以前は家業をあまり誇りに思えなかった

青野慶久氏(以下、青野):それでは2組目のゲストをお招きします。京都の万松青果の会長を務めておられます、中路和宏さんです。大きな拍手でお迎えください。ようこそお越しくださいました、ありがとうございます。

中路和宏氏(以下、中路):今日はよろしくお願いします。

青野:よろしくお願いします。どうぞお掛けくださいませ。万松青果さんも9月の『カンブリア宮殿』で取り上げられまして、反響は大きかったんじゃないですか。

中路:そうですね。先ほど(平安伸銅工業株式会社の)竹内さんもおっしゃってましたように、久しぶりに親戚から連絡をいただいたりしましたけど。

やはり一番うれしかったのは、私自身がそんなに家業を誇りに思えなかった人間やったんですよね。ということは、たぶん会社に勤めている従業員も、他の人にものすごく自慢できるような感じではなかったんじゃないかなと、ずっと思ってたんですよ。

それが今回いろんなところでメディアさんなどに取り上げていただいて、自分たちがやってきたことが間違いじゃなかったんだなと。従業員がそう思えるようになったことが一番うれしかったですね。

青野:いやぁ、しびれますねぇ。すごい。

史上最悪のムードで家業を継ぎ、社員の期待にも応えられず

青野:ちょっとビジネスのご紹介をいただきたいなと思うんですけれども、京都の料亭に、野菜や果物を下ろしておられる仲卸でよろしいでしょうか。

中路:そうですね。だいたい、ホテル・料亭・旅館・レストランという感じなんですけどね。中央市場の中の仲卸というのは、本来は野菜の値段を決める仕事なんですよね。野菜の値段ってどうやって決まるんですかというと「はてな?」というのが意外とあるんですけど。

イレギュラーなことはもちろんあるとしても、本当のスムーズな流れで言うと、私たちが競りで買った値段が野菜の価格なんですよね。それを基にして、日々みなさんが買われている野菜の値段が決められていく。私たちも買った商品を小分けして、お客さまに販売する。そういうお仕事ですね。

青野:中路さんのお父さまが立ち上げられたビジネス(でしょうか)。

中路:いや、私で4代目です。

青野:わっ、もう4代目になるんですか。じゃあ、相当歴史がある企業を引き継がれて。入社された時は事業的にはどういう状況だったんですか。

中路:何しろ、もう30年も前の話になりましてね。もちろん私も若かったので、根拠がなくても「できる」と思っていたところがあったんですよね。うちの父も、その時代にとってはやっぱり変革をしたいという人間だったと思うんですよね。それで意外と成果主義などが好きだったんです。

私が入った時は、会社のムードは史上最悪でしたので(笑)。その時に私が入ってきたことで、その当時の従業員にとっては救世主というか、「あ、来てくれた。なんか会社が変わるんじゃないかな」と思っていたと思うんですよね。

ところが何もできるわけないですよね。だって実力も何もないですから。その初っ端で、当時の従業員の期待を裏切ったというところから、まずボタンの掛け違いをしたかなという感じですよね。

やることなすこと失敗で、今日か今か5分後にでも辞めたい

青野:そういう意味では4代続いてきているわけですけれども、事業環境的にも、あまり売り上げが……。

中路:事業的にはスムーズだったんですけれども、やっぱり一番の問題は組織ですよね。その後、やっぱり私もいろんなことをやりたくて、やっては来たんですけれども。もうやることなすこと何もかもすべて失敗で、社員の前でなじられてしまったり。

テレビ(『カンブリア宮殿』)でも言ってましたけど、まぁ、もう本当にひどい目にあったというか。それは本当は自分自身の中から出てることなんですけれども、もう辞めたくてね。よく辞めなかったなと(思います)。

青野:やっぱり会社に行きたくないですよね。

中路:史上最高に行きたくなかったですけどもね(笑)。うちの家内にも「もう辞める」と。今日か今か5分後かみたいな感じだったんですけれども。そう言いながら、なんだかんだで今に至るという感じですね。

稼ぎ頭が大量の得意先を連れて退職、さらにリーマンショック

青野:変わるきっかけというのは、どういったタイミングで何が……。

中路:そうですね。1つは、うちの弟が入ってきてくれたこともすごく大きかったんですけれども。あと1つは、15年前の2006年ぐらいの出来事がきっかけですかね。

やっとこさ会社もちょっとこう、ましになってきたかなぁ~というところで、私の同い年で当時一番会社を引っ張っていった子が、得意先を大量に引っ張って辞めていったんですよね。そこにプラスでリーマンショックが来たんです。そうすると売り上げがもうガタガタになってしまって、どうしようかなと。当然、大赤字ですよね。

でも、その当時の私はまだ若かったこともあって、とにかく毎日どうやって売り上げを上げようかと。当たり前の話なんですけど、どんな会社であれ売り上げや利益が減れば、当然それらを増やす。そういうことを、いろんな本を読んだり人に聞いたりしてやっているんですけど、やればやるほど見事に失敗していくんですよ。

今で言ったら本当に3年ほど、もう「とにかく売り上げを増やそう」と言えば言うほど、下がっていくんですよ。これはもしかして、なんかちょっと違うんじゃないかと。売り上げが下がっていく理由は、もしかしたら自分にあるんじゃないかと思ったんですよね。

ぱっと考えると、例えば売り上げ(を上げること)は「今、どこどこに安くしてたのが高く売れました」とか。なんかちょっと違うんじゃないかと。ぱっと気がついて、これはもしかしたら、本来私が入社してしばらくして考えていた会社とは違う方向に進んでるんじゃないかとぱっと気がついて。

これはちょっと方向転換しないとやばいんじゃないかなと思ったところが、1つのきっかけになりますね。

青野:「売り上げを上げよう」と言っても下がっちゃう。

中路:そうですね。

必死な経営者を見て、従業員がお客さまを顧みなくなっていた

青野:どっち方面に切り替えられたんですか? 

中路:結局、従業員が私の顔を見てたんですよね。本来私たちスタッフは、もちろん営業スタッフであれ事務方であれ、すべての従業員の心はお客さまを向いているのが当たり前ですよね。ところがあまりにも私が必死で、どうにかして売り上げを上げないと、みんなの雇用を確保できないということばかり言うもんで。

全部私の顔を向いてたんですよね。内向きの組織になればなるほど、やっぱりお客さまからの心が離れてしまった。そこで、もしかしたら違うほうに(売り上げを伸ばす道が)ないかと、そこで思ったのが一番大きかったんですよね。

それで、これはもうやめようと。いっぺんみんなで、お客さまに喜んでもらうことだけ考えられないかと。そこから2~3年はちょこちょこでしたけど、あっという間に売り上げが上がるようになりましたね。

青野:おもしろい。「売り上げを上げろ」と言って、(従業員が)自分の顔色を見ているのはちょっと違うんちゃうか。1回、自分のほうを見るなと。お客さまのほうを見てくれというコミュニケーションをされたんですか。

経営者は従業員のために、従業員はお客さまのために

中路:本来は私たち経営者は従業員のために働き、従業員はお客さまのために働く。当たり前のことなんですけれども、従業員も私のために働き、私は私のために働くと、お客さまの本当の意味での信用が得られないという。ここまで紆余曲折したわりには普通の答えだったなというのがあるんですけど。あの時にやっぱり方向転換してよかったなぁと、今では思いますね。

青野:内向きの組織を外向きに変えていく。まさに風土改革だと思うんですが、この切り替えはどんな感じで進められたんですか。

中路:そんなに大層に進めているわけじゃないんですけれども。ただ先ほどもちょっと言いましたけど、私が入って、ずいぶんやることなすことうまくいかなかったんですけど、その時に私はこの会社でいったい何をしたかったのかと。

もちろん売り上げどうこうもそうなんですけど、そもそも従業員が内発的動機で自ら仕事を進んでやって、その結果が成果につながっていく。成果につながった結果、給料が上昇していく。そこで社員全員、そしてその家族全員が心のつながりを持っていて、幾多の苦難を乗り越えていく。

例えば私たちのようにすごく朝が早かったり、けっして労働条件が恵まれているわけじゃないんだけれども、すばらしいスタッフに恵まれて、採用にも成功している。そういういいサイクルを持っている会社を作りたかったんだなと。

そのためには、さっきの話に戻りますけど、やはりものすごくシンプルに考えて、私は経営者であり経営者は従業員のために仕事をして、従業員はお客さまのために仕事をすると。ただ、これを言うのに何年かかったのかなという。

青野:繰り返し繰り返し、伝えながら。

中路:そうなんです。何十年も経ってから今思うんですけど、じゃあこの話を例えば20年前の私に言っても、たぶん響かなかったと。何かに書いてあったり、人から聞いても、その時は「あー、そうかな」とは思うんですけど。

自分が本当にひどい目にあって転んで額から血を出して、それから立ち直ってつかんだ答えというのは、結局、案外もともとあったんだけども、それに気がつくような状況ではなかったのかなと思いますね。

お客さまに喜んでもらえたら「週報」で共有する文化

青野:あぁ、おもしろいですね。やっぱりご自身でつかまれて、それをコミュニケーションしていらっしゃる。でも、本当に『カンブリア宮殿』に出てくる万松青果の社員の方がめっちゃ生き生きしてるんですよ。お客さまのために「こんなん持ってきましたよ!」と言ってね。お客さまが「京都産のキノコないか?」と言うと、京都産のキノコを探してくるんですよね。

お客さまに喜んでもらえた「週報」というのがあって、みんなでお互いに喜んでもらった自慢をするんですよ。それを見ながら、「あいつやるなぁ」みたいなね。すごい文化ができあがっていて、そこにびっくりしますよね。

中路:結局私たちの仕事は、お客さまに喜んでもらうだけのことなんですよね。もちろん前提となる私たちの会社は年功序列で守っていますし、家族主義です。正社員ばかりでやっている会社で、その中でどのようにしてモチベーションを上げていくのか。多大なご批判があるのは、もちろん承知はしてるんですけど。

その中でやっぱり、当たり前のことなんですけれども、お客さまに喜んでもらう。私も含めて従業員がフォーカスできるところは、お客さまに喜んでもらうこと。「ありがとう」と言ってもらう。ただ1点だということに、私たち自身が気がつくようになったことがやっぱり大きかったのかなという気がしますね。

「お客さまのため」と「利益」のバランスを取るには?

青野:そうですね。ちょっと穿った見方をしますと、やっぱり「お客さまのために、お客さまのために」となってしまうと、本当に採算度外視でみんなが走り回るじゃないですか。経営者からすると、「おいおい。それ……もうちょっと利益のことを考えてくれよ」とか。

もちろん、こっちが利益と言い過ぎると、みんなのモチベーションが下がるから、お客さまのほうを向いていてほしい。だけどそうは言っても、利益は利益で気にしておいてもらわないといけない。このへんのバランスって、中路さんの中でどういうふうに取られているんですか? 

中路:答えになっているかどうかわからないんですけど、私は「情報開示や」と思うんですね。いろんなパターンがあるんですよ。確かに、情報開示以外にもフラットな組織であることなどもそうなんですけど。

何も突然宣伝するわけじゃないんですけど、今kintoneを使ってるんです。例えば、kintoneとかサイボウズでクラウドの中で情報を共有して、自分以外の人がどんなことをしていて、どういう仕事をしたらお客さまに喜んでもらえて、さらにいい結果が生み出されていくかということを共有する。

それプラス、評価しないという言い方はちょっとおかしいんですけれども。

青野:評価は給料に反映させない。

中路:給料に反映しないんですけど、数値的なことは実はすべて、日々の利益である日割りの損益分岐点も全社員が知っていますし、今日はだいたいどれぐらい売ってどれくらい儲かって、担当者の売り上げがどれぐらいになっているかを、(データとして)20年間分持ってるんですよね。

特に大事なのはその推移やと思うんですよね。過去3年じゃなくて、20年ぐらいのペースの中で、今自分がどこにいるのかという推移。いつも立ち位置をはっきりさせることが、結局、思いもよらないバランス感覚を自分で養うというか。

青野:なるほど。それぐらいまではこのお客さまに合わせていいという感覚。

一人ひとりが売り上げや利益率を把握し、お互いに情報を共有

中路:結局、過去の推移が2~3年だと、ちょっと道を誤ってしまうところもあるんですけど。ずっとずっと、まだ自分たちが入社する前のデータから持っていると、実はこのお客さまは昔はこれぐらい買っていて、今はなんでこんなに少ないのかなと。

逆に言うと、昔買ってくれなかったお客さまが今こんなに買ってくれてると。じゃあこの理由は何かなというのを情報開示することによって、それが日々の業務の中でリアルタイムですごく活かされています。

私たちにとっては6年前に、最初はサイボウズ(Live)を使わせていただいて、今はkintoneなんですけど、この情報共有というのが、わりとブルーカラーな感じの職種にも実はすごく相性がいいんじゃないかと思っていますね。

青野:おもしろいですね。中路さんから、「売り上げや」「利益や」とあまり言わなくても、ある意味見えていると。みんなに見えているから、そこをなんとなく意識しながらやってくれる。『カンブリア宮殿』の中でも、kintoneの画面が映るシーンがあったんですよ。

そこでけっこう衝撃的だったのは、ある担当の方が「僕の売り上げ○○円です」と。それだけじゃなくて、「粗利××円です。利益率○○円です、××パーセントです」みたいなものをぱっと書き込んで、「こいつやるな」というふうにみんなで見ているシーンがあったんですよ。あれは一担当が、粗利や利益率まで把握しながら仕事をされているということなんですか。

中路:そうですね。逆に言うと意識はしているけど、別にそのためにやっているんじゃないですよね。たぶんですけど、本人たちも日々失敗しながらやってると思います。ただ、失敗しながらでも、意外と風通しのいい組織であったりとか。

売り上げが下がったからどうのこうのというのはないんですけど、やっぱり何かをしなければならないんじゃないか、何かを聞かなければならないんじゃないかと。そういう風土を生み出すには、情報共有であったり、情報がリアルタイムであることはすごく大事なことやと思いますね。

青野:今何が起きているのか、お互いに情報を開示しあって、風を察知するかのように、みんなが考えながら動けるようにすると。

中路:ええ、そうですね。

「売り上げ2倍」を目指さなくても、結果的に達成できる組織へ

中路:私自身は中小企業診断士ではあるんですけど、「ちょっと変わった人」と言われていてね。そもそも私もそうやってきたんですけど、一般的にはまずストレッチした大きな目標を持ち、それを各自の日々の業務にブレイクダウンしていきます。もちろん、それも別に合ってると思うんですよ。間違ってはいないと思うんですけれども、私はちょっと違うんですよね。

例えば目標を「売り上げ2倍」にしたとします。売り上げを2倍にするために日々の業務に邁進していって、売り上げ2倍になった会社。そして、日々の業務の中でお客さまに喜んでもらって従業員に幸せになってもらうために取り組んだ結果、売り上げが2倍になった会社。どちらも結果としては売り上げが2倍にはなってるんですけれども、できあがった組織はまったく違いますね。

どうして私みたいな小さい会社に、このようないろんなオファーが来るのかなと思った時に、偉そうなこと言うなと怒られるかもしれないんですけど、会社としてのあり方の答えの1つなのかもしれないなというふうには思うんですよね。

もちろん企業である以上、売り上げも上げなければいけない、利益も上げなければいけない。それを従業員に還元しようとする会社はもちろんいいんですけれども、それ以外にも、日々お客さまのことを思い、従業員のことを思って仕事をした結果、売り上げが上がる。そっちも実はあってもいいんじゃないかと思うんですよね。

その結果、自分で言うのもなんですけど、昔思い描いていた組織ができあがったというのは、あぁやっぱり間違ってなかったのかなと。そればかりが正解じゃないとは思うんですけれども、やっぱりこれも答えの1つだったのかなと今になっては思いますね。

数十年かけて体得し、経営に落とし込んだ「三方よし」

青野:すごいですね。今たぶん私と同じことを考えている人が多いんじゃないかと思ってるんですけど。『ティール組織』という本がありまして、今中路さんがおっしゃったのはまさにそうですよね。冬山に備える動物たちにわざわざ指示しねえだろと。

一人ひとりがちゃんと冬が来るのを感じていれば、一人ひとりが準備できる。だから危機が起きても一人ひとりが自律的に動ける。これがティール組織だと。まさに中路さんが目指されているのは、この組織なんだ。今ここに日本のティール組織を見た思いがいたします。

中路:実は理論的なこともけっこう好きで。私自身がそうなったからこそ、いろいろ本を読んだり、内発的動機付け理論というものは知っていたんですけど。でも知ってたのとやったのでは、ぜんぜん違うんですよね。

三方よしという言葉があるじゃないですか。売り手よし、買い手よし、世間よしと。近頃よく言われるんです。「中路さん、経営三方よしですね」「え、そうだったんですか?」みたいな。

青野:なるほど(笑)。

中路:ただ、今思うと、僕は何も三方をよくやろうと思ってやったんじゃないですよ。日々泥まみれになり、つまずいて、ひどい目に遭って、滅茶苦茶な目に遭いながら、自分の中で答えを見つけた。それが三方よしやったんですよね。

僕も三方よしを知らなかったわけじゃないですよ。自分がつかんだ答えが、「なんや、三方よしかい」みたいな簡単な答えだったんですけど、それをつかむのに数十年かかった。

その数十年かかった答えが、結局、三方よしを知っていたからできたんじゃなくて。本当は、昔の人もやっぱりこういうふうにやってたんだなという……。勉強するのが悪いとかじゃないんですけど、やはり自分の中でつかんだ答えが、結局は理論的にも正しかったんだなという後付けにはなるんですけども。

本来この理論も、やっぱり勉強して自分で咀嚼した中でつかむことが必要じゃないかなと、今となってみれば思いますけれどね。

青野:今はいい型があるので、「これをやりなさい」と言っても、やっぱりその本質が何なのか。本質は、本当に一人ひとりのお客さま、一人ひとりの社員との対話であったりする。

中路:そうなんですよね。確かに三方よしって、あぁそうかと思うんですけど、できるかと言うと、なかなかできないわけで。さっきもちょっと言いましたけど、やってきたことは、結果として間違ってはいなかったのかなというふうに。途中経過はわからないですけど、会社としてのあり方としては間違ってなかったのかなと思いますね。

自分のためよりも、人のために生きるほうが「自分のため」

青野:おもしろいですね。やばい、残り時間が少なくなってきてしまいました。もしよろしければ、さらにここから中路さんはどこに向かって向かわれようとしているのか。最後に今後のビジョンを、ちょっとお話しいただけませんでしょうか。

中路:そうですね。昔思っていた会社にはなったと思うんですけれども。今すごく思うのは、自分もそうだったんですけど、企業としての答え・経営者としての答えというところで、ちょっと迷走してるんじゃないかという思いがあります。

確かに目標やビジョンを持つことは当たり前のように正しいんですけれども。それよりも、まず「自分たちが今やらなければならないことは何か」ということに焦点を合わせて、日々ベターな方法を探し、凝り固まった組織じゃなくて、流動的でありながら心はつながっている会社を広めていきたいという感じがすごくあります。

なぜかと言うと、私自身が今思う失敗の原因は一番簡単なことです。私は自分自身のためだけに生きていたと思うんですよね。自分のために生きようとすると、自分のためにならない。人のために生きると自分のためになる、そんなことを今すごく思っています。年齢を経たせいかもしれないんですけど。

そういうふうに、今悩んでいらっしゃる経営者の方とか会社さんのために、こんなのもあるんだよ、ということをちょっと発信できたらすごくうれしいなと思いますね。

青野:それはぜひ発信していただきたいですねぇ。今日も本当に心動かされましたけれども、その言葉を待っている経営者が、今まさにもがきながら苦しみながら、何か光を探そうとしている人たちがね。

中路:僕はそれは正しいと思いますね。もがいて苦しんで、なんて言うんですか……。きれいな答えを探しすぎてはるんちゃうかと思うんですよね。僕もショートカット大好き人間なんでね、それはわかるんですけど。やっぱり日々ひたむきにやることが、結局はくるっと返ってきて自分たちのためになるのかなという気はしますね。

「自分たちは何ができて、誰のために働いているのか」という問い

青野:簡単な道を探せば探すほど、実はそんなに簡単じゃねえよということに気づくという。

中路:そうなんですよね。

青野:おもしろいですね。ぜひこの考えを、いろんな方に広めてくださいませ。とてもいい話をおうかがいしました。それでは、大きな拍手でお送りしたいと思います。中路さん、ありがとうございました。

中路:ありがとうございました。

青野:さぁ、いかがでしたでしょうか? 2社ともユニークでしたね。その中でも、やっぱり共通点もありましたよね。何かゴールがこうあって、こうあらねばならないというところから落とすのではなくて、柔軟であること。

「今、僕たちは何ができて、誰のために働いているんだろうか」。そんなところを問いかけながら、まさにこの日々の業務をやっている。その中に柔軟性が生まれ、気づけばうまくいっているという流れなのかな、とお話をうかがっていて思いました。

私ももう一度、ちょっと気を引き締めてがんばっていきたいと思います。それでは「Cybozu Circus Osaka」、こちらですべてのセッションが終了いたしました。最後までご参加いただきまして、誠にありがとうございました。どうぞ気をつけてお帰りくださいませ。

どうぞ引き続き、サイボウズをよろしくお願いします。それではみなさん、また来年お会いしましょう。ありがとうございました。

(会場拍手)