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Cybozu Circus Osaka 特別講演(全2記事)

2022.02.24

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経営も商品も「こうあるべき」に囚われなくていい 昭和の「突っ張り棒」を生まれ変わらせた、三代目夫婦の挑戦

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する、クラウドサービスの総合イベント「Cybozu Days 2021」。 今年のテーマは「LOVE YOUR CHAOS」と題し、めまぐるしく変わる混沌の中で、変化の波を乗りこなす柔軟さを追求する思いが込められています。本パートでは、大阪と京都にそれぞれ拠点を置く、歴史ある2社の経営者による特別講演の模様をお届けします。前半では、誰もが知る「突っ張り棒」の会社・平安伸銅工業株式会社が挑む、柔軟な組織づくりと型破りな取り組みを紹介します。

『カンブリア宮殿』で注目を集めた2社が登場

青野慶久氏(以下、青野):みなさまこんにちは、サイボウズの青野です。さぁ、2日間に渡って開催してきました「Cybozu Circus Osaka」ですけれども、最後のセッションとなってしまいました。うわ~、残念ですね。

でも、去年オンライン開催しかできなかったことを思うと、こうやってたくさんのみなさまに集まっていただけて、本当にうれしいです。最後の特別講演は、2組の会社の経営者の方をお招きしてお話をうかがっていきたいと思います。

実はこの2社は共通点がございます。まず1つは、2社とも関西の企業であることですね。平安伸銅工業さまは大阪の会社で、万松青果さまは京都の会社です。もう1つは、実は2社とも今年(2021年)『カンブリア宮殿』に出ています。

すごくないですか? 『カンブリア宮殿』は日本のいい会社をどんどん紹介していく番組ですけど、年間に50社ぐらいしか紹介できないわけです。そこになんと、平安伸銅さんが8月、そして万松青果さんが9月に登壇されているということで。まさに今、社会が注目するこの2社の経営者にお話をうかがえるということで、私も大変楽しみにしております。

それでは時間ももったいないので、さっそくお迎えしたいと思います。まず1社目は平安伸銅工業の代表取締役をされてらっしゃいます、竹内香予子さん。そして常務取締役をされていらっしゃいます、竹内一紘さんをお招きいたします。大きな拍手でお迎えください。

(会場拍手)

ようこそ、「Cybozu Circus」へお越しくださいましてありがとうございます。

竹内香予子氏(以下、竹内香予子)、竹内一紘氏(以下、竹内一紘):よろしくお願いします。

昔ながらの「突っ張り棒」が、予想外の進化を遂げていた

青野:お掛けくださいませ。ちょっと派手な登場ですみません。いつもこんな賑やかな感じでやっております。ぜひ最初にビジネスのご紹介をいただけたらと思うんですけれども。まずは、この「突っ張り棒」の会社という認識でよろしいんですよね?

竹内香予子:はい。そうです。突っ張り棒のトップシェアメーカーで、ネジ釘要らずで取り付けできる機能を活かして、「DRAW A LINE」や「ラブリコ(LABRICO)」という新しいジャンルにも挑戦している会社です。

青野:いや、もう『カンブリア宮殿』を見てびっくりしました。まず香予子さんのおじいさまが、この突っ張り棒の発明者でいらっしゃると。

竹内香予子:そうですね。もともと海外にあったものを日本に持ってきて、日本らしくアレンジしたものになります。

青野:もう今や暮らしの中では欠かせないものを、日本人が発明したんだということで、それはすごくうれしかったんですけどもね。すばらしい。この突っ張り棒は昔からあるんですけれども、最近はこのラブリコという新しい路線と、DRAW A LINEという新しいブランドを出されています。今こちらに置いてあるものも、DRAW A LINEの一商品になるわけですか? 

竹内香予子:そうなんです。「一本の線からはじまる新しい暮らし」というブランドなんですけれども。もともとは突っ張り棒にいろんなパーツをアレンジして使っていただいて、インテリアのように使っていただけるというものだったんですけど、それが派生して、今は突っ張らない……。

青野:移動できる、突っ張らない突っ張り棒。

竹内香予子:そうです、動いちゃうという(笑)。

青野:不思議、不思議。おもしろい。ここは取り替え可能でいろいろこう……。

竹内香予子:そうなんです。フックやテーブルを交換できる仕組みになっています。今まで陰で支えていた突っ張り棒が、今度は表で部屋の中心として活躍してくれるというブランドです。

青野:みなさんがイメージされる突っ張り棒って、この上の写真だと思うんですよね。でも、このDRAW A LINEになるともうインテリアですよね。なんかおしゃれな感じの突っ張り棒だったり。それからラブリコという、木材に付けると棚などが作れる、新しい商品も開発されているということですよね? 

竹内香予子:はい。

成功のカギは、夫婦の強みを活かした二人三脚の経営

青野:すごいですね。『カンブリア宮殿』に出られて、相当いろんな反響があったかと思うんですけれども、いかがでした? 

竹内香予子:すごくたくさんの方から応援のメッセージをいただきました。私たちはどちらかと言うと、「ビジネスどやぁ!」みたいな感じじゃなくて、「夫婦でがんばりましたよ」という、『カンブリア宮殿』にしては珍しいストーリー展開だったので。

青野:そう、珍しい。

竹内一紘:あとは僕たちが知らない親戚からも連絡をいただいたりしまして。そこも平安伸銅のルーツと言いますか。過去につながっていた方からご連絡をいただいたりしてお話もできたので、何かおもしろいきっかけになったかなと。

青野:おもしろい。うれしかったんでしょうね。自分が関わっていた突っ張り棒のビジネスが、今こんなかたちで注目されるようになって。すばらしいですね。「目立ちやがってこの野郎」みたいな、何か逆風みたいなものはありませんでした? 

竹内香予子:それは意外となかったですね。

竹内一紘:ただ裏話で言うと、どちらかと言うと香予さんが自分を落とすようなかたちのストーリーを作ったので、ちょっとしょぼんとしていたという。

青野:(笑)。

竹内香予子:夫婦でがんばってきたと言うことで。ダイバーシティの文脈で言うと、どちらかと言うと今までは「女性が表に出てがんばってます」というメッセージを投げかけたほうが共感を得やすかったり、メディアにも取り上げていただきやすかったんですね。なので、私が表に出る機会が多かったんです。

ただ実質夫婦で二人三脚で経営しているので、今回はあえて主人もしっかり表に出て、メンバーももちろんですけれども、2人がリードしてきたんだよと伝えたかったので。夫を盛り立てるために、私はちょっとアホやけど楽しくやってたら、みんなついてきてくれたというふうに投げてしまったところがありました。

竹内一紘:実際のところで言うと、僕の良さと彼女の良さは違うので、夫婦の強みを活かしていました。僕はどちらかと言うと引き立てるかたちだったんですが、彼女はビジョナリーな人なので、例えば広報戦略や未来を見るようなところ、風呂敷を広げるところが得意で。やっぱり、2人で補完しあいながら会社を経営しているなと思いますね。

青野:今お話を聞いていても、いいタッグだなという感じがしますよね。

元新聞記者と県庁の公務員が、「突っ張り棒」の事業を継承

青野:すばらしいですね。もともとはお二人とも、平安伸銅工業さんじゃないところで働かれてたわけですよね? 

竹内香予子:そうです。私は新聞社で記者をやっていまして、カズさんは……。

竹内一紘:僕は設計事務所で働いた後に、滋賀県庁の建築の職というので公務員もやっておりました。

青野:新聞記者と公務員をされているところから、この歴史ある突っ張り棒の会社に入社されたと。どんないきさつで入られたんですか。

竹内香予子:父の体調が悪くなったタイミングと、私がもともと事業経営をしている家で育った人間だったので、やっぱり自分で思うようにやりたいという気持ちが強くて。組織で働くのにちょっと馴染まなかったというタイミングが重なって、父から声をかけられて家業に戻ったことが私のきっかけなんです。

青野:それでカズさんが入られたのは、どういう流れになるんですか。

竹内香予子:その後、私が会社をリードしていこうと悪戦苦闘してるんですけれども、やっぱり経営の専門ではなかったので、まだまだ力足らずで、改革が十分に推進できなかった。それで、なんとか一緒に戦ってくれる仲間が欲しいというところで、主人に「一緒にやってくれ」と声をかけました。

家計のリスクよりも「夫婦の危機」に背中を押されて決断

青野:そこに入っていくのも、なかなか勇気が要りますよね。

竹内一紘:そうですね。

青野:公務員を辞めて……。

竹内一紘:なので、最初は断りましたね。

青野:(笑)。そこはやっぱり、最初は断られたんですか。

竹内一紘:そうですね。僕の人生設計の中では、中小企業のリスクが最初に頭に入ってしまったので。そういう意味では公務員は安定していますし、彼女に思いっきりやってもらえる環境は、僕が公務員で安定することによって成り立つんじゃないか。夫婦としてはそれがいいんじゃないかと思っていました。

青野:それでもなおかつ「入ろう」と思ったのは、何が最後の引き金だったんですか。

竹内一紘:やっぱり彼女の責任がどんどん重くなるとともに、土日も仕事をするようになりまして。僕は公務員なので休みもしっかりあるんですが、家族として見た時に、ある意味休めないというか、家族で遊べないと言うんですかね。僕は彼女が愚痴を言っているのを聞いて、しんどそうだったので「こうしたらいいんじゃない?」と言うと、すごくキレられるんですよね。

竹内香予子:(笑)。

竹内一紘:「それだったらあんた入ってよ」みたいな。

青野:なるほど。口だけ出すなと言うね。

竹内香予子:その時はもう必死だったので、もちろん外部からパートナーを得るところもがんばったんですけど、やっぱり経営者の器以上の人材は来ないと思うので。その当時は、外から経営人材を獲得するのは現実的に厳しい状態でした。本当に半分脅したようなところもあったと思います(笑)。

青野:「言うんやったらやってよ!」って。

竹内香予子:そうなんです。それぐらい必死だったという感じです。

竹内一紘:どっちにしても、このままだったら夫婦は終わるんじゃないかという危機感で(笑)。(家計の)リスクよりもその危機感のほうが大きくなって。

老舗企業で新たなブランドを立ち上げる難しさ

青野:それで入られて、見事な役割分担というか、新商品のブランドを立ち上げられています。これはどういう役割分担をされているんですか? 

竹内香予子:私はわりと記者の時のやり方で、現場に潜入取材するようなところがあるんです。「これ流行りじゃないかな」と思ったら、そのコミュニティに入っていくようなことをやっていたんですけど、一紘さんがそれを受けて……。

竹内一紘:そうですね。もともと僕は建築デザインをやっていましたので、形を作るところは興味があります。そこで実際彼女が潜入取材して「こんな市場があっておもしろいことができそうだよ」という情報をもとに、「コンセプトはこうで、この形がいいんじゃないか」と僕が提案する役割分担です。

青野:おもしろいですね。プロモーション、マーケティングと設計開発ということなんですね。

竹内一紘:そうですね。

青野:でも、実際に新商品を立ち上げてきたら、ぜんぜん違うわけじゃないですか。もちろん物も違いましたけど、見せ方も違う。当然、売り方も価格帯も変わってくるあたりは大変じゃなかったですか。

竹内一紘:特にこのDRAW A LINEはジャンプ幅が大きい商品だったので、販売先が今までとは異なります。初めて外部のデザイナーさんを入れてやっていますので、社内でも外部での軋轢が生まれるというところで。

このフックでだいたい2,500円ぐらいするんですけど、僕が最初に試作した時には「こんなの誰が買うんだ」と。それも突っ張り棒の一番強力タイプで、2メートル80センチもあるもので、この小さいフック1つと同じくらいの金額なんですね。そのあたりは、すごくジャンプがあるところに突入したなという(笑)。

「誰がこんなの買うねん」と言われた商品に、実績がついてきた

青野:商品の価値の作り方としては、とにかく原価をしっかりコントロールして、低価格で使ってもらうことを狙ったものと、デザインをしっかり入れて高付加価値で出すものと。このへんは社員の人たちとどうコミュニケーションをしていくんですか? 

竹内一紘:正直言うと、スタートの時には社員とのコミュニケーションができなかったなと思いますね。僕たちの思いだけで突き進む中で、新規のメンバーを入れていって、少人数のプロジェクトチームみたいなかたちで、メンバーがほかの社員と少しずつつないでいく。そのプロセスの中で例えば、初めて出展した展示会で「ベストバイヤーズチョイス2016」という、1番の賞をいただいたりしたんですね。

そうやって実績がつくことによって、少しずつ社員の理解が生まれていって、商品を先行発売した時は、お店に並んでくださった方もいらっしゃったぐらい反響がありました。そういったことで、今まで「誰がこんなの買うねん」と言っていたスタッフも「この商品、売れるんだ」というふうに、ちょっとずつ広がっていった感じですね。

青野:なるほど。すごいジャンプアップですね。ずっと継続されてきたビジネスの中で、新しいものを立ち上げる時には当然反発もあります。「意味わからん」という人もいる中で、一気にみんなを口説いて巻き込むのではなくて、まずはスモールスタートでやってみて実績を出す。外部から評価されたりすると、「お、あれはあれでありなんだ」みたいな感じですかね? 

竹内一紘:おっしゃる通りですね。今では採用でも、この商品を見て「うちで働きたい」と言って入ってくれるメンバーまで増えてきて、循環ができています。

子育てと会社経営、夫婦の役割分担は?

青野:そしたら(商品を)見る目が変わってきますよね。お客さんだけじゃなくて、社員も連れて来てくれると。うわー、すごい。お見事ですね。

でも、夫婦で経営をされてるということで、ご苦労もけっこうあるんじゃないかと思うんです。あまり立ち入られたくなければ、お答えいただかなくてけっこうなんですけど、夫婦の難しさというのはないんですか? 

竹内香予子:そうですね。夫婦で経営されている企業さんも多いと思うんですけれども、やはり役割分担が決まってないと、船頭が2人になってしまって揉めたりすることはあるかなと思います。

私たちも役割分担はすごく意識しています。特に私が出産育休を取ったタイミングで、多くの実務をメンバーにもカズさんにも引き継いで、手放したんですね。それで私は外向けに発信していく役割で、カズさんが実務をしっかりマネジメントする役割になりました。社内では私がCVO(チーフ・ビジョナリー・オフィサー)で、(一紘氏が)CEOというふうに役割分担をしています。

青野:あ、未来を描く。

竹内香予子:そうです。

青野:(一紘氏は)CEO? 

竹内香予子:はい、経営の責任を。

竹内一紘:そこは会社法上の役割とはまた違うところで、僕らの子どもが生まれて育休体制の中での役割はこうだよということで、社外と関係なく社内の調整をして、役割を分けています。

青野:なるほど。お子さまが生まれたのをきっかけに役割分担を見直しながら、今その時に合わせて、いいあり方を作っていらっしゃると。

竹内一紘:それも一時的なものだと思っています。今後の僕らの暮らしも会社の役割も、その時々に応じて必要な役割に変えていったらいいんじゃないかな。今のCVOも変化していったら、僕のCEOという役割も変化していくんじゃないかなと思います。

経営とは「求められている役割」を柔軟に演じること

青野:変化していくのが前提なんですね。私は今は、サイボウズの代表取締役社長なんですけれども、揉めた時は(役割として)最終的に誰が決めるというふうにしておかないと、対立が起きた時に難しいんじゃないかなと思うんですけど、それはいかがですか。

竹内香予子:ビジネスに関しては、カズさんが商品開発や営業の最終意思決定をする立場です。

青野:ただビジョンに関しては、カヨさんが……。

竹内香予子:「中長期的にこういう未来を描いていきたいんだよ」という、ちょっとふわっとした内容にはなるんですが、そういう旗振り役は私が担っています。

青野:なるほど。そうすると、組織って頂点が2個あってもいいんだなと思いましたね。そこがお互いにうまく理解しあえていれば、特に揉めて困ることは……。「いや、それはあなたが決めることなので、私はこう思いますけど、最後は決めてください」という感じになるんですか? 

竹内香予子:そうです、そうです。

竹内一紘:今は僕がCEOで、最終意思決定をすべてしているんですけれども。それも彼女がより子どもの面倒を見るという、夫婦での意思決定があった上で、だったら現時点では会社のことは僕が決めようという決定をしていますね。

青野:なるほど。やっぱり柔軟ですよね。あくまでも今はこれがベストだけど、変わるかもしれない。

竹内一紘:そうですね。2人の(経営の)リソースと家族のリソースを考えた時に、これしかないんじゃないかということで。

竹内香予子:また社内の人材も育っていくと思うので。私たちにとって経営は、求められている役割を柔軟に演じるような意味だと思っています。もともと何かの流れに呼ばれてきたようなところがあるので。

私自身の経歴から考えても「絶対経営者になりたい」とか「親分になりたい」というものが、自分のパーパスとしてあったわけではなかったので。いろんな巡り合わせで、今求められていることをやっていくというふうに、2人の役割分担が決まっていっていますね。

仕事も家庭も二人三脚の二人が、夫婦喧嘩したらどうなる?

青野:これがやっぱり新しい経営なんでしょうね。おもしろいですね。ただたぶん、みなさんももやっとしてると思うんですよ。こんなにうまくいく会社があるのかと。夫婦喧嘩したらどうすんねんという。みなさんもすごく聞きたいですよね。夫婦喧嘩したら……。

竹内香予子:聞きたいですか!? 本当に(笑)。

青野:いやぁ、もちろん仕事で役割分担をしてうまく回っていても、家に帰っても一緒に生活をされているわけだから、そこでいろいろ意見の違うこともあって。お子さんもいらっしゃったり、いろいろ大変なことがあると思いますけど。そのあたりは、うまく仕事とプライベートを切り分けていらっしゃるんですか? 

竹内香予子:やっぱり現実は今もしんどいから、家の中で「その仕事の話せんでくれや」みたいな時に、わーっと言われて、めっちゃ機嫌悪くなることはありますよ。

青野:家の中でもけっこう仕事の話をされるわけですね? 

竹内香予子:私たちの場合、境目がないタイプです。

竹内一紘:そうですね。そういう意味では喧嘩もしますね(笑)。

青野:それはいろいろと思うところもありますよね。「靴ちゃんと脱げや」みたいなところからね。

(一同笑)

会社で大喧嘩はしなくても、社員がなんとなく察する空気

青野:実は前打ち合わせの時に、このお話をお聞きしていたら、やっぱりお二人の話だけじゃちょっと実情がわからんぞということで、今日は広報の方にもお越しいただいています。家庭の夫婦喧嘩が会社に持ち込まれてないのかどうかを、広報の目から語っていただこうと思います。

大きな拍手をお願いします。広報のベルさんは顔出しNGということなので、平安伸銅のロゴのお面で。夫婦で経営されている会社で働いていて、このあたりはいかがですか? 

ベル:そうですね。喧嘩しないかと言われたら、してると言えばしています(笑)。

青野:(笑)。やはり社員も気づいているわけですね。

ベル:そうですね。そんなに目の前で大きな喧嘩をされることはなかったんですけど。たまに出社の時に、明らかに今日はどっちか機嫌悪いなというのがあって、たぶん喧嘩してはるかなというぐらいの。そんなに頻繁ではないんですけど、やっぱりお家でもずっと一緒だと思うので、ちょっと喧嘩されてるのかなと感じる時はありましたね。

青野:これは社員のみなさんは、「あぁ、今日なんか機嫌悪そうやわ、ちょっと距離置いとこ」という感じなんですか。

ベル:出社の時はそういうこともあったんですけど、今はもうほぼ在宅になってまして、たぶん喧嘩してることは他の社員はわからないんじゃないかなと思いますね。

青野:そうですか。ありがとうございます。ちょっとリアルで生々しくて、大変楽しく聞かせていただきました。

(一同笑)

ベル:とんでもないです。ありがとうございました。

全米デビューを狙う「つっぱり棒博士」

青野:いや、おもしろいですね。本当にお二人からは、何か新しい経営のかたちをすごく感じますよね。やっぱりお話を聞いてて思うのは柔軟です。お二人とも「こうあらねばならない」とか「自分がこれをやらないといけない」ということに縛られてないと感じるんですけど。いろいろと変わっていく、この多様なかたちについて、どう捉えておられるんですか?

竹内香予子:そうですね。私自身新しいもの・ことがすごく好きなので。もともとあった形をそのまま継承するのは、なんだかつまらないんですよ(笑)。

新しいこととか自分が知らないことを知っている人たちと出会って、一緒に働いていくことが好奇心を満たしてくれる。それが経営をしている理由だったりするので、組織の多様性や新しいことへのチャレンジは常に意識しています。社内の文化として根付くことを自分の楽しみとしてやっています。

青野:やっぱり新しいことにどんどんチャレンジするほうが楽しい。

竹内香予子:そうなんです。

青野:YouTubeとかもされてますものね。おもしろいので、ぜひちょっと『つっぱり棒研究所』でスマホで検索してみてください。

竹内香予子:『つっぱり棒研究所』で、つっぱり棒博士と名乗ってやっています。それも今後、全米デビューを狙ってます。

青野:アメリカに突っ張り棒を。

竹内香予子:はい、行きたいんですよ。私、そんなことばっかり言ってます(笑)。

青野:やっぱりビジョナリーですね。本当におもしろくてですね。

竹内一紘:こんまり(近藤麻理恵)さんに続けというところで。

竹内香予子:そうなんです。こんまりさんの次は私だって、ずっと勝手に思ってるんです(笑)。

突っ張り棒ユーザーに、ファンや仲間になってもらう場づくり

青野:こんまりさんはコンサル的な立場ですけど、(平安伸銅工業株式会社は)ツールがあっての片付けじゃないですか。(突っ張り棒という)道具があるって強いんやなとか。YouTube、本当におもしろいんですよ。「え、そこに突っ張り棒を使えるんだ!?」という新しい発見がどんどん出てきますよね。あれもみなさんでアイデアを出されて? 

竹内香予子:そうなんです。今の時代、研究所の事務局メンバーと一緒にアイデアを考えたり、ユーザーを巻き込んでいくことがめちゃ大事やなと思ってまして。いかにユーザーさんに、私たちのファンやある種の仲間になっていただけるかが大事だと思います。

それで、つっぱり棒研究所で「つっぱり棒マスター認定講座」というものを作って、一般ユーザーさんからマスターさんを育てて、その方たちとも一緒に動画を作ったりセミナーをやったり。

青野:コミュニティマーケティングですね。すごい。私がつっぱり棒マスターになりたいと言ったら、どうすればなれるんですか? 

竹内香予子:つっぱり棒マスター認定講座を受けてください。

青野:まず講座を受ける。テストがあるんですか? 

竹内香予子:テストがあります。

青野:なるほど、講座を受けてテストを受けると……。整理好きの人は取りたいですよね。妻もすごく整理好きなんですけど、これは確かに人気が出るかも。こんまりさんの次は、香予さんが全米に行かれるんですね。Netflixで。

竹内香予子:はい、そう思っています(笑)。

青野:おもしろい。

竹内香予子:Netflixかぁ。うん、いいな(笑)。

1本の線から始まる「私らしい暮らし」

青野:そういう意味では、突っ張り棒自体がまだまだ開拓しがいのある分野ということですよね。実は冷蔵庫の中に付けるとめちゃ便利とか、びっくりしますよね。横に付けるイメージですけど縦に付けたらまたぜんぜん違うものになるという、「その発想はなかったわ」とかね。今後全米デビュー以外に考えておられるシナリオで、何かお話しできることはありますか。

竹内香予子:お話しできることはなんでしょうね……。

竹内一紘:そうですね。たぶん僕たちは次にどうありたいかということを感じる役目なので、今はラブリコはDIYという新しいジャンルで突っ張り棒の可能性を引き出して、DRAW A LINEはインテリアというところで新しい可能性を引っ張り出したんですけど。

僕たちがやりたいことは「私らしい暮らし」ということで、人それぞれの暮らし方をサポートできるのが突っ張り棒のいいところだなと、今再定義しています。それを踏まえて、次の私らしい暮らしはなんなのかというところで、もう1つ大きいキーワードで次のチャレンジをしていきたいなと思います。

青野:なるほど。またどんどん変化していきそうですね。

竹内一紘:そうですね。社内の組織をこうしたいとか、このあたりでビジョンはありますか。

「こうあるべき」という思い込みをなくせば、まだまだ進化できる

竹内香予子:多様な人材が集まるようにしたいと考えています。例えば、最近はメンバーにアイデアを出してもらって、自分たちで就業規則を改定する取り組みをしています。LGBTQの方たちや事実婚をしている方たちも、法律婚と同じように福利厚生が使える制度を作ったり。そういうことを繰り返しながら、多様な人たちが活躍できる土台を作ろうとしていますね。

青野:おもしろいですね。従業員が「就業規則をこうしてほしい」と言えるわけですか? 

竹内香予子:そうですね。

青野:いいねと言ったら、もう取り込んじゃうと。すごく柔らかいですね。すみません、もうちょっとお話を聞きたいところですけれども、お時間になってしまいましたので、こちらでいったん締めさせていただきたいと思います。

最後にもう一度大きな拍手をお送りくださいませ。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

竹内香予子、竹内一紘:ありがとうございました。

青野:いやぁ、柔らかいですよね。ありがとうございました。またぜひホームページのほうもご覧いただければと思います。私も本当にびっくりしました。突っ張り棒ってまだまだいくらでも進化できるんだ。やっぱり自分が「これはこうあるべき」と思い込んでいたんだなということを痛感させられますね。

今後も平安伸銅さんの新しいプロダクトライン、また組織がどう発展していくのか、大変興味深く楽しみにしております。

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