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保護者の立場から考える! 教員の長時間労働(全9記事)

「君ならどうする?」という問いが子どもたちを育てる 暗記型の日本教育を変えるために必要なこと

2017年8月18日、教員の長時間労働を考えるフォーラム「保護者の立場から考える!教員の長時間労働」が開催されました。仕事量が多すぎるため、教員の過半数が過労死ラインを越え、メンタル不全に陥っている現在の学校教育。教育や働き方のエキスパートが集い、その知見を語りました。

日本が抱える問題は変わっていない

司会者:文部科学省「第9期中央教育審議会委員」、NPO法人スクール・アドバイス・ネットワーク理事長、生重様より『求められる力・変わる教育』でご講演いただきます。よろしくお願いします。

生重幸恵氏:(テーマの)「求められる力」というのは保護者にも求められる力ですし、子どもたちがこれから求められて身につけていく力でもある。

ここも今日いらっしゃっているみなさま方は当たり前にこの課題はわかっていただいていると思います。少子高齢化、社会格差、貧困問題、地域社会・家族の変容、産業、雇用の形態が変わりました。グローバル化の進展も。

日本が抱えている課題はここのところ、ずっと言われてきていて本当になんら進展がないですね。

データとしてはいろんなところに出ています。日本はバブルが好調。景気が良くなることが2度とない。50年前は人口がこんなにいるのに65歳以上が4割。おまけにあげくの果てに生産年齢人口はガタガタになっちゃうと。

これもずーっと言われていることで、私たち保護者はこれをもう1回再認識しなきゃいけないんですよ。私、地方にたくさんうかがっているんですが、相変わらず県庁、労銀とか、地元の国立大学出たら地元の県庁に勤めるか、せめて教師になってくれとか。「せめて」ですからね。〇〇銀行に勤めてほしいとか。

地元のところにどう入れるかっていうのが未だに意識が変わらない。これだけ時代が変わっているのにですよ。そういう意識が変わらないんだ。だから保護者を、より多くの若いお父さん・お母さんたちが「違うよね」って、子どもたちに認識させなきゃいけないねと思います。

今、私たちが暮らしている周りに(スライドを指して)これだけ人工知能が入り込んでいる時代になっている。新宿伊勢丹でなんと利き酒、ソムリエ、ファッションアイテムの提案は人口知能になっているっていうこの時代。

なにが県庁だって、つくづく地方に行くと思うんですが。でもこういう状況の中でも親の意識、親戚に対するなんとか家とかっていうものが変わっていかなきゃいけない。

正解のないものを考えなければならない

(スライドを指して)これ、実は慶應大学法学2次試験でもう行われている試験なんです。別に私が作ったわけでもなんでもなくて、インターネットで来年の入試対策って入れると出てきます。これ読んでいただいて。すごいですよね。

「ある星から地球に視察にやってきた宇宙人が次のような質問状を残していきました。『地球で1番驚いたことは、地球人が国と呼ばれる単位に分かれて暮らしていて、国ごとに異なる制度のもとで競い合っていることです。私たちの星には国という制度ばかりか、その概念すらありません。そこでお聞きしたいのですが、地球人はなぜ国という単位に分かれて暮らすことを好むのですか?』以上の質問状に書かれた問いに答えるかたちで、宇宙人への返事を400字……」。

これ40分で書きます。そのあと45分でディスカッションするんです。答え、正解なんてないんですよ! これからの子どもたち、今の我々の子どもたちに求められている力っていうのは、「1+1=2」とだけ考えるのはもう求められてないんです。

ベースにあるのは当たり前、そのあと私たちはこのどうなっていくかわからない時代を生き抜いていく子どもたちが、自分の意見を持ってちゃんと世の中に向き合っていくということが大事だよと。

(スライドを指して)これ哲学だよなと。神様は「人は文字を学ぶべきで、知恵と記憶力が鍛えられる。人は文字を学ぶべきだ」。

王様は「人は文字を学ぶことで、記憶しなくなって忘れっぽくなる。また文字から得られる知恵は外的な知恵で、人は見かけだけの博識家になって堕落する」と。王様の意見に反論せよ、またその意見に対して再反論せよ。

これも同じ形態で40分かけて書いて、なおかつ45分でディスカッションをする。これだけもうすでに大学受験の形態が変わっているんだ。

大学で私もやってたんですが、だから自分は何を今まで体験してきてどう世の中に接点を持っていきたい。そういうことを小論文で書く、報告書を提出する。

なおかつ資格検定、英語の試験はもう今すでに行ってない大学も出てきていますよね。だってテレビなどでわかる答えを書くだけだから、いらないですよね。そういう状況がもうすでに起こり出しているんですね。

「運動でがんばりました」「芸術でがんばりました」。そういうことも自分でやってきたことが大切なんですよ。

今後は大学受験が個人の過程的評価に

そういうところから気づいて、自分が社会とどう接点を持って、どう生きるのかを、きちんと受け入れる側の大学のほうもミッションポリシーとして明確に打ち出すことで、そういうところで選抜制の高い受験をして大学に入ってこようねと。

これは本当に小さいけどあります。今の入試の中でこういうイメージでセンター試験に変わるものがやってくると思ってください。ミッションポリシーに基づいて過程的評価を重視した個別の選抜が行われますよと。幼保小中からずっと階段状になっているように。

なおかつこの年号と同時にキャリアパスポートという制度が始まります。これはもう特別活動の中で決定事項です。1年に1回なのか、2回なのか、3回なのか、まだ何回やるって決まってないんですけど。

個別の面談ありますよね、そのときに聞き取りをしますよね。例えば、その聞き取りのときに、「自分は地域でヒロタのシュークリームと組んで、がんばってこういう商品開発して。それも単なる商品開発ではなく日本の農業を考えるのに米粉というものをテーマに……」「それをずっと追いかけて自分は農業の独自産業を興そうと思っているんだ」と。

そういうことがずっと小学校からの活動として書き加えられていく。特別活動の枠の中で取り上げられていく。

でもすべての教科がキャリア教育に通じているんだとするならば、自分たちの学んでいることっていうのは社会世の中に全部つながっています。なおかつ、さっき言ってきた資格の試験・取得が必要とされます。

教育を通して、思考力・判断力・表現力を育成

なおかつ一番言われているのは、学習内容の確立と定着で、そこから思考力・判断力・表現力を育成していかなればいけないのが、これから何かにつけて求めなきゃいけない。見通しを立てたり振り返ったりする学習活動っていうのは、キャリアパスポートというところに落とし込まれていくんですね。

社会に開かれた教育課程、基盤がいろんなメディアに取り上げられています。どの教科もすべて、なにを知ってる・なにができる、知ってること・できることをどう使う。どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るのか。変化の中に生きる社会的存在として子どもたちは力を付けていくんです。

ここを求められているのに、学校現場は今のままで変わらないままで、これできると思います? 大学入試の改革、これからの教育の方向性が新学習指導要領が出ます。ここには小学校が32年、中学校が33年、高校が34年みたいな。

この主体的な学びは、学習指導要領改定の基本的な方向性の中に書かれている。学ぶことに興味関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる主体的な学びが実現できているか。

子ども自身が興味を持って積極的に取り組むとともに学習活動を自ら振り返り意味付けたり、身に付けた資質・能力を自覚したり共有したりすることが重要である。学校での学びが将来につながっているか。志望大学へ合格するためだけが学びではないんだと。

大学に行く、偏差値が良い、一生懸命やる、でも社会で役に立たない、そういう図式は今までさんざん繰り返してきた。学校も変わらなければいけないけれど、親の意識が変わらなければ、学校の教育は変わらない。

なんでもスーパーマンのように、しつけから勉強のやり方から、なおかつ部活の問題まで、なにもかも学校の先生に押し付けている。(講演の)あとでもっと業務改善アドバイザーから熱い話が出ると思いますので、学校の教育がこんなふうに変わるんだよと。

人工知能では置き換わらないもの

学習指導要領改訂も、さっき私が示した人工知能で、社会自体もここまで変わっていきます。でも、人間の学習が大事なんです。どんなに進化しようと、感情を豊かに働かせながら未来を作っていくのが、そういうのが人間でしょと。

「社会や人生をよりよいものにしていく」「目的を自ら考え出す」「多様な文明が複雑に入り混じった環境の中でも、場面や状況を理解して自分の考えをまとめ、相手にふさわしい表現を工夫したり、答えのない課題に対して多様な他者と共に歩む」。

ここが重要なんですけど、多様な他者と協働しながら目的に応じた行動をすることです。

これが次に行われる教育の中で重要なことで、しっかりしなければいけない。私はキャリア教育の全国組織の代表理事をやってるんですが。

キャリア教育は、一人ひとりがどんな人生を描いて生きて行くのかっていうことです。子どもたち一人ひとりが納得しながら進んで行くということが大事だし、地域社会において18歳の段階で身に付けておくべき能力を共有しないといけない。

先生たちに求められるものなんですけど、カリキュラムマネジメント、アクティブラーニングという手法を取る。キャリア教育というのは各教科の観点の中に入れていけばいいんですよ。そういうふうに自分がやってきた今までの教育をキュッと、ほんのちょっとだけ視野を広くしてくれればそれができるんですけど。

そういうことをいろんな方たちと組んでやってみる。これこそ、他者への働きかけ、他者との協働、外部との相互作用。

これが学校現場に起きない限り、子どもたちの教育が前向きなものになっていかない可能性がある。先生たちにあくまでも期待があって、1人でやればできると思ってるんだけじゃ、まだまだです。

社会全体が子どもの学びを応援していく

ここで他者への働きかけ・他者への協働。学校支援機能を作りましたら、文部科学省では地域学校連携推進本部として、法改正まで行われて市場と社会教育が連携していくんだと。

社会全体が子どもの学びを応援していくんだ。そうならない限り、これからを生き抜いていく力を身に付けていくことは不可能だよね。

暗記型で対面式で圧倒的なパワーで教えるものじゃない。「君ならどうする?」「あなたならどうする?」というふうに1人ひとりが考えるその時間こそが大事なんだよねと。

この学校運営業界というのは、今言われているコミュニティスクール。全国に行き渡ります。そしてその両輪を担うのが地域学校共同推進本部です。ここが保護者、地域ともに一緒にやらねばならない。やって楽しいことをそれぞれが選びとらなければいけないっていうことになってます。

なおかつ地域、学校という先生たちが置かれている、今職人気質の先生たちが多いんですが、私たちは話し合って互いの立場を超えて、どうやってともに協働していくのか。土曜日だっていろんな観点でさまざまなものを活かしていかなきゃいけない。

今後求められる力はやっぱり真の学力の育成であり、確か学力なのであると。ここらへんは読んでいただければわかると思います。先生たちに求められることがすごく多くなる。問われる力量。私たちにできることは何なのか? 

広範で部活の問題も働き方の問題もいろいろありますが、ちょっとここで私たちが一緒にできることっていう捉え方で今行われている教育改革の知識として入れていただければなと思います。私からは以上でございます。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございました。

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