもそういう感覚を持てない人がいるんですよね。

なので、入り口に立つ位置を間違えちゃうと、「なんでこんな人材がうちの下に来るんだと。人事どうなっているんだ」という視点になっちゃうんです。そうじゃなくて、「リーダーは部下の成果を二人三脚で出す役割なんだよ」という立ち位置がすごく大事になります。

そうじゃないと、今日やる内容についてもよくわからない話になっちゃうんですよ。自分の立ち位置は「部下に成果を出させる」のが役割であって、「部下ができないのは自分に問題がある」という矢印の向け方をちゃんとして、走って行くことが大事ですよというのが2番目です。

プレイヤーとして成果を上げたマネージャーの課題点

ということを含めて、3番目が「管理職としてのレベルアップ」です。マネージャーやリーダー自身が、自分自身をもっと高めていかないといけない。

「今のポジションに自分がいるということは、もっと能力を高めて、もっと上の視点に目線を上げられるようにしていかなきゃいけない」と思って取り組む姿勢が、役割として必要ですよというのが3つ目の視点です。

あまりに簡単すぎて、当たり前の話に思えるかもしれませんが、けっこうこれは重要な部分です。今日の内容とは乖離するのでポイントしか押さえませんでしたが、もしこのあたりが社内のマネージャーの方に押さえられていないケースがあれば、きちんと伝えられたほうがいいと思います。

ちなみに、押さえられていないケースはどんな会社さんが多いかというと、基本的にはプレイヤーとして成果を出した方がマネージャーに上がるケースが多いんですが、その段階でプレイヤーとして成果を出しているということは、本人のやり方の「強み」があるわけですよね。

その延長線上で「マネージャーをがんばってね」という状態を作っている組織は、この3つが落ちていないケースが多いんですよ。なので、マネージャーになったものの、プレイヤーの延長線上でしかマネージャーがいないケースがある。その場合は、いったんきちんと修正をかけないといけない。

その人の強みは強みで大事ですが、マネジメントするということは、多種多様な人材に対して関わりを持たなきゃいけないので、自分の役割を見直さないと視野が狭くなる。自分のやり方だけにこだわったマネジメントになると、結果として組織が歪む可能性が非常に高いと考えております。

部下がやる気を失い、離職率が上がってしまうケースも

余談が過ぎて申し訳ないんですが、私が接点を持たせていただいている、ある中部地区の上場企業さんがあります。この会社さんは毎月社員を2人採用しているんですが、毎月10人辞めているんですよね。グループ全部で従業員が約800人以上いる会社なので、ということは1年で10パーセント減っていく計算になるんですよ。

なんでこんなことになっているかというと、詳細は避けますが、今までのやり方で上に上がってきたあるリーダーの方が、今までのやり方を変えずに接することによって、下の人間がモチベーション下がったり、下の人間がやる気を失ったり成果が出せなくなって、結果辞めていくということが起こっている現状なんです。

この状況に対して着手しない限り離職率は変わらないし、結局人が足りなくて組織がどんどん衰退して弱くなっていく、ということが起こっているのが今の状況です。それくらい、今お伝えした3点はけっこう重要なので、みなさんの会社は大丈夫かもしれませんが、一応押さえ直していただければと思います。

では、あらためて2番の「部下育成」がポイントで上がってまいりました。だからこそ行動承認マネジメント、部下を育成することが大事なんですよということを、まずは押さえていただく。その上で「なんで部下を育てる必要があるの?」といったら、先ほど言ったように成果を出すためなんですよね。

「成果を出すためにはどうするの?」といったら、やはり生産性を上げる必要があります。

生産性の高いチームはAとBどっち?

ここでみなさんに考えていただきたいんですが、今から4問の問題をお出しします。生産性が高い組織はどっちだろうかというのを、ご自身の感覚でかまいませんのでお答えいただけますでしょうか。

まず、問1から問4まで私がバーッとしゃべっていって、最後にまとめて(問題一覧が)出てきますので、そこであらためて考えてみていただければと思います。

チームとして生産性が高いのはどっちか? ということです。1問目は「A 社外でも仲良く付き合う友だち同士」の関係性のほうが生産性が高いのか、「B まともに会話するのは会議室の中だけで、そこを出ればアカの他人」というビジネスライクのほうが、チームとして生産性が上がるのか。

業務、地域、年齢とかによっても変わりますし、一般的に考えるとどっちも大事だと思うんですが、どっちが大事だと思いますか?

2問目にいきます。「A 強いリーダーのもとに階層的な人間関係」があったほうが生産性が高まるんじゃないか。「B フラットな人間関係」のほうが、自由闊達に動くので生産性が高いんじゃないか。あとで(問題一覧はスライドで)まとめて出しますので、どんどん進めていきます。

3問目です。「A 会議中にリーダーがチームメイト全員に等しく発言する時間を与え、それを別のチームメイトが途中で遮ることを許さない」ような空気・ルールのほうが、生産性が高いんじゃないか。いやいや、「B 互いに発言の途中で割って入るのが常態化」しているほうが生産性が上がるんじゃないか。

4問目。「A 仕事時間中に雑談したり、他人の噂話をしたり、週末のプランを話すなど私的なコミュニケーションを交わす」ほうが、生産性が上がるんじゃないか。「B オフィスの中では仕事に専念し、私語は厳禁」のほうが生産性が高いんじゃないか。

あらためて当てはめてみて、ご自身の回答としてはいかがでしょうか。正解不正解ではなくて、自分の考えをアウトプットしていただけますでしょうか。

手元に書いていただいてもけっこうですし、(パソコンで)打ってもらってもけっこうですし、アウトプットの仕方は任せます。別に発表をするつもりもないし、コメントも今回はしません。ただ通常の研修では、少し発表してもらったりもしています。

仲が良すぎる組織の問題点

いかがでしょうか? ご自身のお考えの中で「こっちじゃないか、あっちじゃないか」、もしくは「どっちも大事じゃないか」とか、いろいろあったのではないかなと思います。

私のお客さんの渋谷のIT企業さんは、もともとコロナ前までは毎年バーベキューや社員旅行をすごくやってきた会社さんで、まさにAですよね。

しかし、仲が良すぎた結果何が起こったかと言ったら、お互いがすごく近づきすぎて、1人マイナス因子が生まれたらみんなそっちに引っ張られるという、大事件が起こってしまいました。

それ以来、「友だち作りをしているわけじゃないから、ある程度の距離感を保ってやっていきました」という会社がありましたが、みなさんの会社はいかがでしょうか。

こんな質問をしておいて大変恐縮なんですが、もしかしたらこの内容を見られた方もいらっしゃるかもしれません。出典が載っていますが、『現代ビジネス』の2016年3月10日に出ていた内容です。Googleさんが考えた、生産性が高い組織とそうじゃない組織は何が違うのかという調査結果の内容になっております。

「Googleが突き止めた! 社員の『生産性』を高める唯一の方法はこうだ」ということで、その結果出た答えはこうでした。大変申し訳ありません、(ワークを)やらせておいてなんですが、さっきのパターンで目立ったパターンを見出すことは実はできなかったという回答でした。

唯一あったのが、「『他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感』といったメンタルな要素が重要」だというのが、Googleの答えでした。

みなさんがこれをどうお感じになられるかわかりませんが、それこそIT企業の頂点にいて、機械学習やAI、数字を使ってデータで語るGoogleさんが出した答えが、「他者への心遣いや同情、配慮、共感」。

なんて曖昧な回答なんだろうと、私は最初聞いた時に感じました。これらを押し付けるではなくて、自然にそういう雰囲気がチーム内に醸成されているのが大事ですよ、ということだったんです。

心理的安全性の本質は、自由に意見を言い合えるかどうか

これはこれで大事なんですが、もっと重要な押さえなきゃいけないところがあって。もし、このページを言葉としてメモしていただくとしたら、「心遣いや配慮が大事だ」とだけ書いておけば別に問題ないです。

例えば会社のミーティングで、「みなさん、今後は心遣いや配慮をしましょうね」といったら解決するかと言ったら、もちろんそうじゃないんですよ。なので押さえるべき、もしくは自分の会社で確認しなきゃいけないのは「本来の自分でいられるかどうか?」という要素です。

(Googleが言っていたのは)「『こんなことを言ったらチームメイトから馬鹿にされないだろうか』『リーダーから叱られるんじゃないか』といった不安をチームのメンバーから払拭することが大事なんですよ」という内容だったんです。

ここで考えなきゃいけないのは、「自分の意見を言うと先輩から白い目で見られる」「『お前そんなこともわかんないの?』『何言ってんだ』と思われるんじゃないか」という不安や、「周りから冷たく思わるんじゃないか、できない奴と思われるんじゃないか」という空気が、うちの組織にはないかな? というのを見ることがポイントになります。

「心理学の専門用語では『心理的安全性』と呼ばれる、安らかな雰囲気をチーム内にはぐくめるかどうかが鍵となっています」という回答をGoogleは発信しているんですが、この「安らかな雰囲気」というのは実は無視してもらいたいと思っています。

心理的安全性って「安全」じゃないですか。「安全だから傷つけちゃいけない」と思う人がいるんですが、そうじゃないですからね。自由闊達に意見が言える関係性があるかどうかなんですよ。

例えば「もっとがんばらなきゃダメだよ」「今日はぜんぜん午前中できていないから、その分午後しっかりやって」というオープンなコミュニケーションを組織の中で作っていく。それを、時間を掛けて醸成できているかどうかがポイントになると思っていただければと思います。

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