2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
デンソーが描く未来の快適車内空間 社員講演③(全1記事)
提供:株式会社デンソー
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太田祐司氏(以下、太田):改めまして、コックピットシステム開発部の太田と申します。よろしくお願いします。私からは「デンソーのコックピット技術とこれからの未来」についてお話しいたします。
私たちが担当しているコックピットというのは、人とクルマの環境をつなぐというところが大事だと思っています。人とクルマ、HumanとMachinをつなぐInterfaceをHMIというんですが、こういった役割を担わないといけないのがコックピットです。
具体的な例を示しますと、クルマで移動するとき「移動しているクルマはどういう状態になりますか?」ということをクルマは人に伝える必要があります。その伝える情報は速度やガソリンがどれぐらいあるとか、ハイブリッドだとすると充電がどれぐらいある、といったクルマの状態です。こういったクルマの状態を伝えるというのが、HMIの役割です。
さらに人側も、運転操作やモードを切り替えるなど、クルマを自在に操っていく必要があります。そこで人はいろいろなスイッチやコントロールを操作して、クルマに伝えるというような、インターフェースが必要です。
今後は、クルマ生活を豊かにしていくということで、実際には他とつながったりクルマをより便利に快適にしていく必要があります。それらを担うのがHMIです。
人とクルマの間をつなぐものがHMIなので、便利に使えるようなコックピットを考えないといけません。そこに対して私たちは先進性として、見やすさ、きれいであるもの。もう1つは賢く人に寄り添っていくことがコックピットとして必要だと思っています。この先進性、賢くというのを細かく見ていきたいと思います。
先進性、見やすさ、きれいというところで、私たちは一番に機能配置の考え方があると思っています。機能配置は、運転しているときの人間の特性を考慮する必要があります。運転中ドライバーは前を見ますが、そのときの視線から近いところに一番重要な情報を置く。あとはエンターテインメント的な楽しさにつながるものは瞬時に情報を得る必要がないので、運転中の視線から少し離れたセンターディスプレイに置いてあげる。
さらに操作系に関しても、運転中にすぐに触る必要があるような操作系をステアリング上に置いてあげたり、オーディオなどの操作は緊急性を要しないので少し遠くに置いてあげます。まとめますと、視線上の表示や動線上の操作・表示を考える必要があります。
また表示コンテンツの内容については、緊急度が高いものや重要度に応じて情報をエリアで分けて配置します。こういうものが私たちが考える機能配置であり、人間にどういう特性があるのかというのを考えながら配置していくというのが重要です。さらに視認性、見やすさとして搭載性や車載ディスプレイの要件があります。
今度はこの車載ディスプレイの要件を見ていきます。
要件では、搭載性、視認性、外部からの影響を考える必要があると考えています。最近の新しいクルマはインストルメントパネル、インパネと言いますけど、ダッシュボードの辺りですね。その辺りが流線型になっていますので、そういうインパネにマッチするような搭載性が必要です。
どんどんテレビも進化していくように、ディスプレイもきれいに見えるようなものや、どこから見ても見やすく、大画面化しています。その画面にさまざまな情報が表示されるのですが、それらの情報が見やすく、クルマから緊急性があるような情報に関しては遅れないように通知する必要があります。
クルマは動くので、外部からいろいろな影響を受けます。外光や映り込みなど、視界を妨げるものから守る必要があります。
また、最近の夏のように暑い時期、車内は過酷な温度になります。そのような場所でもちゃんと性能が出るように考えていかないといけない。そういったものをまとめたものを要件とし、右側に挙げています。高輝度であったり高コントラスト、広視野角だったり。こちらはどこからでも見やすいものですね。あとは高精細化、大画面化、薄型化したり曲面化したり。
そのような技術がどんどん進化していくのですが、どこにおいても色再現性を保たないといけません。色が変になると見え方もおかしくなりますので、そういうことも考えないといけない。さらには外光や温度に耐えられるもの。なおかつその上で過酷な環境にも耐えられる車載性、信頼性を実現していくことが求められてきます。
次世代車載ディスプレイとして私たちは、曲面のインパネにマッチするような、自由な形状のディスプレイを開発しています。インパネに則した形状で一体感を出して、人間特性に沿った表示・操作を実現したいと考えています。自由な曲面ですが、そこには機能配置の考え方が散りばめられていて、情報が見やすく操作しやすいといったことを実現しています。
表示質感向上として、最近話題の有機ELも車載に応用しています。有機ELは黒が光らずに真っ黒になり、漆黒で高コントラストが実現できるため、車内で鮮明な映像が浮き上がるような浮遊感や近未来感を演出していくようなデバイスとなっています。
先ほどの機能配置の考え方で、運転中の運転手の視線上に歩行者などの注意情報を視界の前方に表示して瞬時に認識できる表示装置というものを開発しています。HUDと略していますがヘッドアップディスプレイです。運転中の表示例はこちらの概要の図の通りです。運転中の視線はフロントガラスの向こう側を見ていますが、そのフロントガラス上に情報を表示してあげます。
このような形で速度や周りの状況を表示し、運転に必要な情報を運転中の視線からあまり外さずにすぐに見られるのがヘッドアップディスプレイの良いところです。ディスプレイではなくて光学的に結像するような情報を表示して、ドライバーに提示するというものも特徴です。
さらに次世代のヘッドアップディスプレイとしてARの重畳技術の応用も研究しています。速くて直感的な認識ができ、煩わしくなく、不注意・エラーを排除できるものとなっています。
こちらは表示の事例ですが、高速道路のETCなどで、レーンガイダンスとして、このクルマはどのレーンに行くべきか、というようなものを実際のリアルな風景に重ね合わせて案内できます。
さらに街中、市街地路では、「どこの交差点を曲がってください」とナビガイダンスします。今のナビだと曲がる位置が意外と難しく、実際に見ている風景上に表示させるため、わかりやすくなります。このような次世代の重畳のヘッドアップディスプレイも開発しています。
次は賢く人に寄り添うためのコックピットシステムの統合制御なんですが、従来のシステムは、ナビや後方のバックカメラとメーターの操作は限定的な接続でした。それらの制御を統合して、情報を集めて制御する必要があると私たちは考えています。統合システムは右側の図ですが、入力と出力をつなぐもの、そこにHMI統合制御として一括で頭脳をもつことができれば、人に寄り添うことができると考えています。
ただし統合していくと、課題もあります。例えばこの表の上の段には機能としてスマホ連携といったような、私たちは「インフォテイメント」と呼んでいる楽しい情報というものがあります。車内を楽しくする情報です。その楽しい情報に対して、安全に関わるクルマが絶対に通知しなければいけない情報が、右側の車両警告といった情報です。
私たちはこちらを堅い情報と言い、インフォテイメントは柔らかい情報と言ったりしますが、そういう柔らかいものと堅いもの。絶対に伝えないといけないものとエンターテインメントに近いものを分離して考えてあげないといけないと考えています。その理由は、エンターテインメント的な情報は、とてもユーザー価値としては重要ですが、みなさんご存知の通り、スマホは毎年新しい機種が出たりすごく進化が早いんですね。
それに対してクルマの警告表示は毎年変わるものではありません。そうした場合、警告情報とエンターテインメントの楽しい情報を統合すると、開発サイクルが変わってきます。そういったものを1つにすると、どうやって開発するのかという課題が出てきます。その課題に対して私たちは、最先端のIT技術を用いて融合しています。
具体的には、仮想化技術を用いて1つのものに対してあたかも2つのものがあるように構築しています。具体的にはスライドの右下の図で説明しますが、例えば車両情報、絶対に伝えないといけない情報をロバストコンテンツと呼んでいて、こういった情報を表示するようなOSと、ナビやスマホ連携といったエンターテインメント的な情報を表示するためのOSを構築しています。
この2つのOSを1つのデバイス上に載せるといった仮想化技術を応用してます。クルマのロバスト的なものとオープンなものを分け、オープンなものは開発サイクルを速く、ロバストなものは品質を重視するといった開発にもっていくことができます。
さらに賢く人に寄り添うためには、ドライバーのことを知らなければいけません。例えばカメラがクルマの中に搭載されていて、ドライバーがよそ見をしたり目を瞑っていたり、そういう運転として危ない状況であれば注意喚起をして、安全運転に貢献する。そういったカメラも開発しています。
カメラやスイッチなどの入力デバイス、さらにはクルマが考えるような統合制御部分があれば、私たちは賢く人に寄り添うコックピットを実現できるのではないかと考えています。1つ目はドライバーを理解する。センシング部分ですが、先ほどのタッチ入力や、カメラから取った視線情報であったり、あとは運転席の操作などドライバーの意思をクルマが受け取って、1つのところに情報を集めていろいろ考えてあげることです。
入力情報に対して、そのドライバーが過去にどんな判断をしてきたのか、現在どういう状況なのか、そこから今後どうなっていくのかといった推論エンジンを開発して、AIがドライバーを理解します。
さらには2つ目として、ドライバを理解した上で人に寄り添うHMIで、新しい環境を作りたいと考えています。例えばドライバーや乗員の言語、文脈を理解する。車外の状況と車内の状況がどういう状況なのかを理解する。その上でドライバーの意図・感情を推定していく。そうやってクルマが学習しながらドライバーの好みに合わせていくとクルマから働きかけることができます。結果として、ヒトとクルマが現状の半歩先のコミュニケーションをできるのではないかと考えています。
具体的には状況に応じて「お帰りなさい」と声を掛けたり、例えばクルマの中で、自動運転中に会話をしていたら、会話の邪魔にならないように、クルマ側が間を読んで情報を提示する。あとはドライバーの嗜好に応じて情報を提示する。さらに時間に応じて、出発するときにガソリンが少なかったら「給油しませんか?」だったり、みんなが起きてお昼ごろであれば「お腹が空きませんか?」と提案したり。
ドライバーを理解して人に寄り添うHMIを実現して、未来のコックピットとなっていけないかと考えています。
デンソーの中にはさまざまな部署があります。今回は空調の松岡さんや八木さんと、私たちコックピットがコラボレーションしていますが、今後も社内の事業部を超えてコラボすることで新たな価値を創造しようと考えています。
新時代に相応しいコックピットとして、視界や足元が広々とした、未来を感じるような先進的な表示デバイスを両立させる。自動運転の時代を見据えると、自分が車を運転しない状況になります。その中で安心して乗車できる空間を作る。さらに今ドライバーがどういう状況なのかというのを見た上で何らかのアクチュエーションを実行する。
さらには自由に操れる風として、乗員の位置や乗員が乗っている・乗っていないを把握した上でどのような風を送るのか。あとは車内をどういう空気質にしていくべきなのかなどを研究開発しています。
コックピットシステムは、人とクルマをつなぐ頭脳の部分が賢くなり、空気制御システムに情報を渡す。その中で空気の質や風量をどうすべきかという判断・制御を行い、快適な車内空間を作っていく。このようにシステムが連携することで、未来のキャビンを作れるのではないかと、私たちはコラボ開発をすることで、新たな価値創造に挑戦しています。
株式会社デンソー
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