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素人流 業務改善全社プロジェクト(全1記事)

2017.08.03

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「作って終わり」じゃない! IT素人だった女性社員はどうやって業務改善ツールを定着させたのか

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「kintone hive tokyo 」で、製造現場で使われる研磨用の砥石やバリ取り用の工具を販売しているジーベックテクノロジーによる導入事例が発表されました。そもそもITにくわしくなかったと話す同社の本堂円氏がkintoneに出会い、どのようにして業務改善に至ったのか。また、ITにくわしくない“素人”だからこそできたことは?

ITにくわしくない私の、素人流業務改善全社プロジェクト

本堂円氏(以下、本堂):みなさん、こんにちは。株式会社ジーベックテクノロジーの本堂円です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

素人流業務改善全社プロジェクト。決して ITにくわしいわけではない私が、kintoneに出会い、その可能性を信じて、社内全体の業務改善に向けて進めてきた取り組みをご紹介させていただきます。

はじめに、弊社ジーベックテクノロジーの紹介をさせてください。1996年に設立し、金型を初めとした、自動車や航空機、携帯電話などの製造現場などで使われる研磨用の砥石や、バリ取り用の工具を製造・販売しております。

バリ取り、ご存知でしょうか? 金属を削ったあとに出る、ささくれのようなものがあるんですけれども。それをバリと呼びます。バリを取る工程は製品の最終品質を左右する、大変重要な工程です。従来より、ご覧のように手作業で行ってきました。

弊社のセラミックファイバー製の工具をお使いいただくことで、バリ取りの工程を人手作業から工作機械、ロボットを使って自動化しましょうという提案をさせていただいております。単純作業をできる限り自動化し、人間は創造的でやりがいのある仕事をしようという考えのもと、活動をしております。

そんな我々ですが、社内を見渡すとどうでしょうか? kintone導入のきっかけになった、営業部向けの顧客・案件管理システムでみてみたいと思います。

システム会社に依頼して設計したものを使っていたけれど……

お客様の部品の情報や、加工の条件を記録するためのツールです。

データベースに必要な4つの要素をこのように表してみました。2003年、Webベースのシステムを初めて導入いたしました。初めはよかったものの、10年ほど経過すると、利用者も増え、なかなか要望に応えることができなくなってきました。

とくに検索性に乏しく、必要な情報にたどり着くまでに30分以上かかったという話が出てきてしまいました。結局のところ、長年いる営業マンの記憶力が一番良いのではないかという状況です。

そんな状況を打開するべく、2012年にトップダウンで導入されたのがセールスフォースでした。

(会場笑)

私は、このシステムの切り替えから関わることになりました。セールスフォースもドラッグ&ドロップで自由にアプリを設計することができますが、入力の導線や画面の構成に、制限があります。専門のシステム会社さんに依頼して、設計をお願いしましたが、なかなか思い通りにはいかず。残念ながら、費用面で妥協せねばならない点が多く、不安を抱えたままの導入となりました。

案の定、ユーザーからの不満が噴出します。入力の動線が、営業マンの頭の中の流れとそぐわない。見た目もわかりづらい。加えて、検索方法です。これは、kintoneも同じなんですけれども、絞り込みマークの中から検索したい項目を1つずつ選択していくやり方、不便を感じるという方はいらっしゃいませんか? 

入力もしづらい、検索もしづらい。ということで、次第に入力することさえ敬遠されるようになってしまい、案件の記録が営業マンのノートにしか残っていない状況が出てきてしまいました。

2年間の利用を経て、これ以上の継続は無理と判断し、設計の融通が利くこと、費用面、社内SEがいない我々でもメンテナンス可能なツールということで、2014年の秋に、kintoneのテスト導入を始めました。

パイプ・サイクルに従ってkintoneを導入

ちょっと話が変わりますけど、パイプ・サイクル。ご存知の方、多いのではないでしょうか? 調査会社のガートナーが発表している、新しいテクノロジーやアプリケーションが生まれてから、時間の経過とともに、どのように発展し、変化していくのかを表した図です。

メディアの関心によって、世間から大きく注目される黎明期。時間の経過とともに、実態以上に期待値が高まります。過度な期待のピーク時を越えると、次第に期待と実態のギャップが明らかになり、幻滅期に至ります。この幻滅期に市場が淘汰され、期待に応えることができたもののみが、次の啓蒙活動期、生産性の安定期へと移行できるとされています。

ガートナーが発表している2016年の日本におけるテクノロジーのパイプ・サイクルで言いますと、人工知能が過度な期待のピーク期。IoTが幻滅期にあたると話されています。みなさん、イメージしていただけますでしょうか?

新たなテクノロジーが社会に認められるまで。会社で、新たなシステムが社員に認められるまで。同じ曲線を辿っているように思いました。そこで、kintone導入期からの活動を、パイプ・サイクルに当てはめて、振り返ってみたいと思います。

2014年11月、導入期です。実際のところ、過度な期待をしていたのは、自分自身かもしれません。簡単にアプリを作って、業務改善ができます。アプリストアを見てみると、周辺アプリとしてさまざまな連携システムが紹介されています。

kintone自体が市場で成長すれば、連携システムはますます増え、もっと便利になるに違いない。これは、営業部だけに使わせるにはもったいない、全社の中心になるようなシステムにしたいと思いました。

私の作戦が始まります。kintoneを使えば、簡単に業務改善できます。営業部だけでなく、全員に触れてもらいたいんです。kintoneを他人事にはしないという認識を持ってもらうようにしました。

少しアプリを作ってみると、できないことも見えてきました。例えば、LOOKUPで持ってこれるフィールドには限りがありますね。それから、テーブル行は一覧表示で見たときにちょっと見づらいと思いませんか? できないことはできないと伝えていくようにしました。

導入してすぐに、ホームページ経由のセミナーの申込みのアプリを作りました。アプリから簡単にWebフォームを作成できるサイボウズスタートアップスさんのフォームクリエイターを採用しました。ホームページから入ってきたレコードを確認したあとは、日本オプロさんの帳票作成ソフトを活用して、ワンクリックで受講票を発行できる仕組みを作りました。

次に、お客様にお貸出しするデモ機の貸出管理ですが、こちらはエクセルとホワイトボードを使った管理から抜け出せずにいました。なので、これもすぐにkintone化します。並行して、全社員に触れてもらう目的で、社内イベントの出欠確認や、健康診断の受診日の確認などの簡単なアプリを作りました。

これらのアプリが問題なく稼働することを示せた段階で、懸案の顧客・案件管理システムを、kintoneに移行しました。セールスフォースで失われたデータの入力部分を取り戻すべく、営業マンの入力したい動線、見た目を精査しました。アプリ作成に使ったのは、基本機能のみです。それでも、再び入力してくれるようになりました。

ユーザーの不満解消だけでなく、一歩進んだ結果を

ただ、まだ満足のいく仕上がりではありません。

悩ましかったのが、こちらです。1つのレコードに対して、複数のレコードが紐付く数値項目があります。ここでテーブル行を使うべきか、関連レコードを使うべきか。結局、入力漏れを防ぐために動線を優先し、1つのアプリ内で完結するテーブル行を採用しました。

しかしながら、項目数が多く、横に長い構成になってしまい……。横にスクロールしないと、入力のときにも閲覧のときにも、大変不便になってしまいました。ノートパソコンのユーザーである営業マンには、とくに不評でした。

もう1つ、セールスフォースと変わらない絞り込みのやり方も不評でした。アプリの構成を再検討したりもしましたが、これ以上の改善が難しいのです。

導入から1年ほど経過しました。過度な期待のピーク期から、グラフの下降線を辿って、幻滅期に入ります。ユーザーからの不満が噴出します。完全に壁にぶち当たりました。

JavaScriptを使えばいろいろできるらしいと聞くものの、一体誰に相談したらいいんでしょうか? なにもできず、2ヶ月ほど経過してしまいます。そんなある日、あるセミナーのお知らせの中に、M-SOLUTIONSさんのご紹介がありました。kintoneのカスタマイズ、アプリの構築や運用のサポートをされています。

すぐに連絡しました。これまでの悩みを打ち明けると、「kintoneには、kintone流のコツがあるんですよ」とアドバイスをいただきました。そしてすぐに、営業部で使っていたアプリの見直しと改善をお願いしました。

相談できるパートナーを見つけた私は、再び前向きに取り組み始めることができました。改めてkintoneを認めてもらうためには、ユーザーの不満を解消するだけではなく、より1歩進んだ結果を見せる必要があると思いました。

顧客・案件管理システムになにを望むのか? 情報が整い始めたからこそ見えてきた、新しい要望がありました。ここは、歩み寄りが必要です。データベースに情報は集まってきているんです。開発部にこそ、この情報を活用して、製品の改良や新製品の開発に活かしてほしいのです。

開発部が使ってくれない理由「見づらいんだよね」

M-SOLUTIONSさんとの改修の主なポイントは、次の3つだと思っています。

横スクロールの問題がありました。これに対しては、動線のメインになるアプリにボタンを設置。これをクリックすることで、ポップアップで別アプリの画面が立ち上がり、ここに入力し、保存します。入力の動線は変えることなく、関連レコードを使えるようになりました。

開発部にこそ使ってもらいたいわけですが、ふだん入力していない人には、絞り込みマークの中から、項目を見つけてくること。これが難しいんですね。そこで、一覧の画面上に検索パーツを埋め込みました。よく使う項目を一覧画面上に表示することで、検索までのハードルを下げます。

最後に、コクヨさんの手書き入力ソリューション、CamiApp Sという商品を採用しました。当社の営業マンが営業にうかがう先は、各メーカーの部品製造の心臓部です。秘密管理は徹底され、パソコンはもちろん、携帯やカメラを持ち込みが禁じられていることが多いです。そこで、営業マンは紙のノートを持って商談し、そこに部品の絵を中心に記録をとってきます。

そこから、文字情報はkintoneに転記をし、絵はカメラで写真を撮ったあとに、添付ファイルにアップする。この作業を1件あたり15分から20分ほどかけて行っています。多いときには1日5件ほどの入力が必要ですが、CamiApp Sを使うことで、この転記作業が削減されました。

このような改善を行うことで、入力と抽出のバランスのとれた、新しいシステムにブラッシュアップされたと思っています。

さて、ここまでやったにも関わらず、開発部が使ってくれません。調べたい情報は、すぐに取り出せるようになっています。なぜ使ってくれないのでしょうか? 聞いてみると、「なんとなく見づらいんだよね〜」と言われます。

なんとなく見づらいという話、営業部に初めて使ってもらったときにも聞こえた声でした。しかし、時間の経過とともに、聞こえなくなりました。そこで、今までkintoneに触れてもらう機会が少なかったので、開発部のためのアプリを1つ用意しました。

紙とメールとエクセルに埋もれていた特許管理です。出願から登録までの履歴を記録し、必要な情報をkintoneに集約します。また、アラーム機能を活用し、出願後の手続きに関する期限管理を行いました。共同出願している会社様にもご協力いただき、コメント欄を活用したやりとりをすることで、案件に関する話がすべてkintoneに集約されました。今では、このアプリがないと困るそうです。

そうすると、これがきっかけになったのかわかりませんが、驚いたことに開発部から営業部へ、顧客・案件システムの項目について、改善の要望が上がってきました。営業先で聞いてきてほしい項目に不足があるそうです。

もう1つ、社内でkintoneに触れる機会の少なかった業務部があります。こちらはふだん、受発注業務を行っています。長年、基幹システムを利用しているため、なかなかkintoneの利用機会を生み出すことができませんでした。しかし、ちょうどこの時期に発売した新商品の見積もりがどうしても作成できなかったので、kintoneを使いました。

社内すべての部署で、それぞれの業務で、kintoneを使わざるを得ない状況となりました。

利用状況に応じて、最適な環境の提供を

今年に入ってからの活動です。幻滅期をなんとか乗り切り、グラフが再び上昇する啓蒙活動期です。kintoneはもはや不足を補うためのツールではありません。積極的に業務改善するためのツールです。

アプリの数も増えてきました。私1人でメンテナンスするのは限界です。新しく作るアプリは、各部の担当者と一緒に、メンテナンスできる人材を育てることにしました。そして、より社員に深くつながるシステムにしたい。これを今年の課題としました。

各部から次々とkintone化したい課題が浮かんできます。各部の担当者と作業を分担して、一緒にアプリを作成しています。

ソウルウェアさんのkinconeという連携システムを導入します。これは、カードリーダーにICカードをかざして、記録された入退者の時刻が自動的にkintoneに反映されるものです。有休の管理や残業の申請も、すべて載せることで、全員がさらにkintoneに触れることになります。

kintoneに関わり始めて3年ほどになろうとしています。振り返ってみると、つまずくポイントがあることに気づきました。利用者からの要望を多く取り入れてアプリを作成してきましたが、入力する側は入力する動線や工数の削減を求めます。検索する側は当然、検索性を重視します。

例えば、入力する人数が多くて、検索する人数が少ないといったアプリがあったとします。この場合、入力する側の要望が多く反映されたアプリになっていると思います。ところが、このアプリが状況に応じて、利用範囲が変わってくることがあります。検索する人数のほうが多くなったり、入力する人数がさらに多くなったりと、アプリが成長してきます。

このとき、最初に作った構成がユーザーのニーズに合わなくなってくることがあります。アプリの管理者としては、そのときどきの利用状況に応じて、最適な利用環境を提供することが重要ではないかと考えています。アプリは作って終わりではなく、ずっと見守る必要があるように思います。この変化に対応できるのも、kintoneのいいところだと思います。

生産性の向上というフレーズを、最近よく聞くようになりました。単純作業はできる限り自動化し、人々はより創造的でやりがいのある仕事を。我々には、業務改善をする機会と最良のツールが与えられています。kintoneを使った業務改善、まだまだできると思います。みなさんの会社での業務改善に少しでもお役立ちできる情報であれば幸いです。

最後に1つ宣伝をさせてください。弊社ジーベックテクノロジーでは、8月10日をバリ取りと制定しました。バリ取りに関する注目を広げる活動を進めております。バリ取りに関するご相談はぜひ、ジーベックテクノロジーまでお問い合わせください。どうも、ありがとうございました。

(会場拍手)

「作って終わり」は良くない!

伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。

本堂:ありがとうございました。

伊佐:トップバッター、大変ですよね。

本堂:緊張しました(笑)。

伊佐:それにしても、最後のアプリが成長していくんだよっていう考え方は、もうその通りだなと思いましたね。なかなか見失ってしまうというか、作って終わりのシステムって良くないですよねって僕らもよく言ってるんですよ。kintoneはそうなりませんって言ってるんですけど、なっちゃいますもんね?

本堂:そうですね。それが嫌だなと思ったんですけど。そういうものですね、システムって。

伊佐:やっぱりね(笑)。作ると満足して、「は〜、終わったな」と思って。なんか、そのまま放っときたくなりますよね。

本堂:そうですね。

伊佐:今はどうやって、その作って終わりじゃない状況を作ってるんですか?

本堂:とにかく、利用者の状況をよく見るっていう感じですね。

伊佐:声を聞くってことですか?

本堂:はい。使ってるな〜って様子を見ながら、どう使ってるのかなぁなんて。ちょっと見ると、なんか不便そうな動きをしてたりするときがあるので、「どう?」って聞くと、「これが、なんとか……」みたいな声が上がってくる。それをすぐに対応できることはしますし、ちょっとご協力をいただかないとできないことは、案件を取りまとめM-SOLさんにお願いしようかなぁとかってやってます。

伊佐:なるほど。

以前の神戸デジタルラボによる導入事例を見て……

今日、すごくリアルなお話を共有いただいたので。聞いてて、「あ〜、社内から使いにくいとか言われて、心苦しいな」って(笑)。すごくグーっとするような気持ちだったんですけど。よく乗り切られましたよね、そこを。どういう状況だったんですか? その当時は。

本堂:当時は、苦しい思いをしてました(笑)。

伊佐:嫌ですよね。自分が文句を言われているみたいですもんね。自分が作ったkintoneがそんなこと。言われると。

本堂:はい(笑)。まぁ、持ち前の図太さで(笑)。

伊佐:なんか、認定資格制度のスキルにそれは必要ですね(笑)。ちょっとそういうのも聞いていく必要があると思いましたけど(笑)。

これからのkintoneの活用について教えていただきたいんですけど、なにか考えていらっしゃることはありますか?

本堂:昨年末くらいに一通りできたので、今年はちょっとゆっくりしようと思ったんですけど。昨年11月の神戸デジタルラボさんの……。

伊佐:神戸デジタルラボさん、今日、いらっしゃってますね。

本堂:その発表で、ちょっと勇気付けられまして。これは、全社にもっともっと突っ込んでいかないといけないなぁと思って。

伊佐:ご存知ない方のために補足をしますと。神戸デジタルラボの武富さんという方がですね、昨年のkintoneAWARDのファイナリストになられて、人類kintoneマスター化計画っていうすごい計画を立ち上げられたんですよ。その名の通り、みんながkintoneマスターになる、と。社内にkintoneマスターが増えたら、業務改善がどんどん広まるんだよっていうことを、そんなアイデアをご発表いただいたんですけど。そこをご覧になって?

本堂:そうですね。「あ〜、がんばってる人がいるなぁ」「そうだ、そうだ、やらなきゃいけないな」と。

伊佐:素晴らしいですね。いいですね、武富さん。人類kintoneマスター化計画、1歩進んでますよ! 明らかに。ぜひ、今日聞いたみなさんも、共感される方、みんなで一緒に進めていきましょう。

それでは本堂さん、改めまして、ありがとうございました。

本堂:ありがとうございました。

(会場拍手)

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