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保護者の立場から考える! 教員の長時間労働(全9記事)

「認めてもらいたい」「相談する場が学校以外にない」 教師を苦しめる保護者の過剰な要求

2017年8月18日、教員の長時間労働を考えるフォーラム「保護者の立場から考える!教員の長時間労働」が開催されました。仕事量が多すぎるため、教員の過半数が過労死ラインを越え、メンタル不全に陥っている現在の学校教育。教育や働き方のエキスパートが集い、その知見を語りました。

6人のスペシャリストが登壇

川島高之氏(以下、川島):今日は長時間労働の話をしながら、時間オーバーすることにならないようにテキパキと、授業開始前にみんな座ってるっていうね、そんなトークにしたいと思っています。

今日は、先ほど講演していただいた、白河桃子さん、妹尾昌俊さん、生重幸恵さん、そして、坪谷ニュウエル郁子さん。それだけでは、なかなか話も膨らまないので、(安藤哲也氏を指して)1人いい感じのイタリア人、今日はイタリアの人も来ております。

(会場笑)

川島:特別なお父さんですけど、安藤哲也さんです。こんなメンバーでトークしたいと思います。本当はね、3時間ぐらい話せる人たちなんですけども、それをキュッと、グッと詰めてお話させていただきたいと思います。

で、教員の長時間労働をどうにかしようっていう話、いろんな視点があるんですけども。総花的にやってても、なかなかいい結論、あるいは今日の議論にならないので(テーマを)絞ってやろうと思います。

ということで、今日はみなさんの講演から出てきたように、教員が忙しいというのは、もういろんな要因があります。変わっていかなきゃいけない。あるいは、生徒の多様化や、学校の業務が大変ということや、そして、保護者の過剰な要求、いろんなことが言われてきました。

そんな中で、教員の長時間労働、あるいはメンタル不全などが問題です。そうは言いながらも、その中で今日は、最終的には保護者たちが、我が子のため、あるいは地域の子どものため、あるいはもっと言えば日本の子どものために、教師のサポーターになろうと。

親、大人、地域の住民、あるいは日本人としてなにができるか。1人の成人として、子どもたちや、教師のサポーターになろう。このような落としどころに持っていきたいと思ってます。

パネルトークをしていただくみなさんはいろいろなことをおっしゃりたいと思いますけども、そういう意味では、今日のテーマは最終的にはこの3つ、アウトプット3つをお願いしたいな、と思います。

(スライドを見ながら)まず、保護者からの過剰な要求が、今いろいろ問題視されています。そもそも「1、保護者からの過剰な要求って何なのか?」。じゃあ、保護者がそういうのから脱却して、教師のサポーターになる。あるいは過剰な要求をしなくなるためには「2、保護者がどんなマインドシフトをすべきか?」。

そして最終的に、「3、保護者の具体的な行動とは」。(例えば)こういう行動、アクションを取ろう。こんなことが最後に提示・提言ができればいいなと思います。じゃあ、よろしくお願いします。

職員室の雰囲気は校長先生で左右する

川島:じゃあ、私も座らせていただきます。NPO法人ファザーリング・ジャパンの理事、NPO法人コヂカラ・ニッポンの代表をやっています、川島高之と申します。今は、全国でイクボスや働き方改革の講演で飛び回っております。

じゃあ、今4人ご発言いただいたんで、最初はまだ今日しゃべってない1番右のイタリア人から。どんな角度からでもいいんですけど、ちょっとごあいさつも含めてお願いします。

安藤哲也氏(以下、安藤):ファザーリング・ジャパン代表の安藤といいます。よろしくお願いします。

僕自身は大学2年と高校2年と小学校4年の子どもがいて、まだ現役の保護者で、同じ小学校にもう15年も(通わせています)。(その小学校の)校長先生、6人ぐらい知っています。さっき川島さんがイクボスの話をしましたが、6人のうち本当にイクボスになった校長は1人です。あとの5人は、教育委員会とかの顔色を見て仕事をしてるので、イジメは多発(していました)。

川島:教育委員会の会議に出るのが、校長だった?

安藤:誰とは言いませんし、本名も言いませんけども。校長先生によって職員室の雰囲気とかぜんぜん違うんですよ。だから、僕はイクボスの働き方改革で学校業務に携わることがすごく多くて。

僕が長男が小1、小2の時に教育理事をたまたまやったんだけども、その時の校長先生はすごく考え方がヨーロッパ人で。やっぱり自分自身残業しないっていう人だったんですね。それを教員の部下にも、定着させようとしてがんばっていた。でも、真面目な先生も多くて、どうしても(残業を)やってしまうんだけど、いつも「君たち、そうじゃないんだよ」と彼は諭してましたね。

その時代、彼と2年間活動できて、すごく楽しかったです。学校の統廃合の問題で、それをする際に地域の一員として、子どもたちや地域のために学校を守るっていう活動もできたし。また、学校支援地域本部の礎を作ることができたので、僕にとっては小学校の保護者としても、自分を成長させてくれた場でした。

その多様なパパ友やママ友は、今でも付き合っています。さっき生重さんがおっしゃったように、他者のロープを組み合わせて、自分たちでその最適解や納得解を作っていくみたいなことを、本当に体験できました。

結論めいたことを言ってしまうと、保護者の具体的な行動としては、問題意識のある親は進んでPTA会長やったほうがいいですよ。会社の会長は仕事はなくなりましたけど、PTA会長ってたくさん役割がありましたからね。

本当に「これは変だよな」と思うことを、先生方と協働しながら、内に巻き込みながら、具体的に変えていかないと。子どもなんかあっという間に卒業しちゃいますよ。そんなことをね、お伝えできたらいいかなと思っています。

川島:はい。いきなり3番目の結論ありがとうございます。

(会場笑)

安藤:最後に言おうかなと思ったんですけど、もう言っちゃってもいいかなと思って(笑)。

イクボスがダイバーシティな社会には必要

川島:今、「イクボス」っていう用語が出てきましたけど、たぶんご存知ない方もいらっしゃると思うんで、イクボスを簡単に説明お願いします。

安藤:イクボスというのは、別に育児だけじゃなくて、介護とか病気とか、いろんな多様な事情を抱えた社員、部下やスタッフのワークライフバランスを考えてあげられる。それで、もちろん権利主張だけではなくて、結果、業績、パフォーマンスをしっかりあげられる。そして、ボス自らもワークライフバランスをちゃんと取って、ワークだけじゃない自分の人生を楽しむリーダーのことです。

こういう上司が今のダイバーシティな社会には必要だし、そういった上司に憧れを持って、「自分も成長していこう」っていう部下が増えると思うんですね。そのイクボスの養成を会社としてやっています。

具体的には、一般的にはそれによって父親がちゃんと育児をできる環境づくりにつながっていきます。パパがしっかりやると、パパもママも嬉しくなってストレスがなくなるので、みんながハッピーだ、というところで今展開してますね。

川島:じゃあ、学校の校長先生っていう、学校っていうところのボスですよね。その校長先生っていうボスがイクボスになってるかなってないかだけで、だいぶ学校の雰囲気は違うと?

安藤:それは家庭と一緒ですよ。家庭も会社も学校も同じだな、って思います。この前、滋賀県で高校の校長先生にイクボス宣言してもらって、「まずあなたたちから変わらなきゃダメだよ」って。そこに知事とか入れて、「一緒にやりましょう」って感じで盛り上げてるんですけど。

まだ、なかなか学校現場にイクボスの価値観は浸透してないんですけどね。こういうメンバーも、まったく企業の中でも同じなので、切り込めたらいいなと思ってます。

学校の属人化を防ぐには国で規制する方が良い

川島:白河さん、どうですかね? いろんな全国で、以前も学校現場で、その校長先生や教頭先生なり、管理職によって学校が随分違うって目にされてます?

白河桃子氏(以下、白河):そうですね。私ですね、「産む」と「働く」の授業というのをやっていまして。(本を手に取って)ちょっとこういう本もあるんですけども。

川島:「産む」と「働く」の教科書。

「産む」と「働く」の教科書

白河:これは本当は大学生向けだったのを、高校生向けに下ろしたんですね。(この授業は)どちらかというと性教育的なことも入ってるんですね。キャリア教育と性教育を合わせているものなので。その時にやっぱり学校でまったく、本当に受け止めが違うんですよ。

つまり、ものすごく学校が属人化されてるんですよね。校長が変われば、またガラリと変わる。で、それから、やっぱり属人化をを防ぐために、じゃあ、どうすればいいのかっていうことがあると思うのですが、属人化を防ぐには、やっぱりある程度、国が規制した方が良いと思っています。

1つは、他の業種にもできたので、今、教職員の時間にも上限をという署名活動が行われてるんですね。こういったものにみなさんが署名していただくっていうことも、1つの政治への働きかけになると思うんですね。

川島:長時間労働の……。

白河:教員の長時間労働の上限を。

川島:「上限を(働きかける)」というのを、署名活動として。

白河:そうです。

川島:一人の成人として、あるいは、大人として、親として。

白河:そうですね。だから教師だけがそれを署名するんじゃなくて、保護者の方も賛同したら、ぜひ署名していただきたい。なぜかというと、こないだの年間720時間っていう、日本の労働基準法、70年の歴史で初めて入った労働時間の上限なんですね。だから、まさにここから他のいろんなことが変わっていくきっかけにしたいです。みなさんも私も含めて持ってる時間は一緒ですし(笑)。

川島:そういう長時間労働の是正の署名活動っていうのは、もう一般的に誰でも署名できるようなかたちですか?

白河:私たちがやった署名活動と同じ「Change.org」の中にこの活動が立ち上がってますので、賛同される方はぜひ署名をいただいて。

この問題について、中央教育審議会では今ものすごく話し合われています。私が出席した実現会議で、とにかく私の会議の発言時間が2分しかなかったんですね。資料を出せるだけ出そうといつも精一杯出していたら、その最後に私が出した「教員の長時間労働をなくしてください」という訴えが、中教審の報告で取り上げられていたと聞いて、非常にうれしく思ってるんですけど。

やっぱり、そういう席の場で話し合われるところに、この問題が挙がった以上、担当大臣は変わりましたけれども、その当時は松野博一大臣はやる気だったんで。だから、もうすでに扉は開いてる、っていう状態なんですね。だから、そこが(文部科学省が)やる気になったら、そこの扉が開いたら、こっちも押すっていうことがとても大事だと思います。

川島:その場に、その保護者、あるいは一人の大人として、知識人として加わる、っていう?

白河:そうです、はい。

保護者向けのケアは福祉である

安藤:保護者のそういうニーズがあるんだっていうのを顕在化しないと。公立学校は役所ですから。

川島:保護者のニーズね。

安藤:お役所が市民のニーズがあったら、事業できるじゃないですか。それと同じように、保護者もそういうふうに思ってるんだっていうことを顕在化しないと、なかなか動かないですよね。だから、その署名活動は有効だと思うし、各学校でやればいいのになと思います。

川島:妹尾さん、どうですかね? 保護者も、教員の長時間労働の是正をしてほしいというニーズがね、やっぱりあるという話でしたけど、(全国を)回られてどうですか? そういうふうな声って保護者たちから聞こえてきましたか? 

妹尾昌俊氏(以下、妹尾):そうですね。僕、教員向けの研修が中心なんで、保護者向けっていうのはそんなにやってるわけではないので。ただ、学校の先生や教育委員会などから聞くのは、5年前だと、部活の問題1つとっても、「もっとやれ、もっとやれ」っていう保護者の声が多かったんですね。やっぱり、試合に勝ちたいので、土曜日もやってください。「うちはかまいません」みたいなね。

今は、やっとそういう風向きがちょっとずつ変わってきた、というところはすごく聞きますので、なので移り変わりつつあるんだろうな、と思いますよね。

ちょっとついでに、テーマ1の(保護者の)過剰要求の話なんですけど、ちょっとこれは専門家ではないんですが、過剰要求は間違いなく、先生方が多々遭ってるんです。

例えば、学校の先生から聞いてるのは、親からの電話とか、いろいろな相談で平気で1時間使ったとか、すごくそういうケースが多々あるって聞きますね。あるいは、(保護者の方が)学校に来て、校長とか担任、いろんな方が対応するんですけど、なかなか(その保護者の方が)お引き取りいただけないとか、そういう場合もあります、と。

もちろん、ケースバイケースで一概に言えないんですけど、1つはそういう事例の多くは、保護者の自己肯定感から来てるんですね。やっぱり認めてもらいたいとか、人に相談する場が学校以外にないとか、そういうことがあるんですよ。

子どもの貧困対策でも、1つの拠点なりプラットフォームと言われるように、学校は、情報をキャッチするところとしては、すごく優れてるんですよ。ただ、情報をキャッチしたところが全部を面倒みるってなると、どんどん多忙になっていくということなんです。

1つはソーシャルワーカーとかいろんなカウンセラーとかと一緒にやらないといけないって言ってますが、ただ予算の都合で(そういうカウンセラーの方は)2週間に1回しか来ませんとかね。2週間に1回しか来ない人に、そんなに重い事案を任せられるかって、任せられないわけでね。

そういうのを考えますと、非常に今、教員の無償労働のもとで、非常に重たい役割を負わせている、っていう実態があるわけですよ。なので、やっぱこれは保護者としても、「このままでいいのか?」だったりとか、あるいはね、半分以上は学校教育じゃないんですよ。これは福祉なんですね。保護者向けのケアっていうのは福祉なんですよ。

本当に進んでるところは、やっぱり市長とかが関心あるんですよね、この問題に。なので教育委員会とか教育長だけではなくて、市長も動かしていきたいんですね。

そう考えますと、議員の方も今日はいらっしゃるんで、応援していただきたいんですけども、保護者とか地域住民として、そういうふうなかたちで、別に特定の政治家を応援しようという意味ではなくて、市長とか議員の方もそういうことに関心持っていただけるように、やっぱり声を出していくっちゅうことですね。

そういうことで、市民の声があると、福祉部局も学校に「6歳から15歳までは学校教育にお任せですよ」じゃなくて、市民も福祉部局ももっと前に出てくる、そういうふうになってくると思いますね。

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