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人生100年時代の活き方会議 働けないのか?働かないのか?働く気がないのか? おじさん×学び直し(全3記事)

会社から押しつけられる「学び直し」は死ぬほど面倒くさい 社会人が学び続けるための「環境」の作り方

人生100年時代において、社会人の「学び直し」(リカレント教育)が注目されています。学びをアップデートしながらキャリア自律を図る動きがある一方で、年功序列・終身雇用が多い日本企業では、給与は高いのに事業への貢献度が低い「働かないおじさん」問題も起きています。そこで今回は、「おじさん×学び直し」をテーマに行われたイベントの模様を公開します。『終身知創の時代』著者で学び直しコストの研究家である名久井康宏氏と、『「働かないおじさん問題」のトリセツ』著者・難波猛氏、そしてキャリアコンサルタントの中村英泰氏が登壇。本記事では、学び直しに関する誤解や、継続のために必要なことが語られました。

会社の「やらねばならない」の軸だけでの学び直しは効果がない

中村英恭氏(以下、中村):難波さん、今のページをちょっと戻していただいていいですか。ここなんですけど、ここがたぶん、名久井さんのやっていらっしゃる行動経済学と通じるところなのではないかと思います。会社って、どちらかっていったら自分にとっていいことをやってくれるわけじゃないですよね。

これは会社の理論や考えがあって、利益を出すためにやっている。でも僕は必ずしも利益を出せる時ばかりではないわけじゃないですか。そうした時に、どちらかといったら「ねばならない」を押しつけてくるわけですよね。

名久井康宏氏(以下、名久井):うん。

難波猛氏(以下、難波):そうですね。

中村:そうすると、会社の中でなんとか学んでいこうすることの、僕はそこが限界値なんじゃないかなと思っているんですよね。そこを持って外に出ていくというか。

難波:そうですね。だから会社のマストの軸だけで勉強しようとすると、死ぬほど面倒くさいわけですよ。

中村:思いますよね(笑)。

難波:うん。

中村:それでうまくいった人がいるかなって。

難波:それ(会社に期待される役割)が、本人のやりたいことと本当にリンクしているんだったらいいんですけど。

中村:なるほど。確かに。

難波:自分のやらなきゃいけないことで、好きだって言うなら、たぶんコストってかからないんですよ。例えば私も、名久井さんの本や田中研之輔さんの『プロティアン』とか、東洋哲学の本を読むのって、自分が好きだからいくらでも読めるわけですよ。

中村:読めますよね。

難波:でも、嫌いなプログラミング言語を会社の命令だからって読まされても、1ミリも頭に入らないので。

中村:(笑)。

専門家が考える「学び続ける」ことの定義

難波:その点だと、自分がどこの領域だったら脳みそが受けつけるんだろうとか、興味を持てるんだろうかということを決めて、とにかく周りと交渉して、その分野で何か自分の飯の食いぶちを探すっていうかたちに。willを重視するって大切だと思うんです。

中村:そうなんですよね。だから今、難波さんがおっしゃったのは、主語が自分ごとになっていくと、例えばそれがプログラミングだったとしても、自分で取りに行った時には、それはたぶんおいしく食べられると思う、一方それが「ねばならない」って言われると。

名久井さんの学び直すコストのところからだと、この辺りの考え方はどうなんでしょうか。

名久井:「ねばならない」というのは、1個の側面だと思っているんですよね。自分でない軸があった時には必ず、「ねばならない」というのが発生するんです。ちなみに、僕は本の中で、学び直しや学び続けるということを、次のように定義づけています。単に、僕は広い意味での本を読むとか、セミナーを受けるっていう学びのことを言っているんじゃないんです。

僕が言っている学び続ける、「継続学習」と言っているのは、「大学院で学び直す」。バックトゥスクールですよね。そういうふうに学ぶことを定義しています。なぜかと言うと、国際比較をするためなんですよね。日本がどれだけ、どういう状況で伸びたか。それに対してGDPの伸びといったところも計算したかったので、大学院にしました。

OECD(経済協力開発機構)のレポートとかをいっぱい読んでいくと、公式教育、フォーマルラーニングが「体系化されたカリキュラムを持った学校」となっているんですよね。ですので、いったんそういうふうにはしています。

統計的にわかった、学び直しコストの5つの思い込み

名久井:中村さんのさっきの学び直しコストの話にいくと。損得勘定とか周囲の雑音とか、あとは年齢とか業種。俺ははITだとか、あの人は医療だとか、俺は製造だとか。結局いろんな方との対話から、一般的にはそういうものが理由になっていると思います。

そこで、5つの仮説を作って、調べてみたんですよね。すると、仮説は思い込みだったっていうことが統計上わかって。

中村:それは具体的にはどういう……?

名久井:例えば、身近な仮説でいくと、小学校から高等学校までの自分の学習スタイルというものがあると。受け身で学習するのか、能動的に学習するのか。そういうのが大人になっても影響するんだと言う人がけっこういたんですよ。

でも、統計上はまったく有意性が見られないんです。あとは周囲の情報や人間関係が阻害要因になっているのか。僕は「何が邪魔しているか」に特に関心を持っていたんです。有意性があるのかなと思ったら、周囲の情報や人間関係は、確実に阻害要因になっていたことがわかりました。そこから環境をどうしていくかということにつながっていきます。

中村:そうすると生育歴というか、例えば家庭が貧しかったからとか、中卒だからということはあまり関係ない。それよりも現時点の、環境とか関係性とか、どういうところに自分を置いているか、というところですか? いわゆるアダプタビリティがあるとしたら、ノーアダプタビリティのほうが、学び直すコストにはより悪い影響を及ぼすということでしょうか。

名久井:そうですね。よく、人生を変えるっていう話で大前研一さんが、「住む場所とか付き合う人とか、時間の使い方を変えましょう」っておっしゃっているのに近いことが、統計を取ってわかったんです。

これが世代によってもいろいろなことがわかって。例えば、年齢層と業種が大学院で学び直しする時に関係があるのかなと見たら、関係ないんですよね。このようなことがだんだんとわかってきたんです。

「どのように学ぶか」のサイクルは自分で作れる

中村:なるほど。どうですか? 難波さん、今の名久井さんが話されているところとか。難波さんも、対話を通じて本当に多くの方をご覧になられてきているじゃないですか。

難波:はい。それについてもみなさんけっこうチャットで入れていただいてね。佐々木さんの「何を学ぶかっていう以上にどう学ぶか」とか、吉田さんのキャリア戦略のお話も、浅川さんは、すごいですよね、明らかに我々がお教えすることがあるはずもないような方なのに、今日のこの時間からも学んでいただいて、それがワクワクするというお話があります。

こういった学ぶこと自体をアップデートするという観点で言うと、学習戦略に関して実はけっこう思っているのが、浅川さんに書いていただいたとおり、どうやったらワクワクする学び方に持っていけるかということなんです。同時に佐々木さんに書いていただた、「どのように学ぶか」ともリンクしていることなんです。

そのサイクルを自分が作れるんだったら自分が作ればいいし、上司が作れるんだったら上司が作ればいいと思っているんですよ。

これ例えばどんな感じかというと、先ほども出てきましたが、学習阻害要因として「アウトプットする機会がない」ということもやっぱりありまして。インプットだけをしていても学びって定着しないし、おもしろくないんですよね。

私自身がやっているのは、例えば名久井さんの本を読んだとします。そして、読書管理アプリに感想文を入力して、それをそのままTwitterに連携して出しているんですよ。

中村:なるほど。

難波:そうすると「いいね」が来たりするし、それを仕事で使ってみることもできる。

継続のために大切なのは、学びを孤独にしないこと

難波:あと私、一昨日42kmを走りながら、オーディオブックで『筋トレが最強のソリューションである』という本を聞いていて。

その時はマラソンだったのでメモは取らなかったんですが、日頃はジョギングしながら本を聞いて、おもしろいキーワードがあったらその場で立ち止まって、スマホでメモを取るんです。松下幸之助の本などを聞くのですが、それを感想文(アプリ)にあげてサイクルを回していく。人に見てもらえるようなサイクルや、アウトプットの仕組みを自分で作れたら理想ですよね。

中村:そうですね。

難波:さらに、こういった勉強会や読書会など、アウトプットする場を作ることはすごく大事です。インプットとアウトプットのサイクルをうまく作って、それが楽しいという状態になれば、心理的なコストはほぼゼロになってくると思います。「本を読まないと気持ち悪い」「今月全然読めていないから超やべえ」みたいになる。

中村:それ、わかるような気がします。今の環境の中で、今の自分の思考で学ぼうとすることが、すごく難しいんだと思います。わざわざ難しいことをしようとするから失敗して、「もう俺は……」とくじけてしまう。そんなプロセスってありがちですよね。

これを変えていくには、今難波さんがおっしゃったように、やっぱり誰かから認めてもらうこと。たぶんセロトニンの関係等もありますよね。「何かやるぞ」という気持ちになっても、1人ではなかなか難しい。だから、学びを孤独にしないことが大事ですよね。

名久井:そうですね。

「いいね」ボタンを押してもらえる環境に身を置く

難波:そうそう。でも、嫌な言い方ですが、それを家族に期待してもムダなんですよ。

中村:言っちゃいましたね(笑)。

難波:例えば「パパこの間、本を書いたんだけどさ」と娘に持っていったら……。

中村:どうでした? 

難波:「へー」。

中村:「へー」って(笑)。

名久井:僕も一緒です。

難波:「この間Yahoo!ニュースに出たんだけど」って言っても、「へー」。だから興味がない人を動機づけのトリガーに使おうとしても、たぶんムダですね。

中村:難しいですねぇ。

難波:だからSNSなどを使う。同じような趣味や価値観を持っている、HR系やキャリアコンサルタントの人のいるコミュニティに、自分から足を延ばしていく。自分に似た興味・関心を持っている人がいる場をうまく利用する。嫌な言い方をすると、「いいね」ボタンを押してもらえる環境に身を置くという。

中村:確かにそうですよね。

難波:「いいね」ボタンを押してくれない人に、いくらがんばってPRしてもほぼムダで。どっちかというと、めげるだけだから。

中村:でも、それ(「いいね」がもらえる環境を得ること)が今しやすくなっていますよね。

難波:いや、めちゃくちゃしやすくなっています。

中村:そうですよね。

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