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保護者の立場から考える! 教員の長時間労働(全9記事)

教員の過半数が過労死ラインを超える「日本の先生は“やるべきではない仕事“をやっている」

2017年8月18日、教員の長時間労働を考えるフォーラム「保護者の立場から考える!教員の長時間労働」が開催されました。仕事量が多すぎるため、教員の過半数が過労死ラインを越え、メンタル不全に陥っている現在の学校教育。教育や働き方のエキスパートが集い、その知見を語りました。

現代の教育の問題を声高に訴える

坪谷ニュウエル郁子氏(以下、坪谷):みなさま、こんにちは。ただいまご紹介にあずかりました。坪谷でございます。私は教育再生実行会議で、たくさんのことを学ばさせていただきました。1番大きい学びは、今日本の学校がどうなっているとか、これを知ることができたということです。

まず第1に申し上げたいのが、学級規模。つまり1クラスの生徒の人数。この問題です。日本は40人学級ですね。過疎地を入れても生徒の数、学級規模は、世界の中で中国に次いで2番目に生徒の数が多い。これが日本の学校の現状です。

その40人の学級の中、どうなっているでしょうか。その中の5~6人が相対的貧困と呼ばれる子どもたちです。そして2.5人が発達障害もしくは学習障害。6人が学校の勉強が難しすぎてついていけないよと言っています。そして5人が学校に行っても勉強が簡単過ぎちゃってつまんない、こう言っているんです。

0.5人が日本国籍以外の子どもです。つまり日本の文化がわからない、日本語がわからない。そういった子どもたちが年々増えている。それを1人の先生が指導している。それが学校の現状なんです。

そしてその先生を見てみると、日本の先生は世界一労働時間が長い。これでいいんでしょうか? 1つ言えることは、子どもたちというのは私たちの未来である。これは確実なことです。

教育には子どもを変える力がある

教育は学校は子どもたちを変える力がある。私は32年間学校を経営しております。そしてそこでつくづく思っているのは「教育には子どもを変える力がある」ということです。

つまり教育は未来を変える力がある。こう言えるのではないでしょうか。しかし今学校には世界一忙しい教員の先生、そして40人学級の中でさまざまな個性を持った子どもたちがいる。この現状で良いのかということです。

子どもというのは保護者の所有物でしょうか? 私はそう思わないです。子どもというのは社会の宝で社会の財産です。保護者はその大切な仕事というのを社会から預かっている存在です。

私が思うのは子がいる人もいない人も、子育て前の人も子育て中の人も子育てが終わった人も、私たち成人私たち大人の役目の大切なことの1つは、子どもをそして教育を守っていくことなんじゃないでしょうか。

今日はその中でとくに教員、教員の労働条件はどうなっているのか。今何が起きているのか。その真実を知った上で、では私たちは何ができるのか。思っているだけではダメです。

具体的にどういう活動をしていけばいいのか。保護者の人はどうしていったらいいのか。企業の経営者は何をしていったらいいのか。私たちがこの問題に対してどんな活動をしていけば変わっていくのか。

それを考えるきっかけになればという想いでこのイベントを開催することになりました。今日をきっかけにこの炎が燃え上がることを期待しております。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

教員の働き方改革は実現できるか

司会者:ありがとうございました。本日は、保護者の立場でこのあとみなさんと一緒に考えていきたいと思いますので、お願いいたします。

では最初のご講演を白河様にお願いしたいと思います。『働き方改革、長時間労働是正の現状と課題』です。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

白河桃子氏(以下、白河):みなさま、こんばんは。白河桃子でございます。よろしくお願いいたします。スライドが映るまでに2分ということで、その間ちょっとお話させていただきます(笑)。

私は働き方改革実現会議という去年の9月から今年の3月まで行われておりました内閣官房の会議の一員として、主に長時間労働の是正にファザーリングジャパンさんなどと一緒に取り組ませていただきました。

こちらの働き方改革実現会議、3月に実行プランというのを出して終わります。今けっこう企業様では働き方改革という文言の中でさまざまなことが起きております。

その中の1つは長時間労働是正ということで、残業時間を削減する。それから副業兼業などの新しい働き方をする。さまざまなことが起きております。こちらの動機とそれから教員の長時間労働。

今、世間の動きがどうなっているのか。企業の動きがどうなっているのか。そして働き方改革、教員にはどういう、例えば影響だとか。このようなお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

『働き方改革、長時間労働是正の現状と課題』となります。自己紹介させていただきますと、私このような本を書いているものなんですけども。主に女性のライフデザインとかそういったことをずっと扱ってまいりました。

その中で女性のライフデザインがうまくいくためには、この長時間労働という原因をなんとかしなければいけないということで、長時間労働の是正というところに行き着きました。

今の教師の長時間労働ですね。この実態なんですけれども。これに関しては連合のホームページを見ていただくと、教師のみなさまの長時間労働の実態というのが非常にわかりやすく調査されたものがございます。

これは2015年12月の連合の調査によると、週の労働時間が60時間以上の小学校教諭は72.9パーセント、中学校教諭86.9パーセント、小中教員の7割が週60時間超勤務をしている。これは長時間労働と言われる医師や製造業をも上回っております。

そして、さらに過労死ラインと言われる月100時間以上働く教員も小学校では55.1パーセント、中学校では79.8パーセント、それから高等学校では46.4パーセントとなっています。

多忙を極める教員の一日

この長時間労働が教員の生活にどんな影響をもたらしているかと言うと、連合総研様がまとめた教員の1日という冊子があるんですけれども。5時半起床、6時40分学校着、部活の朝練参加7時20分から、それから打ち合わせなどをして1時間目2時間目と授業をし、さらに終わったあともまだまだ勤務があります。

清掃指導15時30分から、16時から教職員打ち合わせ、16時45分から部活動の指導、生徒下校18時15分、19時生徒保護者と面談、提出物のチェック。そして退勤はなんと22時。このような生活をしている教師の方が非常に多いわけですね。睡眠時間も非常に阻害されてしまいます。

じゃあこの長時間ってどういうものなんだろう。実は学校にいる時間は長いんですが、教師が本来の勤務である授業に費やす時間はOECDの週19.3時間に対して、日本では週17.7時間だと。他の関連業務で授業以上の時間を要しています。

同じような調査では、OECD加盟国と比較すると、教員の数が少なく多くの生徒数を担当している一方で授業に費やす時間は少ないのに課外活動や事務作業に費やす時間が多いという傾向があるというところを国際的に見てとれます。これは私が働き方改革実現会議に提出した資料の中から持ってまいりました。

これはワークライフバランスの小室(淑恵)さんが学校に入って、今コンサルティングしているんですが、そこからいただいた資料です。

日本では教師がやるべきではない仕事をやっている

イギリスで教師がやるべきではない仕事というのが98年に出されていますが、小室さんがコンサルした学校の先生の方にこれを見せたんですね。このうちの8割は自分はやってますよと、みなさんおっしゃっていたそうです。

教師の長時間労働研究の取り組みが必要ということを、働き方改革実現会議で提言させていただきました。とにかくIT関連の詳しい人がいないとか、それからタブレットそういったものでまだ授業が行われておらず、紙文化であるとか。

私もオランダの教育改革、オランダ、ヨーロッパをはじめとする教育改革の話を聞きに行ったことがあるんですが、ほとんど少人数の授業でディスカッションを中心としたグループラーニングになっていて。

あとは数学とかそういった少し個人の進捗度に差があるようなものはみなさんタブレットで個人の進捗に合わせて授業をするような光景があるんですが。そのようなことをぜんぜん行っていない。

それから部活動なども誰がどこまで指導するのかというようなことがまだちゃんと決まっていない。そこは保護者の方と話し合って理解を得る。目標としては個々の生徒の自己実現をどう支援するかというところなんですが、これ以外にもこのような先生の時間が非常に多いと思います。

女性の民間校長の平川理恵先生がどのように実践をして長時間労働是正に取り組んでいるかというお話をうかがったのですが。やはり学校行事の見直し、職場体験なんかを短くしたりとか、遠足をやめたりすることもあると。部活動は教育課程外であるとして地域や保護者に説明し、部活動に関するクレームを受けないと説明。

教員の仕事の最重要は授業であるということをみんなで確認する。それから地域行事、PTAの行事のお手伝いなどは分けてやるということですね。とにかく勘・経験・度胸というものでやっていたものをしっかりエビデンスのあるサイエンスをプラスするようなこともしている。このようなことを実践されていました。

働き方改革の現状はどうなっているか

ということで、そろそろ教師の長時間労働の根本にメスが入るというところなんですけれども。働き方改革の今の現状はどうなっているかということを簡単にご説明いたします。働き方改革の本質というのは、経済界で昭和の高度成長期とはまったく勝ち方や方向性が変わってしまったということなんですね。

均質な人が長時間働くのがそれがよかった昭和期、それから今は多様な人が多様な場所で時間で働く今の時代になっています。そうなってくるとワンオペ育児だったのが、今度はチームで育児をするチーム育児になってきますね。女性もしっかり働くことが求められます。そしてワンオペ稼ぎだったのがチーム稼ぎになる。インカムの大黒柱はお父さんという時代からだんだん変わってきている。

そうなってくると働き方はどうなるのか? 一律だったものが多様になってくる。24時間働いてますの世界から、多様な働き方をするいろんな人が出てくるわけですね。それから時間に関しては、量が多いのが正しいのではなくて、質が良い時間をいかに重ねるかが正しくなります。よく会社では、経営者から言われるんですけど、他律から自律へと進んでいくと思います。

この働き方改革実現会議、9月から始まりましたが、このように9つの課題を話し合い、その中に長時間労働是正も入っていました。結論としてどうなったかと言いますと、電通の過労死の悲しい事件から経済界の反対の声もだんだんになくなり、そして私どもも署名運動などに取り組み、最後に決まったのは、日本で初の働く時間の上限です。

残業は月45時間で、360時間。これは原則なんですが、その上の上限というのは決まってなかったんですね。それが年間720時間、月平均60時間になりました。1番のポイントは今までの上限は大臣告示という法的強制力がないものでしたが、今回法的強制力のある罰則付きの上限であることというふうになりました。

ということで、今企業はさまざまな改革に取り組んでいるわけなんですが、しかし今回もう1つの反論を加えます。インターバル規制、ヨーロッパでは11時間開けないと次の仕事をしてはいけないというインターバルが入っているんですけれども、それが努力義務として書き加えられました。

さらに、ずっと例外だった運輸と建設が適応除外でした。ということで、この適応除外だったり、上限が入ったのに、じゃあなぜ教員とか医師とかそういった現場には入らないのかというところが当然着目されてくると思います。

働き方改革は経営課題としてさまざまな経営者の方が取り組んでいます。まず時間の有資源。今まで日本の正職員の方が働く時間というのは無限の資源と思われていたんですが、そこにしっかり着目してこれは有限の資源であるというふうに取り組む。

それからじゃあその有限の資源という時間を考えた上で、その人個人がどのように実力を発揮していくかというところに着目する。このようなことが進んでいるので、ただの時短、テレワーク、休み方を変えようというだけのことではないんですね。

経済界の方はどう受け止めているかというと、4割が年間720時間では困ると答えていました。そして7割がなにかの改革をしなければいけない、取り組んでいるというふうにおっしゃっていました。

改革実施の過程で混乱も起きている

しかし今逆に混乱が起きているというところもあります。ただ「早く帰れ」と言われて仕事の量が変わっていない。今混乱期ですけれども、働き方改革するのはやっぱり意識を変えなきゃいけないんですね。今は長く働けば働くほど良いものができるとみんな思っている。この意識を変えていくにはやはり1年半から2年くらいはかかる。

じゃあ1番取り組みが遅れる現場はどんな現場か。実はそれは経済的な合理性では動かない現場なんですね。マスコミももちろんそうですけれども。

やはり生徒のためにという教師の方の時間、それから患者さんのためにという医療の現場、子どもたちのためにという保育園の現場。そのようにお金だけじゃないよねという現場のほうが逆に長時間やらなければいけないというところからなかなか脱却できません。

経済界のほうではこのように、例えば今の自分の仕事の優先順位をどう付けるの? というようなことを時間軸と売上の軸で見てくださいねというような取り組みが進んでいますけれども。じゃあ教員の場合は? 

この優先順位の付け方をどのようなもので計ればいいのか。売上というものではもちろんありませんよね。生徒のためにどういった影響を与えられるか、そういったところが生産性の軸になると思いますが、やはり生産性の軸の付け方というのはまたその現場現場で違ってくるわけです。

ある程度、是正のかたちを決めることが重要

このように働き方改革は今企業の中ではトップからボトムまで制度や仕組み、評価や報酬を変えたりしてさまざまなことをして取り組んでいて、これでやっと長時間だけが正しいのではない。多様性やワークライフバランスが大事なんだというところに落ち着く風土が変わるまで、やはり1年半から2年くらい。

日本人はマインドとアクションどちらが先がと言うと横並びの意識が強いので、ある程度かたちを決めてあげることが重要。やっているうちにだんだんに企業のDNAが変わってくるというところもありますので、これも教員の働き方改革へ応用できることではないかと思います。

まずはとにかくかたちを決めてみる。何時までに帰る、何時は残業しない、保護者の方もそれに協力していただく、部活の時間もしっかり休みの日などを決める。何が正しいのかという議論も大事なんですけれども、まずは1回アクションをやってみる。このようなことを今取り組んでみる必要があります。

はたして長時間労働は変わるのでしょうか? やっぱり私たちはどうしても長い間やったほうがその人のためになるんじゃないか、子どものためになるんじゃないか、子育ても同じですよね。長い間時間を費やさなければいい子にならないんじゃないかと思って、時間という観念にとても縛られている。

しかし長時間労働のルールはやはり変わっていくものだと思います。なぜなら今隣りの席で禁煙なのにタバコを吸う人はいないですよね。それから酔っ払い運転をする人もいません。

これはやはり経営者の人がそういうふうにしなければと思ってやったというよりは、罰則ができたり法改正があったり取り締まりが厳しくなったり、個人の意識がそろって変わっていく。

働き方改革は生き方を考えるきっかけになる

このように「当たり前だよね」「日本人はこうだから変わらないよね」と思っているものも、このように時間をかけたら変わっていくんですね。今とても大きなチェンジの時だと思っています。

そして女性の活躍のためには1番長時間労働は壁になります。多くの女性たちが管理職になりたくないというのは長時間労働のせいでした。

教師の現場も、実は管理職は男性が大変多くなっていますけれども、これもやはり労働時間という問題がとても多い。労働時間を変えないで女性にだけ「活躍しろ」「管理職になれ」と言ってもなかなか難しいところがあります。

このように労働時間というものに改めて向き合ってみるとさまざまなものが関わっています。働き方改革というワードはちょっと1人歩きしてる感もありますけれども、ある意味働き方改革は生き方を考えるきっかけであると思います。

ぜひ教員の方も保護者のみなさんも一緒に、どのようなものが人間の生き方・働き方として豊かなものか、そしてなにが本当に次世代の子どもたちのためになるのか。一緒に考えていければいいと思っています。以上で私の講演は終わりです。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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