日本が抱える問題は変わっていない

司会者:文部科学省「第9期中央教育審議会委員」、NPO法人スクール・アドバイス・ネットワーク理事長、生重様より『求められる力・変わる教育』でご講演いただきます。よろしくお願いします。

生重幸恵氏:(テーマの)「求められる力」というのは保護者にも求められる力ですし、子どもたちがこれから求められて身につけていく力でもある。

ここも今日いらっしゃっているみなさま方は当たり前にこの課題はわかっていただいていると思います。少子高齢化、社会格差、貧困問題、地域社会・家族の変容、産業、雇用の形態が変わりました。グローバル化の進展も。

日本が抱えている課題はここのところ、ずっと言われてきていて本当になんら進展がないですね。

データとしてはいろんなところに出ています。日本はバブルが好調。景気が良くなることが2度とない。50年前は人口がこんなにいるのに65歳以上が4割。おまけにあげくの果てに生産年齢人口はガタガタになっちゃうと。

これもずーっと言われていることで、私たち保護者はこれをもう1回再認識しなきゃいけないんですよ。私、地方にたくさんうかがっているんですが、相変わらず県庁、労銀とか、地元の国立大学出たら地元の県庁に勤めるか、せめて教師になってくれとか。「せめて」ですからね。〇〇銀行に勤めてほしいとか。

地元のところにどう入れるかっていうのが未だに意識が変わらない。これだけ時代が変わっているのにですよ。そういう意識が変わらないんだ。だから保護者を、より多くの若いお父さん・お母さんたちが「違うよね」って、子どもたちに認識させなきゃいけないねと思います。

今、私たちが暮らしている周りに(スライドを指して)これだけ人工知能が入り込んでいる時代になっている。新宿伊勢丹でなんと利き酒、ソムリエ、ファッションアイテムの提案は人口知能になっているっていうこの時代。

なにが県庁だって、つくづく地方に行くと思うんですが。でもこういう状況の中でも親の意識、親戚に対するなんとか家とかっていうものが変わっていかなきゃいけない。

正解のないものを考えなければならない

(スライドを指して)これ、実は慶應大学法学2次試験でもう行われている試験なんです。別に私が作ったわけでもなんでもなくて、インターネットで来年の入試対策って入れると出てきます。これ読んでいただいて。すごいですよね。

「ある星から地球に視察にやってきた宇宙人が次のような質問状を残していきました。『地球で1番驚いたことは、地球人が国と呼ばれる単位に分かれて暮らしていて、国ごとに異なる制度のもとで競い合っていることです。私たちの星には国という制度ばかりか、その概念すらありません。そこでお聞きしたいのですが、地球人はなぜ国という単位に分かれて暮らすことを好むのですか?』以上の質問状に書かれた問いに答えるかたちで、宇宙人への返事を400字……」。

これ40分で書きます。そのあと45分でディスカッションするんです。答え、正解なんてないんですよ! これからの子どもたち、今の我々の子どもたちに求められている力っていうのは、「1+1=2」とだけ考えるのはもう求められてないんです。

ベースにあるのは当たり前、そのあと私たちはこのどうなっていくかわからない時代を生き抜いていく子どもたちが、自分の意見を持ってちゃんと世の中に向き合っていくということが大事だよと。

(スライドを指して)これ哲学だよなと。神様は「人は文字を学ぶべきで、知恵と記憶力が鍛えられる。人は文字を学ぶべきだ」。

王様は「人は文字を学ぶことで、記憶しなくなって忘れっぽくなる。また文字から得られる知恵は外的な知恵で、人は見かけだけの博識家になって堕落する」と。王様の意見に反論せよ、またその意見に対して再反論せよ。

これも同じ形態で40分かけて書いて、なおかつ45分でディスカッションをする。これだけもうすでに大学受験の形態が変わっているんだ。

大学で私もやってたんですが、だから自分は何を今まで体験してきてどう世の中に接点を持っていきたい。そういうことを小論文で書く、報告書を提出する。

なおかつ資格検定、英語の試験はもう今すでに行ってない大学も出てきていますよね。だってテレビなどでわかる答えを書くだけだから、いらないですよね。そういう状況がもうすでに起こり出しているんですね。

「運動でがんばりました」「芸術でがんばりました」。そういうことも自分でやってきたことが大切なんですよ。

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