ITにくわしくない私の、素人流業務改善全社プロジェクト

本堂円氏(以下、本堂):みなさん、こんにちは。株式会社ジーベックテクノロジーの本堂円です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

素人流業務改善全社プロジェクト。決して ITにくわしいわけではない私が、kintoneに出会い、その可能性を信じて、社内全体の業務改善に向けて進めてきた取り組みをご紹介させていただきます。

はじめに、弊社ジーベックテクノロジーの紹介をさせてください。1996年に設立し、金型を初めとした、自動車や航空機、携帯電話などの製造現場などで使われる研磨用の砥石や、バリ取り用の工具を製造・販売しております。

バリ取り、ご存知でしょうか? 金属を削ったあとに出る、ささくれのようなものがあるんですけれども。それをバリと呼びます。バリを取る工程は製品の最終品質を左右する、大変重要な工程です。従来より、ご覧のように手作業で行ってきました。

弊社のセラミックファイバー製の工具をお使いいただくことで、バリ取りの工程を人手作業から工作機械、ロボットを使って自動化しましょうという提案をさせていただいております。単純作業をできる限り自動化し、人間は創造的でやりがいのある仕事をしようという考えのもと、活動をしております。

そんな我々ですが、社内を見渡すとどうでしょうか? kintone導入のきっかけになった、営業部向けの顧客・案件管理システムでみてみたいと思います。

システム会社に依頼して設計したものを使っていたけれど……

お客様の部品の情報や、加工の条件を記録するためのツールです。

データベースに必要な4つの要素をこのように表してみました。2003年、Webベースのシステムを初めて導入いたしました。初めはよかったものの、10年ほど経過すると、利用者も増え、なかなか要望に応えることができなくなってきました。

とくに検索性に乏しく、必要な情報にたどり着くまでに30分以上かかったという話が出てきてしまいました。結局のところ、長年いる営業マンの記憶力が一番良いのではないかという状況です。

そんな状況を打開するべく、2012年にトップダウンで導入されたのがセールスフォースでした。

(会場笑)

私は、このシステムの切り替えから関わることになりました。セールスフォースもドラッグ&ドロップで自由にアプリを設計することができますが、入力の導線や画面の構成に、制限があります。専門のシステム会社さんに依頼して、設計をお願いしましたが、なかなか思い通りにはいかず。残念ながら、費用面で妥協せねばならない点が多く、不安を抱えたままの導入となりました。

案の定、ユーザーからの不満が噴出します。入力の動線が、営業マンの頭の中の流れとそぐわない。見た目もわかりづらい。加えて、検索方法です。これは、kintoneも同じなんですけれども、絞り込みマークの中から検索したい項目を1つずつ選択していくやり方、不便を感じるという方はいらっしゃいませんか? 

入力もしづらい、検索もしづらい。ということで、次第に入力することさえ敬遠されるようになってしまい、案件の記録が営業マンのノートにしか残っていない状況が出てきてしまいました。

2年間の利用を経て、これ以上の継続は無理と判断し、設計の融通が利くこと、費用面、社内SEがいない我々でもメンテナンス可能なツールということで、2014年の秋に、kintoneのテスト導入を始めました。

パイプ・サイクルに従ってkintoneを導入

ちょっと話が変わりますけど、パイプ・サイクル。ご存知の方、多いのではないでしょうか? 調査会社のガートナーが発表している、新しいテクノロジーやアプリケーションが生まれてから、時間の経過とともに、どのように発展し、変化していくのかを表した図です。

メディアの関心によって、世間から大きく注目される黎明期。時間の経過とともに、実態以上に期待値が高まります。過度な期待のピーク時を越えると、次第に期待と実態のギャップが明らかになり、幻滅期に至ります。この幻滅期に市場が淘汰され、期待に応えることができたもののみが、次の啓蒙活動期、生産性の安定期へと移行できるとされています。

ガートナーが発表している2016年の日本におけるテクノロジーのパイプ・サイクルで言いますと、人工知能が過度な期待のピーク期。IoTが幻滅期にあたると話されています。みなさん、イメージしていただけますでしょうか?

新たなテクノロジーが社会に認められるまで。会社で、新たなシステムが社員に認められるまで。同じ曲線を辿っているように思いました。そこで、kintone導入期からの活動を、パイプ・サイクルに当てはめて、振り返ってみたいと思います。

2014年11月、導入期です。実際のところ、過度な期待をしていたのは、自分自身かもしれません。簡単にアプリを作って、業務改善ができます。アプリストアを見てみると、周辺アプリとしてさまざまな連携システムが紹介されています。

kintone自体が市場で成長すれば、連携システムはますます増え、もっと便利になるに違いない。これは、営業部だけに使わせるにはもったいない、全社の中心になるようなシステムにしたいと思いました。

私の作戦が始まります。kintoneを使えば、簡単に業務改善できます。営業部だけでなく、全員に触れてもらいたいんです。kintoneを他人事にはしないという認識を持ってもらうようにしました。

少しアプリを作ってみると、できないことも見えてきました。例えば、LOOKUPで持ってこれるフィールドには限りがありますね。それから、テーブル行は一覧表示で見たときにちょっと見づらいと思いませんか? できないことはできないと伝えていくようにしました。

導入してすぐに、ホームページ経由のセミナーの申込みのアプリを作りました。アプリから簡単にWebフォームを作成できるサイボウズスタートアップスさんのフォームクリエイターを採用しました。ホームページから入ってきたレコードを確認したあとは、日本オプロさんの帳票作成ソフトを活用して、ワンクリックで受講票を発行できる仕組みを作りました。

次に、お客様にお貸出しするデモ機の貸出管理ですが、こちらはエクセルとホワイトボードを使った管理から抜け出せずにいました。なので、これもすぐにkintone化します。並行して、全社員に触れてもらう目的で、社内イベントの出欠確認や、健康診断の受診日の確認などの簡単なアプリを作りました。

これらのアプリが問題なく稼働することを示せた段階で、懸案の顧客・案件管理システムを、kintoneに移行しました。セールスフォースで失われたデータの入力部分を取り戻すべく、営業マンの入力したい動線、見た目を精査しました。アプリ作成に使ったのは、基本機能のみです。それでも、再び入力してくれるようになりました。

ユーザーの不満解消だけでなく、一歩進んだ結果を

ただ、まだ満足のいく仕上がりではありません。

悩ましかったのが、こちらです。1つのレコードに対して、複数のレコードが紐付く数値項目があります。ここでテーブル行を使うべきか、関連レコードを使うべきか。結局、入力漏れを防ぐために動線を優先し、1つのアプリ内で完結するテーブル行を採用しました。

しかしながら、項目数が多く、横に長い構成になってしまい……。横にスクロールしないと、入力のときにも閲覧のときにも、大変不便になってしまいました。ノートパソコンのユーザーである営業マンには、とくに不評でした。

もう1つ、セールスフォースと変わらない絞り込みのやり方も不評でした。アプリの構成を再検討したりもしましたが、これ以上の改善が難しいのです。

導入から1年ほど経過しました。過度な期待のピーク期から、グラフの下降線を辿って、幻滅期に入ります。ユーザーからの不満が噴出します。完全に壁にぶち当たりました。

JavaScriptを使えばいろいろできるらしいと聞くものの、一体誰に相談したらいいんでしょうか? なにもできず、2ヶ月ほど経過してしまいます。そんなある日、あるセミナーのお知らせの中に、M-SOLUTIONSさんのご紹介がありました。kintoneのカスタマイズ、アプリの構築や運用のサポートをされています。

すぐに連絡しました。これまでの悩みを打ち明けると、「kintoneには、kintone流のコツがあるんですよ」とアドバイスをいただきました。そしてすぐに、営業部で使っていたアプリの見直しと改善をお願いしました。

相談できるパートナーを見つけた私は、再び前向きに取り組み始めることができました。改めてkintoneを認めてもらうためには、ユーザーの不満を解消するだけではなく、より1歩進んだ結果を見せる必要があると思いました。

顧客・案件管理システムになにを望むのか? 情報が整い始めたからこそ見えてきた、新しい要望がありました。ここは、歩み寄りが必要です。データベースに情報は集まってきているんです。開発部にこそ、この情報を活用して、製品の改良や新製品の開発に活かしてほしいのです。

開発部が使ってくれない理由「見づらいんだよね」

M-SOLUTIONSさんとの改修の主なポイントは、次の3つだと思っています。

横スクロールの問題がありました。これに対しては、動線のメインになるアプリにボタンを設置。これをクリックすることで、ポップアップで別アプリの画面が立ち上がり、ここに入力し、保存します。入力の動線は変えることなく、関連レコードを使えるようになりました。

開発部にこそ使ってもらいたいわけですが、ふだん入力していない人には、絞り込みマークの中から、項目を見つけてくること。これが難しいんですね。そこで、一覧の画面上に検索パーツを埋め込みました。よく使う項目を一覧画面上に表示することで、検索までのハードルを下げます。

最後に、コクヨさんの手書き入力ソリューション、CamiApp Sという商品を採用しました。当社の営業マンが営業にうかがう先は、各メーカーの部品製造の心臓部です。秘密管理は徹底され、パソコンはもちろん、携帯やカメラを持ち込みが禁じられていることが多いです。そこで、営業マンは紙のノートを持って商談し、そこに部品の絵を中心に記録をとってきます。

そこから、文字情報はkintoneに転記をし、絵はカメラで写真を撮ったあとに、添付ファイルにアップする。この作業を1件あたり15分から20分ほどかけて行っています。多いときには1日5件ほどの入力が必要ですが、CamiApp Sを使うことで、この転記作業が削減されました。

このような改善を行うことで、入力と抽出のバランスのとれた、新しいシステムにブラッシュアップされたと思っています。

さて、ここまでやったにも関わらず、開発部が使ってくれません。調べたい情報は、すぐに取り出せるようになっています。なぜ使ってくれないのでしょうか? 聞いてみると、「なんとなく見づらいんだよね〜」と言われます。

なんとなく見づらいという話、営業部に初めて使ってもらったときにも聞こえた声でした。しかし、時間の経過とともに、聞こえなくなりました。そこで、今までkintoneに触れてもらう機会が少なかったので、開発部のためのアプリを1つ用意しました。

紙とメールとエクセルに埋もれていた特許管理です。出願から登録までの履歴を記録し、必要な情報をkintoneに集約します。また、アラーム機能を活用し、出願後の手続きに関する期限管理を行いました。共同出願している会社様にもご協力いただき、コメント欄を活用したやりとりをすることで、案件に関する話がすべてkintoneに集約されました。今では、このアプリがないと困るそうです。

そうすると、これがきっかけになったのかわかりませんが、驚いたことに開発部から営業部へ、顧客・案件システムの項目について、改善の要望が上がってきました。営業先で聞いてきてほしい項目に不足があるそうです。

もう1つ、社内でkintoneに触れる機会の少なかった業務部があります。こちらはふだん、受発注業務を行っています。長年、基幹システムを利用しているため、なかなかkintoneの利用機会を生み出すことができませんでした。しかし、ちょうどこの時期に発売した新商品の見積もりがどうしても作成できなかったので、kintoneを使いました。

社内すべての部署で、それぞれの業務で、kintoneを使わざるを得ない状況となりました。