堺市とファミリーマートが成人向け雑誌にカバー

山田太郎氏(以下、山田):書籍協会と雑誌協会が、ちょっと激しく堺市とぶつかっています。

坂井崇俊氏(以下、坂井):遊佐さんに読んでもらいましょうか。

山田:ニュースいきましょうか。

遊佐めぐみ氏(以下、遊佐):はい、読ませていただきます。

コンビニ成人向け雑誌にカバー、堺市とファミマが開始、市内84店舗に導入へ。

コンビニエンスストアに並ぶ成人向け雑誌を子供が目にする機会を減らそうと、堺市とファミリーマートは16日協定を結び、雑誌の中央を腹巻のように濃い緑色のビニールカバー(高さ12センチ)で覆う取り組みを、同市北区の中百舌鳥駅北口店で始めました。

市によると、全国的にも珍しい取り組みで、3月末には同店を含む11店舗に拡大。現在84店ある市内全店での導入を目指しております。

対象は大阪府青少年健全育成条例で有害図書類に指定され、区分陳列された雑誌です。陳列棚の下方には白い横長の板も設置し、小さな子供の視線を遮ります。また店舗入り口には「女性と子どもにやさしい店」と記されたシールを貼っております。

市と外部有識者との会合で一昨年、「コンビニでは性表現が氾濫している」という指摘があったのがきっかけです。ファミリーマートの担当者は「雑誌の売り上げは落ちるかもしれないが、イメージアップにつなげたい」と話しております。

山田:はい。どういうやつかというと、こういうやつなんですね。これ本物なんですけど。

坂井:本物ですね。

坂井:場所がエロい(笑)。

山田:あ、そうですか。

(一同笑)

山田:「堺市では、女性や子供に対する暴力のない安全なまちづくり事業『堺セーフティ・プログラム推進事業』に取り組んでいます」。

で、問題だなとちょっと思うのはここなんですね。「大阪府青少年健全育成条例により、18歳未満に対して、『この棚に陳列されている雑誌』の販売や閲覧は禁止されていますのでご了承ください」。

雑誌の表紙がまったく見えない

坂井:これ、ちょっと、写真があるんです、どんなかんじで売られているのか。

山田:ちょっと、じゃあ、写真のほうを。

坂井:こんなかんじです。

遊佐:まったく見えませんね。

山田:そうなんですよ。

坂井:さっき遊佐さんが言ってた、白い板もありますね。

遊佐:うーん。

山田:というかたちで売られているということですね。

坂井:これ、雑誌協会、書籍出版協会は、「表紙も表現の自由の一部だ」と。「これがないと売れないじゃないか」ということで、堺市に対して文句を言っているというか、「取り消してくれ」ということを言っているっていうのが、今の現状なんですよね。

民間に対して自主規制を強制しているような構造

山田:それで今、堺市の竹山市長に対して、こういうかたちで、雑協、書協、それぞれの協会が公開質問状というのを出しているわけですよね。

坂井:で、まあ、返ってきたのが、ほとんどあれですね、議論になってないというか、「こういうのなんでやるの?」って聞いたら、回答がこう返ってきてるんですけれども。

坂井:「これはあくまでファミリーマートとの協定でやったもんなんで、とくに外からとやかく言われるもんじゃない」と。「ファミリーマートが自主的にやってるもんなんだ」というような回答だということなんです。

山田:そうなんですよ。コメントの中でも「何が問題なのか」「いい案」という声もあったんですけど、いくつかポイントというか、問題があるとすると、書協、雑協がいろんなこと言ってるんですけど。

「このシートが大きすぎて本編が見えないからなんとかしろ」とか、いろいろ細かい話があるんですけど、それは置いといて。

僕がちょっとまず気になったのは、これはファミマとの自主規制に基づいてほんとにやったものなのか、いわゆる大阪の青少年健全条例に基づいてやっているものなのか。

それはちょっとはっきりさせるべきだと思っていて、どうも話を聞いていると、今回は大阪の健全育成条例に基づいて、基本的にこの札をつけるものではないので、あくまでもファミマが自主的にやってるところがあるので、ちょっとこの文言そのものはおかしいんじゃないの、ということがあるので。

そうでないと、何が今起こってるかというと、いわゆる大阪府という、……堺市という行政が公権力を背景にですね、民間に対して自主規制を強制しているような構造になってるんじゃないかなと。

大阪の青少年健全育成条例もとんでもないんだけど、ちょっとそれはさておき、それはまた青少年健全育成条例がいかなるものかっていうのは、やったら1時間以上やれますので。

遊佐:(笑)。

山田:読んだんだけど、大阪のあれも。ちょっとそこは置いといて、いずれにしても、条例でやるなら条例でこういうものが貼ってあるのはいいんだけど、今回、「条例がおかしいじゃないか」って書協、雑協が言うと、「いやいやいや、それはファミマとの自主規制」。

坂井:民間同士の契約みたいな、そういうイメージですね。

山田:なので、「いや、そちら側でやってるので、我々は知らない」って、あるときは言ってる。

つまり、権力で制約させようとしているくせに、で、もちろん例えば、じゃあ、民間のいろんなところが文句を言ったときに、そういう公権力でもってやったものに対しては救済措置があったり、議論の場があればいいんだけど、「いや、それはファミマが勝手にやったことです」って話になっちゃうっていうのは、それはおかしいよねって、こういうことなんですよ。

最高裁で発禁になった本が今は売られている

山田:もう1つ、青少年健全育成条例をいろいろ見てるんですけども、図書類の10ページ以上に性表現がある場合には、いわゆる包括指定としてですね、シールをつけなきゃいけないということで、そういう意味で貼ったシールがこれだと思うんですが。

山田:ほんとはですね、このシールを貼るっていうこと自身は、それはそれで、まあちょっと、大阪の健全条例がいい悪いは置いといて、でも差別してるなと思ったのは、例の、いつも出すんですけど、『チャタレイ夫人の恋人』

山田:これ、最高裁で発禁本になった本が売ってるってこともすごいんだけどね、新潮文庫で。これもよく読むと、10ページ以上にわたって性的な表現が書いてあるわけですよ。つまり、大阪の青少年健全条例をちゃんと運用しようと思うと、この本はシールを貼っておかなきゃいけない。もっと言っちゃうと……。

坂井:シール貼って区分陳列ですね、

山田:そう。区分陳列をしなければいけないってことになるし、もっと言うとですね、多くの本が、いわゆる暴力シーンだとか、エロシーンだとか、いろいろあって、それは条文に照らし合わせていくと、みんな違反してることになりかねない。

結局、漫画とかアニメが狙い撃ちになってるってことは、僕は間違いないと思うんですよね。こういう雑誌類というか本類はぜんぜんオッケー。

遊佐:はい。

山田:でもって、なんで漫画とかアニメだけがこういうかたちでもって、まあ、結局狙われるのかと。それはおかしいよねと。でも、簡単にまたそう言うと、きっと「いやいや、それは勝手に本屋さんがやったことなんで、我々は知りません」ってことになるわけで、その二重のずるさっていうの?

坂井:ダブルスタンダード。

山田:そう。ちゃんと公権力が「これは条例に基づいておかしいんだ」と、「議会で決めたことだ」と、それはそれで堂々と争えばいいんですよ。ね、別に。だけど、それは逃げといて、かつ、じゃあ、条例どおりに運用っていうか、比較してみると、こういうものは野放しというか。

「普通でしょ? 別に。なんの違和感もなく、これ、区分陳列しなきゃまずいのか?」っていうと、っていう話じゃない。

遊佐:中身見ないと、まったくわからないです。

山田:うん。というふうに……。

有害図書のように見えてしまう

坂井:あと、これもあれなんですよね。ここに、この……、映るかな? この下のほうですね。あ、見えちゃった。見えても、まあ、これこんなんなんですけれども(笑)。

坂井:「『この棚に陳列されている雑誌』の販売や閲覧は禁止されています」って書いてあるんですけど、この本自体は、少なくとも大阪府はこれを有害図書だって言ってないんですよね。

山田:そう。あと、禁止してませんから。

坂井:禁止してないんです。有害図書かどうか、まだわかんないんです。

遊佐:はい。

坂井:包括指定で、これはあくまでもメーカーが自主的に、メーカーというか、出版社が自主的にシールを貼ってるのに重ねてカバーをつけてるだけなので。自主規制するとカバーをつけられちゃう。で、自動的に「これは有害図書です」みたいに言われちゃう。

山田:そうなんですよ。

坂井:これは、百歩譲って、大阪府が指定したなら、まだ、まあ、これは事実に近いからしょうがないのかもしれないんですけど、どうかわかんない状態でこういうふうになっちゃってる、というところも問題と言うかね、はい。

あと、すいません。地方自治法14条の2っていうのがあるんですよ。

山田:はい。

坂井:(画面に映っているのが)14条の2かな……、あれ?

遊佐:少々お待ちくださーい。

坂井:14条の2、これですね。

坂井:見えるかな?

山田:「普通地方公共団体は、義務を課し、または権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」なるほど。これ、違反してる可能性があるわけだね?

坂井:こういう文言があるんですけれども、これはまあ、地方自治法からいえば、「制限するときには当然、条例を作りましょうよ」ということなんですけれども、たぶん今回はコンビニの経済的な自由みたいなのも奪ってるんですけれども。

「これはあくまでもファミリーマートが自主的に自分の権利を放棄したから、これはいいんだ」という解釈で、今これをやっているんですよね。

山田:ちょっとあんまりひどいようだったら、これも国会で少し。で、今回、一応、レクで誰を呼んだの? 最初は……。

坂井:総務省ですね、基本的には。

山田:総務省。法制局は呼んだの?

坂井:法制局は、今日は来てないですけども、はい。だから、こういうケースってあんまりやんないらしいんですよ。こういう協定で、実際にこういう権利を制限していくっていうやり方は。

昔は公害とかであったらしいんですけど、最近はこういうケースっていうのはあんまりなくてですね、こういうのをやってくと、もうなんでもかんでもできちゃう。協定で。

自主規制の嵐になっていく

山田:そう。なんでもかんでもできちゃう。で、もっと怖いのは、結局、「やめとこう」とか、「やっぱりこういうの売るのやめよう」とか、たぶんどんどん自主規制の嵐。

坂井:こういうのも、だって、どんどん横展開されてっちゃうんですよね、ほかの自治体に。

山田:ほかの市でも、「なるほど、こういうやり方があって、やれちゃってんだ」と。どっかで歯止めをかけて、表現の自由ってのを現場で守っていかないと、しょうがないなってことなんだよね。

坂井:あとは、「こんな違法なもんが置いてあるんだったら、置くのやめようよ」っていうのに、たぶん言い出しますよね。

で、あと、これ、ほんとか嘘かわからないですけど、あれですか、女性専用車両。あれはもともとは堺市から始まったらしく、今ではもう全国的に普通になってるので。まあ、それ自体がいい悪いはまた別にありますよ。

だけども、そういうものが広まっていくと、これが普通になっちゃって、どんどんどんどん買えなくなっちゃうっていうことは可能性としてはありますよね。

山田:はい。どうですか?

遊佐:女性専用車両の話が出てくるとは思わなかったんですけど、たしかにいつの間にかに女性専用車両っていうものができていて、いつの間にかそれが当たり前になってて、それを女性が使うのが当たり前だから「男性来るな!」みたいな、すごい強い当たりも始まっちゃって、悪い方向に……、なんか。

山田:そう。たまに間違えて乗るんだよ。

(一同笑)

山田:すげー、気まずいんだよね(笑)。でも、しょうがないから、ドアに張り付いて、「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。次の駅、早く来ないかな」と思って、降りたりとかありましたね。

坂井:(笑)。

遊佐:そうなんですね。

山田:でもね、男性専用車両を作ってもらいたいなって思うのは、痴漢で冤罪があるとかないとかっていう、まあ、ちょっとこれもどこまでがどうだかわかりませんけれども、やっぱり男性も最近怖いから、僕もそうですけれども、両手上げてる人多いよね。

遊佐:あー。

山田:片手が下にいってると痴漢に間違われる可能性があるので、両手を上に、わざわざ、つり革をあれして、そういうふうにしてたりもするので、やっぱり怖いよね、いろんなことがね。はい。

遊佐:かわいそうだなと思います。

山田:ということで、じゃあ、堺市の問題は引き続きこれからもやっていきたいと思います。書協、雑協さんも今日来て一生懸命やっていますので、応援はしていきたいというふうに思っています。

さて、次がですね、ニコニコ超会議、超トークステージの宣伝ということを少し。出ます?

坂井:出ますか?

遊佐:どーん!

山田:実はオファーがあったんですが、今日まで言えなかったんですが、今日、情報が解禁になりました。4月29日ですね、ニコニコ超会議の1日目かな。

坂井:そうですね、はい。

山田:(4月29日)の12時から13時、超トークステージ。これはもちろんニコニコ生放送でも生放送されると思いますが、桃井はるこさんをはじめとしてですね……。

坂井:歌門さんと、あとコミケの市川さん。

山田:市川さんですね、と一緒にですね、「性表現を扱う漫画、アニメ、ゲームの規制をうながす国連勧告。2020年の東京オリンピックを目前に控え、表現の統制は繰り返されるのか? 人権侵害と表現の自由に求められる責任について、今一度ネットユーザーと一緒に考える1時間枠」ということで、児ポ論壇というのをやりますので。

どうかみなさんですね、見たり、あるいは、来ていただいてもいいと思いますけれども、ご参加いただければというふうに思っています。

遊佐:はい、お願いいたしまーす。