「重篤な依存症になる人は1%以下」脳科学者×ポーカー世界王者が語る、ギャンブル依存症の正体

脳科学者・中野信子×ポーカー世界チャンピオン・木原直哉 #4/4

初心者向けに行われたポーカー教室のトークイベントで、ポーカー世界チャンピオンの木原直哉氏と脳科学者・中野信子氏が登壇。ポーカー上で行われる駆け引きを、中野氏が脳科学の観点から斬り込みました。さらに、当日は観客として勝間和代氏も参加していました。本パートでは、近年話題になりつつある「ギャンブル依存症」について言及。日本では「ギャンブル依存症になる可能性は5パーセント」と言われているけれど、本当のところは……?

「正しく怖がり、潔くあきらめる」

木原直哉氏(以下、木原):どんな能力でもあれば得なんですけど、ないとダメっていうのは(ポーカーには)……プロ野球選手で足が遅かったら致命的かもしれないですけど(笑)。

プロ野球選手でも、速い球が投げれたらもちろんいいけど、140キロでもエースの人もいるじゃないですか。

中野信子氏(以下、中野):「正しく怖がり、潔くあきらめる」能力じゃないですか?

木原:はい。それはたぶんポーカーに関係なく、すべてに当てはまりますよね。

ポーカーは「ゲーム、いろんな趣味、仕事などに対する一般的な関わり方」なんです。けど、ポーカーはそれを1ハンドごと、1回1回のゲームごとで体験していくところはあります。

なので、数学的な要素がまったくダメとか、計算する必要がまったくない。そもそもポーカーって趣味なのに、計算嫌いなのに計算やんなきゃいけないって、そんなことはないんです。

「ポーカー遊び」なんです。基本はポーカー遊びで、麻雀でもポーカーでもバックギャモンでも、計算できたほうが得なのは間違いないです。けど、できなかったら強くなれないかというと、まったくないです。

中野:たぶんどちらかというと、木原さんの計算能力じゃない部分を、私みたいな人が補うんでしょうね。人のふるまいを見る。

人のふるまいを見ることが得意

木原:ちなみに、自分は人のふるまいを見ることが得意なんですよ。

中野:本当ですか?(笑)。

木原:本当です、本当です。人のなんちゃらは覚えられないですけど、例えば、パッと周辺視野で、誰がなにをしたかはだいたい見えています。

例えば、テーブルに10人いて、自分以外の9人がいる。その中でパッとボードを開いた時に、手を見返した人が誰だとか、5〜6人ぐらいのプレイヤーがいても見えているんです。

中野:誰がいくらレイズをしたとか?

木原:レイズの金額も目の前で見えているからですが、癖的な要素です。せっかくなので、またポーカーの癖の話ですが、例えば、いきなりハート・ハート・ハートと連続して3枚、ボードに出たとします。

手札にハートが1枚あったら、あと1枚ハートが来たらフラッシュです。2枚ハートがあれば、いきなりフラッシュができていた。そんな感じで、ハートがあるかないか見返すことってよくあるんです。「ハートあったかな、なかったかな?」みたいな。

それで、ハートがすでに2枚あった時、だいたい覚えてるので見返さない。だから、見返した時は、フラッシュを持ってないんです。1枚はハートじゃないんです。それは一般的に有名な……。

見返したら、だいたいハート・ハートってないんです。それを1対1でやっていると、あえて見返したりする。

それはさっき話したことですが、例えば、6人になっている時に見返したら、みんな油断しているからフェイクの癖を入れようなんてしない。見返したら、だいたいハートを持っていない。その時に誰が見返したかを、パッと見た時に、ここを見ながら周辺が見えている、そいうことがけっこう得意です。

中野:なるほど。

木原:だから、実はちょっとは……(笑)。

中野:その能力はあると(笑)。じゃあ、次にいきたいと思います。

中野氏の戦い方は受験勉強のやり方と同じ

木原:中野さんに聞いてみたいことはないですか?

中野:私は今日はダメです。ポーカー教室ですから。

木原:いえいえ。ポーカーのいろんなものを脳科学の分野から見てもらうって、非常におもしろいので。

中野:わかりました。

勝間和代氏(以下、勝間):では、私から。フォトメモリーなど記憶が優れていても、計算がイマイチな人は、どうやってポーカーに勝つんですか?

中野:私ですか?

勝間:はい(笑)。

中野:覚えておくんでしょうね。確率とか、全部、表にして。

勝間:受験勉強と一緒ですね。

中野:そうですね。覚えておいて、こういう時はベットする、こういう時は降りるという、基本戦略は全部覚えておきますね。

木原:覚えるんですか。

中野:覚えるんですね(笑)。

木原:へぇ。

勝間:『レインマン』(注:1988年公開のアメリカ映画、もしくは同名の原作)みたいですね。

中野:あ、そうですね! 私のやり方は『レインマン』みたいですね。覚えておいて、その基本戦略からちょっとブラフをどれぐらい入れようか、という考え方だと思います。

AIが教師となり、子どもに学習させる時代

木原:たぶんパッと覚えられる人だと、今のポーカーのAIを使うとはやく勝てるようになるんじゃないかなと。ポーカーAIは1対1だとトッププロを超えましたが、1対複数だとトッププロがまだAIに勝てるかもしれない。それでもプロの平均よりはぜんぜん強いです。

だからポーカーのAIがどう言うかを覚えて、「ポーカーのAIだったらこの局面でこう言うから、そういうふうにプレイしよう」と覚える。それが今は一番早いですね。

中野:そうですね。将棋でも今はそういう覚え方が進んでいるんじゃないかと聞きました。それで異常に強くなった子供がいます。

木原:ありましたね。

中野:その子どもがどう学んでいるかを見たら、どうもAIの筋を真似て強くなったらしいです。

木原:僕もその記事見ました。

中野:AIが教師となって学習を子どもにさせる時代になったなと、とても印象的でした。私がもしポーカーを今から上達しようと思ったら、そういうやり方になるんですかね。

木原:覚えられる人だと一番それが早い。自分はやっぱり覚えられないので、その場で考えます。覚えられないというか、自分が納得がいかないと覚えられないんですよ。どんなに覚えようとしても……。

中野:気持ち悪いんですね?

木原:はい。覚えられないです。なので、自分の考えていることは覚えられるけど、考えた結果を覚えられない。

中野:その抵抗感がある人と、ない人の違いになりますかね。

木原:はい。

中野:という感じです。

テキサスホールデムのやり方を知っている人は少ない?

木原:他になにか質問はありますか?

中野:私から質問してもいいですか? みなさんは、ポーカーのルールはほぼ知ってらっしゃいますか?

木原:ポーカーのテキサスホールデムのルールをご存知の方は?

(会場挙手少数)

木原:じゃあ、ポーカーの役をご存知の方は? ワンペア、ツーペア、ストレート、フラッシュとか。役の強さとか。

(会場挙手多数)

木原:わかりました。後で参考にさせていただきます。

中野:今日は他のゲームをよく知ってらして、ここに来てるんですか? 例えば、麻雀をされるとか。

木原:ここに来たきっかけとして、講習会だから来たという方は?

(会場挙手少数)

木原:ありがとうございます。

中野:他の方は違うんだ(笑)。

木原:たまたま、なにかのきっかけでしょうか?

勝間:ずっと店に掲示をしてるんです。

中野:そうなんですね。

木原:じゃあ、お店の常連の方は?

(会場挙手少数)

中野:常連(笑)。

木原:常連じゃなくても、お店に数回来たことがある。

(会場挙手少数)

木原:なるほど。そんな感じですか、わかりました。

中野:じゃあ、テキサスホールデムが初めてという人もいらっしゃる。

木原:はい。

中野:初心者講習会なのに。申し訳ないです。

木原:いえいえいえ。

ポーカーと麻雀は似ている

中野:麻雀に少し似ていますよね。

木原:「一番近いゲームは?」と聞かれたら、自分は「麻雀」といつも答えていますね。

中野:そうですね。もともと麻雀がお得意でいらっしゃるんですよね?

木原:そうですね。もともと麻雀やりすぎて大学を留年した人間なので。ちょっとやりすぎました、はい。

中野:私の同級生でもいました。

木原:いっぱいいますよね?

中野:いっぱいいました(笑)。実験中に麻雀をする人も。化学の実験は待ち時間が長いんです。仕込んだ後に、3時間待ちとかある。

木原:それ普通ですよね。

中野:学生室でみんなで「待ち時間、なにやろうか」と言って麻雀をやっていて、先生に怒られるっていう(笑)。

木原:3時間待ちって、一番中途半端ですよね。10時間待ちとか、15時間待ちだったら帰って、次の日に来ればいいんですけど。3時間は、中途半端なんですよね。

中野:そうですね。そうすると、麻雀をする時間があるわけです。そんなことをしているうちに、私の同級生は院試をすっぽかし、卒業論文を出しそびれ、単位を落とし、という感じで。

木原:留年。

中野:サヨナラということになりましたね(笑)。そういう危険な環境です。

「ギャンブル依存症になる可能性は5パーセント」は間違った情報

ポーカーで身を崩した人っているんですか?

木原:いっぱいいますよ。

中野:いっぱいいるんですか(笑)。

木原:それはいっぱいいますよ。どんなものでもハマりすぎると、できる人もいれば、できない人もいるので。別にそれはポーカーでも麻雀でも将棋でも、なんでも一緒ですね。

中野:日本のカジノ法案、IR推進法案も通りましたから。なのでこれから、依存症という問題に対する施策も進んでいくと思うんです。それと、どう付き合ったらいいかもあると思うんです。

木原:別に依存症は、国家はあまり関係ないですよね。というのも、ポーカーで依存症になった人は、ポーカーじゃなくてもなにか依存症になるんです。実際そうですよね?

中野:そのとおりです。どうして私が今こういう話をしているかというと、ログミーが来ているからです。配信された時に、そういう記事をちょっと書いておくと、「あー、安心ね」と思ってくれる可能性が上がりますので(笑)。ちょっとキーワードだけでもいっておきたかったんです。

木原:自分としては、「ポーカーをやったからポーカー依存症になってうんぬんかんぬん」という心配はいらないと思います。

中野:統計的な話をすると、依存症になる確率。日本で今流れてる情報は5パーセント、8パーセントなどと、非常に高確率です。でも、あれは間違った情報と言えるんです。

木原:そうです。ギャンブル依存症が5パーセントと言っていますけど、あれは……。

中野:定義がちょっと違うんですよね。

木原:「ギャンブルにどれぐらいの頻度で行くか、どれぐらいのお金を使うか、いくら以上使ったら依存症です」という感じで、金額で区切っているんです。

中野:そうですね。5パーセントという数字を出した先生ご自身が、あのデータに対して「依存症の疑いがある人が5パーセントです」「実際に重篤な依存症になる人は、その10分の1ぐらいだろう」と明言しています。

けど、その5パーセントの部分を出したい意図がある人がいたんでしょう(笑)。そこまで書いていいかわからないけれども、やっぱり5パーセントという数字が非常に流布しやすい。みんな知らない世界だから、とても怖いと思ってしまいやすいんですね。

だけども、実際は0.5パーセントぐらいだろうと考えられています。0.5パーセントをどうディールしていくか、という問題になる。

木原:本当そうなんですけどね。ただ、カジノができたからといって、依存症がいきなりガンと増えることはあり得ないですよ。

中野:不安を持っている人が多いところに、「そんなの関係ないですよ」と言うわけにもいかないですからね。

木原:そうですよね。

中野:そこは慎重に、私たちはプレゼンテーションしていったほうがいいと思います。

依存症をクリアする方法は「ギャンブルが攻略可能であることを知る」

木原:例えば、ギャンブル依存症をクリアする一番の方法は、そのギャンブルが攻略可能であることを知る。例えば、なにかの依存症だったとして、その人がポーカーにハマって、ポーカーにすごく強くなってプロになる。

プロっぽくポーカーで収益をあげ始めると、そのためにはリスク管理を次第に学んでいき、いつの間にかプロみたいな感じでしっかりリスク管理ができるようになり、依存症的な人ではなくなる。そのことはよくある話です。

中野:体現者が言っていますね(笑)。

木原:(笑)。2012年のワールドシリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)、ポーカーの世界選手権のメインイベントで優勝した人で、グレッグ・マーソンがいるんですが、彼は麻薬中毒だったんです。

20歳前後の時に麻薬中毒に陥って、3年間ぐらい抜け出せなかった。その彼がポーカーを始めて、ポーカーにハマって、もう毎日のようにポーカーをやって。その結果、2012年に世界チャンピオンになりました。そして、今は麻薬もぜんぜん手を出さなくなりました。

中野:それはいい話ですね。プロとして今は生計を立てていらっしゃる、ということですね。

木原:はい。すごい超有名なプロとして。

中野:すばらしいですね。グレッグ・マーソン。

木原:別に特別な治療をしたわけではないんです。

中野:すばらしい。非常にいい例で、依存症の疑いのある人ではなくて、重篤な依存症の素因を持った人は、日本にはまあ、遺伝的な確率からいうと1パーセントもいないぐらいだろうと考えられるんですね。

これはDRD4という脳内にあるドーパミンのレセプターのタイプなんですけど、「日本には(依存症の素因のある人が)非常に少ないはずなのに、アメリカよりも依存症疑いのある人が多いとはどういうことだ?」と私は思っていたんですが、0.5パーセントなら非常によく理解できる。

じゃあ、0.5パーセントの人たちはどういう人なのかというと、なんでもハマりやすい人です。つまり、麻薬にも依存しやすいことがわかる。けれども、麻薬に依存するぐらいなら、その依存性を利用して、利用してというか、ポーカーないし、生計を立てられるようなギャンブルをやったらどうなんだと。

迷惑をかけず、自分が楽しいことが一番いい

木原:そもそも仕事に依存してしまえば、一番早いですけどね。

中野:まあ、そうですね(笑)。

木原:(笑)。けっこう多いですよね、きっと。

中野:私、テレビに出始めた頃に、BS日テレの加藤浩次さんの番組に出たんですね。

木原:自分も出ました。

中野:それで加藤浩次さんと話をして、依存症の話になったんです。加藤さんはギャンブルがお好きだったらしいんです。

木原:ちょっと身内でいろいろ話したりとか。

中野:(木原さんも)話しました? 

木原:はい。

中野:それで、加藤さんは「ギャンブルをやめよう」と思ったことがあったとおっしゃるんです。「もう仕事をギャンブルだと思おう」「こんなにおもしろいことはないから、仕事をギャンブルだと思えば、他のゲームなんて現実世界のことに比べればはるかに軽い話だ」「今はお仕事にギャンブルとしてハマっている」とおっしゃってました。そういうハマり方もあるんですよね。

木原:そうですよね。なにかの中毒になるって、アルコールでも、麻薬でも、ギャンブルでも、そこである必要はなくて、仕事でも言えますよね。

中野:みんなに迷惑をかけないで、しかも自分が楽しいなら、それが一番いいですよね。

木原:なにかに熱中することと一緒ですからね。

中野:はい。

カジノができても依存症が増える確証はない

木原:なので、カジノができたからギャンブル依存症が増えるとは、自分はあまり思わない。

中野:本当はね。でも、心配な人もいるので、その人に対するエクスキューズも必要かなと。ある程度の手立ても必要かなと思います。

(時計を見て)20時をそろそろ回りましたので、本編にいってもよろしいでしょうか。

木原:はい。

中野:では、私は木原さんを残して、参加者に回ってよろしいでしょうか?(笑)。

(会場笑)

木原:はい(笑)。

中野:今日は長々とありがとうございました。また引き続き、よろしくお願いいたします。

木原:よろしくお願いします。

(会場拍手)

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