2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中村英泰氏(以下、中村):それではお待たせいたしました。さっそく始めてまいりましょう。本日はご参加いただきまして、どうもありがとうございます。
「人生100年時代の活き方会議」ですね。本日は、ゲストに学び直しコストの研究家である名久井康宏さんと、マンパワーグループ シニアコンサルタントの難波猛さんをお招きして。この20時から21時までの1時間にグッと詰め込んで、みなさんにお届けしたいと思います。
今日は多くの方が楽しみにされていらっしゃったのではないかなと思います。まず、タイトルの「おじさん」ですね。最近、難波さんが書籍を出されることなどによりトレンド入りしているこのワードに、名久井さんが専門領域にしていらっしゃるこの「学び直し」をミックスしていくことでどのようになるか。さっそく始めたいと思います。
まず、本題に入る前に資料を共有いたします。みなさんも一度自分ごととして考えていただければと思います。
「働きながら学びたいと思いますか?」。みなさん自身はいかがでしょうか。実は2019年のリクルートキャリアの統計によると、この問いに対して91.8パーセントの方が「はい」、つまり「働きながら学びたいと思っている」と答えています。
ただ、実は先日、別のセミナー用に確認したまったく同じ問いに対いてバイト系情報誌での統計を確認するとで、「学び直したい(働きながら学びたい)」と思う人は半分以下になっているんです。この違いはある意味想定できるとおもいますが、今日は1つ、リクルートの統計を基に一緒に考えていきましょう。
中村:今日ご参加いただいている皆さまどちらかというと、「働きながらも学びたいと思っている方たち」が多いと思うんですよ。平日の仕事が終わられてからのこの時間帯でも、セミナーにご参加されている。では、早速その学びたいと思っているみなさんに、1つ質問を変えてみましょう。「学んでいますか?」
と言われた時に「学んでいない」、また「過去に学びが足りなかったなと思っている期間があった」時のことを考えてみて、そこでのあなたにとっての課題は何だったか? を考えてみてください。
私自身も、いろいろと学びたいなと思っている領域はあっても、横に置いていることがあります。みなさんはいかがですか? QRコードと、先ほどメッセージでリンクを送らせていただいておりますので、そちらからお答えください。
もう順次(回答が)入ってきていますね。例えば、名久井さんがおっしゃっている「学び直しコスト」も、1つ皆さんの回答と非常に関係性があるんです。
また、学びとは違いますが、ダイエットもそうじゃないですか? 何か始めようと思うけれど、始められない理由があったりしますよね。ダイエットをしようと思うけれど、今日は寒いから、雨が降ったから、夜が遅いから、疲れているから、明日早いから。もうなんでも、やらない理由はつけられると思います。
ただ、やっぱりそこには、自分なりの課題感がありますよね。それを入力してみてください。
では、続々と書き込んでいただいているので、共有していきたいと思います。一度今の共有を外しますので、少しお待ちください。いかがでしょうか。こうして入力されたものを見ていると、確かにとても納得感があることばかりだと思います。
難波さんと名久井さんも一度こちらをご覧になっていただいて、後ほどコメントをお伺いしたいと思います。
中村:続々とチャットにコメントを頂いているので確認すると、そうですよね、モチベーションって、どうやって自分をそこに動機づけるのか、ですよね。はたまた、そもそも時間がないとか、コスト(の問題)ですね。あるいは実践する場が少ない、とか。学んだら学びっぱなしでアウトプットする場がないということですよね。これはとても納得感があります。優先順位をつけることもとても重要ですしね。なるほど。
いかがでしょうか。皆さんのご意見をここで承っておりますので、難波さんたちとも共有をしたいなと思います。その前に、もう1つ話を戻していきたいなと思います。
先ほどの、リクルートキャリアの「働きながら学びたいと思いますか?」で、「はい」が91.8パーセントでしたね。その学び直したいと思っている人に対して「学んでいますか?」と言うと、実はそのパーセンテージが一気に半分に減ります。
学びたいとは思っているけれども、「学んでいますか?」と言われるとその人数は一気に減る。「では、それはなぜですか?」というのが今(画面共有で)見ていただいているところです。
「仕事が忙しくて時間がとれない」とか。まあ、なんとなくわかりますよね、これも。「プライベートが忙しくて時間がとれない」と。あと「お金がない」とか。「学ぶものが定まらない」。
このあたりは、みなさんに書いていただいたものととても重なる部分があるのではないかなと。ただ、こうした学び直しコストを「仕方がないよね」と置いていては、おそらく「働かないおじさん」になってしまう。今日はこれをどう越えていくのかということを一緒に確認していきたいと思います。
中村:それでは、名久井さん、難波さん、よろしくお願いいたします。ではさっそく、名久井さん、この学び直しコストというのはやっぱり「コスト」なんですか?
名久井康宏氏(以下、名久井):「コスト」です。
中村:そうなんですか(笑)。
名久井:結論から言うとコストです。詳しいことは本にいっぱい書いているんですけど、ポイントが「見えないコスト」なんですよね。
例えば会社で財務会計というのがあります。財務会計では何がいくらでとか、研究開発費がいくらでとか、利益がいくらでというのが、数字で見えるんですよ。学び直しコストっていうのは、もともと行動経済学でノーベル経済学賞をとった、ある学者さんの概念を僕が用いて計算しているんですけど。
中村:ナッジ理論とかのところですか?
名久井:そうです、そうです。そこで、コストとしてのポイントの1個が「見えない」ということ。
もうちょっと言うと、2つ目が「心理的なコスト」なんですよ。だから本当に、人間が感じるけど、(具体的に)出しましょうというのはなかなか難しいんですね。だから、先ほどみなさんに書き込んでいただいた、自分が感じている学ぶ上での課題として出たのが、まさに学び直しコストなんです。
文字にすると見えるんですよ。でも、ほかの人と対話をすると、正しいのか正しくないのかよくわからないっていう。またここには、主観が混じってくるんですよ。
中村:なるほど。
名久井:だとすると、僕はみんなが正しいっていう話になっていると思っています。この学び直しコストの3つ目のポイントは、また行動経済学の話を持ってくるんですけど、「限定合理性」というのがあって。つまり、完全に合理的だったら、みんなが学ばない理由を例えば3つ挙げたら「そうです」ってなるんですよ。だけど、個人個人にとっては(先ほど挙げられた理由は)全部正しいんです。
中村:確かに。
名久井:先ほどみなさんがたくさん書いてくださったものは全部、自分にとって正しいんです。そういう、ザラザラしたコストのことを本当は行動経済学だと「取引コスト」って言うんですけど。僕がいろいろ研究する中で見つけたコストを「学び直しコスト」と命名をして、多くの人に役立てて貰いたいと思っています。
中村:なるほど。確かに、わかりますよ。わかってはいるけれど、じゃあどうして? って言ったら、そんなに人間は合理的じゃないということですよね。
名久井:そうなんです。
中村:ですよね、1つはね。
名久井:例えば、英会話学校ってありますよね。日本にどんどん増えているし、オンライン英会話も増えていると。みんな「英語がしゃべれるようになりたい」とか「しゃべれたほうがいいよね」とは思っている。でも、周りを見てもそんなに(英語ができる)人は増えていないですよね。
中村:確かになあ……。
名久井:だから、わかっているけど行く、行かない、とか。
中村:うん。確かに。
名久井:さらにみんなが完全に合理的に英語を学んだら、英会話学校のビジネスは縮小するはずなんですよ。だけど、運営会社の方にとっては失礼かもしれないんですけど(笑)。それって、その学び直しコストのところを解決しようと思っているビジネスだと思っているんですね。
でも、絶対にそういう人がいないといけないと思っております。後段にも出てくるかもしれないけど、キャリアって1人で考えちゃダメだと思っております。
中村:本当に今、名久井さんにお話しいただいたように、世の中、学ぶ機会はあるはずで、学ぶ動機もなんともしようがあるわけで。あとは学ぶか、学ばないかというのは、確かに1つは個人の問題も大きいわけですよね。
中村:これ、難波さんどうですか? 確かに僕も言い訳はたくさんできるんですけれど(笑)。だけどそれをどうしたら、働かないおじさん問題のいわゆるトリセツ、解決のほうに行けるのか。
難波猛氏(以下、難波):はいはい。
中村:今日は本当にそこですよね。
難波:その点で言うと、今日お伝えしたかったキーワードが2つあって。すいません、ちょっとこれは私の宣伝なので置いておいてですね。
中村:いや、もうぜひ宣伝してください(笑)。
難波:本(『「働かないおじさん問題」のトリセツ』)の中でも書いたんですけど、これからの時代でおそらくすごく必要だと思っている力があって。それが大きくはこの「変化し続ける」と「学び続ける」の2つだろうなと思っているんですね。
今日ご参加いただいている方にも多いですが、変化をし続けるというのは、プロティアン・キャリアとか、ライフシフトの変身資産みたいな話なんです。
中村:そうですよね。
難波:あともう1つは実は、学ぶということ自体がスキルだと考えています。漠然と勉強しましょうという話ではなくて、ちゃんとした学ぶスキルを身につけましょうということなんですよね。
中村:そうですよね。
難波:これは私が個人的に趣味で言っているという話ではなくて。我々マンパワーグループのグローバル人材採用でも、こういった「ラーナビリティ」という考え方を持っています。
中村:会社としても大切にしていらっしゃますよね。
難波:ええ、そうなんですよ。あくまでこの学ぶという、learnするabilityというものが必要なんだという考え方です。これは我々マンパワーグループとか、KPMGコンサルティングとか。コンサルティングファームとかが、やっぱりよく言っていることなんです。
難波:長期的に望ましい雇用やキャリアを獲得できる可能性が高い人は、将来の変化を見越して、自分の在りたい状態に向かって自分なりにスキルを高めていくような意欲や能力や習慣を持っている人だ、という考え方があります。だから、こういったラーナビリティ、learningっていうのはabilityなんだという考え方が1つですね。
中村:だから、能力ということですよね。
名久井:確かに。これの重要性というのはもう1つ言われています。いわゆるダボス会議(World Economic Forum)というものがあって、私は2018年に出た「The future of-jobs(仕事の未来)」というレポートをけっこう使っています。その中に、これからの世の中でトレンドになるだろうスキルトップ10が出ているんですよ。
難波:その上のほうに、クリティカルシンキングとかイノベーションコストとかクリエイティブさとか、いろいろあるんですけど。2番目に位置づけられているのが、まさに「Active learning and learning strategies」なんです。
積極的に学ぶとか戦略的に学ぶっていうのが、そもそもスキルとして要るんだという話です。漠然と、会社に言われたとおりにがんばりますとか、会社が用意したeラーニングを勉強します、ではほとんど意味がないんです。
自分がこれからの世の中でどこにエッジを立てようと思っているかということを考えて、そこに向けて学習するサイクルを作るという感じですよね。田中研之輔教授がよく言っている、そういった生活、ライフとのキャリア戦略を立てる、学習戦略を立てるというような。こういった戦略性って、たぶんすごく必要だ思っています。
中村:確かにそうですね。
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