2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
リンクをコピー
記事をブックマーク
川島高之氏(以下、川島):今、いろんな方が保護者としてできること、政治を動かすこともありますけど。もう1回、1番(のテーマ「保護者からの過剰な要求って何なのか?」)に戻したいと思うんですけども、生重さん、学校現場に一番行かれてると思いますけど、もう学校名は匿名にして、どんな要求ってのが過剰だったかっていうのを、生重さんの長年のご経験から教えてください。
生重幸恵氏(以下、生重):孤立してる親がけっこういます。それで、自分一人でやるのが嫌で、結局すべてを学校に押しつける。それともう1つは、今かかえているのは、親側の発達障害ですね。
川島:親側の発達障害。
生島:はい。本当に1つのパターンとして、ある学校から相談を受けた時には、そのお父さんはとても頭のいい人でIT系に勤めていました。でも、人間関係がうまくいかないんで、だいたい1ヶ月、3ヶ月、半年くらいで会社を変わってしまう。息子さんが個性的なお子さんで、そこをからかうお子さんがいて、毎日(息子さんの)洋服が汚れて帰ってくる。
それで、お父さんは心配なので毎日毎日学校に来て、「なんでそんなことが学校で起こる?」と言って、自分でもネットでも調べる、と。
また、学校の地域対策がまったくできていないので、教頭先生も校長先生も学年主任も、誰も何もしないので、(担任の先生)彼一人だけで、そのお父さんと向き合わなきゃいけない。これは、完全に福祉の領域ですね。
だから、私がさっきプレゼンした中で、「チーム学校」っていうところで、家庭教育支援チームとか、地域の中で地域支援とか、そういうところの中で、多くの教育視点が入ってくることが、「うちの子どもの問題はどうなんだ?」っていうことを1つ1つ解決していくところにはつながると思います。
こういう組織を変えるためにはお金がいると思います。組織を変えないといけないんですよね。うちは長男が小学校教員で、長女が中学校の元教員なんですが、うちの娘は「公務員は一生やらない」って言って辞めたんです。
それは、半分が部活の問題でした。やったこともない水泳部の顧問になって、毎日毎日、生徒たちを試合場のプールまで連れて行かなければいけない。
半分は、学年主任からすべて教員たちの、本当にぜんぜん理解がやチームの体制ができてないことでした。学校教員室の質が悪い。それはひいては、校長の経営能力がない、っていうことにつきると私は思います。
生重:でも、校長先生だって、今おっしゃったように、上ばっかり見てる人だけじゃないんです。本当にちゃんとやってくれる人たちもいる。そういう人たちが仕事ができるような、組織づくりができる、なおかつ、地域から何年もかけてやってる今の全国の状況、これを変えていかないかぎり、先生たちは信頼して一緒にチームになれっこないって思っているんですね。
親のクレームの問題は、カウンセリングできる人間が来ていたり、人間関係を深めていく地域連携推進のようなところや、あと、家庭教育支援チームのようなものが地域にできて、ボランティアとプロフェッショナルと両方がいてくれることで、かなり解決できる問題があるんです。日本という村社会の中で何ができるかっていったら、やっぱり信頼できるちゃんとした人を雇用することなんです。
中教審(中央教育審議会)で話が出てきた時には、「きっかけを作ったんだ」と思ってうれしかったんですが、やっぱり組織を変えなきゃいけないし、そのためには、地域が絶対に反対する(学校間の)統合をやらなきゃいけないんです。
学校一校を運営するのに、どれだけ(コストが)かかっていると思ってるんだ。みんな、「つぶすな、つぶすな」って言うんですよ。でも、多くの教員を抱え、多くのボランティアの善意を受け入れ、なおかつ、それぞれの専門家機能を入れていくってことは、お金がかかるんです。
お金がかかるっていうことは、「人員を切っても、オラが学校をつぶすな」って言う今の日本人の体質を変えないかぎり、変わらないよっていうのを、私とにかく申し上げたい。やっぱり前向きに今後を考えていくには、組織を変える(ということです)。
川島:はい。先程のプレゼンのような、また60分ぐらいの深い内容に最後はいきつきましたけども(笑)。
生重:(笑)。
川島:地域が、あるいはもっと言えば保護者が、もっともっと学校のサポーターになろうよと、そんな話が前半ありましたけど。坪谷さん、先ほど雑談室で「PSA」っていうキーワードをおっしゃったんですけど、今のお話に共通すると思うんですけど、もう1回そのへんのことをちょっとお話いただけますか?
坪谷ニュウエル郁子氏(以下、坪谷):この2番目(のテーマ「保護者がどんなマインドシフトをすべきか?」)にちょっとつながるんですけれども、保護者のみなさんは、「学校や教員に何をしてもらうか?」と考えるところから、「学校や教員のために私たちは何ができるか?」と、このような考えに変えていかなくてはいけないと、私は思ってる次第なんです。
そこで提案なんですけれども、日本はPTAという組織がありますよね。いわゆる「Parents=保護者」と、「Teachers=先生」のための、「Association=団体」ですよね。それをPSA、これは「Parents=保護者」が、学校や教員を「Support=支援・サポート」する、こういった組織に、マインドも含めて変えていく必要があるのではないか、と私は思うんです。
もしかすると、そこの「P」の後に、さっき思いついたんですけど、「C」を入れてもいいのかな、と。この「C」はCommunityですね。つまり、保護者と地域と、場合によってはそこに企業も加わって。
学校の周りに、教員のために自分たちは何ができるのかを考えて。教員の仕事は教育をするってことですからね、教員がやらなくてもいい仕事、それ以外の仕事を保護者が地域が、そして企業がやっていく。そして、みんなで私たちの未来、子どもたちを育てていく、こういった周りの意識ですね。学校や教員に、「私の子どもをこうしてちょうだい」などの電話もあります。
「明日、うちの子どもは何百円、何千円持っていく」。そんなときに、「それは先生、袋に入れて持っていけばいいんですか?」と夜の11時15分に電話をすることもあると聞いております。
私の後輩は学校の先生なんですけど、生徒の家庭訪問に行ったら、「冷蔵庫の中にはおにぎり1つさえも入ってなかった」。仕方がないのでコンビニへ行っておにぎりを2つ買ってきて、その生徒に「夕飯食べなさい」と。非常に心温まる話です。しかし、それは教育、学校、先生の仕事でしょうか? 先ほど出た、福祉ですよね。
とにかく大切なことはマインドシフト。「学校、教育のために、私たちは何ができるか?」。それを考える。そして、PTAからPSAに今したいと思っております。
川島:ちょうど私、来週に日本PTA全国協議会っていうのがあって、そこで講演してくるんですけど、「PTAは教師のサポーターになる組織なんですよ。逆に、教師に忙しくさせちゃってるPTAがありますよね」っていう話をしようと、私も自分のPTAの経験から思っていました。
PTAっていう組織、もっと言えば地域が「教師のサポーターになろうよ」と。坪谷さんの本当に1つの今日の大きなキーワードということですよね?
坪谷:そのとおりです。私たちは一人ひとり、今、地域の学校のために、それは学校に自分の子どもが行っていても行っていなくても、何ができるだろうか。
これを考えると、できることがありますよね。コピーとかもできますよね。もしかすると、自分がずっと学生時代からやっていて、今も地域のチームに入っている、何か文化的な、何かスポーツの活動があるかもしれないですよね。
例えば、ずっとコーラス部だった。だったら、学校のコーラス部のコーチをして、アシストしようじゃないか。できますよね。自分はパソコンが得意だ。じゃあ、パソコンで事務作業を手伝おうじゃないか。何かみなさんできるんじゃないでしょうか。
川島:安藤さんに聞きますけどね、そういう学校をサポートしようというマインドを持ってる親はいいんですよね。でも、そういうマインドを持っていない人のほうが、とくにお父さんなど圧倒的に多いかもしれない。
お父さんたちがもっと学校のサポーターになる、なりたくなるためには、どういう動機づけとか、どういう行動を取らせる、あるいは、どんなことをPTAが学校に仕掛けたらいいのか、っていうことをお願いします。
安藤:例えば、自分が住んでる地域をもっと愛そう。そのためには、子どもの入学式と運動会と卒業式でビデオ回すだけじゃダメで「なんか汗かこうよ」と思います。
その作戦会議をやるから、「今日は飲もうぜ」みたいな感じで。そこにちょっと、意識高い先生も1人ぐらい連れてきて。そうすると、話し合いが始まって、先生たちも、「あ、お父さんたちに言ってもいいんだ」「愚痴っていいんだ」みたいなね。そういう、まずコミュニケーションを僕は続けました。
川島:男性、お父さんたちの場合はね。
安藤:そう。あとお父さんたちはやっぱり、遊びを考えたりするのが好きなので。僕は家に帰った時に、夏休みの学校で初めての「学校に泊まろうキャンプ」を企画しました。それを、校長の承認ももらって予算化して。
キャンプの中身は全部お父さんたちが考えるということで、また飲み会で作戦会議やって、「お化け屋敷やろう」「流しそうめんやろう」みたいなことを話し合って。みんなもう父として「これ、すべて子どもたちが笑顔のためなんだぞ」って言って。でやったらね、すごくおもしろかったですよ。
で、そのリーダーをやってくれたお父さんが、「いやー、安藤さん、本当おもしろかったよ」と。それで「また来年もやりましょう」って。だから「やめるんだよ」って言ったら、「え、そうなんですか? どうすればいいんですか?」って言うので、「おまえが立ち上げろよ」って返したら、「そうか」って、本当に会長になっちゃったんですよ。
川島:その人が会長になっちゃった。
安藤:はい。だから、やっぱり自分で、さっき「他律と自律」って話も出てましたけど、自律的に学校とかに関わっていかないかぎりは、絶対この快感は味わえないですね。人間、快感を味わえば価値観が変わってくるんで。
これはイクメンのレクチャーで必ず言うんだけど、やっぱり危機感を持って、「何かしよう」ってアクションして、快感を得て、価値観を自然と変えていくっていうやり方がいいかなと、お父さんたちはね。
川島:そうです。
安藤:理論的にね、言われてやってるうちはダメなんですよ。
川島:お母さんたちはどう接すればよろしいんですか?
生重:私は、お母さんたちの間にあるあの負担感って何なんだろう、って思うんですよ。
川島:お母さんね。
生重:とにかく、何もやってないのにやらされる恐怖っていうか。私の住んでる街は、私がずっとPTAにいる時に、研修に参加してくれる会社があるんですよ。とにかく来てくれたら、「やってよかった」「なんかできそうだ」って言って帰ってもらうっていうものをしていて、いい研修を受けてもらってるんです。
で、専門家に会えるし、スキルを積めるし、社会とちょっと離れた時に、次のステップアップのためにも、PTAってとってもいい組織なんだけど、なぜあの負担感で組織を嫌がるのか。過去の因習とか、来てもらって無駄な時間を過ごしたとか。
川島:今だに朝10時に集まって、夕方4時までベルマークとかね。
生重:そう。ある意味、スクラップしないでビルドするばっかりなんですよ。これは学校の教育の世界と一緒で、「これ、形骸化してるんだから」っていったら、もう壊さなきゃいけない。
そして、ビルドしなきゃいけないのに、ずっとスクラップさせないまんま。ビルド、ビルド、ビルドっていくから、でたらめになる。やめるとか、変えるっていう勇気を持ってもらわなきゃいけない。
教員の過半数が過労死ラインを超える「日本の先生は“やるべきではない仕事“をやっている」
「君ならどうする?」という問いが子どもたちを育てる 暗記型の日本教育を変えるために必要なこと
自宅でひっそりと亡くなった26歳の熱血教師 過労死を招いたのは「知らず知らずの無理」
「認めてもらいたい」「相談する場が学校以外にない」 教師を苦しめる保護者の過剰な要求
真夜中23時に保護者から電話、教え子の食事の世話… 教師を苦しめる「やらなくていい仕事」のオンパレード
留守電を導入しただけで教師の労働時間が短縮 ブラック企業化する教育現場の惨状
先生たちの仕事が増えたのは個人情報保護法のせい? 「連絡網」がなくなった教育現場の今
親たちは子どもの将来が見えない不安を教師にぶつけている--保護者の過剰な要求で疲弊する教育現場
「マネジメント能力は座学やMBAでは身につかない」 PTA会長をすることで体得できる、意外な力
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略